5 / 10
第五話
しおりを挟む
コルトン伯爵夫人は、夫とよく話し合った。2人ともお互いを誤解していた。コルトン伯爵は忙しすぎて、妻の誕生日さえ忘れてしまっていたのだ。それを浮気だと疑ってしまった夫人。すべてはすれ違いの誤解だった。改めて2人きりの誕生会をやることになり、伯爵は、妻には新しいドレスを贈りたいと思った。
「旦那様、それなら、買い物したいドレスショップがありますの」
二度目の来店は、この間とまるでちがった。コルトン伯爵夫人は光り輝いていた。
「いらっしゃいませ」
リハ店長がドアを開けると、ルーディとマルシィが待っていた。
「こちらはいかがでしょうか?」
ルーディが3着目のドレス用の見本に持ってきた生地も素敵だった。こんなに素敵なのに、普段のドレス1着分で、3着作ることができるのだ。その上、ルーディのすすめるデザインは流行の最先端も最先端。品質が特別悪いわけでもない。ただ、普段よりはデザイン重視なことは否めない。普段の客層はもう少し安い価格帯が主流なため、伯爵夫人が完璧に満足するには、少し生地が落ちるのだ。だが、甘くみてはいけない。ルーディの似合うものを見抜く目は半端なかった。さっきからすすめられた生地から作るドレスすべてがほしくて、葛藤している。
「ダメだわ。これ以上は。ルーディ。あなたは本当にすごいわ。今見たもの全部作るわ。あと、それに合わせる小物も。次のシーズンのドレス生地見本はいつ作るの?」
「ありがとうございます。次はもう半年後になります」
「買いにくるわ。似合いそうなのは先に私用にしておいてくれる?全部ルーディに任せるから」
そう言って、まだ若いルーディの頭を優しく撫でる。
「よほど教育がいいのね?一番若い店員さんがこれじゃ、この店はとんでもない店ね。マルシィもすごくすすめ上手だし。正直今のショップから変えたいわ。でもこの生地から作るのでは、高位貴族には厳しいわよ?」
リハ店長がちょっと情けない顔で言った。
「私ももっと高い品質の物を作りたいのですが、資金がまだ足りないのです」
「まぁ、そうなの。それなら、旦那様に相談してみようかしら?」
「奥様、ありがとうございます。もし可能ならばお願いしたいです」
コルトン伯爵からの支援を得て、ドレスショップは今より王都の中心に移った。今までのお客様も大事にしたいため、ドレスのオーダーは2種類に分けた。ルーディは高位貴族担当になった。マルシィは低位貴族担当のままになった。マルシィはほんわかした女性だが、一緒にゆっくり考えてくれる優しさが人気だ。ルーディは似合うものをうまくすすめるから、売り上げナンバーワンだった。
最初は道行く夫人や令嬢は馬車の中から新しい店舗を見るだけだった。ところが、コルトン伯爵夫人が夜会に着てきたドレスの素晴らしさが話題になって、ドレスショップにはたくさんの予約が入った。
「ここが勝負どころよ!」
リハ店長が気合いを入れている。ルーディはいつも通りだった。でも、マルシィが心配そうに声をかけた。
「ルーディ、顔色が悪いわ。どうしたの?」
ルーディは昼間に対応した夫人から、
「どこかで会ったことがない?」
と尋ねられたのだ。ルーディは高位貴族担当になってから、髪色を変えたり、髪型を変えたり、なるべく知り合いに会ってもわからないように努力していたつもりだった。でも、このままではいつかお母様が来店する日が来るかもしれないと思って心が苦しくなったのだ。
「旦那様、それなら、買い物したいドレスショップがありますの」
二度目の来店は、この間とまるでちがった。コルトン伯爵夫人は光り輝いていた。
「いらっしゃいませ」
リハ店長がドアを開けると、ルーディとマルシィが待っていた。
「こちらはいかがでしょうか?」
ルーディが3着目のドレス用の見本に持ってきた生地も素敵だった。こんなに素敵なのに、普段のドレス1着分で、3着作ることができるのだ。その上、ルーディのすすめるデザインは流行の最先端も最先端。品質が特別悪いわけでもない。ただ、普段よりはデザイン重視なことは否めない。普段の客層はもう少し安い価格帯が主流なため、伯爵夫人が完璧に満足するには、少し生地が落ちるのだ。だが、甘くみてはいけない。ルーディの似合うものを見抜く目は半端なかった。さっきからすすめられた生地から作るドレスすべてがほしくて、葛藤している。
「ダメだわ。これ以上は。ルーディ。あなたは本当にすごいわ。今見たもの全部作るわ。あと、それに合わせる小物も。次のシーズンのドレス生地見本はいつ作るの?」
「ありがとうございます。次はもう半年後になります」
「買いにくるわ。似合いそうなのは先に私用にしておいてくれる?全部ルーディに任せるから」
そう言って、まだ若いルーディの頭を優しく撫でる。
「よほど教育がいいのね?一番若い店員さんがこれじゃ、この店はとんでもない店ね。マルシィもすごくすすめ上手だし。正直今のショップから変えたいわ。でもこの生地から作るのでは、高位貴族には厳しいわよ?」
リハ店長がちょっと情けない顔で言った。
「私ももっと高い品質の物を作りたいのですが、資金がまだ足りないのです」
「まぁ、そうなの。それなら、旦那様に相談してみようかしら?」
「奥様、ありがとうございます。もし可能ならばお願いしたいです」
コルトン伯爵からの支援を得て、ドレスショップは今より王都の中心に移った。今までのお客様も大事にしたいため、ドレスのオーダーは2種類に分けた。ルーディは高位貴族担当になった。マルシィは低位貴族担当のままになった。マルシィはほんわかした女性だが、一緒にゆっくり考えてくれる優しさが人気だ。ルーディは似合うものをうまくすすめるから、売り上げナンバーワンだった。
