不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

文字の大きさ
57 / 150

56.よし、殺るか  sideラック   

しおりを挟む



「……童貞……拗らせるの怖いな」


 俺とフレイを除いた馬鹿共の話し合いは少しの静寂を見せたあと、ポツリと呟かれた言葉にまだ続いた。


「だな……。普段は頼りになるボスでもやっぱ男だからな。相当溜め込んでたんだぜきっと」


「もっとおかず提供して発散させてやればよかったな」


「おかずってなんだよ。たぶん坊ちゃんはツキ以外受付ねぇぞ? それはそれでツキが可哀想だろ?」


「「「「「確かに…………」」」」」


「うぅ……ラックごめんなぁ……うぅ」


「…………」


 泣くレトに、誰かが言った言葉。


「というかさ、ふと思ったんだけどこれってもしかしてボスがツキに告白して振られた結果だったりする?」


「「「「「いや~それは――」」」」」


 ピク


「「「「「…………」」」」」


「…………」


 僅かに身体を揺らした俺に、全員の目が突き刺さる。横にいるフレイすらも目を丸くして俺を見る。……輪になって集まる連中がより近づき合ってその密度が増した。


「……え? どう言うことだ? そう言うことなのか?」


「……え? 坊ちゃん振られたのか?」


「……え? 誰に? ツキに?」


「「「「「……」」」」」


 モー達が言った言葉にチラッと全員の視線が俺に向く。そしてサッと俺から逸らした。


「や、やべぇよ俺! もうなんてボスに声かけていいかわかんねぇ。なんかもうボスも可哀想すぎる!」


「え? え? まじか! その結果のあれか!?」


「うわ~そう言うことなのか? ……でも、あそこまで拒絶されてりゃ……」


「ツキ、ボスのことそういう意味では好きじゃなかったんだ! やべぇぞこれ新事実じゃねぇか!」


「……ボスってさぁ、なんだかんだ言いながらツキは自分のこと好きだって思ってたじゃんか。それでこれか……」


「っ痛い、ボスの思い込みが痛い! 可哀想で痛すぎる!!」


「俺……しばらくボスとどう接してやればいいかわかんねぇかも……」


「俺も……」


「っ馬鹿が! だからってこのままなぁなぁで終わらせていいわけねぇだろ! 坊ちゃんは俺らの、この組織のボスだぞ? 間違ったことは間違いだって教えて、俺ら大人がちゃんと導いてやらねぇといけねぇだろうが!!」


「「「「「! た、確かに!」」」」」


 モーが叫んだ言葉にハッとした表情を見せる馬鹿共。続いてジーとズーが叫んだ。


「そうだ! そして俺達が坊ちゃんとツキの間を取り持ってやらねぇといけねぇ!」


「このままツキが坊ちゃんを拒絶したままだったら坊ちゃんはまた! 必ず!! 欲を暴走させてツキに襲いかかるぞ!? 坊ちゃんのガキの頃からのツキへの執着具合は全員知ってんだろ!!」


「「「「「っ!!!!」」」」」


「そうだぞ! もしかしたらツキにもなんか理由や行き違いのようなもんがあったのかもしれねぇ。ツキのためにも坊ちゃんのためにも俺達がしっかりしないでどうすんだ!」


「レト!! お前もいつまでも泣いてんな! 坊ちゃんの右腕なんだろ? しっかりしろ!」


「このまま坊ちゃんを鬼畜人間のまま放置させて、また成長させていいと思ってんのか! 俺達できちんと矯正させるんだ! いや、させねぇといけねぇんだよ!!」


「!! っああそうだな! まだ幻滅してちゃダメだよな! 野放しにしちゃダメだよな! そうだっ、ラックのためにもツキのためにももう今回みたいな間違いは起こさせない!! しっかりしないといけないんだ!! 絶対にもうこんなことは起こさせないぞ!!」


「「「よし! その意気だ!!」」」


「……ぶっ……ふっふふっっ……!」


「…………」


 コソコソと話していたはずの声(それでも全部聞こえていた)は、もう隠す気がないくらいの熱量を帯びたものになっていく。


「いだっ!」


 そんな馬鹿共に背を向けて、横で隠すよう笑ってるフレイの頭を叩いたあと、俺はベッド横に置いてあったある物を手に取った。


 ここにはツキもいねぇし、ちょうどいい。


「……ボスさん?」


「…………」


「……でもどうやってラックに話せばいいんだ……」


「そうだなぁ。坊ちゃんはチェリーボーイだからな」


「いくら失恋のショックからとはいえ坊ちゃんだって初めてを暴走させしちまって傷ついているだろう」


「ツキを溺愛してた分余計にな」


「ハッ……そうだな。そこまで考えが回らなかった……」


「ああ。だからな、厳しくいくが優しさも忘れちゃいけねぇ」


「なるほど……」


「…………」


 感心深く頷くレトとその道の玄人のような眼差しをしている馬鹿共モージーズーを尻目に、俺は手に持っているモノを鞘から抜いた。


「フレイ。巻き込まれたくなけりゃどいてろ」


「っ! はい!」


 背筋を正し、部屋の隅へと素早い動きで移動したフレイはクローゼットの影に身を潜めるように座った。


 ……あいつあそこで見とく気か。


「まぁどうでもいいか」


 ビビりながらもソワソワとした様子のフレイに物好きだなと呆れてつつ、馬鹿共仲間達に視線を戻せばちょうど話も終わりに近づいてきたようだ。


「まぁレト。お前も人生の先輩であり経験豊富な大人である俺達のやり方をよぉく見ておけよ?」


「お前らもいいな? 相手はチェリーちゃん。初めは優しく親身になって話を聞いてあげるんだ。わかったな優しくだぞ?」


「そして何がダメだったのかを教えてあげるんだ。厳しく、だけど優しくをモットーに行くぞ!」


「「「「「おう!!」」」」」


 気合い充分な奴等に俺も気合を入れる。


 ――よし。殺るか。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

処理中です...