不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

文字の大きさ
上 下
96 / 150

95.気持ち悪いっす!!

しおりを挟む



「っ今すぐその足を退けるっす!!」


 ボスへの侮辱に顔を上げれば、バーカルがボスからもらった指輪を落とし、踏みつけた。怒りのままに立ち上がりバーカルの元へ向かおうとするも、すぐに三下達に身体を押さえつけられ、片膝ついてしまう。


「くっ!」


 こいつらさっきまで喧嘩してたくせっすのにっ!!


「っっ離すっす!! ボスが能無し? ボスを能無しって言ってる時点で自分の方が能無しだってことに気づかないんっすか!? 散々そのボス達に追いかけ回されて逃げてばっかの癖っすのに! けど!! それももうここまでっすからね! もう逃げられないっすし詰んでるんっすよバーカル! すぐにボス達はここに来るっすからいい加減諦めてボスに捕まれっす!」


 叫び、ジタバタもがくもその分力を入れられて立ち上がれない。二対一とは卑怯な。それでも負けずに立ちあがろうと足と体に力を入れた。ボスを馬鹿にされて黙っているわけにはいかない。あんなにも優しくてかっこよくて頼りになる、一生をこの人に捧げてもいいと思える人なんていないのに! 能無しなんかじゃ絶対ない!! 無様? 尻尾を振るしかない? ハッ!! 笑止だ!!


「離せっす!!」


「……逃げてばかり……言いますねツキさん。それに詰んでる、ねぇ……」


 笑みをなくしたバーカルが俺を見下ろす。それを睨み返した。


「くそっ暴れるな!」


「なんだこいつっ。もういっぺん殴られたいのか!!」


「やってみろっす! グルルルルルッッ!!」


 その前に噛みついてやると唸り、三下達へと歯をガチガチ鳴らしてやった。


「詰む……ハァハァ……」


「グルルルルルルゥッッ!!」


「ハァハァハァ……僕が……」


「グルルルルルルルルゥゥッッッッ!!」


「ハァハァハァッ」


「グルッ……?」


「ハァハァハァッッ」


 今度はバーカルに向けて威嚇しながら暴れていると、なんだかだんだんとバーカルの様子がおかしくなってきていることに気づいてしまった。具体的に言うとなんかハァハァ言いだしてきて前屈みになってきているのだ。頬もだんだんと赤くなり、息荒くなっていく。それらは恐怖からというよりすごく興奮しているからそうなっているみたいだった。……そして、そんな俺の予想は当たっていた。


「……? …………!?」


 ふと、目に入ったバーカルの下半身の膨らみにギョッと目を剥いた。


 今そうなる要素どっかあったっすか!?


 膨らみとバーカルの頬の赤らみと荒くなる息。その全てに合点がいくとサッと俺の顔から血の気が引いた。


「あぁ……いいですねその表情も。やっぱりツキさんは最高です!」


「ヒィッ!」


 恍惚な表情を浮かべながら抱きつこうとしてくるバーカル。男二人に拘束された今の俺では逃げることも避けることもできず、恐怖に引き攣った声しか出なかった。そのままバーカルが抱きついてきた瞬間、嫌がらせのように俺から離れた三下達により、俺はそのまま仰向けにバーカルに押し倒されてしまった。


 ッギャァぁァァァァア!! なんか足に固いの当たってるっすぅぅぅ!!!!


