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後編
一筋の流れ星
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8人はそのまま蘭菜と蓮華の病院に寄っていった。
玲璃は1人先に蘭菜の部屋まで走っていくとコンコンとノックした。
返事がないことを確かめると肩の力が抜けそうになるが中へ入っていった。蘭菜は昨日と変わらずベッドに横たわり静かに眠っているようだ。
結局仇を取るという程のこともできず最後には予想外の終わり方になっていた。
愛羽に全てを任せはしたが、その点は蘭菜と蓮華に対して申し訳なくなってしまった。
『ただいま、蘭菜。…あー、疲れた…聞いてくれよ。東京連合がわんさかいる中1人で突っこんできてやってぜ。へへ…今日はすごかったよ。神奈川4大暴走族が全部集まってくれてよ。あたしは雪ノ瀬に勝てなかったけど、あたしたちは勝ったよ。みんなのおかげだ。最終的に雪ノ瀬のヤローはぶっちめることにならなくなっちまったんだけど、今やっと終わって帰ってきたとこなんだ』
玲璃は寝ている蘭菜に話し続けた。声が返ってこないと思うとその間が寂しくなってしまうからだ。
仇を討っても、全て終わっても、それで2人が目覚める訳ではないことは分かっていた。それだけがやはり悔しかった。
『だから、もう大丈夫だからさ…お前、早く目、覚ませよな…』
玲璃は目に溜まった涙を特攻服の袖でぬぐった。
『…私がいないと寂しいのね?』
玲璃は、はっとして蘭菜を見た。蘭菜の目は開かれていて玲璃のことを見ていた。
『でも1人で突っこむのは、あなたの悪いくせね。バカ…死んだらどうするのよ』
玲璃はぬぐったばかりの両目にまた涙を浮かべた。
『全くあなたたちって、つくずく最高ね。何があったのか、おもしろい位想像できるわ。えっと、代表さん?ちょっとこっちに来てくれる?』
側に来た玲璃を優しく抱き寄せると、蘭菜は頭をなでながら言う。
『こんなカッコいい友達がいて私は幸せ者ね。心配かけてごめんなさい。私、もう大丈夫よ。ねぇ玲璃。今日退院できたらなんだけど、私のFXシャカってるみたいなの。悪いけど、あなたの後ろに乗せてってもらってもいい?』
玲璃は拭いても拭いても流れ落ちる涙をそれでもぬぐい、恥ずかしそうに笑った。
『へっ。やだね、バーカ…』
蓮華の部屋には愛羽と豹那が訪れているところだった。
蓮華もやはりまだ眠っているようで、愛羽は今日のことを伝えたくて眠る蓮華に話しかけた。
『蓮ちゃん。あたしたち、今日東京連合と戦ってきたんだ。豹那さんも来てくれた。すっごくカッコよかったんだよ?蓮ちゃんが大好きな理由、あたし分かったよ』
それは豹那にとっても同じだった。
今の自分と仲間を大切にしたいと言った蓮華の気持ちが、今の豹那には分かる気がした。
もちろん間違ってもそんなこと豹那は言わないが。
『…それで…ごめんね、蓮ちゃん。あたし、結局あの子たちのこと、許してきちゃった。許してきちゃったっていうか、なんていうか…』
愛羽は何から話せばいいか分からなくなってしまった。本当に一晩で色々なことがあったから、無理もないのだが。
『…それでいいと思ったんでしょ?』
『あ、うん。なんか向こうも色々複雑でさ。…あれ?』
『蓮華…お前…』
なんと蓮華までもが目を覚ましていた。
『あなたがいいと思ってやったことなら、あたしは文句なんてない』
愛羽も豹那もまだ信じられず目をこするフリをしてみせた。
『いや、どー見ても起きてるでしょ。何その2人して笑えないリアクション』
蓮華の意識ははっきりしていて突っこむ余裕もあるようだ。
『蓮ちゃん…本当に大丈夫なの?』
『大丈夫だよ。さっきまで蘭菜と一緒に外行ってたしね』
『え!?蘭ちゃんも起きてるの!?』
『起きてるよ?全然ピンピンしてるし異常もないって』
愛羽はその場にペタンと座りこんでしまった。安心から力が抜けてしまったらしい。
それを見て蓮華が笑うから、愛羽も泣かずに笑い返した。
『豹那さん』
名前を呼ばれ蓮華の方を見たが、白いほほには一筋の涙が流れた跡がありその瞳は潤んでいた。
『ねぇ聞いて。起きたらね、豹那さんがいたの』
『…あぁ…その憎たらしい人形かい?あのアホにもっと美しく作るように言っといたよ』
『やっぱり、玲璃が…』
蓮華は玲璃が作った人形を見つめていた。
『…すごく長い夢を見てたような、夢と現実の間にずっといたような、そんな感覚でなんだか怖かった。でも起きてこれを見た時に、みんなが守ってくれてたんだって分かったんだ』
蓮華は豹那に笑いかけた。
『ありがとう、豹那さん。愛羽のこと、助けてくれたんでしょ?』
豹那はあの日見た夢を思い出してしまった。
『…助けただって?…お前が、もしも死んじまったら…それを香典代わりにするつもりだったんだよ…バカ…』
豹那はこらえていたものをとうとう零してしまった。
『この人形、可愛いじゃん。あたしはすっごい好きなんだけどな』
『ちっ、どいつもこいつも…どこに目ぇ付けていやがるんだかね』
豹那は微かにだか表情を緩めると、涙をぬぐい出ていってしまった。
『ありがと。お姉ちゃん…』
それから愛羽たちは久しぶりに6人で顔を合わせた。6人揃うともう昨日までが嘘のようにみんな笑顔を取り戻していた。蘭菜と蓮華も午後には退院が決まり、暴走愛努流たちは日常の生活に戻っていった。
