107 / 115
「希望の一撃」
しおりを挟む
鵙と剣を重ねる中、隼人の脳裏にこれまでの出来事が脳裏に浮かんだ。
隼人は学園に入学して、仲間達と関わり変わったのだ。
守る者、支える者がいる事で、人は何度でも立ち上がれる。人の想いは人がいる限り永遠に続いていく。
明日へと繋いでいく一筋の道。かつて失う怖さを知り、己の強さと復讐以外の全てを遠ざけて来た。
彼が多くの人と関わり、時間をともに過ごしてきた今、彼には人の尊さを十分に理解出来る思考と心が備わっていた。
湧き上がる高揚感とともに浮き立つような衝動に駆られる。隼人の脳裏にこれまで出会って来た人間達とその日々が映像フィルムのように流れる。
楽しい思い出もあれば、白い目で見られるもあった。しかし、友人達が支えてくれた。孤独ではないと教えてくれた。今度は自身が誰かのために立ち上がる番だ。
「必ず打ち取る!」
隼人は力強く刃を降っていく。恐れはない。この一瞬に全力を注いでぶつかるまでだ。
隼人は結巳、鷹、揚羽とともに凄まじい勢いで攻め込んでいく。燃え盛る刀身を振り、追い込みにかかる。
しかし、相手は鵙。そう簡単には破れない。
「無謀だということが分からないのか! 貴方方がどれだけかかろうとも私を倒すことはできない!」
鵙が声を張り上げた後、四人相手に凄まじい勢いで切り返してきた。
「散りなさい!」
鵙が周囲に何百本もの羽根を拡散させてきた。
「させない!」
鷹が瞬時に壁を生み出して、隼人、結巳、揚羽の前に出現させた。凄まじい速度で飛んでくる無数の羽根から身を守って行く。
「聖堂寺。氷を生み出してくれ。水蒸気を起こして奴を撹乱させる」
「わかった」
羽根が止まったタイミングで隼人と結巳、揚羽が駆け出した。
「氷柱!」
結巳が氷柱を鵙の足元に出現させたが、軽やかに躱された。
「無駄ですよ」
「知っているさ!」
隼人は黒炎で燃え盛る刀身を氷柱に当てた。その瞬間、灼熱で溶けた氷が一気に蒸発し始めた。
「なっ!」
鵙の周囲を水蒸気が包み込んだ。隼人と揚羽は覚悟を決めて濃霧の中に足を入れた。
視界が意味をなしていないので、反響定位を頼りに鵙の元に向かっていく。
途端に凄まじい斬撃が水平に飛んできた。隼人は思わず、しゃがみこんだと同時に霧が斬撃の威力に押されて消えたのだ。
「くそっ!」
「そんな!」
「終わりです! 松阪隼人!」
鵙が目にも止まらない速さでこちらに向かってきた。死神の鎌を構えて迫ってくる。
死という文字が頭をよぎった瞬間、結巳と鷹が隼人と鵙の間に割って攻撃を防いだ。
「隼人!」
「松阪君!」
二人の声を合図に隼人は死を受け入れて重くなった体に鞭を打った。
「影、焔!」
血を吐くような叫び声を上げて、再び刀身を燃やした。鵙を防いでいる二人の間をすり抜けて、燃え盛る刀身で鵙を貫いた。
「ぐあああ!」
内側から体を焼かれた鵙が叫び声を上げて、顔を烈火のように赤くした。
すぐさま、刀を引き抜いて血管が引きちぎれんばかりに力を込めて刀を振り下ろした。
「があああああ!」
水を含んだ風船が割れるように鵙の体から赤い血が吹き出て、隼人の顔にかかる。
「おの、れえ」
鵙が深く裂けた傷口を片手で抑えて、右手を再生させようとしていた。しかし、隼人は二度目の斬撃の構えをとった。
「影焔!」
全身全霊を込めて隼人が迦楼羅の身に向かって、叩きつけるように刀を振る。
態勢を崩した迦楼羅が奇襲に反応できず、刃を身に受けた。
仲間やこれまで犠牲になった人や戦死した同志達の想いを馳せた希望の一撃を鵙の骨肉に刻み込んだ。
「がああああっ!」
鵙がその場で膝をつき、膝下には衝撃の強さを物語るように蜘蛛の巣のようにヒビが入っていた。
「こん、な。事、がっ」
一瞬、立ち上がる素振りを見せたがすぐに動かなくなった。長年、対策本部に猛威を振るい続けた怪物が倒れたのだ。
「やったぞ」
隼人は達成感のせいか全身から力が抜けて、その場でへたり込んだ。
持ちうる全てを鵙に叩きつけた隼人の体はすでに立つ気力すら残されていなかった。あまりの疲労感で視界に靄がかかっている。
「松阪君」
結巳に肩を担がれて、ゆっくり起き上がった。額や頬に生傷が出来ており、血が僅かに垂れていた。
「やったわね」
結巳が血のこびり付いた額を歪めて、笑みを向けてきた。
「おう」
隼人は疲労で眠気すら感じながらも結巳とともに一山乗り越えた喜びを噛み締めた。
隼人は学園に入学して、仲間達と関わり変わったのだ。
守る者、支える者がいる事で、人は何度でも立ち上がれる。人の想いは人がいる限り永遠に続いていく。
