不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

文字の大きさ
6 / 150

5.変っすね〜?

しおりを挟む



「……どうっすかイーラさん」


 アジト(家)の一階。陽もずいぶん昇り、温かい日差しが窓から差し込む医務室。その窓辺に置かれているベッドで眠っているのは今朝助けたばかりの美少年君だ。


 俺はそんな美少年君が眠るベッド端に手を置き、しゃがみ込みながら美少年君の手当を行っている、クリーム色の髪を一つに結んだこの狼絆ろうばんの傭兵団の仲間の一人であり、お医者さんでもあるイーラさんを、祈る気持ちで見上げていた。


「――うん、大丈夫だよ。擦り傷と打撲、あと疲労からか熱が出ているようだけど、怪我は軽いしどれも命に別状はないものばかりだから心配しなくても大丈夫だよ」


 美少年君の診察を終え、優し気に目元を和らげるイーラさんに俺はホッとして、ズズズッと鼻を啜った。


「うぅ……よ、よがっだっずぅ……」


 アジトに戻ってきたら美少年君の意識がなかったためすごく焦って心配していたのだ。ボスに言ったら「あ~……じゃあその辺に捨てとけ」しか言わないし。


「まぁ熱は高いから気をつけるに越したことはないけどね」


「ズズっはいっす! 俺、お世話頑張るっす!」


 涙を拭い、美少年君の熱が下がり、早く目が覚めて元気になるよう頑張るぞと気合いに拳を上げた。なのに……


「あははは! それはやめておいた方がいいと思うけど?」


「え? ……ダメなんっすか?」


 笑顔の拒否に気合いに上げた拳が落ち、しょんぼりと肩も落ちた。


 なんでっすか? 俺じゃあ荷が重いって思われてるんっすかね……?


「……俺にだってできるっすよ?」


 確かに不幸体質だけれど寝ている子のお世話くらい俺でも出来るのだ。


「……うん。まぁツキ君がいいのなら別にいいけど。でもボスに怒られるよ?」


「大丈夫っすよ!」


 こんなことくらいでボスは怒らないっすから!


「……その自信どこからくるの? さっきもボスに睨まれたって泣きべそかいてたくせに……。まぁ、ボスの許可を得られたんならしっかり面倒見てあげればいいよ」


「はーいっす♪」


 少々呆れたご様子のイーラさんに機嫌よく返事を返す。


 やったっす♪ 早速ボスから許可をもらいに行かないとっす!


 今ボスは捕まえた商人だか山賊だかの尋問を行なっている。アジトへ帰って来てからだいぶ時間も経つし、そろそろそれも終わる頃だろう。もう許可をもらえる気満々で外の尋問部屋にいるであろうボスの元へ行こうと立ち上がった時、ちょうどボスが扉を開け医務室へと入ってきた。


 ガチャ

「あ、ボス! ちょうどいい所に来たっすね! あのっすね~」


「却下」


「まだ何も言ってないっすよ!?」


 話聞く前からダメって酷くないっすか!?


「ボス! 俺この子のお世話したいっす!」


「ダメだ。その辺にポイしてこい。今すぐ」


「何言ってんっすか!? まだ諦めてなかったんっすか!?」


 なんでお世話したいって言ってるのに捨ててこいって話になるんっすか? 意識ない怪我人相手に鬼っすね!!


「うっせぇ」


「ん?」


 なんだなんださっきからボスの様子がおかしいぞ? ボスの顔を覗き込んでみるとムスッとした顔をしている。


「ボス?」


 いつものボスなら助けた人や怪我人相手にここまで酷いことを言うなんてことはあり得ない。なのに美少年君に対してボスはずっと塩対応だ。どうしてそこまでこの子を捨てたがる。治療も他の保護した人達を最優先とし、熱もあり意識もないこの子を後回しにした。そして、イーラさんが他の人の治療に当たっている間、もう既にここにはいないが、俺を含む他の仲間達を監視に置き、三人でガン見して見張っていろと言うくらいだ。


 変っすね~? どうしたんっすかね?


 くるくるボスの周りを回りながらボスを窺っているとイーラさんが仕方ないなぁというに苦笑し、声を上げた。


「まぁまぁツキ君、今のこのボスはただ拗ねてるだけだから相手にしなくてもいいよ。ほんと厄介だよね~」


「拗ねる?」


 なにに拗ねてるんっすか?


 不思議にイーラさんを見れば、ふっとイーラさんが笑う。


「ほら、ツキ君さっきボスがついてこいって言ったのに僕の方についてき――」


「黙れイーラ。おいツキ、お前ちょっと外でてろ」


「ええ? 何でっすか?」


 ジトーっとボスに疑いの目を向けた。今のボスに信用はゼロだ。もしかして俺がいない間にこの子を捨ててこようだなんて考えているのではないか。


「…………」ジトー


「……ツキてめぇ」


「ははは! 大丈夫だよツキ君。僕がちゃんと見張っておくから。外に出てて」


「……俺いちゃあダメなんっすか?」


 悲しい声が出てしまう。イーラさんが言うのなら信用できるが、俺がいてはダメな話をするのかと思うと仲間外れにされているようでちょっと悲しい。


「…………」ショボン……


「…………そう言えば三馬鹿がお前のこと探してたぞ。なんか頼みたいことがあんだとよ」


「!? え! そうなんっすか!? じゃあ行ってくるっす!」


 それはいけないっす! 大変っす!


 ボスの言葉に慌てて部屋を出る。俺を求めている人がいるのならば急がなくてはいけない。さっきの悲しい気分から一変、うきうきと跳ね急ぎながら三馬鹿達の元へ――あ!


「……単純な奴め」


「……まぁそこがツキ君のいいとこ――」


「忘れてたっす!!」


「「ビクッ」」


 うきうきとスキップで部屋を出るも、大切なことを忘れていたため部屋に戻った。ちょっとボス達が驚いていたようだけれど、それには触れずトコトコと美少年君に近づきヨシヨシと頭を撫でた。


「ちょっと行ってくるっすね。大丈夫っすから安心してゆっくり眠っててくださいっすね~」


「「…………」」


「……よし! じゃあボス行ってくるっす!」


「「…………」」


 バタン



「…………あいつ俺に喧嘩売ってんだろ?」


「……心狭すぎるって……」






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

処理中です...