「ああっツキさんそんな可愛い顔しないでくださいよ」


 ベロォ

「ヒッ!!」


 バーカルが俺の頬を舐めた。感じる不快感と嫌悪感に泣けば負けと分かっていても目に涙が滲む。だが、今の状態だと顔も隠せず、無の表情も無理でそれに喜んだバーカルがもっと興奮してベロベロハァハァと涙を舐めとってくる。……もうバーカルが怖すぎて気持ち悪すぎて鳥肌を立たせながら固まってしまうことしかできない。バーカルの後ろにいる三下達もドン引いている。


「ハァハァねぇ、ツキさん知ってますか? ハァ詰むってそれピンチってことですよね。……男ってね、危機的状況に陥ったら子孫を残そうと頑張っちゃう生き物なんですよ? ツキさんはどうですか?」


「!? お、お、俺はまだ生きるっすから全然大丈夫っすよ!? バーカルも落ち着くっす。まだボスは来てないっすから一旦落ち着いてどいてくださいっす! 危機感持つのはいいことだと思うっすけどそんな本能持つくらいなら先に現状変える方法を考えようっす!!」


「ハァハァ……ねぇツキさんってまだ処女ですよね?」


「話聞いてくれてたっすか!?!?」


 ダメだ。やはりバーカルは話が通じない。そして止まらない。


「ハァハァ当たり前ですよね? 処女ですよね? 僕のツキさんですもんね? あはっ! 本当にツキさんが捕まってくれてよかったですよ。この前晴天族の子といたのがツキさんに似ていたって、捕まえるまであともうちょっとだったって聞いてからずぅーっとあの街を見張らせてたんですよ。晴天族の子を取り戻さないとって思ってましたけど、よくよく考えれば晴天族ってなんだって話ですし、買い手もそんなの居ましたっけ? って謎ばかりの不気味な子ですからね。一応顔がいいから売れば大金にはなるかなとは思いますけど僕はそんな子よりツキさん一筋ですし、ツキさんの方が使い道も多いですからね! だから何がなんでも捕まえてやるって張り切ってたんですよ。魔樹擬は失敗しましたが、一人のこのこ街を歩いてるだなんてほんとツキさんって馬鹿ですよね? もしかしてレーラになにか言われました? ダメですよあんな年増の女狐(笑)の言うことなんか聞いたら。だからこんな目に遭うんですよ? あー可哀想なツキさん!!」


「煩いっす! 長いっす!! 黙れっす!!!」


 お願いっすから耳元で長文話すのやめて下さいっす! その度に吐息と鼻息当てないで下さいっす! 全く話頭に入ってこないっすから。吐きそうっすから!! 嫌っす邪魔っす気持ち悪いっすから!! というか下も擦り付けんなっす!! もうほんと無理っす!! ボスぅーーーー!!! 助けてっすーー!!


「ねぇー答えて下さいよぉ。まだ処女ですよね?」


「はぁ!? さっきからうるさいっすよ! なんの話っすか!? 男に処女なんてないっすから!!」


「ハァハァ!! ツキさんの口から処女!!」


「ひぃぃぃ!!」


 めっちゃキモいっす!!


 もう俺の口からは「ひぃー」しかでない。どうしよう。ついに涙が我慢できなくなってきた。間近でバーカルから見下ろされる恐怖は筆舌に語れない。恐怖が振り切っている。俺はすでに押さえつけられていなくても腰が抜けて立てない状態だ。


「大丈夫ですよ、ツキさん。心配しないで下さい。男のやり方は知っていますし慣れていますからきっと天国に行けるほど気持ちよくさせてあげますからね」


 バーカルが俺から体を浮かせる。そして、自分のズボンに手をかけ現れるのはバーカルのバーカルだ。


「!?」


 こ、こいつはナニをっ……まじっすか!?


 大変だ。気持ち悪さと変態さがパワーアップしてしまった。


「「え゛」」


 三下達もマジかとさらにドン引いている。


「っお、落ち着くっすよバーカル!! お、お、俺そこまでバーカルに好かれる要素ないっすよ!? ドジっすし馬鹿っすし不幸体質っすし! そういうのは好きな相手にやるべきっすよ!」


「大丈夫ですよ。僕が好きな相手はツキさんですからなんの問題もありません。それに、そのあげた三要素は全て僕のツボを押さえていますのでご安心を!」


「なにも安心できないっす!! あ! そ、そうだったっす! バ、バーカルのその好きって俺への憎しみからっすよね! 俺がバーカルのお父さんを捕まえたっすから、好きと憎いをバーカルは間違えちゃってるんっすよ! しょ、正気に戻るっす!」


