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第一章 始まりのハジマリ

6.有林寺隼人の場合

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 有林寺隼人ゆうりんじはやと、17歳。


 幼馴染でもある隼人は天才的な頭脳を持ち、俺と同年代でありながら海外の有名大学に飛び級で進学。 



 そして今、大学に籍を置いてはいるが休学中。

 東京の一等地にあるタワマンの最上階に住み、その部屋は研究室にもなっている。


 休学した理由は「つまらないから」だが、彼にはやりたい事が元々あった。

 それがダンジョンに関する研究である。



 ある日突如として現れたダンジョンは今までの世界をひっくり返し、混乱と急成長を促した。

 隼人はその世界を変える力を持ったダンジョンに強く惹かれた。



 未知の鉱石、未知の元素、未知の生態系、その他未知のエトセトラに関して、隼人の天才的な頭脳は知的探求心を抱かずにはいられなかった。

 そして俺がなぜPKKになったのかを知っている唯一の人物でもある。


 隼人はダンジョン関連の論文をいくつも学会に発表し、いくつものマジックアイテム制作の基礎理論を組み上げて特許を取得。

 今はその特許料とマジックアイテムの販売で生計を立てているが、試作したマジックアイテムの実験はこの俺が担当しているのだ。


 試作品の中でヤバイと思ったのは対人用アイテムで、効果がどの程度かをPK相手に試してこいというものだった。

 ダンジョン防犯用アイテムとして売り出されたそれは爆発的に売れ、隼人の財政の一端を担っている。


 防犯シリーズもそうだが、隼人が開発するマジックアイテムは俺がモンスターやPKを狩って得た素材を使用しているので原価もかからない。

 何だか利用されている気もするが、俺も隼人の力を利用しているわけだしウィンウィンな関係と言えるだろう。


 素材を持っていけば高性能な上級ポーションやタブレットを量産してくれる。

 俺的にも無料で消耗品やアイテムが手に入るのだから文句なんて無い。


 ただ人の事をおちょくったり弄って来たりする所がたまに癪だったりもする。

 だが俺の目的にも協力してくれているし、非常に頼りになるパートナーなのだ。
 

「で、必要なのはそれだけでいいのか?」


「あぁ、問題ない。これで悠久の檻からの脱却が可能となる」



 隼人の研究室にて装備一式を新しくした俺は、真紅のマントをバサリと広げた。

 今回のコーディネートは最上級ダンジョンで獲れた素材をふんだんに使ったワンオフ装備。



 カラーリングが赤で統一してもらい、アクセントとして黒と金を所々にちりばめている。



「そうかい。それにしてもお前の厨二病いつになったら治るのかね」


「ふん、病などではない。これこそが俺なのだ。遥か古き時代から紡がれてきたケルヌンノスの血脈が騒ぐのだ」


「ケルヌンノスってケルト神話の冥府神だろ? ぶっそうだなぁ」


「違う、いやその側面もあるが狩猟の神でもある」


「PKを狩るにあたっての狩猟神てか? 凝ってるねぇ」


「何とでも言え。俺は行くぞ」



 研究室を出る直前に懐から仮面を取り出して装着する。

 顔バレはしていないが念の為という事で、隼人に無理やり渡されたものだ。

 鼻から上を隠すタイプの物だが、状態異常防止の効果があるそうだ。
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