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66、燃え上がる剣
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余裕の眼差しでこちらを眺めるジュリアを睨んで、俺は気合を込める。
「はぁあああああ!!」
そして、全身の感覚を研ぎ澄ました。
集中力が限界を超えて高まっていくような感覚に、木々から舞う一枚一枚の木の葉さえも止まって見える。
静かだ。
目の前の相手の強烈な闘気に、まるでこの場に俺とジュリアしかいないようにさえ感じる。
誘うように大剣を大上段に構えるジュリアの剣が、頭上に上がっていくその最中、俺は一気にジュリアの懐に飛び込んでいた。
低い姿勢で、まるで獲物を狙う獣のように鋭く相手の間合いへと飛び込む。
ジュリアの剣が俺目掛けて振り下ろされ、紅蓮に揺らめくような刃文が俺の視界を掠める。
今度は俺の頬に浅い傷が刻まれて、大剣に斬り飛ばされた俺の髪が一房、周囲に舞い散った。
ギリギリのところで、ジュリアの一撃をかわした俺は体を捩じるようにして地を這うようにしたから一気に刀を斬り上げる。
力は相手の方が上だ、普通に戦っても勝てはしない。
だけど相手は俺を格下だと思って、余裕を見せている。
油断をしている今なら勝ち目はある。
こちらから仕掛けると見せて、相手の技を誘ってさし返す。
自分を囮にして放った、捨て身のカウンターだ。
これはかわせないはずだ。
俺の刃がジュリアの喉元に迫る。
自信を持って放った俺の一撃をジュリアの瞳は見つめていた。
「遅いね。止まって見えるよ」
ジュリアがそう口にしたその時はもう、俺は彼女の大剣の側面に横から激しく叩きつけられて吹っ飛んでした。
「ぐはっ!!!」
地面を転がりながら、体がきしむような痛みを感じて思わず声を上げる。
一体何があったんだ?
あの一瞬、俺は勝利を確信した。
実際に後僅かでジュリアの喉元に刀を突きつけることが出来ただろう。
でも、気が付くと次の瞬間にはもうジュリアの剣が俺の体を捉えていた。
「う……ぐ……」
くそ、体が思うように動かない。
俺は必死に身を起こそうと白狼丸を握る手に力を込める。
霞かけた目にうつるジュリアの胸元には、何かの紋章のようなものが浮かび上がっている。
そして、彼女の全身を覆うような闘気は先ほどとは比べ物にならない程高まっていた。
ジュリアが手にする剣が実際に炎に包まれていく。
まるでそれはあの大剣が彼女の闘気に応えているかのようだ。
ジュリアは俺を眺めながら言った。
「小手先の技じゃ勝てやしない。その心を、魂を燃やして戦わない限りはこのあたしには通じはしないんだよ。それに、あたしとこの炎竜剣グラファトスが認めた白狼丸の持主はシロウだけだ、今も昔もね」
「はぁあああああ!!」
そして、全身の感覚を研ぎ澄ました。
集中力が限界を超えて高まっていくような感覚に、木々から舞う一枚一枚の木の葉さえも止まって見える。
静かだ。
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低い姿勢で、まるで獲物を狙う獣のように鋭く相手の間合いへと飛び込む。
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力は相手の方が上だ、普通に戦っても勝てはしない。
だけど相手は俺を格下だと思って、余裕を見せている。
油断をしている今なら勝ち目はある。
こちらから仕掛けると見せて、相手の技を誘ってさし返す。
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これはかわせないはずだ。
俺の刃がジュリアの喉元に迫る。
自信を持って放った俺の一撃をジュリアの瞳は見つめていた。
「遅いね。止まって見えるよ」
ジュリアがそう口にしたその時はもう、俺は彼女の大剣の側面に横から激しく叩きつけられて吹っ飛んでした。
「ぐはっ!!!」
地面を転がりながら、体がきしむような痛みを感じて思わず声を上げる。
一体何があったんだ?
あの一瞬、俺は勝利を確信した。
実際に後僅かでジュリアの喉元に刀を突きつけることが出来ただろう。
でも、気が付くと次の瞬間にはもうジュリアの剣が俺の体を捉えていた。
「う……ぐ……」
くそ、体が思うように動かない。
俺は必死に身を起こそうと白狼丸を握る手に力を込める。
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そして、彼女の全身を覆うような闘気は先ほどとは比べ物にならない程高まっていた。
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まるでそれはあの大剣が彼女の闘気に応えているかのようだ。
ジュリアは俺を眺めながら言った。
「小手先の技じゃ勝てやしない。その心を、魂を燃やして戦わない限りはこのあたしには通じはしないんだよ。それに、あたしとこの炎竜剣グラファトスが認めた白狼丸の持主はシロウだけだ、今も昔もね」
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