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61.聞く体勢に side No
しおりを挟むツキのにこやかな機嫌のいい返事にその場にいた者達はコソコソ身を寄せ、顔を寄せ合いツキにバレぬよう話し出した。
コソコソ
(なんでツキの野郎あんな素直に頷くかね……)
(馬鹿なのか? お馬鹿ちゃんなのかツキちゃんは)
(てか不幸を止めるってなんだ? やっぱあれ呪われてたのか?)
(ほんとフレイちゃん謎だわ~)
……ここは食堂。しかも今は最後のご飯時。当然そこにはツキとフレイだけではなく、モー達を含む多くの者達が晩ご飯を食べに来ていた。実は皆、時間が経つにつれて元気をなくしていくツキの様子にソワソワと心配していたのだが、フレイからの任せろという笑顔の圧に声をかけられないでいたのだ。
(なぁどうする? 誰かあれ突っ込みに行くか? それとな~く自然に話を戻しに行くか?)
(行った方がいいよな? ツキあのままじゃマジで聞がねぇぞ。どうする? ジャンケンで決めるか?)
(ボスもレトもいねぇしな。いや、待て。こういうのはモー達が一番得意だよな? ならお前らが行ってこいよ)
(((えー。まぁ、いいけどな!)))
そう、コソコソとした短い会議を終わらせ、さぁ自然にとモー達が立ち上がり、それを援護するためみんながそれぞれ腰を浮かし、体の向きを変え始めた。――が
「そう言えばツキさん。僕ツキさんに聞きたいことがあるんですけど……」
「はい! なんっすか? なんでも聞いて下さいっす!」
「じゃあ――」
「ん? あ。ツ――バン!! ガッ! づッッ!?」
「ラッ!?」
「チッ」
(((((ビク!?)))))
「ん? ……あれ? なんか今レト兄の声しなかったっすか?」
(((((……)))))
ツキがきょろきょろと辺りを見回す。だが、全員目を合わせないことでそれをやり過ごした。
「え? そうですか? 風で扉が閉まった音じゃないですか?」
「? そうだったんっすかね?」
(((((……)))))
……キラキラと目を輝かし、さぁ! さぁ! とフレイの言葉だけを待っていたツキの耳には、あのラックの痛ましい声は届かなかったのだろうと全員が察した。そして、皆、口を噤み扉の向こうで悶えているであろうラックに同情の目を向けた。
見る限り風は吹いていないし、窓も開いていないのだから扉が閉まったのは風のせいじゃない。それにラックがツキに声をかけようとしたタイミングで扉が勝手に閉まったのだ。それと同時に聞こえたフレイの舌打ち。ツキの疑問に答えるフレイの素知らぬ顔のなんと怪しいことか。……だが、やはりどことなく漂うフレイの黙ってて圧に、全員とりあえずさっきの状態のまま、お尻を浮かしたり体の向きを変え固まったりした不自然な体勢のままスルーを貫くことに決めた。そして――
「それでツキさんに聞きたいことなんですが……」
「あ、はいっす。なんすか?」
「ツキさんってボスさんのこと好きですよね? もちろん恋愛の意味で」
(((((!?)))))
((っ!?))
フレイの言葉を聞くや否や食堂内にいた全員素早くサッと音も立てず椅子に座り直し、姿勢を正し聞く体勢を整えた。そして、ツキにその存在を意識されぬよう限りなく気配を薄めさせながら二人の会話へと耳を集中させる。それは部屋の外にいるラック達ですらもだ。
これは全員が気になってるお話なのだ――。
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