上 下
65 / 82

65、変幻自在

しおりを挟む
 ジュリアの大剣を俺が手にした白狼丸が受け流す。
 極限までの集中力が、俺にジュリアの動きを捉えさせる。
 それだけじゃない、白狼丸に宿る力が俺に普段以上の力を与えてくれているのが分かった。

「へえ、どうやら口だけではないようだ。少しはやるようだね。だが、その刀を使ったのなら、そうじゃないなら興覚めさ!」

 再びジュリアの剣が俺に向かって振るわれる。
 それが白狼丸とぶつかり合い再度激しい音が周囲に鳴り響いた。

 同時に、竜人族の強烈な力で振るわれた大剣を受けたその勢いを利用して、俺はまるでコマのように反転しながら宙を舞うと凄まじい速さで白狼丸を一閃する。
 相手の力を利用した技だ。

 ただの剣士じゃない。
 剣士と狩人の上級職であるシーカーとしての身の軽さを利用した変幻自在の技だ。

 並みの相手なら、どこから攻撃をされたのかさえ分からずに斬り伏せられているだろう。
 だが、宙を舞った俺の一撃を、ジュリアの目が射抜いている。

 それを受け止め、軽々とその攻撃を弾き返した。

 俺は身を翻すとこちらに向けられた大剣の表面を踏み台にして更に空へと舞う。
 そして、上空の死角からジュリア目掛けて連続突きを放った。

「はぁあああああ!!」

 気合もろとも放った無数の突きが、ジュリアを貫いたと思ったその刹那──
 凄まじい数の火花が俺たちの間に舞い散った。
 それは俺が放った突きの全てを、ジュリアが受け流した証だ。

 俺は、舞うように体をひねるとジュリアから少し離れた場所へと着地する。

 そんな俺の姿を、ジュリアは見つめていた。
 まさに静と動といったように、再び俺たちは静かに対峙していた。

 ジュリアの肩に俺の突きが付けた浅い傷口が幾筋か見える。
 そして、竜族の女の髪が僅かだが鮮やかにあたりに舞い散った。

 激しい攻防戦に、俺たちの戦いを見ていた鍛冶職人たちから声が上がった。

「なんという………まさに変幻自在だ」

「ああ、腕の立つお方だとは聞いていたが、信じられぬほどの腕前だ!」

「ジュリア様の体に傷をつけるなど、あり得ない!!」

 鍛冶巫女たちからも吐息のような声が漏れる。

「それに、まるで舞うように……」

「ええ、なんて美しい身のこなしなのかしら!」

「これがユウキ様の剣!」

 ナナとククルも声を上げる。

「裕樹凄いわ!!」

「はう~、ユウキお兄ちゃん強いのです!」

 レイラが拳を振り上げる。

「ユウキいいわよ! そんな女、やっちゃいなさい!!」

 ジュリアは俺を見つめると、大剣を片手に俺に手招きをする。

「あんたもそう思うかい? だったらもう一度やってみな。今の技があたしにもう一度通じるかどうかをね」

 浅いとは言え俺の突きで傷を負ったにもかかわらず、その目は余裕に満ちている。
 あの余裕はなんだ?

 ステータスに見た目ほどの違いはないはずだ。

 覚醒スキルの滋養強壮も効果を発揮している。
 あれで俺のステータスは全て10パーンセントアップしている。

 それだけじゃない、釜めしや、うな重を食べた効果も発揮しているはずだ。
 後でナナに聞いた話だと、滋養強壮の効果で最大で30パーセントまでは食べたものによってステータスがアップするらしいからな。

 力や体力はともかく、少なくとも速さに関してはそれほどの違いがあるとは思えない。
 それに白狼丸が俺に力を貸してくれているのが分かる。

 カレンさんは両手を胸の前に合わせると祈っている。
 それが白狼丸に宿った霊力をさらに高めているように感じた。

「気おされるな」

 俺は自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
 みんなが俺を応援してくれてるんだ!

 第一、弱気になって立ち向かえるような相手じゃない。
 俺は息を吐いて、ジュリアを見据える。
 そして、白狼丸をしっかりと握り締めた。

「行くぞ、ジュリア!!」

「来な、坊や! 本当の剣技を教えてやるよ」
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~

雪華慧太
ファンタジー
理不尽なイジメが原因で引きこもっていた俺は、よりにもよって自分の誕生日にあっけなく人生を終えた。魂になった俺は、そこで助けた少女の力で不思議な瞳と前世の記憶を持って異世界に転生する。聖女で超絶美人の母親とエルフの魔法教師! アニメ顔負けの世界の中で今度こそ気楽な学園ライフを送れるかと思いきや、傲慢貴族の息子と戦うことになって……。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

異世界召喚されたと思ったら何故か神界にいて神になりました

璃音
ファンタジー
 主人公の音無 優はごく普通の高校生だった。ある日を境に優の人生が大きく変わることになる。なんと、優たちのクラスが異世界召喚されたのだ。だが、何故か優だけか違う場所にいた。その場所はなんと神界だった。優は神界で少しの間修行をすることに決めその後にクラスのみんなと合流することにした。 果たして優は地球ではない世界でどのように生きていくのか!?  これは、主人公の優が人間を辞め召喚された世界で出会う人達と問題を解決しつつ自由気ままに生活して行くお話。  

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

処理中です...