不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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93.勇気出すっす!

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 これはまさかまさかの事態。由々しき事態だ。今はダメだが、とてもフレイ君を呼びたい。


 ……でもいつ力解けたんっすかね? いや、もうあの時っすよね。


 なんかふわっとした時だ。絶対あの時だ。あれからおかしくなったし。では、なぜ解けてしまったのか。フレイ君はしばらくもつと言っていた。フレイ君の俺に掛けた力がいまいち何かはわかっていないが、今日特にフレイ君からなにかを言われていた訳でもないのに急に解けるのは変だ。


「……」


 ……もしかしてフレイ君に何かあったんっすかね? フレイ君、今ボスの所に行ってるんっすよね? じゃあボス達にもなにか……


 ゾッ

「……っっ」


 頭に嫌な想像が浮かび、振り払うよう頭を振った。それでも、


 ああボス、フレイ君、みんな……っ。


 どうしようどうしようと指輪を地面にコンコンコンコン打ちつけた。こうして叩いていればもしかすると直るかもしれないから。そんな時にまた、さっき眠りを邪魔した以上の声を三下Bが上げた。


「おい!! てめぇ無視すんのも大概にしろや!!」


「ちょっと待ってくださいっす! 今必死に考えてるとこなんっすから!!!」


 聞こえた声は近かった。だが、ぐるぐると頭に回る嫌な予感と焦りに、そんなことにも俺は気づかず反射的に怒鳴り返してしまった。――そして、そのすぐ後に右側頭部へと大きな衝撃が走る。


 ガッ‼︎

「ッい!?」


 視界が揺れ、そのまま横に倒れてしまう。前から落ちる影にうつ伏せ状態のまま、上半身だけを起こして見上げて見てみれば、鉄格子の外にいたはずの男が俺の目の前に立っていた。


「ちょ、先輩! 暴力は不味いって! かしらにも言われてただろ! 情報だって別に――」


「あ゛あ? 怪我にはなってねぇからギリギリセーフだろ! これは教育だよ教育。こういう舐めた奴にはちゃんとわからせてやらねぇといけねぇんだよ!」


 三下AがBに焦ったような声を上げた。だが、三下Bは俺を高圧的に見下ろしたまま。


 ズキズキとした痛みが頭に走る。三下Bに殴られたのだ。まさか短気で怒鳴ってばかりだったBがAより立場が上の人だったとは。短気な人が上だと下は苦労すると思う。先輩ならもっと大らかな心を持つべきだ。暴力を教育だと言うのは絶対にダメ。


「おい、なんか喋る気になったか?」


「……」


 ムッと口を閉じて頭を振った。


 あ、これ失敗っす。頭ぐわんぐわんするっす。


「んじゃあしゃーねぇな。もう一発いっとくか?」


「ぐっ……」


 三下Bは俺の側にしゃがみこむと、俺の前髪を掴んで持ち上げる。そして、勢いよく地面に叩きつけようとした。


「あっちょっおい!!」


「……っ」


 三下Aの焦る声を聞きながら、訪れるであろう痛みにくっと耐えようとした時――


 ズルッ

「おっと」


 三下Bが足を滑らせた。


「!? ゴンッ! だ!? グギッ! いぎゅッ!? ~~!!!!


 いっだぁぁあ!! 首がぁぁあ!! おでこ削れたっすー!!! めちゃくちゃ痛いっす!!! 


 なぜそこで滑るのか。なぜ前に擦り付けたのか。転けないようバランスをとることは大事だがそっちの手は人を掴んでいるんだから使ってはいけないだろう。


 首、グギッって変な方向に曲がったっすよ? ちょっと想像と違ったっすよ? 痛いっすよ!? 暴力ダメって言われてる(みたい)っすのに! 自分だって怪我させなけりゃ的なこと言ってたっすのに思いっきり怪我した感覚あるっすよ!? 馬鹿なんじゃないっすか!


「~~! ~~!」


 首とおでこ、どちらを手で押さえればいいのかわからない。痛みに悶絶し顔を上げられない中、心の中では目の前の男へと怒涛の文句を述べた。声には出さない。たぶん追い打ちをかけられるから。その前に痛くて声がでない。なので今はちょっとたんまでお願いする。


「いや~悪いな。なんか足が滑っちまってよ」


「グッ……」


 ちょっ、い、痛いっす。首が!!


 ヘラヘラ笑いながら再び三下Bに髪を掴んで頭を持ち上げられる。何も言ってないのに追い打ちを掛けられた。だが、心の中では悲鳴を上げつつも表面では呻き声だけで耐えた。そんな俺を見て、三下B男は「後何回耐えるかな~」とニヤニヤ笑う。


 ……鬼っすね。


 でも絶対耐える。何をされても絶対何も言わない。仲間は売らないのだ。けれど三下Aには一つ言わせてもらいたい。


 三下Aさん! 止めようかどうしようかオロオロしてるくらいならもうちゃっちゃときてこの人止めてくださいっすよ! 一応怪我ダメって言われてるんっすよね!? この人、さっきから怪我する攻撃ばっかしてくるっすよ!?


 そう三下Aに念を飛ばすが、全然オロオロをやめない。自分の先輩に当たるのであろうBを止めにくいのはわかるが、今この人を止められるのはAしかいないのだ。


 勇気だすっす! 頑張れっす!


 そうやって内心三下Aを応援していると嫌な声がこの場に響いた。


「よし次は――」


「――あー! ちょっとちょっと怪我させないで傷つけないでって言ってたのになんでつけてるのさ!?」


「「げっ!」」


 わざとらしい高い声に、俺は三下Bと一緒になって嫌な声を上げた。顔も思いっきり引き攣る。……こいつは今この場に切実に来てほしくなかった。例え、そいつが全ての元凶であったとしてもだ。


「ツキさんお待たせしてしまい申し訳ありません! あなたの愛しのバーカルが会いに来てあげましたよ!」


「今すぐ回れ右して帰れっす!!」





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