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73、選択肢

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 ステータスパネルを職業選択のページにして、基本職から一枚めくって上級職のページを見る。

「これは……なんだろう、いつもと違うぞ」

 そこには見慣れない表示がされている。
 確かに新しい上級職らしき名前が表示されているのだが、一つではなく二つ表示されゆっくりと点滅していた。
 ナナもそれを覗き込むと俺に言う。

「これは、どちらかを選択できるっていう表示ね。裕樹がなりたい方の上級職を選ぶことが出来るわ」

「つまり覚醒スキルの武具覚醒で転職できる職業が二つあるけど、どちらかしか選べないってことか? ナナ」

 俺の言葉にナナはこくりと頷く。

「そういうことになるわ。裕樹、どうする? 慎重に選ばないと」

「ああ、そうだな」

 こういうこともあるのか。
 二つの選択肢があって、そのどちらかを選ばないといけない。
 ナナが言うように転職する前によく考えないと。
 俺は改めて点滅している二つの上級職を見比べる。

「一つはソードマスターだな。ナナ、これはどんな職業なんだ?」

「ええ、名前の通り剣技の達人ね。剣で戦うことが多いユウキにとってはいい職業だと思うけど?」

「確かにそうだな。悪くないと思う」

 シーカーと鍛冶職人の上級職か。
 元々シーカーが、剣士の上級職でもあるからな。
 それに鍛冶職人の武器に対する熟達した知識も加わって剣技の達人への道が開かれたってわけか。
 ナナは俺に言う。

「どうする、裕樹。ソードマスターにする?」

「う~ん、そうだなぁ」

 確かにソードマスターってなんだか格好いいよな。
 でも、俺はもう一つの職業にも強くひかれた。

「でも、もう一つの鍛冶の求道者も気になるよな」

「そうね、食の求道者もいい職業だったし……でも、あんまり戦闘向きの職業じゃないわよ」

「確かにそうだよな。ジュリアも武具覚醒を持ってるし鍛冶戦士みたいな職業が表示されると思ってたんだけど……」

 あの時、確認したジュリアの職業は鍛冶竜戦士だった。
 彼女も確か覚醒スキルに武具覚醒を持ってたし、俺も同じように鍛冶にも長けた戦闘職が出てくるんじゃないかって思ったんだけどさ。
 ナナが俺に言う。

「職業はその人の適正もあるから、すべての人に同じ職業が現れるとは限らないわ。特に上級職はね。裕樹の場合、ソードマスターと鍛冶の求道者への適性があるってことだと思うけど」

「なるほどな」

 あのとんでもないステータスから見ても、ジュリア自身はもちろんだけど竜人族が鍛冶師としても戦士としても適性の高い種族なのだろう。
 だから、ジュリアには鍛冶竜戦士という職業が現れたのかもな。
 仮に俺に鍛冶戦士のような職業が現れたとしても、ジュリアにはとても敵わない気がするし、人間にだってシロウさんみたいな凄い人もいる。
 進む道は人によって違うってことだ。

 だとしたら──

 俺は、ステータスパネルに記された自分の選択肢を見つめた。
 そして、その一つに指を伸ばす。

「裕樹、決めたのね!」

「ああ、ナナ。俺はこっちに決めた!!」

 そう言って俺は、二つの選択肢の中から一つの上級職を選んだ。
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