【R18】翼神のイタズラ PLAYER No.037 大橋道哉の場合

DAY 27.

イザ 移動

「来ました。」

　ドア近くに居たメナスさんが言って、
　ダマリさんがドアを開けて顔を覗かせた。

「さ、行きますよ。」

　ダマリさんのその言葉に、
　青木、和泉・・その後ろに
　俺たち2人が続いた。

　俺たち4人が家を出たところで、
　青木が鍵を掛けた。

　この世界で今は一般階級の家で顔認証の
　鍵が普及してる。

　だけど俺達の泊まった神官の家は、
　かれこれ300年は空き家になっていた
　古い家だ。

　この家の錠前はその当時のもの。
　顔認証技術がなくて、代わりに
　コイン型の鍵を何枚か決まった
　手順通りに使って施錠と解錠をする仕組みだ。

　青木は昨日、これを手慣れた感じで
　施錠・解錠できる様にテーブルの上で、
　練習用の古い鍵を使って
　ガチャガチャやっていた。

　そんな訳で、案内人のオジさんの
　格好をした青木が手慣れた感じで、
　施錠・・する前に・・
　俺とあかりに向いて言った。

「お客さん、あっしは鍵をかけたら、
　すぐ行きますんで、ダマリ様とザホスに
　付いてイプタキノに乗っちまってくだせぇ。」

「あ・・あぁ、ありがとうございます。」

　俺もなるべく自然になる様に、
　そう言って、あかりの肩を抱いた。

　イプタキノに乗り込んで、
　青木を待っていると
　青木がドカドカと走って乗り込んできた。

「待たせてすんません。」

　青木が普段出さない様な大声だ。

「気にしなくていいよ。ヒッピアス。
　ティモン、出して！」

　目を白黒させていると、
　ダマリさんが俺達3人に言った。

「ヒッピアスもザホスも、
　エロースの神殿に居る奴隷の名前ですよ。」

　イプタキノを操作している
　オジさんが俺たちの方を見た。

「あっしの同僚（？）でさぁ。」

　ダマリさんが続けて言う。

「一也さんから、
　私と行動していても、
　エロース様の神殿に出入りしても、
　違和感のない実在の人間の名前で
　今日は行動しましょうと提案がありましてね。」

「そんなん、先に言っといてよ。」

　和泉（ザホス）がぷぅと頬を膨らませた。
　・・オジさんの顔でそれをやられると・・
　やや、気持ち悪い。
　・・多分偏見だ。

「昨日言ったけど、
　和泉は口開いたらダメだから、
　その名前を呼ぶ機会はないよ。

　・・変声機はないからね。」

　青木が特に気にした様子もなく言った。

　宿泊していたのは、神官用の家だ。
　神殿まではそう距離がない。

　そんな話をしていたら、
　すぐに神殿が見えてきた。

　巨大な神殿の表側の出入り口前を
　通り過ぎて、勤務する神官や奴隷達用の
　小さな出入り口前にイプタキノは停車した。

　そこでダマリさんの
　通信の腕輪がメッセージの受信を告げ、
　メッセージを確認して、
　ダマリさんがニッと笑った。

「一也さん。
　家の方に侵入者があり、
　サンドロ達が捕らえました。」

「良かった。
　もう、あの家は役に立ちませんね。」

「そうですね。
　サンドロ達は侵入者を連れて
　神殿地下に来るそうです。」

　ダマリさんと青木が話し込んでいる間、
　俺達は蚊帳の外だ。

「・・なんか作戦変更とかあんの？」

　和泉が青木の顔を見ると、
　青木は首を横に振った。

「俺達の動きに変更はないよ。
　気を引き締めて・・地下に向かおう。」

　今回は運転をしてくれていた
　ティモンさんが先頭に立ってくれた。

　続いて、
　青木（ヒッピアス）と和泉（ザホス）が歩き、
　ダマリさんと俺とあかりが続く。

　・・因みに、魚達トニ達は荷物と一緒に
　潜伏先に届けてくれるとの事で、
　ここから暫し別行動だ。

　神殿内に入ったところで、
　ティモンさんが別れた。

「・・・さ、地下に入りましょう。
　迷路の様になっていますから、
　私の後にピッタリくっついてきてください。

　それから侵入者用の罠が幾つか
　ありますので、
　私の指示に従ってくださいね。」

「・・罠って・・
　引っ掛かったらどうなるんですか？」

　あかりが恐る恐る聞いた。
　ダマリさんはにやーっと笑った。

「それは当然・・・
　イイ気持ちになります。」

「「「「？？」」」」

　俺達は、首を傾げた。
　引っ掛かっても死にはしないらしいけど、

　『イイ気持ち』ってなんだろう。

「・・エロース様が
　昔、趣味の延長に作った罠でして、
　ガスですね。

　何種類かありますが、
　いずれもイイ気持ちになって
　動けなくなります。」

　・・・エロースの考えた『イイ気持ち』に、
　多少ゾッとして、俺達は顔を見合わせた。