6 / 173
前編
万引き
しおりを挟む
それからも2人はいわゆる「パシリ」として使われ、授業中に買い物に行かされたり意味もなく暴力を振るわれたり、カンパや万引きも結局やめさせてもらえず悲惨な生活を送っていた。
そんなある日のこと。
いつものように樹と優子は不良たちに命令され聴くのか聴かないのかも分からないCDを万引きしに来ていたが、さすがにもう店員も何十回と万引きされているので2人のことを完全にマークしていた。
顔を確認すると後ろからついてきて作業をするフリをしながらずーっと2人のことをチラチラと見ている。これではそうそう万引きなんぞできたものではない。
だが樹も優子もやるしかない。
できなければまたひどい目に合わされるだけだからだ。
『樹。あんたは何も盗まないで外に出てきて』
優子が提案し2人はいわゆる囮作戦に出た。
言われた通り樹は、さも今から万引きしますといった怪しい動きを見せ店員の気を引いた。
その間に優子はさっさと万引きを済ませ、さりげなく店から出ていった。
(よし。作戦成功)
そう思って樹も外に出ると、なんと外で優子が中年の女性に腕をつかまれていた。おそらく万引きGメンというやつだ。
(え?嘘…)
その私服警備員が樹を見て言った。
『君もこの子と一緒に来たわよね。悪いけど今までのことも全部分かってるから君も来てもらうから』
即席の作戦など全く意味をなさず呆気なく2人は捕まり店の事務所に連れていかれ、そこで店長と名乗る男に話を聞かれた。
『どうして盗んだの?』
パクってこいと言われたからとは言えるはずもなく
『欲しかったから』
と答えるしかなかった。
ここで不良たちの名前でも出そうものなら、それはそれは恐ろしい目に合わされるであろうことは言うまでもなく想像できた。
とりあえず今回盗んでしまった優子は自宅に連絡され親を呼ばれることになってしまった。
今回だけは警察に通報するのは見逃してくれるということらしい。
万引きしたとはいえ自分たちだって被害者だ。警察に連れていかれたって困ってしまう。
しかし連絡を受け迎えに来た優子の母親は事務所に入ってくるなり優子の前まで来るとおもいきり娘の頬をひっぱだいた。
そこに手加減など一切なく、樹も店側の人間までもが驚いてしまった。
『このバカ!あんたCDなんて聴かないじゃないの!なんで万引きなんてしたの!』
『っ…』
優子は何も答えなかった。するとすかさず2発目のビンタが優子の頬を打った。
『あんた何回も来てるらしいじゃないの!その盗んだ物どうしたの!答えなさいよ!』
優子は一瞬目を赤くしたが涙をこらえ悔しそうな顔で言った。
『…知らねぇよ…』
どうせ売られちゃったんだよ。優子の目がそう言っているのを樹は横で見ていた。
『知らねぇじゃないでしょ!あんた何したか分かってんの!?』
樹には優子の気持ちが痛い位分かった。自分たちだって好きでこんなことしてるんじゃない。やりたくないし、助けてもらえるなら助けてほしいけど、誰にも助けを求めることなんてできないから自分たちを守る為にやってる。
自分の娘が家で聴きもしないCDを何度も万引きしに来ている状況を見て、親は大人のくせにそんなことも分かってくれないのだろうか。
そう思うと樹は優子が不憫で仕方なかった。
『…あたしがやってくれって頼んだんです』
だから樹は口からポロッとこぼした。
優子の母親は樹に言われると、これ以上聞いても仕方がないと思ったのか店側に頭を下げた後優子に言った。
『もうあんたなんて帰って来なくていいからね』
そう言われて優子は言い返した。
『はい帰りませんよ!』
優子の母親はさっさと1人で帰ってしまった。
そんなある日のこと。
いつものように樹と優子は不良たちに命令され聴くのか聴かないのかも分からないCDを万引きしに来ていたが、さすがにもう店員も何十回と万引きされているので2人のことを完全にマークしていた。
顔を確認すると後ろからついてきて作業をするフリをしながらずーっと2人のことをチラチラと見ている。これではそうそう万引きなんぞできたものではない。
だが樹も優子もやるしかない。
できなければまたひどい目に合わされるだけだからだ。
