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第14章 ダブル誕生イベント!
Birthday Night #主人公夫婦編
しおりを挟む「…………………………」
「アミィ?」
「…………………………」
「アミィ…………?」
食事が終わり、部屋に帰ったのだが、空気が少し重い。何故なら____アミィール様が頬をこれでもか、と膨らませているからだ。デジャヴである。
こういう時は大抵嫉妬をしている。とっても愛らしくて可愛らしいけれど、理由がわからなくて、どうすればいいのかわからない。そして、自然と俺はアミィール様の膝にいる。ええもうナチュラルに。
俺は男ですよね?本当に男ですよね?もうこの2年間俺は乙女を通り越して女になっているのかもしれない。アミィール様がこの部屋にいなければ多分自分のズボンの下を覗いていただろう。
とはいえ…………
セオドアはそこまで考えて、アミィールを見る。
アミィール様の頬を今まで以上に膨らんでいて、それが向日葵の種を頬張るハムスターのような愛らしさがある。触れたい。人差し指でぷす、としたい。してもいいかな?俺は夫だし『どうしたんだよ~』とか軽く言いたい。まあ、ヘタレな俺には出来ない「セオ様」…………?
セオドアの思考を遮るようにアミィールは口を開いた。次は口を尖らせて、拗ねるような顔でぽつり、と言う。
「……………わたくしには、ひとつしかないのですか?」
「え?」
「……………その…………えっと……………プレゼント…………」
「………………」
拗ねた声で言った言葉はとても可愛いものだった。つまり、ラフェエル皇帝様のプレゼントはブローチとタイの2つ、アミィール様には縁の紐しかあげてないのだ。
……………こんなの、ずるすぎる。いつも格好いいのに、こういう時にこういう風に拗ねるんだぞ、俺の嫁は。可愛すぎて愛らしすぎてもうそれしか言えなくなる。
緩む頬を抑えたい気持ちに駆られるが、その前に身体が動いてて。
「きゃっ………セオ様?」
セオドアはアミィールの膝から降りて、逆に膝に乗せた。そして、ちゅ、と頬にキスを落とす。アミィールはそれを受けてぴく、と身体を揺らした。
_____乙女の役はいつも俺だけど、誕生日くらい、かっこつけたっていいよな?
「___アミィ、アミィにはもうふたつ、プレゼントがあるよ」
「え!?そうなんですか!なんですの?
………あっ」
アミィールはセオドアの言葉にぱあ、と顔を明るくする。セオドアはそんな愛らしい笑顔を見てから、アミィールの首筋に吸い付いた。白い肌によく映える赤い花が咲く。そして、耳元に唇を寄せて低い声で言った。
「____俺の身体と心だよ」
「____ッ」
セオドア様の甘く低い声。滅多に聞けないその声が耳元で囁かれている。その事実にわたくしの頬は勝手に熱を集めてしまう。その声だけで…………セオドア様を受け入れる場所がじんわり熱くなる。
セオドア様は、わたくしを姫抱きした。これも滅多に無いことで、いつもわたくしが誘わないとやらないし、それよりもわたくしがいつもやっていることで…………こんなに、恥ずかしいものだとは思わなかった。
そんなことを考えていると、あっという間に寝室に来て、優しく降ろされる。そして、セオドア様はわたくしに覆いかぶさり、ぺろり、自分の唇を舐めて緑の瞳を光らせた。
「______アミィ、今日は誕生日だから、俺の全部を余すことなく貴方に捧げるよ」
「____ッ」
まるで別人みたいな言葉の羅列、そしてそれと共に落ちる唇。全部全部わたくしが知らない、セオドア様。なのに…………胸が苦しいくらい鼓動を鳴らしている。
_____どんなに理屈を捏ねくり回してもわたくしは、やはり女なのですね。
_____セオドア様の前では、わたくしは忌まわしき子供でも穢れている女でもなく、無力な女で居られるのですね。
「せ、お……………っあ、愛してます………」
「ああ。俺も____貴方しか愛せません」
セオドアはそう言って、黄金の瞳を濡らし顔を赤らめる美しい弱々しい女に再び唇を重ねた。
_____俺は、この人の前では男でいたい。
____花よりも美しく、お菓子よりも甘いこの人を愛でて、味わいたい。
____やっぱり俺は、この人が絶対必要なんだ。
だから、誕生日じゃなくとも____この人が生まれて良かったと、毎日祝福を送ろう。
____その日、セオドアはいつものようにアミィールにリードを譲らず、身体全部を使って愛する女を全力で愛したのだった。
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