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第13章 主人公と擬似育児
一風変わった食事会
しおりを挟む「わあ、やっぱり可愛い~!」
週に2回の食事前、皇族専用食堂でアルティア皇妃様はニコニコしながら赤ん坊___ヨウを抱き締めている。
それを見てセオドアも頬を緩ませた。
よかった。俺だけではなくアルティア皇妃様も大丈夫なのか…………。
最初こそ暴れていたヨウだったが、アルティア皇妃様が黄金の瞳で見つめたら、ヨウは大人しくなった。やはり、誰にでもフレンドリースキルは最強だな。
※
その時のアルティアの黄金の瞳は威圧するもので、ヨウは本能的に『この人間に逆らったら殺される!』と悟ったのだ!▽
※
……………とはいえ、アミィール様が泣くとは思わなかった。
キャイキャイ騒ぐアルティアを他所にセオドアはぼうっと考える。
ヨウが触れたのもびっくりしたけれど、アミィール様が号泣したのは、すごくびっくりしたのだ。
静かに、複雑な顔をして泣いていた。
___アミィール様の御心は、どこまで繊細なのだろう。龍神だとはいえ、そこまで酷いことをアミィール様はしていないと思う。なんで泣くほど『穢れている』なんて言うのだろう。
アミィール様は、誰にでも優しく、それでいて自他に厳しく、聡明な御方。だから愛しているしもっと居たいと思う。それだけ魅力的な人なのにどこか自分を卑下していることに納得ができなかった。
だから。
……………アミィール様と夜会う時_俺が無理にお願いしてちゃんと部屋に帰ってくることを約束した_は抱かせて見よう。
少しずつ、少しずつ彼女の抱える闇を溶かして差し上げなければ。
「アル、セオドア」
「あ、ラフェー」
「ラフェエル皇帝様」
そんなことを思っていると、ラフェエル皇帝様が食堂に来た。ラフェエル皇帝はアルティア皇妃様が抱いている赤ん坊を見て不思議そうにした。
「……………その子供は、なんだ?」
「ん?セオドアくんとアミィールの子供」
「んなっ!?」
「!?」
アルティア皇妃様の言葉に思わず大声が出る。何を言っているんだこの人!?
そして、さも当然と言わんばかりに睨みつけてくるラフェエル皇帝様。
「貴様…………アミィールを抱いたのか………?」
「い、いやその、…………」
抱いている!抱いているけども!でもまだ子供はできてません!というか抱くのも怒られることなのか!?もうすぐ結婚して1年経つ夫婦なんですが!?
もう顔を真っ赤にして視線を泳がせるセオドアに、更に顔を険しくするラフェエル。その様子を見て楽しげに笑うアルティアは言葉を紡いだ。
「ラフェー騙された~!違うわよ、この子は孤児院の赤ちゃんなの!」
「……………罰を落とされたいか?アル」
「罰を落としたらこの子が泣いちゃうわ。
ねね、それより、ラフェーも抱いてよ」
アルティア皇妃様はそう言ってヨウをラフェエル皇帝様の胸元に持っていった……………って、いやいや!自分と繋がりのないラフェエル皇帝様が赤ん坊を抱くわけ___!
セオドアは目を見開いた。ラフェエル皇帝様はアルティア皇妃様からすんなりヨウを受け取ったのだ。ヨウが暴れては……と思ったが、ヨウは暴れていない。それどころか。
「キャッキャッ」
「わ、笑った……………」
ヨウが声をあげて笑ったのを初めて聞いた。ラフェエル皇帝様の抱き方も慣れている。もしかして…………子供好き?
※
ヨウはまた悟った。
『この男に愛想を振りまかなければ自分は殺される』と。必死に愛想を振りまいているのだ! ▽
※
「す、凄いですね………ラフェエル皇帝様」
セオドアは声を震わせながらそう言うと、ラフェエルは珍しく口角をあげて笑った。
「………………賢い子だ。そして聡い」
ぐおおおお!イケメンの笑顔の破壊力やばすぎないか!?ラフェエル皇帝様って本当に、なんというか、完璧なイケメンと言うか、アミィール様のお顔はアルティア皇妃様そっくりだけど、絶対この人の遺伝もあって…………なんというか、ひとつの絵画を見ている気分だ。題して『幸せな家族』だ!
セオドアが馬鹿みたいなことを考えているうちに、アミィールが最後に訪れ、食事をした。
アルティアが基本ヨウを抱き、ラフェエルがそれを撫で、セオドアが自ら準備したミルクを飲み、アミィールはちらちらと赤ん坊を見ているという一風変わった食事となった。
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