不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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95.気持ち悪いっす!!

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「っ今すぐその足を退けるっす!!」


 ボスへの侮辱に顔を上げれば、バーカルがボスからもらった指輪を落とし、踏みつけた。怒りのままに立ち上がりバーカルの元へ向かおうとするも、すぐに三下達に身体を押さえつけられ、片膝ついてしまう。


「くっ!」


 こいつらさっきまで喧嘩してたくせっすのにっ!!


「っっ離すっす!! ボスが能無し? ボスを能無しって言ってる時点で自分の方が能無しだってことに気づかないんっすか!? 散々そのボス達に追いかけ回されて逃げてばっかの癖っすのに! けど!! それももうここまでっすからね! もう逃げられないっすし詰んでるんっすよバーカル! すぐにボス達はここに来るっすからいい加減諦めてボスに捕まれっす!」


 叫び、ジタバタもがくもその分力を入れられて立ち上がれない。二対一とは卑怯な。それでも負けずに立ちあがろうと足と体に力を入れた。ボスを馬鹿にされて黙っているわけにはいかない。あんなにも優しくてかっこよくて頼りになる、一生をこの人に捧げてもいいと思える人なんていないのに! 能無しなんかじゃ絶対ない!! 無様? 尻尾を振るしかない? ハッ!! 笑止だ!!


「離せっす!!」


「……逃げてばかり……言いますねツキさん。それに詰んでる、ねぇ……」


 笑みをなくしたバーカルが俺を見下ろす。それを睨み返した。


「くそっ暴れるな!」


「なんだこいつっ。もういっぺん殴られたいのか!!」


「やってみろっす! グルルルルルッッ!!」


 その前に噛みついてやると唸り、三下達へと歯をガチガチ鳴らしてやった。


「詰む……ハァハァ……」


「グルルルルルルゥッッ!!」


「ハァハァハァ……僕が……」


「グルルルルルルルルゥゥッッッッ!!」


「ハァハァハァッ」


「グルッ……?」


「ハァハァハァッッ」


 今度はバーカルに向けて威嚇しながら暴れていると、なんだかだんだんとバーカルの様子がおかしくなってきていることに気づいてしまった。具体的に言うとなんかハァハァ言いだしてきて前屈みになってきているのだ。頬もだんだんと赤くなり、息荒くなっていく。それらは恐怖からというよりすごく興奮しているからそうなっているみたいだった。……そして、そんな俺の予想は当たっていた。


「……? …………!?」


 ふと、目に入ったバーカルの下半身の膨らみにギョッと目を剥いた。


 今そうなる要素どっかあったっすか!?


 膨らみとバーカルの頬の赤らみと荒くなる息。その全てに合点がいくとサッと俺の顔から血の気が引いた。


「あぁ……いいですねその表情も。やっぱりツキさんは最高です!」


「ヒィッ!」


 恍惚な表情を浮かべながら抱きつこうとしてくるバーカル。男二人に拘束された今の俺では逃げることも避けることもできず、恐怖に引き攣った声しか出なかった。そのままバーカルが抱きついてきた瞬間、嫌がらせのように俺から離れた三下達により、俺はそのまま仰向けにバーカルに押し倒されてしまった。


 ッギャァぁァァァァア!! なんか足に固いの当たってるっすぅぅぅ!!!!


「ああっツキさんそんな可愛い顔しないでくださいよ」


 ベロォ

「ヒッ!!」


 バーカルが俺の頬を舐めた。感じる不快感と嫌悪感に泣けば負けと分かっていても目に涙が滲む。だが、今の状態だと顔も隠せず、無の表情も無理でそれに喜んだバーカルがもっと興奮してベロベロハァハァと涙を舐めとってくる。……もうバーカルが怖すぎて気持ち悪すぎて鳥肌を立たせながら固まってしまうことしかできない。バーカルの後ろにいる三下達もドン引いている。


「ハァハァねぇ、ツキさん知ってますか? ハァ詰むってそれピンチってことですよね。……男ってね、危機的状況に陥ったら子孫を残そうと頑張っちゃう生き物なんですよ? ツキさんはどうですか?」


「!? お、お、俺はまだ生きるっすから全然大丈夫っすよ!? バーカルも落ち着くっす。まだボスは来てないっすから一旦落ち着いてどいてくださいっす! 危機感持つのはいいことだと思うっすけどそんな本能持つくらいなら先に現状変える方法を考えようっす!!」


「ハァハァ……ねぇツキさんってまだ処女ですよね?」


「話聞いてくれてたっすか!?!?」


 ダメだ。やはりバーカルは話が通じない。そして止まらない。


「ハァハァ当たり前ですよね? 処女ですよね? 僕のツキさんですもんね? あはっ! 本当にツキさんが捕まってくれてよかったですよ。この前晴天族の子といたのがツキさんに似ていたって、捕まえるまであともうちょっとだったって聞いてからずぅーっとあの街を見張らせてたんですよ。晴天族の子を取り戻さないとって思ってましたけど、よくよく考えれば晴天族ってなんだって話ですし、買い手もそんなの居ましたっけ? って謎ばかりの不気味な子ですからね。一応顔がいいから売れば大金にはなるかなとは思いますけど僕はそんな子よりツキさん一筋ですし、ツキさんの方が使い道も多いですからね! だから何がなんでも捕まえてやるって張り切ってたんですよ。魔樹擬は失敗しましたが、一人のこのこ街を歩いてるだなんてほんとツキさんって馬鹿ですよね? もしかしてレーラになにか言われました? ダメですよあんな年増の女狐(笑)の言うことなんか聞いたら。だからこんな目に遭うんですよ? あー可哀想なツキさん!!」


「煩いっす! 長いっす!! 黙れっす!!!」


 お願いっすから耳元で長文話すのやめて下さいっす! その度に吐息と鼻息当てないで下さいっす! 全く話頭に入ってこないっすから。吐きそうっすから!! 嫌っす邪魔っす気持ち悪いっすから!! というか下も擦り付けんなっす!! もうほんと無理っす!! ボスぅーーーー!!! 助けてっすーー!!


