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最初の夫婦と最初の娘たちの話

この世で一番最初の大工

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 広い広い大地には、人が最初の夫婦の二人と最初の夫婦の最初の娘と最初の双子の娘とこの世で最初の逆子の娘とこの世で最初の掌に乗るほどに小さな体で生まれた娘とこの世で最初の大人のように大きな体で生まれた娘しかおりませんでした。

 夫の人はこの世で最初のお父さんで、この世で最初のお百姓さんでした。
 妻の人はこの世で最初のお母さんで、この世で最初の機織り職人さんでした。
 最初の娘はこの世で最初の赤ん坊で、この世で最初のお医者さんで、この世で最初のお産婆さんでした。
 次の娘たちはこの世で最初の双子で、先に生まれた方はこの世で最初の猟師さんでした。
 後に生まれた方はこの世で最初の料理人さんでした。
 その次の娘はこの世で最初の逆子で、この世で最初の仕立屋さんでした。
 そのまた次に生まれた娘はこの世で最初の掌に乗るほどに小さな体で生まれた赤ん坊で、この世で最初の牧童さんでした。
 そのまた次の次に生まれた娘はこの世で最初の大人のように大きな体で生まれた赤ん坊で、この世で最初の大工さんになる人でした。

 この世で最初の家族は洞窟を家にして暮らしておりました。
 洞窟の中には、鍬と手機と薬研と弓矢と大鍋と針箱と羅紗と大樽が、あちらの壁、こちらの天井、向こうの床と、所狭しと置かれております。穀物と反物と薬瓶と干肉と種無パンと衣服とチーズとが、壁のくぼみ、天井の段差、床の穴と、山と積まれています。
 何かをどこかへ動かすと、別の何かが溢れ出ます。何かをどこかへ動かすと、座る場所さえなくなります。
 多くの物をしまうにも、家族がみんなゆっくり過ごすにも、この洞窟では狭いのです。家族には新しい住処が必要でした。

 この世で最初の大人のように大きな体で生まれた娘のティアマトは、まず一番最初に片方が尖って片方が平らな石で手斧を作りました。
 それから、その手斧を持って大きな木の生えた場所を探しに出かけました。
 この世で最初の大工さんは、昼は手斧の尖った方で材木を切り出し、夜は手斧の平らな方で材木を叩いて組み立てました。
 しかし何分この世で最初の大工さんですから、どの樹木が材木に適していて、どの樹木が直ぐに折れてしまう木なのか判りません。
 どのような土地に建物を建てればよいのか、どれほどの家具を作ればよいのか判りません。
 何もかも一人で全部やらなければならないのです。何しろこの世に大工さんは一人きりしかいないのですからね。
 誰も知らぬことをこの世で最初に試すのですから、間違って柱を倒してしまうこともありました。間違って梁から落ちてしまうこともありました。

 そういったわけで、この世で最初の大人のように大きな体で生まれた娘は、思慮深い人になりました。
 この世で最初の大工さんのティアマトは、少しずつ材木に適した木を憶え、家を建てるに良い土地の見分け方を憶え、頑丈な建物の建て方を憶え、便利な家具の作り方を憶えました。

 ティアマトは丈夫な岩の上に堅固な家を建てますと、この世で最初の夫婦が住まいにしている岩の洞窟に戻ってきました。
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