上 下
75 / 127

74.誰にといえば…?

しおりを挟む



 ――その日の夜、


「ツ――」


「ボスー!!」


 晩ご飯前、アジトへと帰ってきたボスに、俺はフレイ君と共に玄関へと急ぎ、ボスに飛びついた。


「ぐっ……!!」


「「「「「おぉ……」」」」」


「~~っ」


「あ、ボスごめんっす」


 ちょうど溝内に頭が入ってしまったようでボスは悶絶してしまった。


「ボスさん大丈夫ですか?」


 フレイ君が尋ねるも、ボスは答えられない。レト兄が苦笑する。


「あーあ……。ツキ、フレイ君ただいま」


「あ、はいっす! レト兄おかえりっす! モー達もおかえりっすね!」


「おかえりなさい」


「「「おう、ただいま!」」」


「そっれにしても油断したな坊ちゃん。また痛そうなとこに入ったもんで!」


「でもよかったなツキから飛んできてもらえて!」


「久しぶりにだな!」


「……黙れジー、ズー。――ツキ、どうした?」


「!」


 ボスはジー達を睨んだ後、怒るわけではなく俺にそう問いかけた。


 流石ボスっす! 何があったかお見通しっすね!


 そんなボスに俺は姿勢を正しい、今日あったことを報告する。


「あのっすね? 今日フレイ君と丘に行って日光浴してたんっすけど、その時に変な視線を感じたんっすよ」


「……視線?」


「はいっす。その時は気のせいかと思ったんっすけど、小川でフレイ君と涼んでる時にもまた同じような視線を感じて……フレイ君と一緒に急いで帰って来たんっす」


 小川でまたも感じた視線。なんとなく動物や魔物ではなく、こちらを監視するかのような視線に俺とフレイ君はすぐに家へと戻り、そこにいた仲間達へと報告した。その後、仲間達数人が森へと確認に出掛けたが視線の主は見つからず、ボスが帰ってくるまで取り敢えずと、不要な外出は控えるようアジト内に通達され、今は順番にアジト周辺の見回りが行われている。


 そんな俺の話を聞き、ボスは考えるよう顎に手を当てた。


「……なるほどな。その視線は本当に動物とか魔物じゃなかったんだな」


「なかったと思うっす! 気のせいでもないっす!」


「そうか。――レト、お前は森に確認に行った連中に詳しい話を聞いてこい。モー達は数人引き連れて森をもう一回確認したあと、深くまで潜らなくていい。けど、牽制する程度にこの辺一帯見回ってこい。


「「「「了解」」」」


 ボスの指示に従い、レト兄と、モー達が動き始める。俺もソワソワと待った。


 俺は? 俺もなんかやりたいっす!


 ボスが帰って来る前の見回りでは、「お前はボスが帰って来てからな」と言われて順番に組み込んでくれなかったのだ。


「ツキ」


「! はいっす!」


「怪我は? ……フレイも」


「ないっす!」


「ないです」


「そうか」


「ん?」


「ツキ」


「!?」


「ただいま」


 油断し、気付けばボスに抱きしめられていた。


「っ///!? は、離して下さいっす!!!」


「無理。仕事ほしいんだろう? 俺を癒すっつぅ俺の側にいる仕事をくれてやるよ」


「いらないっす!! うわっ!?」


 ボスにお腹に手を回され後ろ向きに脇に抱えられる。


 うわ~ん! なんでこんな運び方なんっすか? ぐぇ~お腹苦しいっす!!


「フレイ君助けてっす!」


「えー? ……どうやって?」


「……飛びかかったり?」


 ズンズン歩くボスのあとをついてくるフレイ君と共に首を傾げた。


「ツキ」


「? はいっす?」


 揶揄うような声ではなく、真剣な声でボスに呼ばれる。ボスを見上げるも、ボスの側頭部しか見えない。


「その感じた監視するような視線。誰に向いてたかわかるか?」


「ん?」


 誰? そんなもの監視で、あの場にいたのは俺とフレイ君しかいなかったのだからもちろん俺達二人にで……


「あれっす?」


 そう言えばあの視線、俺だけを見ていたような?


「…………」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

マリオネットが、糸を断つ時。

せんぷう
BL
 異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。  オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。  第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。  そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。 『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』  金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。 『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!  許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』  そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。  王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。 『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』 『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』 『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』  しかし、オレは彼に拾われた。  どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。  気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!  しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?  スラム出身、第十一王子の守護魔導師。  これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。 ※BL作品 恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。 .

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

処理中です...