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DAY 27.

朝礼

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「・・くん・・
 道哉君・・起きてください。」

 あかりの声がして、重たい瞼を開けた。

 引き寄せて、一緒に横になろうかと
 ぐいっと手を引く・・・

 ポコッ!!!

 軽い打撃音がして振り向くと、
 和泉いずみが仁王立ちしてる。

「大概にしなさいよ。この猿!!」

「・・いや、犬だろ、大橋は・・」

 和泉の後ろから青木が
 あまり、ありがたくない感じで、
 俺の悪口を否定した。

「じゅ・・準備しましょう!
 道哉君・・」

「準備?」

「大橋と田口は普通に
 服着てくれたらいいよ。」

 そういう青木は既に
 昨日のオジさんに変身済だ。

 隣で半分くらい仕上がった和泉が
 鼻の位置を微調整して、
 付けまつ毛を付けてる。

「・・男性に変装するのに、
 付けまつ毛ですか?」

 朝食の配膳をしながら、
 そんな変身シーンを横目に見ていた
 あかりが声を掛けた。

「・・んーー・・
 そこの神官さん達も見てみて・・
 体毛は全体的に多くした方が
 この国の人っぽい。

 ・・この国の人が毛深いっていうより、
 日本人は体毛が薄いから、
 多少植毛しないと、
 ヌルっとした印象に・・」

 伏目勝ちの目を作った後に
 金色のまつ毛を増毛すると、
 確かに、白人の中年男性っぽい目になる。

「・・・見事なものですな・・」

 サンドロさんが
 変身後の和泉の顔を見て舌を巻いた。

「・・・ですよね・・」

 あかりも心の底から感心した声を上げる。

「・・そりゃ、
 いつかは仕事にしたいもん・・」

 和泉が半分おっさんの姿のままフンと鼻を鳴らした。

 その場で服を着替えると、
 先に仕上がってた青木がテーブルに呼んだ。

 あかりがコーヒーを人数分淹れて
 昨日は寝ずの番をしてくれた
 サンドロさん、フィリップさん、
 メナスさんに朝食と一緒に手渡した。

 相変わらずフィリップさんは
 窓の近くの死角になる位置、

 メナスさんはドアの横の位置から動かない。

 ・・・

 少しして、和泉のメイクが終わって
 和泉がテーブルに着くと
 サンドロさんと青木は今日の予定について話始めた。

「1時間後にダマリが
 イプタキノに乗ってここに来ます。」

「俺達はそのイプタキノに乗って、
 まずはエロース神殿地下に向かう。」

「地下?」

 和泉が聞き返した。

「エロースの神殿の地下には地下牢があります。

 そこには、
 今回のアフロディーテ様の神殿の問題に絡めて
 こちらが拘束した者達を捕らえている・・・」

 サンドロさんの言葉を青木が引き継いだ。

「・・というていで俺達は動く。」

「・・・てい??
 実際はそこに誰かを
 捕まえたりはしてないってこと?」

 俺が聞くと、サンドロさんがこくりと頷いた。

「地下牢に置いておいても、
 役に立ちません。」

「・・実際にドコにいるかは
 俺達が今知っても意味がないから
 置いておいて・・

 俺達の目標は
 アフロディーテの神殿から
 襲撃者があるなら、
 その目標を
 こちらにとってに集約すること。」

 青木がそこまで言って、俺達を見まわした。

「神殿地下はそのです。」

 サンドロさんは俺達を見まわした。

「・・どう有利なの?」

 俺が聞くと、応えそうになったサンドロさんに
 青木が首を横に振った。

「何でも知っておいた方が良い時もあるけど、
 今回はやめとこう。

 この世界のこの国で、
 神殿は生きている政治的な施設だ。

 そんな施設の
 一般公開されてない場所について、
 要人でもない俺達が知り過ぎてても
 ロクなことにならないよ。」

 そう言った青木に、俺の隣であかりが頷いた。
 更にその隣の和泉がぷぅっと頬を膨らませた。

「危ない目に遭うのに、
 何か置いてきぼりなんだけど?」

「・・俺達が知っておいた方が
 良い情報は当然知らせてもらう。

 危ない目に遭う分には、
 報酬をエロースサマに
 約束してもらう。」

「・・報酬ってナニ?」

「詳細は後で交渉してもらっていいけど、
 ゲーム内のポイントにして
 1人500,000ポイントを
 最低報酬とすることは
 エロースサマに確約済。」

「・・・マジで??」

 365日掛かるゲームで27日目・・
 まだまだゲーム最序盤といって良い
 タイミングでの大量ポイントゲット・・大きい。

「・・・50まん・・」

 和泉も目を丸くしている。

 あかりも目をぱちくりしている。

 1000ポイントで 10アテネと交換可能だ。
 俺とあかりの2人の食費が1カ月4~5アテネだ。

 50万ポイントであれば、
 マジでゲームバランスが崩れる。

「・・報酬についてはここまでで良いか?」

 青木は俺達の顔を見渡した。
 俺達はそれぞれに頷いた。

「エロース神殿地下に着いたら、
 和泉の出番だ。

 やって欲しい事は2つ。

 1. 俺達全員を警備員に変装させる。
 2. 人形を大橋と田口に似せてメイクする。

 警備員服は向こうに置いてある。」

 和泉はうーーーん・・と唸ってあかりを見た。

「警備員って・・男じゃないとダメ?」

「女性警備員はこの国にもおりますが、
 本当に僅かですね・・」

 サンドロさんの答えを聞いて和泉が唸った。

「・・・・大橋はともかく・・
 田口は厳しいかも・・」

「・・・そうなんですか・・・」

 しょんぼりするあかりを和泉は立たせた。

「顔とか体格はギリなんとかなるかもだけど・・
 田口・・小さすぎるから・・
 男に見せかけるってなると厳しい。」

 あかりの身長は低い。

 身長を聞いた事がないけど、
 140~150ってとこじゃないかと思う。

「この世界だと
 男の平均身長が高いから・・
 最低でもあと20cmはないと・・

 少年ならいけると思うけど・・」

 俺はうーーん・・とぽりぽり頬を掻いた。

「この国だってチビも、
 たまーーーに見かけるぞ?」

 本当にたまーーーにだけど・・

「いや、目立っちゃうのは困る。」

 サンドロさんがうーーん・・と考えて言う。

「警備員ではなく、
 この国の少女に
 変装することはできますか?」

ならいけると思う。」

 和泉はこくっと頷いた。

「保護された迷子と
 いうことにでも致しましょう。」

「え・・・」

 振り返ると、
 あかりがだいぶんショックを
 受けた顔で固まってた。

「・・・ごめん。田口。
 そう長い時間じゃないから・・
 頑張って・・」

 青木が励ます様に言って、
 続きの計画を話し始めた。

「・・・それで、続きだけど・・

 後は簡単。
 の大橋と田口は
 ダマリさんに護衛されてここに帰ってくる。

 俺達は他の警備員と一緒に日当を受け取って
 潜伏先に移動する。」

 ・・・

 確かに簡単お手軽・・

 かたっとあかりが立ち上がった。

「・・私、食器洗いますね。」
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