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旅館で

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「瑞希。」
この声は、、まだ会社のはずなのに、
振り返ると、心配そうな顔をしていた霧矢くん。

「霧矢くんごめんなさい。」
抱きつきたかった。でも、私そんな権利はない。

「わかってる。良かった無事で、、ここに泊まってるの?」

「うん。」

「部屋案内して、、、」

部屋に入るとすぐに、キスされた。
いつもと違って優しいキスだった。でも、離してくれなかった。
瑞希は、涙を流した。
「瑞希?嫌だった?」

「ううん。」

「涙は?」

「、、、、」

「瑞希。」

「ごめんなさい。ごめんなさい。」

「わかってるから。瑞希、俺から離れたい?」

「いやなの。」
「わかった。今はそれだけ聞けたらいい。後でゆっくり話したい。寝かせてほしい。もう限界。」

ひいてあった布団に一緒に倒れ込んだ。
「瑞希。離れるな。」と言って、眠った。

目の下にクマができてた。
「ごめんなさい。そう、、ただでさえ大変なのに、私が居なくなったから、、、」

霧矢くんを抱きしめた。
3時間ほど眠ったら、目を覚ました。
「瑞希っ。良かった。ちゃんと居た。」

「霧矢くん。今日は、帰らなくてもいいの?」

「ああ。しばらく休む。」

「お風呂入りに行く?」

「そうだな。」
二人は、温泉に入りに行った。

時間を決めて、待ち合わせをすることにした。


瑞希が、待ち合わせ時間に少し時間に遅れた。

温泉で、お婆さんが、ふらついていたので、手助けをしていた。

「霧矢くん、遅れてごめんなさい。」

霧矢くんは、心配してた。
そう。瑞希がいなくなる心配をしてた。

「大丈夫だよ。」優しい笑顔で返してくれた。

少しロビーで、お土産を見ていたら、

さっきのお婆さんが、、
「お嬢さんありがとうね。助かりました。」

「いえ。もう大丈夫ですか?」

「いいお風呂だったから、長く入っちゃって、、、歳なのにね。」

その横にお爺さんがいた。

「さっきね、私がふらついてるところをたすけてくれたの。」

「ありがとう。妻がおせわになりました。転けたら大変だったところ、助かりました。」

そこへ飲み物を買いに行ってくれた霧矢くんがやってきた。

「島崎会長?」

「伊藤霧矢君じゃないか。」

「お知り合いなの?」

「社長の集まりで顔を合わせるぐらいだけどね。」

「そうなの?じゃあ、彼女?」

「いえ。妻の瑞希です。」

「奥さんなのね。いい子を奥さんにしたわね。もしよかったら、一緒に食事しましょう。」

「瑞希さんにお礼したいから、霧矢君どうかな?」

「お礼?」

「瑞希さんは、妻を助けてくれたんだよ。」

「いえ。そんな、、私は、普通なことをしただけで、、、」

「そんなことないわ。あの時、人は居たけど、誰も助けてくれなかった。瑞希さんだけが、手を差し出してくれたのよ。」

「じゃあお言葉に甘えよう。瑞希。」

「はい。よろしくお願いします。」

「では、7時に、ロビーで待ち合わせね。」

一度部屋に戻った。

「霧矢くんあのね。さっき温泉で、お婆さんが調子悪そうだったから、椅子に座ってもらって、涼んでもらったの。」

「それで遅かったんだね。」

「ごめんね。説明しなくて、、、、」

「あのね。実は、島崎会長と一度話をしたかったんだよ。チャンスをくれてありがとう。」

「私霧矢くんの役に立ったの?」

「そうだよ。」

「良かった。」

「服を車から持ってくるから待ってて。」

瑞希は、ワンピースに着替え、
霧矢はスーツに着替えて、ロビーで待っていた。

「お待たせしました」

やってきたのは、先程のおばあちゃんでなく、着物を着たとても美しい年配の女性だった。

「では行きましょう。」

和食のお店に連れて頂いた。


会席料理だった。とてもきれいで食べるのがもったいぐらいのものだった。
私も頑張って作りたいと思う。

「瑞希さん。お料理は、好きそうですね。」
「はい。日本料理が1番好きなんです。」
「霧矢君は幸せものね。」
「そうですね。瑞希の料理は、とても優しくて美味しいんです。」

「幸せそうね。馴れ初めを聞いていい?」

「私たちは、親戚なんです。瑞希が赤ちゃんの頃知っていて、私が9歳の時に、5歳の瑞希に恋をしたんです。
それから、ずっと好きで見守っていたんです。
瑞希が、17歳の時に、付き合うことになり、18歳で結婚することになりました。私が、瑞希を離したくないので、、、、」

「霧矢くんは、純粋なんだね。」

「純粋というか。理想の女の子なんです。いえ、、それ以上。。」

「素敵ね。瑞希さんは?」

「私、霧矢くんの想いを知らず、鈍感だったのですが、ずっと優しく見守っていてくれたので、私は安心して過ごせたのです。今後も、夫を支えていきたいと思っています。」

「聞いてもいいかい?今騒動に巻き込まれていると噂を聞いてね。」

「解決しました。」

「よかったね。」

「はい。ありがとうございます。」

霧矢くんと会長は、仕事の話をしていた。
奥様と私は、旅行の話に盛り上がった。
写真を見せたりしあって、仲良く過ごした。

会席料理なので、霧矢君は、お酒を勧められていた。もちろん断れないので、たくさん飲んでいた。

会長さんも霧矢君のことを気に入ってくれたみたいで、明日、一緒に観光をすることになった。
ここでお開きになった。

「瑞希ちゃん、また明日宜しくね。」

「はい。こちらこそよろしくお願い致します。」
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