上 下
204 / 469
第14章 ダブル誕生イベント!

子供からのプレゼント

しおりを挟む
 


 「ふふ、ラフェー、あーん」


 「……………はしたないからやめろ」



 「セオ様もわたくしが食べさせましょうか?」


 「う、い、いや、私は………その………」



 家族団らんの場、それぞれがそれぞれの愛する者と2人の世界に入っている。
 今日は愛する人達の誕生日。イチャイチャするなと言うのが無理だ。



 けれど、俺にはやらなければならない使命がある。



 そこまで考えて_意を決してアミィールの手からパンを食べてから_立ち上がる。そして、ラフェエルの近くまで来た。ラフェエルはやっとアルティアから目を離し、不思議そうな顔をしてみた。



 「………?なんだ、セオドア」


 「ッ、その、えっと……………」



 セオドアは顔を赤くして、モジモジとしている。まさに、女子がやるそれだ。顔が整っている分女にも見えなくもない。…………男色趣味の男には好かれるような男だな。


 そんなことを思いながら、ラフェエルは厳しい瞳でセオドアに言う。


 「セオドア。用があるならしっかり目を見ろ。サクリファイス皇族たるもの、自身が考えて動いた事に躊躇をするな」



 「う、……は、はい。では…………

 その、お誕生日おめでとうございます!」


 「ッ!?」




 セオドアはバッ、と頭を下げて小さな袋を渡してきた。女子のプレゼントするような可愛らしいラッピングではあるが、皇帝に差し出すものではない。それは分かっているさ。けれど、………皇帝の前に、俺のもう1人の父親だから。枯れる声で、必死に言葉を紡ぐ。



 「お、恐れ多くも………勝手にプレゼントを用意させて頂きました………男手ですし、気に入らなければ捨ててもらってもよろしいので、受け取ってください」



 「…………………」



 そう言って耳まで赤くし、涙目で見てくるセオドアに、ラフェエルは少し驚いていた。
 アミィールからでさえプレゼントを貰ったことがないのに、血の繋がらない皇帝にプレゼントなど男子がするか?このような時、私はどうすれば…………?


 そう思うラフェエルの背をぽん、とアルティアは叩いた。そして、心を読んだようにいう。


 「…………こういう時はありがとう、と受け取ってその場で見るものよ」


 「………………」


 ラフェエルはそれを聞いて、何度か戸惑いながら、それを受け取った。覚束無い手で包装紙を解くと_____赤と金の煌びやかで精緻なタイと、アルティアの髪と同じ、黒色の石のついたブローチ。ブローチからはアルティアの魔力を感じる。



 「これは…………?」



 「えと、タイは手作りで……………ラフェエル皇帝様はよく、タイをつけていらっしゃいますし…………ブローチは、アルティア皇妃様の魔力を少し頂いて、魔法を吸収する珍しい石を嵌め込んで作ってみました……………」



 自信なさげにそう答えるが、2つとも職人が作ったように美しく、きめ細かい物で。所々に見える気配りが…………胸を熱くした。 
  

  初めて、子供からプレゼントを貰って…………どのような顔をすればいいのかわからない。ラフェエルは眉間に沢山のシワを寄せて口元を抑えて、声を咬み殺す。



 「…………ッ」


 「………………」



 セオドアはそんなラフェエルを見る。………凄く喜んでもらえる自信がなくて、ビクビクしていたけれど…………沢山、シワがよっている。
 これは、ラフェエル皇帝様が美味しい物を食べた時の顔だと知っている。


 だから、それを見て___俺は胸が熱くなった。


 作ってよかった、って思ったんだ。



 セオドアは笑みを浮かべる。ラフェエルは___しばらく、プレゼントを見て固まっていた。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

「優秀すぎて鼻につく」と婚約破棄された公爵令嬢は弟殿下に独占される

杓子ねこ
恋愛
公爵令嬢ソフィア・ファビアスは完璧な淑女だった。 婚約者のギルバートよりはるかに優秀なことを隠し、いずれ夫となり国王となるギルバートを立て、常に控えめにふるまっていた。 にもかかわらず、ある日、婚約破棄を宣言される。 「お前が陰で俺を嘲笑っているのはわかっている! お前のような偏屈な女は、婚約破棄だ!」 どうやらギルバートは男爵令嬢エミリーから真実の愛を吹き込まれたらしい。 事を荒立てまいとするソフィアの態度にギルバートは「申し開きもしない」とさらに激昂するが、そこへ第二王子のルイスが現れる。 「では、ソフィア嬢を俺にください」 ルイスはソフィアを抱きしめ、「やっと手に入れた、愛しい人」と囁き始め……? ※ヒーローがだいぶ暗躍します。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

処理中です...