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349、床のパネル

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「隠れ家ってここがですか?」

「ああ、そうだ。エイジ」

 巨大な通路。
 その壁の前に立つラエサル。
 そこには何の入り口も見えない。
 エリスやリアナは好奇心に満ちた目をしながら、ラエサルの言葉に従って後ろに下がる。

「どんな場所なのかしら」

「ええ、何だかワクワクするわ」

 右手に持ったナイフを、通路の床の隅に差し込むように突き立てるラエサル。
 よく見ると、そこには僅かな切れ目がある。
 ナイフの先をテコのように使って、ラエサルは小さな蓋のような物を開ける。
 エイジは後ろからそれを覗き込むと思った。

(何だか映画とかに出てくる、研究所のパネルみたいだな)

 ラエサルが開いた小さな蓋の奥には、まるで科学的な研究施設のようなモニタつきのパネルがついている。
 キーラが言う。

「先に言っておくけど、ララリシアはご機嫌斜めよ。最近ラエサルが来ないってね」

「のようだな。返答がない」

「怒ってるんでしょ。中に入ったらご機嫌取っておくのね」

 キーラとラエサルの会話に、一行は再び首を傾げた。
 エリスとリアナがラエサルに尋ねる。

「ねえ、ラエサルさん。ララリシアって誰なの?」

「キーラさんみたいに、仲間の冒険者とか?」

 それを聞いてキーラが愉快そうに笑った。

「冒険者って、ララリシアが? ふふ、会ってみれば分かるわよ」

 二人の様子を見て悪戯心が湧いたのか、ラエサルにも口止めするキーラ。
 すると、まるで何かがこちらの様子を観察し確認したかのように、パネルが淡く光る。
 それを確かめるとラエサルは、静かにパネルの蓋を元通りにした。
 静かに閉まったそれは、もう他の床の部分と区別が無いように見える。
 キーラが巨大な通路の壁を眺めながら言った。

「開くわよ」

 その言葉通り、壁に人が通れるほどの黒い穴が開く。
 そこから先は細く長い通路のようだが、暗くてその中の様子はよく見えない。
 オリビアは思わず警戒した様に剣を構えた。

「な、何!? これ、どうなっているの?」

 アンジェも頷く。

「ええ、さっきまではこんな通路なかったわ!」

 エイジも、エリスやリアナと顔を見合わせて驚いている。

「どんな仕組みになってるんだ?」

「突然開いたように見えたわ……」

「こ、この先に進むの?」

 思わず心配そうに中を見つめるリアナ。
 キーラは肩をすくめると、真っ先に開いた通路の中に入っていく。
 そして、仲間たちを振り返ると言った。

「ほら、心配しないでついてきなさい」

「ああ、心配は要らん」

 キーラの言葉にラエサルも頷いた。
 エイジたちは戸惑いながら顔を見合わせたが、頷くとキーラの後に続く。
 最後にラエサルも入ると、その入り口は無かったかのようにすっと閉じていく。
 同時に辺りは闇に包まれた。
 アンジェが思わずラエサルの服をギュッと握った。

「扉が閉まっちゃったわよ?」

「心配するなと言っただろう、アンジェ」

 男勝りのアンジェも、勝手が分からない暗闇で緊張しているのだろう。
 それでもラエサルにそう言われて安心した様子である。
 次第に辺りに淡い光が満ちていく。
 キーラがそれを見て笑った。

「ララリシアったら。少しは機嫌が直ってきたようね」

 その時──
 エイジたちは絶句した。
 薄暗かった周囲の様子が明らかになったからだ。
 エリスとリアナは、エイジの腕をギュッと掴む。

「エイジ!」

「こ、これは一体何なの?」

 エイジも呆然と周囲を見渡して答えた。

「ああ……何なんだここは」 
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