玲璃は1人先に蘭菜の部屋まで走っていくとコンコンとノックした。
返事がないことを確かめると肩の力が抜けそうになるが中へ入っていった。蘭菜は昨日と変わらずベッドに横たわり静かに眠っているようだ。
結局仇を取るという程のこともできず最後には予想外の終わり方になっていた。
愛羽に全てを任せはしたが、その点は蘭菜と蓮華に対して申し訳なくなってしまった。
『ただいま、蘭菜。…あー、疲れた…聞いてくれよ。東京連合がわんさかいる中1人で突っこんできてやってぜ。へへ…今日はすごかったよ。神奈川4大暴走族が全部集まってくれてよ。あたしは雪ノ瀬に勝てなかったけど、あたしたちは勝ったよ。みんなのおかげだ。最終的に雪ノ瀬のヤローはぶっちめることにならなくなっちまったんだけど、今やっと終わって帰ってきたとこなんだ』
玲璃は寝ている蘭菜に話し続けた。声が返ってこないと思うとその間が寂しくなってしまうからだ。
仇を討っても、全て終わっても、それで2人が目覚める訳ではないことは分かっていた。それだけがやはり悔しかった。
『だから、もう大丈夫だからさ…お前、早く目、覚ませよな…』
玲璃は目に溜まった涙を特攻服の袖でぬぐった。
『…私がいないと寂しいのね?』
玲璃は、はっとして蘭菜を見た。蘭菜の目は開かれていて玲璃のことを見ていた。
『でも1人で突っこむのは、あなたの悪いくせね。バカ…死んだらどうするのよ』
玲璃はぬぐったばかりの両目にまた涙を浮かべた。
『全くあなたたちって、つくずく最高ね。何があったのか、おもしろい位想像できるわ。えっと、代表さん?ちょっとこっちに来てくれる?』
側に来た玲璃を優しく抱き寄せると、蘭菜は頭をなでながら言う。
『こんなカッコいい友達がいて私は幸せ者ね。心配かけてごめんなさい。私、もう大丈夫よ。ねぇ玲璃。今日退院できたらなんだけど、私のFXシャカってるみたいなの。悪いけど、あなたの後ろに乗せてってもらってもいい?』
玲璃は拭いても拭いても流れ落ちる涙をそれでもぬぐい、恥ずかしそうに笑った。
『へっ。やだね、バーカ…』
蓮華の部屋には愛羽と豹那が訪れているところだった。
蓮華もやはりまだ眠っているようで、愛羽は今日のことを伝えたくて眠る蓮華に話しかけた。
『蓮ちゃん。あたしたち、今日東京連合と戦ってきたんだ。豹那さんも来てくれた。すっごくカッコよかったんだよ?蓮ちゃんが大好きな理由、あたし分かったよ』
それは豹那にとっても同じだった。
今の自分と仲間を大切にしたいと言った蓮華の気持ちが、今の豹那には分かる気がした。
もちろん間違ってもそんなこと豹那は言わないが。
『…それで…ごめんね、蓮ちゃん。あたし、結局あの子たちのこと、許してきちゃった。許してきちゃったっていうか、なんていうか…』
愛羽は何から話せばいいか分からなくなってしまった。本当に一晩で色々なことがあったから、無理もないのだが。
『…それでいいと思ったんでしょ?』
『あ、うん。なんか向こうも色々複雑でさ。…あれ?』
『蓮華…お前…』
なんと蓮華までもが目を覚ましていた。
『あなたがいいと思ってやったことなら、あたしは文句なんてない』
愛羽も豹那もまだ信じられず目をこするフリをしてみせた。
『いや、どー見ても起きてるでしょ。何その2人して笑えないリアクション』
蓮華の意識ははっきりしていて突っこむ余裕もあるようだ。
『蓮ちゃん…本当に大丈夫なの?』
『大丈夫だよ。さっきまで蘭菜と一緒に外行ってたしね』
『え!?蘭ちゃんも起きてるの!?』
『起きてるよ?全然ピンピンしてるし異常もないって』
愛羽はその場にペタンと座りこんでしまった。安心から力が抜けてしまったらしい。
それを見て蓮華が笑うから、愛羽も泣かずに笑い返した。
『豹那さん』
名前を呼ばれ蓮華の方を見たが、白いほほには一筋の涙が流れた跡がありその瞳は潤んでいた。
『ねぇ聞いて。起きたらね、豹那さんがいたの』
『…あぁ…その憎たらしい人形かい?あのアホにもっと美しく作るように言っといたよ』
『やっぱり、玲璃が…』
蓮華は玲璃が作った人形を見つめていた。
『…すごく長い夢を見てたような、夢と現実の間にずっといたような、そんな感覚でなんだか怖かった。でも起きてこれを見た時に、みんなが守ってくれてたんだって分かったんだ』
蓮華は豹那に笑いかけた。
『ありがとう、豹那さん。愛羽のこと、助けてくれたんでしょ?』
豹那はあの日見た夢を思い出してしまった。
『…助けただって?…お前が、もしも死んじまったら…それを香典代わりにするつもりだったんだよ…バカ…』
豹那はこらえていたものをとうとう零してしまった。
『この人形、可愛いじゃん。あたしはすっごい好きなんだけどな』
『ちっ、どいつもこいつも…どこに目ぇ付けていやがるんだかね』
豹那は微かにだか表情を緩めると、涙をぬぐい出ていってしまった。
『ありがと。お姉ちゃん…』
それから愛羽たちは久しぶりに6人で顔を合わせた。6人揃うともう昨日までが嘘のようにみんな笑顔を取り戻していた。蘭菜と蓮華も午後には退院が決まり、暴走愛努流たちは日常の生活に戻っていった。
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