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第17章 少女漫画風味のデート!?
貴方は奇跡の結晶
しおりを挟む「____ねえ、セオ様」
「ん?なんだい」
長いキスが終わり、わたくし達はベンチに座って身を寄せていた。たくさんのひまわりを見て、暮れていく夕日を見ながら、問うた。
「……………本当に、大丈夫ですか?どこか痛いなど、ありますか?」
「ううん、何処も痛くない。……………ただ、ね」
セオドア様はわたくしの腰に手を回し、更に身体を密着させて、こちらを向いた。
群青色の髪、緑の瞳の愛らしい御方の顔がほんの少し暗い。日が落ちて暗く見えるのか、それとも他に何か思うことがあるのか……………わたくしにはわからなかった。
「…………ただ、なんですの?」
「_____アミィと出会えたのは、本当に奇跡なんだな、って、わかったんだ」
「え?」
セオドア様はそう言って、わたくしの肩に頭を乗せた。わたくしの腰を抱く大きな御手も強く優しく支えて下さる。
……………セオドア様の様子が変だ。
急に倒れて、わたくしは酷く取り乱した。頭が真っ白になって、どうすればよいのかわからなくなった。誰かを呼ぶにもセオドア様を置いて行けなくて、戸惑っているうちに起きてくださった。
けど。
物凄く悲しそうなお顔をしているのだ。その理由を聞いても、こうして『奇跡なんだ』と言って答えてくれない。
____わたくしに、言えないことなのかしら?
そうではないのかもしれない。セオドア様はわたくしを愛してくださっているのですから。………でも、愛おしい御方の悲しい顔は、見たくなくて。
いつものように、赤く顔を染め困った顔をして欲しい。いつものように、控えめで優しい笑みを浮かべて欲しい。
………わたくしは、この御方を笑顔にすることが出来ないのでしょうか?
自分が不甲斐なくて、再び涙が出そうになる。わたくし、この御方を愛してはならないのだろうか___「アミィ?」
「ッ………」
呼ばれたけれど、涙を抑えるのに精一杯で声が出ない。
ぐ、と涙を堪えているアミィールを見たセオドアは、身体を離し、アミィールの両肩を持った。
「アミィ、泣きそうだよ?どうしたの?」
「わたくしは____無力です。セオ様の笑顔を、わたくしは引き出すことができず………わたくしは………」
そうぽつりぽつりと涙と共に零すアミィール様。………俺が先程の記憶で今の幸せを噛み締めて、アミィール様を不安にさせてしまったようだ。
勿論、そんなことはない。だから。
セオドアはそこまで考えて、次は俯くアミィールの両頬を両手で包んだ。小さな顔は、これだけですっぽり収まる。愛らしい御方の顔を見ながら、セオドアはふわり、と笑った。
「____俺は、アミィが存在しているだけで、口角があがるんだ。アミィがいないと………俺は笑えない。
アミィはいつだって、俺の笑顔の源だ___」
「んっ」
セオドアは再びキスをする。
アミィールは涙を流しながらもそれに答える。
____こうしてキスすることも、こうして触れることも………共に居ることも。
全部全部皇帝夫婦が結ばれてくれたお陰なんだ。その結晶に俺はこんなにも溺れ、狂おしいほど愛してしまった。
____こんなに嬉しくて、こんなに運命的で、こんなに幸せなことが他にあるだろうか?
そう思いながら、大事に、自分の大切な愛おしい御方だと誇示するように深く長いキスをした。
それを包んでくれるように、ひまわりの花弁が空中で舞い踊った。
_____俺達の2回目のデート。
それは、物凄く乙女でヘタレで格好悪い俺が、物凄く格好良くて可愛い、優しい愛する御方を愛する気持ちと、皇帝夫婦が結ばれた結晶で、何物にも代えられないかけがえのない縁だと実感させる素敵なものだったんだ。
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