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第四草
29・進む先には
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「あー、草うめぇぇ」
草、うん、これはたぶん草だ。光る草とかどういう仕組みなんだろう。歩いている場所に目印のようにそれははえていた。
オレ達はバーシィに赤い光のある場所に案内してもらっているところだ。海を歩いている。というか、よく見ると浅い場所が続く道があったのだ。
浅い場所にだけ生える草なのだろうか。
「ここです」
バーシィが指差したのは潮が引いた時にだけ現れる場所だった。
「すぐに沈んでしまうので、気をつけて下さい」
「この深さなら泳いで戻れますよ」
そう言いながら、オレ達はぽっかりと空いている口のような穴を覗き込む。
赤い光がゆらゆらと見えた。
「誰から行く?」
問いかけた時、フェリが姿を見せる。
「あれはおすすめしない……なの」
「え?」
「あの力は不老。ただ、代償が定期的にだれからか時間を奪うことになるなの」
代償とフェリが言った。変化の力のように、力を使う変わりに払う何か。
「不老……、時間を奪う……ですか。あの、ユーリ」
「あぁ。それは困ってしまうよな」
この騒動の発端の怪物と同じ力はさすがに勘弁願いたい。怪物にならなくてもチャミちゃんがそうなってしまうなら、苦しむのは目に見えている。
不老の力を得て使える術は気にはなるが……。
「次を急いで探そう」
いくつもあるはずなんだ。きっと間に合うはずだ。
オレはそう自分に言い聞かせ、後ろに振り返る。
フェリはもう姿を消していた。
「あの、なら戻ってもいいですか? 助けてもらったお礼に案内させてもらいましたが私はまだお父さん達と話が出来ていないので」
「はい、戻りましょう。ただ、ここにくる時話した話は本当の事なので、よく考えて下さい」
バーシィを連れていってもいいと約束してしまったが、危険なら別々に行動してもらおうとオレは心のどこかで考えていた。
◇
「くるのかな?」
「さぁ、どうだろうね」
「ユーリ、あの……。あ、いえ、何でもないです」
オレ達は着替えの服をもらって、街の外で待っていた。
街中では戻ってきた人々が喜びあい、もとの姿に戻った人達が笑っていた。
元凶と同じ力をもったバーシィがそこにいると知ったらこの笑顔はどうなってしまうのだろう。
「ユーリさん」
バーシィとナツメが手をふりながらやってきた。
その姿は旅に出るような格好ではなかった。
「私達は、私達で街を出ます」
「準備が終わったら家族全員で力を探しにいくつもりです。だから、出発してもらってかまいません」
どうやら、娘一人を送り出すという選択はしなかったようだ。
「そうですか」
ヨキが少し寂しそうに二人の姿を眺めていた。
「また、どこかで会えるといいですね」
「あぁ、そうだな」
別れたあと、チャミちゃんはヨキの頭を撫でながらオレにそう言った。ヨキはいつもの自信なさげなヨキに戻っている。それを見て、少しオレはホッとしていた。
「次の場所はわかるんですか?」
「ん、このまま海沿いに行くと大きな川があるはずなんだ。それに沿っていけば街があるはず」
オレが知ってるのはそこまでだ。そこから先のどこかでじーちゃんと仲間の一人が合流した街があるはずなんだが……。
「まあ、行こう」
道すがら、聞きたいこと、確認したいこと、話さないといけないことがたくさんあるから。
「ねぇ、ボクがドラゴンになって飛んでいけばはやいんじゃないの?」
「ヨキ、必要以上に変化の術を使うな」
「……どうして?」
そう、この説明もしておかないとな。直接話してもらうか、詳しく聞きたかったのだがフェリがうんともすんとも言わず、姿も見せなかったので、聞いた事だけ説明するとわかったと二人は頷いていた。
草、うん、これはたぶん草だ。光る草とかどういう仕組みなんだろう。歩いている場所に目印のようにそれははえていた。
オレ達はバーシィに赤い光のある場所に案内してもらっているところだ。海を歩いている。というか、よく見ると浅い場所が続く道があったのだ。
浅い場所にだけ生える草なのだろうか。
「ここです」
バーシィが指差したのは潮が引いた時にだけ現れる場所だった。
「すぐに沈んでしまうので、気をつけて下さい」
「この深さなら泳いで戻れますよ」
そう言いながら、オレ達はぽっかりと空いている口のような穴を覗き込む。
赤い光がゆらゆらと見えた。
「誰から行く?」
問いかけた時、フェリが姿を見せる。
「あれはおすすめしない……なの」
「え?」
「あの力は不老。ただ、代償が定期的にだれからか時間を奪うことになるなの」
代償とフェリが言った。変化の力のように、力を使う変わりに払う何か。
「不老……、時間を奪う……ですか。あの、ユーリ」
「あぁ。それは困ってしまうよな」
この騒動の発端の怪物と同じ力はさすがに勘弁願いたい。怪物にならなくてもチャミちゃんがそうなってしまうなら、苦しむのは目に見えている。
不老の力を得て使える術は気にはなるが……。
「次を急いで探そう」
いくつもあるはずなんだ。きっと間に合うはずだ。
オレはそう自分に言い聞かせ、後ろに振り返る。
フェリはもう姿を消していた。
「あの、なら戻ってもいいですか? 助けてもらったお礼に案内させてもらいましたが私はまだお父さん達と話が出来ていないので」
「はい、戻りましょう。ただ、ここにくる時話した話は本当の事なので、よく考えて下さい」
バーシィを連れていってもいいと約束してしまったが、危険なら別々に行動してもらおうとオレは心のどこかで考えていた。
◇
「くるのかな?」
「さぁ、どうだろうね」
「ユーリ、あの……。あ、いえ、何でもないです」
オレ達は着替えの服をもらって、街の外で待っていた。
街中では戻ってきた人々が喜びあい、もとの姿に戻った人達が笑っていた。
元凶と同じ力をもったバーシィがそこにいると知ったらこの笑顔はどうなってしまうのだろう。
「ユーリさん」
バーシィとナツメが手をふりながらやってきた。
その姿は旅に出るような格好ではなかった。
「私達は、私達で街を出ます」
「準備が終わったら家族全員で力を探しにいくつもりです。だから、出発してもらってかまいません」
どうやら、娘一人を送り出すという選択はしなかったようだ。
「そうですか」
ヨキが少し寂しそうに二人の姿を眺めていた。
「また、どこかで会えるといいですね」
「あぁ、そうだな」
別れたあと、チャミちゃんはヨキの頭を撫でながらオレにそう言った。ヨキはいつもの自信なさげなヨキに戻っている。それを見て、少しオレはホッとしていた。
「次の場所はわかるんですか?」
「ん、このまま海沿いに行くと大きな川があるはずなんだ。それに沿っていけば街があるはず」
オレが知ってるのはそこまでだ。そこから先のどこかでじーちゃんと仲間の一人が合流した街があるはずなんだが……。
「まあ、行こう」
道すがら、聞きたいこと、確認したいこと、話さないといけないことがたくさんあるから。
「ねぇ、ボクがドラゴンになって飛んでいけばはやいんじゃないの?」
「ヨキ、必要以上に変化の術を使うな」
「……どうして?」
そう、この説明もしておかないとな。直接話してもらうか、詳しく聞きたかったのだがフェリがうんともすんとも言わず、姿も見せなかったので、聞いた事だけ説明するとわかったと二人は頷いていた。
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