明日へと繋いでいく一筋の道。かつて失う怖さを知り、己の強さと復讐以外の全てを遠ざけて来た。
彼が多くの人と関わり、時間をともに過ごしてきた今、彼には人の尊さを十分に理解出来る思考と心が備わっていた。
湧き上がる高揚感とともに浮き立つような衝動に駆られる。隼人の脳裏にこれまで出会って来た人間達とその日々が映像フィルムのように流れる。
楽しい思い出もあれば、白い目で見られるもあった。しかし、友人達が支えてくれた。孤独ではないと教えてくれた。今度は自身が誰かのために立ち上がる番だ。
「必ず打ち取る!」
隼人は力強く刃を降っていく。恐れはない。この一瞬に全力を注いでぶつかるまでだ。
隼人は結巳、鷹、揚羽とともに凄まじい勢いで攻め込んでいく。燃え盛る刀身を振り、追い込みにかかる。
しかし、相手は鵙。そう簡単には破れない。
「無謀だということが分からないのか! 貴方方がどれだけかかろうとも私を倒すことはできない!」
鵙が声を張り上げた後、四人相手に凄まじい勢いで切り返してきた。
「散りなさい!」
鵙が周囲に何百本もの羽根を拡散させてきた。
「させない!」
鷹が瞬時に壁を生み出して、隼人、結巳、揚羽の前に出現させた。凄まじい速度で飛んでくる無数の羽根から身を守って行く。
「聖堂寺。氷を生み出してくれ。水蒸気を起こして奴を撹乱させる」
「わかった」
羽根が止まったタイミングで隼人と結巳、揚羽が駆け出した。
「氷柱!」
結巳が氷柱を鵙の足元に出現させたが、軽やかに躱された。
「無駄ですよ」
「知っているさ!」
隼人は黒炎で燃え盛る刀身を氷柱に当てた。その瞬間、灼熱で溶けた氷が一気に蒸発し始めた。
「なっ!」
鵙の周囲を水蒸気が包み込んだ。隼人と揚羽は覚悟を決めて濃霧の中に足を入れた。
視界が意味をなしていないので、反響定位を頼りに鵙の元に向かっていく。
途端に凄まじい斬撃が水平に飛んできた。隼人は思わず、しゃがみこんだと同時に霧が斬撃の威力に押されて消えたのだ。
「くそっ!」
「そんな!」
「終わりです! 松阪隼人!」
鵙が目にも止まらない速さでこちらに向かってきた。死神の鎌を構えて迫ってくる。
死という文字が頭をよぎった瞬間、結巳と鷹が隼人と鵙の間に割って攻撃を防いだ。
「隼人!」
「松阪君!」
二人の声を合図に隼人は死を受け入れて重くなった体に鞭を打った。
「影、焔!」
血を吐くような叫び声を上げて、再び刀身を燃やした。鵙を防いでいる二人の間をすり抜けて、燃え盛る刀身で鵙を貫いた。
「ぐあああ!」
内側から体を焼かれた鵙が叫び声を上げて、顔を烈火のように赤くした。
すぐさま、刀を引き抜いて血管が引きちぎれんばかりに力を込めて刀を振り下ろした。
「があああああ!」
水を含んだ風船が割れるように鵙の体から赤い血が吹き出て、隼人の顔にかかる。
「おの、れえ」
鵙が深く裂けた傷口を片手で抑えて、右手を再生させようとしていた。しかし、隼人は二度目の斬撃の構えをとった。
「影焔!」
全身全霊を込めて隼人が迦楼羅の身に向かって、叩きつけるように刀を振る。
態勢を崩した迦楼羅が奇襲に反応できず、刃を身に受けた。
仲間やこれまで犠牲になった人や戦死した同志達の想いを馳せた希望の一撃を鵙の骨肉に刻み込んだ。
「がああああっ!」
鵙がその場で膝をつき、膝下には衝撃の強さを物語るように蜘蛛の巣のようにヒビが入っていた。
「こん、な。事、がっ」
一瞬、立ち上がる素振りを見せたがすぐに動かなくなった。長年、対策本部に猛威を振るい続けた怪物が倒れたのだ。
「やったぞ」
隼人は達成感のせいか全身から力が抜けて、その場でへたり込んだ。
持ちうる全てを鵙に叩きつけた隼人の体はすでに立つ気力すら残されていなかった。あまりの疲労感で視界に靄がかかっている。
「松阪君」
結巳に肩を担がれて、ゆっくり起き上がった。額や頬に生傷が出来ており、血が僅かに垂れていた。
「やったわね」
結巳が血のこびり付いた額を歪めて、笑みを向けてきた。
「おう」
隼人は疲労で眠気すら感じながらも結巳とともに一山乗り越えた喜びを噛み締めた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。
MPを補給できる短編小説カフェ 文学少女御用達
健野屋文乃(たけのやふみの)
現代文学
迷宮の図書館 空色の短編集です♪
最大5億MP(マジックポイント)お得な短編小説です!
きっと・・・
MP(マジックポイント)足りてますか?
MPが補給できる短編小説揃えています(⁎˃ᴗ˂⁎)

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる