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葵ちゃんと柚奈の涙

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怜はお風呂から上がると、バスローブを着て、髪を乾かした。青髪が、翔子のシャンプーとリンスのおかげで、艶を出し、美しいサファイヤのように光った。髪を乾かしながら満足げな顔をする怜は未だに柚奈との会話に緊張していた。
 髪を乾かし終わると、自分の頬を両手で気合をいれるようにバシッと叩き、気合を入れた。
 ドアを開け、リビングに向かった。足取りは重く、職員室に呼び出しされた時に似ていた。
 リビングのドアを開けると柚奈が何気無い顔をして、翔子と楽しく話していた。ちょっと安心した怜は柚奈に近づき、決心を決め、写真のことを聞いた。

「柚奈ちゃん。勝手にスマホを見たのはすまない。だけど、勝手に見た側だが、教えてくれるかな? その、写真に写る柚奈ちゃんの横の人は誰なの?」

 予想していた通り、怜が写真の話題を出すと、周りの空気は一気に凍りついた。あの豊姫でさえ、『お前何聞いてんだよ』と思った目で怜を睨んだ。
 柚奈は立ち上がり、悲しそうな表情で怜に返答した。

「ごめんなさい先輩。私が忘れていったのが悪いんです。勝手に見てしまった先輩は悪くないです。ですが、私は今の感情じゃ先輩に上手く伝えることができません。失礼します」

 柚奈は怜にどうしても言えないというと、そのままリビングを後にし、自分の部屋に戻った。
 怜は自分が柚奈を傷つけてしまったと思い、下を向き、落ち込んだ。
 葵は怜に寄り添い、元気つけるように声をかけた。

「怜、仕方ないよ。誰だって見てしまったら気になるし、こういう経験はたくさんあると思う。でも、このままでいいわけないでしょ? 怜、柚奈を追って」
「あぁ。ありがとう葵ちゃん。お節介かもしれないし、柚奈ちゃんにとってはうざいかもしれない。でも、俺は柚奈ちゃんにそんな顔をして欲しくない。だから俺いくよ」

 怜は拳を強く握りしめ、葵の励ましのおかげで、決心し、柚奈の部屋に走って向かった。
 葵は豊姫と翔子の方を振り向き、質問した。

「どうして柚ちゃんはあんな顔をするの?」
「すまないのじゃ。これだけは本人から聞いてくるじゃ」
「ごめんねー葵ちゃん。おしゃべりな私だけどこれだけは言えないなぁ。ごめんね」

 2人とも申し訳なさそうな顔をして、葵の質問を断った。
 その頃怜は柚奈の部屋にたどり着き、ノックをしようとした。

(待てよ俺。これでいいのか!? 本当に、これが正解なのか。ここで俺が柚奈ちゃんの話を聞いてあげるのが、俺の行動なのか。聞くだけじゃ本人も救われない。どうすれば。でも俺には柚奈ちゃんの問題を解決してあげる力も知恵もない。でも、あんな顔さrてたらほっとけないだろ。クソ! こうなったら力になれなくてもいい。全力でぶつかっていけば、本人の気持ちも少しは楽になるはず。少しでもいい方向に進めば)

 怜がドアノブに手をかけた瞬間、ドアノブが勝手に動いた。中から柚奈が開けようとしている。そして次の瞬間、ガチャっとドアが開き、柚奈と怜は目を合わせた。
 気まずい空気が2人の間を漂ったが、怜は柚奈の手を取り、声をかけた。

「ちょっと外にでも涼みに行こうぜ」
「あ……えぇいいですよ」

 柚奈は無理やり作った笑顔でニコッと微笑み、2人は翔子の家を後にした。
 エレベーターを降り、星空が輝く、夜空を見上げ、歩き出した。
 怜はなんて言葉を」かけてあげればいいか分からず、無言のまま怜は、自分の通っている高校に向かった。
 手を引き、なんだか柚奈は怜が男らしく見え、悪くはなかった。
 誰もいない高校に着くと怜は、不法侵入を試みた。

「先輩、学校になんてきてどうしたんですか?」
「いいからいいから。おっ! あったあった。ここの鍵さ、頑張れば開くんだぜ」

 疑問に思う柚奈に対し、怜は学校の裏門の鍵を力ずくで開けた。
 すると柚奈の手を優しく引き、学校の男子トイレの窓を探した。

「先輩、何を探しているんですか? これもう立派な不法侵入っていう犯罪ですよ。まぁ私もその1人になってしまいましたけどね」
「不法侵入? そんくらいのワクワクはないと面白くないからな。お、ここだ。よし、ここから入れるぞ。柚奈ちゃんとどくか?」

 男子トイレの窓が開くと、柚奈は窓を掴みジャンプして、中に入った。
 怜も柚奈を追うようにすんなり中に入ることができた。
 また柚奈の手を取り、階段を上がっていった。

「夜の学校って新鮮ですね。シューズも履かないで、土足であがるって、私たちヤバイですね」
「だな。でもこんな田舎の学校なんて誰も管理してないよ」

 不安な柚奈だったが、だんだん笑顔が見られるようになってきた。
 怜はワクワクしながら屋上を目指し、階段を一歩一歩登っていった。
 数分後、屋上につき、ドアを開けて屋上に上がった。
 柚奈は屋上から見える星空の景色に、胸を打たれ感動した。

「うわぁ。す、すごい……です」
「だろう。俺のお気に入りの場所だぜ」

 柚奈は自然と涙が溢れてきた。
 怜は自然にハンカチを渡した。
 柚奈はハンカチを受け取ると、堪えていたものが、全部出てきたように涙が、ボロボロとこぼれ落ちてきた。そして跪き、怜のハンカチを顔におおい、こぼれ落ちる涙を拭いた。
 怜は柚奈の様子を見ると、怜は優しく柚奈を抱きしめて声をかけた。

「柚奈ちゃん。たくさん堪えてきたんだね。たくさん傷ついたり、失ったり、ひどい目にあったり、沢山我慢してきたんだね。柚奈ちゃんはすごいよ。俺は柚奈ちゃんに何もして挙げれない。だから、今日くらいは全部出し切っていいんだよ」

 怜に優しく言われると柚奈はさらに涙が溢れ、思いっきり怜の胸の中で泣いた。
 泣いて泣いて、今まで堪えてきたもの全てをさらけ出した。
 柚奈は泣き止むと、ハンカチで、涙を払い深呼吸をした。

「柚奈ちゃん大丈夫?」
「えぇ。だらしないところを見せてしまい、申し訳ないです。ですが、私も決心が固まりました」

 柚奈は怜の顔を、真剣な眼差しで見つめた。
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