「ねぇー答えて下さいよぉ。まだ処女ですよね?」


「はぁ!? さっきからうるさいっすよ! なんの話っすか!? 男に処女なんてないっすから!!」


「ハァハァ!! ツキさんの口から処女!!」


「ひぃぃぃ!!」


 めっちゃキモいっす!!


 もう俺の口からは「ひぃー」しかでない。どうしよう。ついに涙が我慢できなくなってきた。間近でバーカルから見下ろされる恐怖は筆舌に語れない。恐怖が振り切っている。俺はすでに押さえつけられていなくても腰が抜けて立てない状態だ。


「大丈夫ですよ、ツキさん。心配しないで下さい。男のやり方は知っていますし慣れていますからきっと天国に行けるほど気持ちよくさせてあげますからね」


 バーカルが俺から体を浮かせる。そして、自分のズボンに手をかけ現れるのはバーカルのバーカルだ。


「!?」


 こ、こいつはナニをっ……まじっすか!?


 大変だ。気持ち悪さと変態さがパワーアップしてしまった。


「「え゛」」


 三下達もマジかとさらにドン引いている。


「っお、落ち着くっすよバーカル!! お、お、俺そこまでバーカルに好かれる要素ないっすよ!? ドジっすし馬鹿っすし不幸体質っすし! そういうのは好きな相手にやるべきっすよ!」


「大丈夫ですよ。僕が好きな相手はツキさんですからなんの問題もありません。それに、そのあげた三要素は全て僕のツボを押さえていますのでご安心を!」


「なにも安心できないっす!! あ! そ、そうだったっす! バ、バーカルのその好きって俺への憎しみからっすよね! 俺がバーカルのお父さんを捕まえたっすから、好きと憎いをバーカルは間違えちゃってるんっすよ! しょ、正気に戻るっす!」


 前にどこかで思い当たったことを言ってみる。なのにバーカルの顔は恍惚とした表情から戻らない。


「あれ? ツキさんが捕まえたんでしたっけ? ツキさんが怖がって泣いてたことしか覚えてないです。……だって、その時のツキさんの神々さに僕は釘つけでしたからね! あれで僕はあなたに惚れ直したんですよね~。ツキさんはほんと僕の心のツボを押さえていますよね!」


「ひぃぃっっ……近づかないで下さいっすぅ……!」


 違うかったみたいっす……っ。


「ハァハァ……ああツキさんほんと嫌そう。なのにそんなに一心に僕のアレを見つめて……可愛いですね、僕もっと興奮しちゃいますよ。ほら、ツキさんのも見せてくださいね~」


「ひぃぃぃいーー!!」


 怖すぎて目離せないだけっすよ! ナニ興奮してるっすもん!! なんか光ってるっすもん! もう俺泣いてるっすよ!? 滂沱の涙に全然止まらないっんっすけど!? っ……い、いや、お、落ち着くっす俺っ。こういう時こそ一旦落ち着いて冷静になにかこの状況を打破する手を考えるんっすっ。


 気持ちの悪い、ネットリとした笑みを浮かべたままバーカルは俺の足を跨ぐように堂々と下半身を露わに立っている。そして、俺のズボンへと手をかけ下げ始める。


「さぁツキさん脱ぎ脱ぎしましょうね~」


「っ……! ……!!」


 その様子を恐怖に固まりながらじっと見る。頭はパニック寸前。


 俺の頭落ち着くっす! 落ち着いて、それで、は、は、早くこの状況を打破する手を考えるんっすよ。早く手を考えるんっす! 早く! 早く手を! ……手、手、手、手、手!!!! 


 焦らしているのかゆっくりとした動きでバーカルが俺のズボンを下げていく。それに伴いバーカルのハァハァと言う声も大きくなる。


「ハァッハァッハァ!」


「……っっ」


 っっ手っすーっっっ早く考えてっす俺の頭!!! 早く! じゃないとっ――


「ハァハァ……ツキさんのツキさんまで後もう少しっっ!」


「っ……」


 ……っっ……ダメっすっなにも思いつかないっすよぉ……っ。


 頭が真っ白になる。どうにかしなければと思うのに、その手段が頭に一向に浮かんできてくれない。ぎゅっと目を瞑り、もうダメだ。……そう、諦めそうになったその時――


「……っ……ふ……っっ!?!?」


 開いた目に、バーカルのバーカルから涎のような何かが、今まさに俺の上に落ちようとしているのが目に映った。


「!?!?!?!? ッッっっっ無理っすぅぅぅ!!!!」


「へぎゅあッッ!!!???」



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