不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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20.げッ! 

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「ラック様、お待ちしておりました」


 領主邸のある大きな街。フォレスティア街。俺の体質故にたくさんの人が行き交う大通りは避け、人がいない道を通って姉さんの屋敷に向かった。そして辿り着けばすぐにお屋敷の使用人さんが出てきて中へと案内してくれる。


 姉さんの屋敷は俺達の住む家よりもとても大きく、周囲には沢山の花々が豪華に植えられ飾られている。そして、広い玄関ホールを通って案内された応接室のテーブルの上にもこれまた花のデザインが施された三段造りのおしゃれな透明なガラス台が飾られており、その上にはお菓子がたくさん盛り付けられていた。


「「うわ~!」」


「……」


 普段目にすることのないような華やかで上品な家具達には目もくれず、俺や、疲れたと肩を落としていたフレイ君もそのお菓子の山だけを注視した。興奮に目はキラキラだ。


 やったっす! 着いた途端にボスが「なんか嫌な予感がする」って言って帰ろうとしたの引き留めてよかったっす! 今日は久しぶりに姉さんにも会えてお菓子もあるっすし、話が終わったらボスが街に遊びに連れてってもくれるっすしで最高っすね!


「♪」


 普段から俺は、ボスの仕事にこっそりとついて行く時以外はずっとアジトにいるため、こういう街に出かけることができる日というのは結構貴重な日なのだ。俺の場合、街なんて人の多い場所に行けばトラブルは必須。俺も周囲も無事で済む自信などないため、俺自身も人が多い場所には極力行かないように気をつけている。だけどボスと一緒ならば大丈夫だ! 行きは用心を重ね人通りが少ない場所を通ってきたが、表から聞こえてくる声にすごくワクワクしていたのだ。


 ボスと一緒に街にお出かけなんていつぶりっすかね~。モー達と一緒でも大丈夫っすけど酒屋の飲み屋しか行かないっすからね~。今日はフレイ君もいるしすっごく楽しみっす!


 そうしてソファに座り、食べる許可をもらった俺とフレイ君は機嫌良くお菓子を摘んでいた。気分は最高。……だが、隣に座るボスはだんだんとイライラしてきているご様子。


「……あいつまだかよ」


「姉さん遅いっすね~」


 部屋に通され、少し待っていてくれと言われてから三十分以上経つが姉さんは一向に現れない。どうやら俺達の前に突然の来客があったらしく、その客がなかなか帰らないようだ。


「……ちょっと様子見てくるわ」


「え? ボス?」


「え? あ! お、お待ち下さい!」


 機嫌悪く立ち上がり、さっさと部屋を出て行ったボスのあとを使用人さんが一人慌てて止めに入る。だが、ボスは止まらずそのまま行ってしまう。流石ボス。我が家のような自由さだ。


 ま、もともとボスの家だったっすもんね。


「……行っちゃいましたね」


「……っすね……まぁ、そのうち帰ってくるっすしお菓子食べて待っとこうっす」


 そうフレイ君に声をかけ、止まっていたお菓子を食べる手を再開させた。


 ボスのあとを追いかけたい気持ちも多少あるが、あまり下手に動いてこんな高級感が溢れる品を何か一つでも壊してみよ。目も当てられない事態となってしまう。この部屋ですべき俺の動きは「ソファに座ってお菓子を食べる」、その最小限に抑えるべきなのだ。


 お菓子を食べながらフレイ君と街に行って何をしたいかをお喋りする。フレイ君も街に行くのが楽しみなようでずっとニコニコだ。そんな笑顔に癒され和む。……が、そんな癒しの時間は長くは続かなかった……。


「お、お待ち下さい!」

 
「「?」」


 ボスが出て行った時とは別の使用人さんの声が聞こえた。そして、ボスが出て行った時と同じような言葉を発して誰かを静止しようとしているようだ。その声に俺とフレイ君は二人揃って首を傾げるも、同時に、俺達がいる部屋の扉が開き嫌な声が聞こえた。


「ツキさん! お久しぶりですね!」


「げッ!」



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