不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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75.コソッとっすね!

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 次の日


(……フレイ君、シーっすよ?)


 森の中、草むらに隠れながら俺とフレイ君は森を調査しているボス達のあとコッソリとついていっていた。


 昨日の夜、アジト周辺の見回りや森、山中の捜索では結局俺が感じた視線の持ち主は見つからず、何の問題もなかったよう。だが、俺の一度ならず数度感じた視線と、何も問題はなかったといっても何かの違和感をモー達は感じたらしく、ボスは早朝から人数を増やし、夜には踏み込めなかった場所まで捜索範囲を広げ視線と違和感の正体を探っている。


 そして、そんなボス達のあとを俺達は適度な距離を保ちつつ、気配を消してついて行っているのだ。いやはや、素人とは思えないフレイ君の気配の消し方には天晴れと言う他ないが、そんなフレイ君は少々呆れた様子だ。


(シーって、ツキさんこれバレたらボスさんに怒られますよ?)


(え? なんでっすか?)


(なんでって内緒であとついて来てますし……)


(でも俺達別にボスについてくるなって言われてないっすよね?)


 コソコソと小さな声でフレイ君と言葉を交わす。


 ついてくるなと言われてついて来ているのなら怒られるかもしれないが、今回は特にそんなこと言われていない。俺もフレイ君もだ。だから大丈夫だろう。昨晩の見回りも捜査も結局俺達だけ除け者にされた。はじめに視線を感じ報告をしたのは俺なのだから、俺だってボス達と一緒に調査に参加してもいいと思うのに。


(言われてないってそれ、ツキさんがボスさんを避けてたからですよね?)


(……避けてはないっすよ?)


 俺は昨晩の見回りやら調査に、ボスが連れて行ってくれる気配がないと早々に察し、諦め、早寝をしただけ。そして、今日はボスが早朝調査を開始し、家を出発するギリギリに起きただけ。ただボスと顔を合わす機会がなかっただけでこういうのは避けたとは言わない。作戦勝ちと言うのだ。


(フレイ君怖いっすか? お家戻るっすか?)


 フレイ君こういうの好きかなって思って声かけたんっすけどけど勘違いっすかね?


 怖かったり嫌ならフレイ君だけ家に戻ってもらっても構わない。俺はボス達のあとをついて行く。


(……面白そうだからついてきます)


(! っすよね!)


 やっぱり好きだったっすか!


 フレイ君、意外とこういう調査とか尾行とか狩りとかが好きだ。あの 魔火撒鶏マカチドリ以降も、たまにみんなと一緒に狩りに行ったりするが、フレイ君、嫌そうにみえてちょっとワクワクしながらいつもついて来るし、初めの頃ボス達のあとをこっそり追いかけて撒かれて探し回ったりという遊びをよくしていたからこういうの好きかなと思っていたのだ。


(じゃあこのままこっそりボス達に見つからないよう気をつけるっすよ? 見つかると怒られちゃうっすから)


(……怒られる自覚あるんじゃないですか)


(…………)


 まぁ、それはねぇ……っす。


 ややフレイ君から目を逸らし、コホンと小さく咳払いをする。そして、キリリとした真剣な顔を作り、フレイ君へと顔を戻した。


(フレイ君。いいっすか? 今日俺達はボスのあとをこっそりついて行きつつ、視線の正体、又は森に異変がないかを調べるっす。ボスに見つからないことはもちろんのこと、ここにはモー達の他にも狼絆の仲間達がいて、みんな辺りを捜索、調査中っす。この人達にも見つかったら即捕まってボスに報告されるっすからみんなにも見つかっちゃダメっすよ?)


(……難しすぎませんか? やることも多いし、そこら中にお仲間さん達いますよ?)


(無になるんっす。自然に溶け込むんっす。今の俺達ならできるっす)


 俺の体質がない今、それは可能だと思う。気合いを込め頑張ろう。


(あ、俺達の痕跡は移動するごとにちゃんと消すっすよ。残してたらややこしくなっちゃうっすから)


(……消した痕跡が見つかっちゃってもややこしくないですか? どっちみちじゃないですか?)


(…………)


 ……そ……うかもしれないっすね……。


 どうしようかとフレイ君とお互い固まった。――そんな俺達の近くで。


「ボス。こっちにはなにもなかったぞ」


((!))


 サッと茂みに隠れる。葉の隙間からフレイ君と共に覗けば、一心に一つの木にガンを飛ばしていたボスにレト兄が近寄る。


「こっちにはツキがいた形跡はなかった」


 んん?


「そうか。たぶんあいつのことだからこの近辺にいんだろ。草の根かき分けてでも探し出して捕まえろ」


「了解」


 おお?


(……ツキさん、完全について来てるのバレてますよ?)


(……ふっ、流石ボスっすね)


 どおりで俺達の周りを彷徨く仲間が増えたと思った。ここから動けないではないか。


(フレイ君。無っすよ、無)


 何も考えず、自然と同化するんっす。


 フレイ君に向かいしーっと指を口に当てた。


「というか坊ちゃん今回ツキについて来んなって言わなかったじゃん」


「だからついて来ちゃったんじゃね?」


「ほらツキー。いい子だから出てこーい。たぶんフレイちゃんもいるだろー。二人とも出てこーい」


 おおお?


 モー達がボスの元へ。そしてそれぞれ別方向を見ながら俺達を呼ぶ。これは出て行っても仲間に入れてくれるか? だが、モー達をボスが横目で睨みつけた。


「言わなかったんじゃねぇよ。あいつが察して逃げやがったんだよ。そのあとさっさと寝て、朝までぐっすりだ。寝たふりかましてんのかと思ったけど、本気で寝てやがったんだよあの野郎……」


 ……ふっ、やっぱり俺の作戦勝ちっすね。


 思わず勝ち誇った笑みをこぼしてしまった。


「別に、起こして言えばよかったじゃないか」


 レト兄が言う。寝た子を起こすなどなんという酷いことを言うのか。


「……だから寝てたんだよ。気持ち良さそうに」


「で?」


「……可哀想だろ?」


「「「「……甘いなぁ」」」」」


 全員しょうがないなと言うような目をボスに向けた。


(……ほんっとボスさんってツキさんに甘いですよね)


(優しいっすよね!)


 流石ボスっす!



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