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第四話
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「順調なようでよかったわ。リハ店長は絶対にうちに勤めてほしいと私の手を握って大変だったわ」
ルーディは普通にしているだけだが、生活に困らない勤め先が決まってうれしかった。リハ店長は、住む場所も一緒に探してくれた。もう孤児院は出て、本格的に働いてほしいと頭を下げて頼まれてしまった。
「ちょっと早いけど、いい出発だと思うわ」
シスターマリアが優しく言ってくれた。
ルーディは、孤児院のみんなに挨拶して、リハ店長と一緒に新しい住処に移った。それからドレスショップに行って、ちゃんとした店員としての一歩が始まった。ルーディは見習いの時にできなかった、朝一番に出勤して掃除をして、空気を入れ替えて、ドレス用の生地見本の準備をして、といった一連の作業から始めた。リハ店長はそれより接客をやらせたがったが、ルーディはまずは一からやりたいと押し切った。
「今日はキランザ子爵夫人からのご紹介で初の伯爵夫人がいらっしゃいます」
朝礼で伝えられた店長の言葉に店員一同ごくりと息を呑んだ。伯爵夫人御用達になれれば、客層はうんと広がる。
「キランザ子爵夫人もいらっしゃるし、ルーディは必ず対応してもらうわ。あとはマルシィ、あなたも子爵夫人に好かれているから。二人と私が担当します。」
「伯爵夫人とはどなたですか?」
ルーディが恐る恐る尋ねると、
「コルトン伯爵夫人よ」
ルーディはホッとした。知らない夫人だったからだ。だが、仕事的にはまずい。何がお好きかどうかを知らない。
「大丈夫よ、ルーディ。いつも通りでかまわないわ。あなたの仕草はすべて優雅だし、センスも抜群。コルトン伯爵夫人ともうまくいくと思うわ」
「みなさん、こんにちは。初来店だけど、キランザ子爵夫人のおすすめだから、期待してますわ」
コルトン伯爵夫人は、キランザ子爵夫人と年齢も近そうで、おしゃべりしている様子を見ていると、かなり仲が良いと見た。
「当ショップに足を運んでいただき、ありがとうございます。子爵夫人には大変お世話になっております。伯爵夫人もお気に召していただけたら、光栄です」
「ルーディ。コルトン伯爵夫人はね、夜会に行くドレスで悩んでらっしゃるの」
「まぁ、夜会ならば、華やかな方がよろしいでしょうか?ご希望はありますか?」
「実はね、夫が浮気をしているかもしれなくて、憂さ晴らしに高いドレスがほしいの」
コルトン伯爵夫人は率直な方なのだな、とルーディは思った。キランザ子爵夫人と仲が良いのも納得だ。
「コルトン伯爵夫人でしたら、この色かこの色がお似合いかと思います。豪華にされたいなら、ドレスに宝石を縫い付けるという手もあります」
ルーディが話すとコルトン伯爵夫人はしばし固まった。
「その色、どうしてわかったの?」
ルーディは意味がわからず、答えるしかない。
「コルトン伯爵夫人ならお気に召す色かなと思いました。何かございましたか?」
キランザ子爵夫人が口を挟んだ。
「さすがルーディね。その色コルトン伯爵の髪と目の色よ」
「まぁ」
ルーディは気を悪くされたのではと心配になった。
「やっぱりちゃんと話してみなさいってことなのかしら」
「えぇ、私もそう思いますわ」
コルトン伯爵夫人とキランザ子爵夫人の会話を一同見守った。
「ちゃんと話してから素敵なドレスを注文するわね。ありがとう、ルーディとみなさん」
ルーディは普通にしているだけだが、生活に困らない勤め先が決まってうれしかった。リハ店長は、住む場所も一緒に探してくれた。もう孤児院は出て、本格的に働いてほしいと頭を下げて頼まれてしまった。
「ちょっと早いけど、いい出発だと思うわ」
シスターマリアが優しく言ってくれた。
ルーディは、孤児院のみんなに挨拶して、リハ店長と一緒に新しい住処に移った。それからドレスショップに行って、ちゃんとした店員としての一歩が始まった。ルーディは見習いの時にできなかった、朝一番に出勤して掃除をして、空気を入れ替えて、ドレス用の生地見本の準備をして、といった一連の作業から始めた。リハ店長はそれより接客をやらせたがったが、ルーディはまずは一からやりたいと押し切った。
「今日はキランザ子爵夫人からのご紹介で初の伯爵夫人がいらっしゃいます」
朝礼で伝えられた店長の言葉に店員一同ごくりと息を呑んだ。伯爵夫人御用達になれれば、客層はうんと広がる。
「キランザ子爵夫人もいらっしゃるし、ルーディは必ず対応してもらうわ。あとはマルシィ、あなたも子爵夫人に好かれているから。二人と私が担当します。」
「伯爵夫人とはどなたですか?」
ルーディが恐る恐る尋ねると、
「コルトン伯爵夫人よ」
ルーディはホッとした。知らない夫人だったからだ。だが、仕事的にはまずい。何がお好きかどうかを知らない。
「大丈夫よ、ルーディ。いつも通りでかまわないわ。あなたの仕草はすべて優雅だし、センスも抜群。コルトン伯爵夫人ともうまくいくと思うわ」
「みなさん、こんにちは。初来店だけど、キランザ子爵夫人のおすすめだから、期待してますわ」
コルトン伯爵夫人は、キランザ子爵夫人と年齢も近そうで、おしゃべりしている様子を見ていると、かなり仲が良いと見た。
「当ショップに足を運んでいただき、ありがとうございます。子爵夫人には大変お世話になっております。伯爵夫人もお気に召していただけたら、光栄です」
「ルーディ。コルトン伯爵夫人はね、夜会に行くドレスで悩んでらっしゃるの」
「まぁ、夜会ならば、華やかな方がよろしいでしょうか?ご希望はありますか?」
「実はね、夫が浮気をしているかもしれなくて、憂さ晴らしに高いドレスがほしいの」
コルトン伯爵夫人は率直な方なのだな、とルーディは思った。キランザ子爵夫人と仲が良いのも納得だ。
「コルトン伯爵夫人でしたら、この色かこの色がお似合いかと思います。豪華にされたいなら、ドレスに宝石を縫い付けるという手もあります」
ルーディが話すとコルトン伯爵夫人はしばし固まった。
「その色、どうしてわかったの?」
ルーディは意味がわからず、答えるしかない。
「コルトン伯爵夫人ならお気に召す色かなと思いました。何かございましたか?」
キランザ子爵夫人が口を挟んだ。
「さすがルーディね。その色コルトン伯爵の髪と目の色よ」
「まぁ」
ルーディは気を悪くされたのではと心配になった。
「やっぱりちゃんと話してみなさいってことなのかしら」
「えぇ、私もそう思いますわ」
コルトン伯爵夫人とキランザ子爵夫人の会話を一同見守った。
「ちゃんと話してから素敵なドレスを注文するわね。ありがとう、ルーディとみなさん」
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