 前にどこかで思い当たったことを言ってみる。なのにバーカルの顔は恍惚とした表情から戻らない。


「あれ? ツキさんが捕まえたんでしたっけ? ツキさんが怖がって泣いてたことしか覚えてないです。……だって、その時のツキさんの神々さに僕は釘つけでしたからね! あれで僕はあなたに惚れ直したんですよね~。ツキさんはほんと僕の心のツボを押さえていますよね!」


「ひぃぃっっ……近づかないで下さいっすぅ……!」


 違うかったみたいっす……っ。


「ハァハァ……ああツキさんほんと嫌そう。なのにそんなに一心に僕のアレを見つめて……可愛いですね、僕もっと興奮しちゃいますよ。ほら、ツキさんのも見せてくださいね~」


「ひぃぃぃいーー!!」


 怖すぎて目離せないだけっすよ! ナニ興奮してるっすもん!! なんか光ってるっすもん! もう俺泣いてるっすよ!? 滂沱の涙に全然止まらないっんっすけど!? っ……い、いや、お、落ち着くっす俺っ。こういう時こそ一旦落ち着いて冷静になにかこの状況を打破する手を考えるんっすっ。


 気持ちの悪い、ネットリとした笑みを浮かべたままバーカルは俺の足を跨ぐように堂々と下半身を露わに立っている。そして、俺のズボンへと手をかけ下げ始める。


「さぁツキさん脱ぎ脱ぎしましょうね~」


「っ……! ……!!」


 その様子を恐怖に固まりながらじっと見る。頭はパニック寸前。


 俺の頭落ち着くっす! 落ち着いて、それで、は、は、早くこの状況を打破する手を考えるんっすよ。早く手を考えるんっす! 早く! 早く手を! ……手、手、手、手、手!!!! 


 焦らしているのかゆっくりとした動きでバーカルが俺のズボンを下げていく。それに伴いバーカルのハァハァと言う声も大きくなる。


「ハァッハァッハァ!」


「……っっ」


 っっ手っすーっっっ早く考えてっす俺の頭!!! 早く! じゃないとっ――


「ハァハァ……ツキさんのツキさんまで後もう少しっっ!」


「っ……」


 ……っっ……ダメっすっなにも思いつかないっすよぉ……っ。


 頭が真っ白になる。どうにかしなければと思うのに、その手段が頭に一向に浮かんできてくれない。ぎゅっと目を瞑り、もうダメだ。……そう、諦めそうになったその時――


「……っ……ふ……っっ!?!?」


 開いた目に、バーカルのバーカルから涎のような何かが、今まさに俺の上に落ちようとしているのが目に映った。


「!?!?!?!? ッッっっっ無理っすぅぅぅ!!!!」


「へぎゅあッッ!!!???」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

三度目の人生は冷酷な獣人王子と結婚することになりましたが、なぜか溺愛されています

倉本縞
BL
エルガー王国の王子アンスフェルムは、これまで二回、獣人族の王子ラーディンに殺されかかっていた。そのたびに時をさかのぼって生き延びたが、三回目を最後に、その魔術も使えなくなってしまう。 今度こそ、ラーディンに殺されない平穏な人生を歩みたい。 そう思ったアンスフェルムは、いっそラーディンの伴侶になろうと、ラーディンの婚約者候補に名乗りを上げる。 ラーディンは野蛮で冷酷な獣人の王子と噂されていたが、婚約者候補となったアンスフェルムを大事にし、不器用な優しさを示してくれる。その姿に、アンスフェルムも徐々に警戒心を解いてゆく。 エルガー王国がラーディンたち獣人族を裏切る未来を知っているアンスフェルムは、なんとかそれを防ごうと努力するが……。

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

処理中です...