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74.誰にといえば…?
しおりを挟む――その日の夜、
「ツ――」
「ボスー!!」
晩ご飯前、アジトへと帰ってきたボスに、俺はフレイ君と共に玄関へと急ぎ、ボスに飛びついた。
「ぐっ……!!」
「「「「「おぉ……」」」」」
「~~っ」
「あ、ボスごめんっす」
ちょうど溝内に頭が入ってしまったようでボスは悶絶してしまった。
「ボスさん大丈夫ですか?」
フレイ君が尋ねるも、ボスは答えられない。レト兄が苦笑する。
「あーあ……。ツキ、フレイ君ただいま」
「あ、はいっす! レト兄おかえりっす! モー達もおかえりっすね!」
「おかえりなさい」
「「「おう、ただいま!」」」
「そっれにしても油断したな坊ちゃん。また痛そうなとこに入ったもんで!」
「でもよかったなツキから飛んできてもらえて!」
「久しぶりにだな!」
「……黙れジー、ズー。――ツキ、どうした?」
「!」
ボスはジー達を睨んだ後、怒るわけではなく俺にそう問いかけた。
流石ボスっす! 何があったかお見通しっすね!
そんなボスに俺は姿勢を正しい、今日あったことを報告する。
「あのっすね? 今日フレイ君と丘に行って日光浴してたんっすけど、その時に変な視線を感じたんっすよ」
「……視線?」
「はいっす。その時は気のせいかと思ったんっすけど、小川でフレイ君と涼んでる時にもまた同じような視線を感じて……フレイ君と一緒に急いで帰って来たんっす」
小川でまたも感じた視線。なんとなく動物や魔物ではなく、こちらを監視するかのような視線に俺とフレイ君はすぐに家へと戻り、そこにいた仲間達へと報告した。その後、仲間達数人が森へと確認に出掛けたが視線の主は見つからず、ボスが帰ってくるまで取り敢えずと、不要な外出は控えるようアジト内に通達され、今は順番にアジト周辺の見回りが行われている。
そんな俺の話を聞き、ボスは考えるよう顎に手を当てた。
「……なるほどな。その視線は本当に動物とか魔物じゃなかったんだな」
「なかったと思うっす! 気のせいでもないっす!」
「そうか。――レト、お前は森に確認に行った連中に詳しい話を聞いてこい。モー達は数人引き連れて森をもう一回確認したあと、深くまで潜らなくていい。けど、牽制する程度にこの辺一帯見回ってこい。
「「「「了解」」」」
ボスの指示に従い、レト兄と、モー達が動き始める。俺もソワソワと待った。
俺は? 俺もなんかやりたいっす!
ボスが帰って来る前の見回りでは、「お前はボスが帰って来てからな」と言われて順番に組み込んでくれなかったのだ。
「ツキ」
「! はいっす!」
「怪我は? ……フレイも」
「ないっす!」
「ないです」
「そうか」
「ん?」
「ツキ」
「!?」
「ただいま」
油断し、気付けばボスに抱きしめられていた。
「っ///!? は、離して下さいっす!!!」
「無理。仕事ほしいんだろう? 俺を癒すっつぅ俺の側にいる仕事をくれてやるよ」
「いらないっす!! うわっ!?」
ボスにお腹に手を回され後ろ向きに脇に抱えられる。
うわ~ん! なんでこんな運び方なんっすか? ぐぇ~お腹苦しいっす!!
「フレイ君助けてっす!」
「えー? ……どうやって?」
「……飛びかかったり?」
ズンズン歩くボスのあとをついてくるフレイ君と共に首を傾げた。
「ツキ」
「? はいっす?」
揶揄うような声ではなく、真剣な声でボスに呼ばれる。ボスを見上げるも、ボスの側頭部しか見えない。
「その感じた監視するような視線。誰に向いてたかわかるか?」
「ん?」
誰? そんなもの監視で、あの場にいたのは俺とフレイ君しかいなかったのだからもちろん俺達二人にで……
「あれっす?」
そう言えばあの視線、俺だけを見ていたような?
「…………」
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