最初は道行く夫人や令嬢は馬車の中から新しい店舗を見るだけだった。ところが、コルトン伯爵夫人が夜会に着てきたドレスの素晴らしさが話題になって、ドレスショップにはたくさんの予約が入った。
「ここが勝負どころよ!」
リハ店長が気合いを入れている。ルーディはいつも通りだった。でも、マルシィが心配そうに声をかけた。
「ルーディ、顔色が悪いわ。どうしたの?」
ルーディは昼間に対応した夫人から、
「どこかで会ったことがない?」
と尋ねられたのだ。ルーディは高位貴族担当になってから、髪色を変えたり、髪型を変えたり、なるべく知り合いに会ってもわからないように努力していたつもりだった。でも、このままではいつかお母様が来店する日が来るかもしれないと思って心が苦しくなったのだ。
63
あなたにおすすめの小説
契約通り婚約破棄いたしましょう。
satomi
恋愛
契約を重んじるナーヴ家の長女、エレンシア。王太子妃教育を受けていましたが、ある日突然に「ちゃんとした恋愛がしたい」といいだした王太子。王太子とは契約をきちんとしておきます。内容は、
『王太子アレクシス=ダイナブの恋愛を認める。ただし、下記の事案が認められた場合には直ちに婚約破棄とする。
・恋愛相手がアレクシス王太子の子を身ごもった場合
・エレンシア=ナーヴを王太子の恋愛相手が侮辱した場合
・エレンシア=ナーヴが王太子の恋愛相手により心、若しくは体が傷つけられた場合
・アレクシス王太子が恋愛相手をエレンシア=ナーヴよりも重用した場合 』
です。王太子殿下はよりにもよってエレンシアのモノをなんでも欲しがる義妹に目をつけられたようです。ご愁傷様。
相手が身内だろうとも契約は契約です。
記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる
きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。
穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。
——あの日までは。
突如として王都を揺るがした
「王太子サフィル、重傷」の報せ。
駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。
貴女が母上だったら良かったのに
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
貴方はもう、好きに生きると良いわ。鞄に入っているのは、これまでの慰謝料みたいなものよ。………遠慮せずに受け取って」
長年暮らした場所を僕、シューベルトは出ていく。
住みやすかったとは言えない、小さな別邸が僕の全てだった。
◇◇◇
僕の母親は、僕を産んで死んだ。
産まれたばかりの僕を残して。
僕の出産は、この家の奥様と同じ日だったらしい。
奥様は女の子を。
僕の母親は僕を産んだ。
僕の母親は愛人だったらしい。
このことは奥様と一部の使用人以外には秘密にされていたそうだ。
◇◇◇
「お前は私の跡取りだ。たった一人の男の子よ」
この家の伯爵様が幼い僕に言う。
それを見て、奥様の目が無意識につり上がる。
伯爵様はそれに気づき、ほくそ笑むのだ。
僕は愛人の子だけど、伯爵様と奥様の子として届け出が出されている。
奥様の子マルガリーテは、愛人の子として届けが出された。
血縁上の父親である伯爵のせいで、シューベルトの人生は大きく変わっていくのだ。
(小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)
素直になる魔法薬を飲まされて
青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。
王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。
「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」
「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」
わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。
婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。
小説家になろうにも投稿しています。
偽聖女のささやかな復讐
ととせ
ファンタジー
聖女と認定され、王子と強制的に婚約させられたのは、庭師の娘、キャロット。
地位も後ろ盾もない彼女は聖女として王宮に迎えられたものの、待っていたのは陰湿ないじめと、理不尽な命令の連続だった。
母譲りの髪を嘲られ、肌を汚いと笑われ、祈りの儀式では十二時間立ちっぱなし。
それでもキャロットは、ただ黙って耐えた。
なぜなら彼女は、誰よりも忠義を知る庭師だったから。キャロットは聖女ではない。
本物の聖女を逃がすため、ただの庭師が身代わりとなっただけだったのだ。
そしてついに、待ちに待った日が訪れる。
「本日この時をもって聖女としての任を解く。同時に俺との婚約も破棄する!異論は認めん!」
その瞬間、キャロットは満面の笑みで答えた。
「はい、喜んで!」
解き放たれた黒い小鳥
kei
ファンタジー
「お前と結婚したのは公爵家の後ろ盾を得るためだ! お前を愛することはない。私から寵愛を得るとは思うなよ。だが情けは掛けてやろう。私の子を成すのもお前の正妃としての務めだ。それぐらいは許してやらんでもない。子が出来れば公爵も文句は言うまい」
政略で婚姻した夫から裏切られ絶望の中で想う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる