欠片の軌跡④〜南国の王太子

ねぎ(塩ダレ)

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第八章①「疑惑と逃亡編」

お裾分けコミュニケーション

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俺は会議が終わって、少し考えながら歩いていた。
せっかくこっちの家に帰ってきたのにこのまま帰ると言ったら、リリとムクは悲しまないだろうか?

「お昼ご飯、美味しかったな~。何より2人が可愛すぎるっ!!」

どうして向こうに連れていけないんだろう??
いや、リリとムクは天使だ。
あんな可愛い子を荒んだ世界に連れて行ったら、絶対攫われてしまう!
うん、リリとムクは安全な森の町にいるのが一番だ。
そんな事を思いながら、家のドアを開けた。

「おかえり、サーク!お弁当出来てるよ!」

「おかえり、サーク!夜食も、日持ちするお菓子とかも包んであるよ!」

小さな俺の天使たちが、満面の笑顔で俺を出迎えてくれる。
そして2人は小さな体で、重箱の様な包を掲げて俺を待っていた。

あかん、涙出てきた。

俺はムギュッと2人を抱きしめた。









俺がマダムのギルド兼酒場の部屋のドアを開けると、もう辺りは暗かった。

ああ、夜になっちゃったんだな、と思った。
下の階では、昨日と同じく酒盛りが行われているようで、楽しげな声が聞こえている。
俺はリリとムクが持たせてくれた重箱を持ったまま、階段を降りて行った。

「あれ?!主?!」

部屋にいなかったのに、俺が上から降りてきたからだろう。
シルクは一瞬、キョトンとした顔をしたが、何となく状況を察してくれた。

「おお!サーク!シルクは今日も大活躍だったぞっ!!」

やんややんやともてはやされ、シルクはもみくちゃにされている。
踊り子としてもみくちゃにされてた事もあったが、冒険者としてももみくちゃにされるんだな、お前。
ちょっとおかしくて笑ってしまった。
招かれるまま、シルクの座るテーブルに行く。

「あっ!!主っ!!それってもしかしてっ!?」

俺の手の重箱に気づき、シルクが大声を出した。
シルク、久しぶりだもんな、リリとムクのご飯。

「うん、リリとムクが弁当持たせてくれた。お前の分も含まれてるから安心しな。」

「やった~っ!!リリちゃんとムクちゃんのご飯~!!俺、大好き~!!」

シルクは俺から包をひったくると、重箱を開いた。
3段になっていたそれをテーブルに並べる。
う~ん、これはもしかして……。
俺は並べられた弁当を見て、少し笑った。
リリとムクの力が上がったというのは本当のようだ。
覗き込んでいた連中から、おお~っ!と言う歓声が上がる。

「すげー美味そう~!!」

「ちょっと分けてくれよ!!」

ひょいっと摘もうと手を伸ばしたオッサンの手を、シルクがバシッと叩いた。

「駄目っ!!これはリリちゃんとムクちゃんの作ったご飯だから!俺と主のなのっ!!」

「いいじゃん!!少し分けてくれよっ!!」

「ダメダメダメダメっ!!絶対ダメっ!!」

シルクは頑として弁当を死守した。
まぁ、味もさることながら、あの可愛い天使たちが小さなお手てで作ってくれたと思うと、格別に旨いし癒やされるよな。

でも、これな~。
うん本当、何か凄いな~。

前々から、あの2人には未来でも見えてるのかなって思う所はあったけど、これがパワーアップした力なのか~。
何か本当に感心してしまった。

「まあまあ、シルク。あまり頑なになるなよ。」

「主?!」

俺の言葉にシルクはびっくりしたようだ。
周りからは、そうだそうたとはやし立てる声。
悲しそうな顔をするシルクの頭を撫でながら、俺は皆に言った。

「これは俺とシルクの為に作ってもらった弁当ですが、見ての通り二人分には少し多いですし、またおかずしかありません。」

俺にそう言われ、シルクもその事に気がついた。
何で?と言う顔で俺を見上げる。

「なので、パンなどの炭水化物、スープ等の副菜、デザート……後は酒等かな?それらを持ち寄って頂けましたらお分けします!一緒に取り分けて食べませんか?」

要するに物々交換だな。
ニッコリ笑ってそう言うと、周りは顔を見合わせ、我先にとカウンターに向かって行った。
これで色々頼まなくて済む。

「シルク、今のうちに自分が食べたいものはフタの上にでもとっておけよ?」

「わかった、ありがと。」

何だかんだ言っても、1番のメインゲストはシルクなのだ。
シルクが食べたい物を食べれなかったら意味がない。

俺からトングを受け取りながらシルクは笑った。
そして急いで全種類のおかずを少しずつ、蓋に乗せる。

「サーク!シルク!とりあえず飲むだろ!?ほら!!」

誰かと思ったら、一番乗りはトムさんだった。
なるほど、確に酒は一番手っ取り早いな。
とりあえず自分の分は確保したので、シルクも上機嫌でジョッキを受取る。

「ありがとうございます、トムさん。」

「それよりサーク!その肉の巻いてあるやつ!その肉の巻いてあるやつをくれっ!!」

キラキラした目でトムさんが選んだのは、ゴボウの肉巻きだった。

何か渋い所を狙ってくるな?トムさん?

俺はトングで肉巻きを2つとって、差し出してくるトムさんの皿に乗せてあげた。
興味津々といった様子のトムさんは、じっと肉巻きを観察した後、ヒョイッと1つ口に放り込んだ。

「……ふおおおぉ~?!何だこれは?!野菜みたいなのに!味がしっかり染み込んでいて!!歯ごたえもいい!!噛めば噛むほどジュワッと汁が溢れる!!これは酒が進むっ!!」

感極まったトムさんの声が響いた。
トムさん、何気にめちゃくちゃグルメリポート上手いですね……。
何か意外だった。
トムさんの絶品リポートを聞いて、皆が慌てて色々持ってきてくれた。
パンやらスープやらがテーブルに並び、皆があれがいいこれが食べたいと、リリとムクのお弁当を摘んでいく。
話を聞いたコックのゴッズさんまで出てきて、俺とシルクはデザートに秘蔵のアイスクリームをご馳走になった。

「これって、主が頼んでこう言うお弁当にしたの?」

デザートのアイスを食べながら、シルクが聞いてきた。
俺は笑って首を振った。

「違うよ。でもリリとムクはその時必要そうなものがわかるみたいだ。何か力が上ってそういう事ができるようになったんだって。」

「ふ~ん??」

リリとムクがどう言う存在か知っているシルクも、半ばよくわからないようだ。
俺もなんとなくしか理解してないから当然だよな。

ただ、食べ物の恨みは恐ろしいが、食べ物の恩は時と場合によっては鬼退治すらしてくれる。

これがいつも持たせてくれる2人分の食事だったらどうなっていただろう?
2人だけで食べていたら分けろ分けろと恨まれたかもしれないが、持ち寄りという名の物々交換だが、一緒に弁当を食べる事ができて皆も満足している。
ただ分けてもらったんじゃなくて、こちらもあげたからもらったというのもあって気兼ねなく味わえたのだろう。

今は皆それぞれ、別テーブルに座って談笑している。
そしてシルクも、リリとムクのご飯も食べれたし酒も奢ってもらえたし、極めつけにアイスクリームなんて食べれたものだからとても上機嫌だ。
食べ物の力って凄いなと思いつつ、話すなら今しかないだろうと思った。

「……シルク、大事な話がある。落ち着いて聞いて欲しい。」

俺はキョトンとするシルクに向き合い、姿勢を正しのだった。
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