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部屋で、一人、必要なものを準備した。

私が愛用していたガラスのペンだけ。

そのまま、荷物を置いて、別邸に住んだ。
別邸は、花が綺麗だった。そこで、私はすごそう。一人で。

毒になる花が、あるのは私だけしか知らなかった。
花の蜜を飲み、死のうと思う。
それが一番幸せなのよ。

せめて本当に愛されて、家族になり、な。
でもそれも叶わなかったな。
わたしの夢は3ヶ月で、壊れてしまった。



皇太子妃なら、数名の侍女がつくのだけど、カリンは、つけなかった。
ただ一人、部屋の世話かがりに、耳が聞こえない女の子だけを連れて行った。
耳が聞こえなければ、話をしなくていい。


毎日、3時間、プリンスに指導した。
一年間、この苦しみが続く。
プリンスと仲良くなるつもりもなく、淡々と進んでいった。

丁寧に指導したら、プリンスは、どんどん吸収した。伯爵令嬢レベルにはなってきた。




「大丈夫よ。あなたは、皇太子に愛されているから、自信を持って、、」

「ありがとうございます。。」



「あの、、、カノン様、、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」


「なにかしら?」

「その、その傷は?」

「え?」

その腕の、、、


「あっ、、ごめんなさい。嫌なものを見せてしまったわね。気にしないで、、、」

「いえ、、それは、、、」

「気にしないでね!」

カノンは、少し気温が高かったので、そでを巡っていた。
傷のことを、、、

わざと見せたのだった。
プリンスには知って欲しかった。あなただけでないことを。

プリンスが、皇太子に教えるかわからないけど。




プリンスは、知ってしまった。あの傷は虐待の傷。しかも古い。


皇太子に聞いてみた。


「カノン様の腕に、古傷があるのは知っていましたか?」

「カノンの?知らないな。初夜の時も、気がつかなかったが?」


「もしかして、腕は隠されていましたか?」

「レースのナイトドレスを脱がなかったから知らないな。」


「え?では、カノン様の体を見ていないのですか?」



「ああ。あの時はもう、プリンスのことを愛してたから、カノンのことは義務だったからな。そこまで興味がなかった。」


「カノン様は、あと、少しで終わるから安心してと言われました。
これからどうなるのですか?カノン様とは、お会いしましたか?」


「最近、公務もないからあっていない。」


「だれか、私以外に会った人はいますか?」

「知らないな。」

「別邸は、一人耳の聞こえない女の子がいます。その子以外、人はいませんよ。知っていますか?」


「そんなことないだろ?皇太子妃だぞ?」

皇太子妃が、一人の侍女だけ?ありえない。別邸に興味がないから知らない。

「では、誰がいるのですか?」

「公務の時も綺麗な姿だよ。いつもどおり。」

「本当に?私が会う時は、いつも同じドレスですよ。
公務の時も、同じドレスしか着ていないのではありませんか?
教えていただいている部屋も家具もないから、不思議に思っていたのです。
一度、カノン様の部屋を除いたことがあるのですが、、、何もありません。

ただ、陽が当たっていて、花だけ飾ってありました。」


同じドレス?俺はカノンが、どんなドレス着ていたか?思い出さない。
それだけ興味がなかったのか?
嫌っ。公務と言っても、ほとんど顔合わさなかった。
書類も完璧だったから、言うこともない。
公に出ることも少ない。
カノンとあまり会っていない。

カノンの笑顔も見ていないな。
俺がひどいことをしたから、当然だが、、、

でも、プリンスは、虐待されていて、居場所を作ってあげないといけなかった。
カノンは公爵の娘という居場所がある。

「まぁいい。そんなこと、プリンスが気にしなくていい。」
一言、言って、話を終わらせた。




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