『樹。あんたは何も盗まないで外に出てきて』
優子が提案し2人はいわゆる囮作戦に出た。
言われた通り樹は、さも今から万引きしますといった怪しい動きを見せ店員の気を引いた。
その間に優子はさっさと万引きを済ませ、さりげなく店から出ていった。
(よし。作戦成功)
そう思って樹も外に出ると、なんと外で優子が中年の女性に腕をつかまれていた。おそらく万引きGメンというやつだ。
(え?嘘…)
その私服警備員が樹を見て言った。
『君もこの子と一緒に来たわよね。悪いけど今までのことも全部分かってるから君も来てもらうから』
即席の作戦など全く意味をなさず呆気なく2人は捕まり店の事務所に連れていかれ、そこで店長と名乗る男に話を聞かれた。
『どうして盗んだの?』
パクってこいと言われたからとは言えるはずもなく
『欲しかったから』
と答えるしかなかった。
ここで不良たちの名前でも出そうものなら、それはそれは恐ろしい目に合わされるであろうことは言うまでもなく想像できた。
とりあえず今回盗んでしまった優子は自宅に連絡され親を呼ばれることになってしまった。
今回だけは警察に通報するのは見逃してくれるということらしい。
万引きしたとはいえ自分たちだって被害者だ。警察に連れていかれたって困ってしまう。
しかし連絡を受け迎えに来た優子の母親は事務所に入ってくるなり優子の前まで来るとおもいきり娘の頬をひっぱだいた。
そこに手加減など一切なく、樹も店側の人間までもが驚いてしまった。
『このバカ!あんたCDなんて聴かないじゃないの!なんで万引きなんてしたの!』
『っ…』
優子は何も答えなかった。するとすかさず2発目のビンタが優子の頬を打った。
『あんた何回も来てるらしいじゃないの!その盗んだ物どうしたの!答えなさいよ!』
優子は一瞬目を赤くしたが涙をこらえ悔しそうな顔で言った。
『…知らねぇよ…』
どうせ売られちゃったんだよ。優子の目がそう言っているのを樹は横で見ていた。
『知らねぇじゃないでしょ!あんた何したか分かってんの!?』
樹には優子の気持ちが痛い位分かった。自分たちだって好きでこんなことしてるんじゃない。やりたくないし、助けてもらえるなら助けてほしいけど、誰にも助けを求めることなんてできないから自分たちを守る為にやってる。
自分の娘が家で聴きもしないCDを何度も万引きしに来ている状況を見て、親は大人のくせにそんなことも分かってくれないのだろうか。
そう思うと樹は優子が不憫で仕方なかった。
『…あたしがやってくれって頼んだんです』
だから樹は口からポロッとこぼした。
優子の母親は樹に言われると、これ以上聞いても仕方がないと思ったのか店側に頭を下げた後優子に言った。
『もうあんたなんて帰って来なくていいからね』
そう言われて優子は言い返した。
『はい帰りませんよ!』
優子の母親はさっさと1人で帰ってしまった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
暴走♡アイドル ~ヨアケノテンシ~
雪ノ瀬瞬
青春
アイドルになりたい高校1年生。暁愛羽が地元神奈川の小田原で友達と暴走族を結成。
神奈川は横浜、相模原、湘南、小田原の4大暴走族が敵対し合い、そんな中たった数人でチームを旗揚げする。
しかし4大暴走族がにらみ合う中、関東最大の超大型チーム、東京連合の魔の手が神奈川に忍びより、愛羽たちは狩りのターゲットにされてしまう。
そして仲間は1人、また1人と潰されていく。
総員1000人の東京連合に対し愛羽たちはどう戦うのか。
どうすれば大切な仲間を守れるのか。
暴走族とは何か。大切なものは何か。
少女たちが悩み、葛藤した答えは何なのか。
それは読んだ人にしか分からない。
前髪パッツンのポニーテールのチビが強い!
そして飛ぶ、跳ぶ、翔ぶ!
暴走アイドルは出てくるキャラがみんなカッコいいので、きっとアイドルたちがあなたの背中も押してくれると思います。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。


ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる