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327、精霊銀の輝き
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「みんな、気を付けて。この先に何かの群れがいるわ」
(地下七十階層っていば、完全にSランクの冒険者のパーティしか立ち入れない場所だもの。どんな危険な魔物がいてもおかしくないわ)
ましてや、それが群れとなっていれば。
ラエサルがいるとはいえ、アンジェとしては自分たちの力で乗り切って見せたいのだろう。
そして、それは緊張感を維持させいい経験にもなる。
その為にはエイジはもちろんだが、もう一人の重要なカギとなるのがシーカーである自分だと言うことは良く分かっている。
【索敵】のスキルはシーフの時に比べてその範囲も、感覚も上がっている。
研ぎ澄ました感覚が、広範囲の敵の数を把握させる。
「この通路の奥……右側に十二、左に十、その先に一頭強い気配を感じる」
ラエサルが頷いた。
「いいセンスをしている。俺も同意見だ、アンジェ」
ラエサルに褒められて一瞬嬉しそうな顔をするアンジェだが、直ぐに真顔に戻る。
「エイジ、先頭をお願い。私が一緒に行くわ、オリビアは少し下がってエリス達のガードを。エリス達は後方から援護をお願い」
「ああ、分かったアンジェ」
一歩前に進み出るエイジ。
オリビアやエリスたちも同意する。
「了解よ、アンジェ。後衛のガードは任せて!」
「魔法で援護するわ!」
「支援と回復は任せて頂戴!」
敵の気配を感じることが出来る、アンジェ。
だからこそ、そのアンジェが適切な陣形を指示することがパーティにとっては大切である。
ラエサルは頷いた。
「アンジェ。ここからは危険を感じた時は、お前が作戦や陣形を提案する役割を担うことになるだろう。重要な役回りだぞ」
その言葉にコクリと頷くアンジェ。
エイジは先頭に出ると、アンジェに言った。
「アンジェ、頼りにしてるぜ!」
「エイジ……」
自分を信頼して正面に立つエイジの姿。
(頼りにしてるのは私の方だわ。エリクが言ってたけど、エイジがいるだけでグッとパーティの安全性は上がるもの)
鍛冶職人のスキルを活かした凄まじい剣技。
そして、精霊の力を宿した剣。
彼が先頭に立つことで、前衛を乱される確率は格段に低くなる。
そうなればエリスの強力な魔法も、より効果的な場面で放たれることになるだろう。
それにアンジェの言葉に一欠けらの疑問を持たずに立っている少年の姿は、アンジェにとっては眩しかった。
(信頼できる仲間……)
それはアンジェが、ずっと欲しかったものだ。
彼の周りにはそんなみんなが集まって来る。
自分がダークエルフであることなど、忘れてしまいそうだ。
アンジェは、エイジの隣に立って剣を構える。
「ねえ、エイジ」
「ん? どうした、アンジェ」
ダークエルフの少女は首を横に振ると、少年にそっと囁いた。
「ううん、何でもない。ありがとう、エイジ」
「はは、何だよ急に。さあ行こうぜ」
「ええ、そうね!」
二人は顔を見合わせて頷くと、広い通路を進み敵のテリトリーへと足を踏み入れた。
その瞬間──
魔物の気配を感じたのだろう、リイムとミイムも臨戦態勢に入る。
『沢山いるわ、気を付けてエイジ!』
『ミイムも一緒に戦うです!』
リイムの力が青い剣にそしてミイムの力が赤い剣に、精霊剣が両手に輝いている。
二人とエレメンタルフュージョンを終えたエイジを、ファルティーシアが見つめる。
その目は、どこかうずうずしたように見えた。
『二人を見ていたら、何だか私も昔を思い出してきましたわ!』
『ファルティーシアさん?』
実体かしていたファルティーシアが、光の存在へと変わっていく。
それがエイジの体を柔らかく包み込んでいった。
淡い光を放つエイジの装備。
(これは……)
その瞬間──
精霊銀で出来たエイジの額当てが輝く。
エイジは自らの内側から響くファルティーシアの声を聞いた。
『行きますわよ! エイジ』
(地下七十階層っていば、完全にSランクの冒険者のパーティしか立ち入れない場所だもの。どんな危険な魔物がいてもおかしくないわ)
ましてや、それが群れとなっていれば。
ラエサルがいるとはいえ、アンジェとしては自分たちの力で乗り切って見せたいのだろう。
そして、それは緊張感を維持させいい経験にもなる。
その為にはエイジはもちろんだが、もう一人の重要なカギとなるのがシーカーである自分だと言うことは良く分かっている。
【索敵】のスキルはシーフの時に比べてその範囲も、感覚も上がっている。
研ぎ澄ました感覚が、広範囲の敵の数を把握させる。
「この通路の奥……右側に十二、左に十、その先に一頭強い気配を感じる」
ラエサルが頷いた。
「いいセンスをしている。俺も同意見だ、アンジェ」
ラエサルに褒められて一瞬嬉しそうな顔をするアンジェだが、直ぐに真顔に戻る。
「エイジ、先頭をお願い。私が一緒に行くわ、オリビアは少し下がってエリス達のガードを。エリス達は後方から援護をお願い」
「ああ、分かったアンジェ」
一歩前に進み出るエイジ。
オリビアやエリスたちも同意する。
「了解よ、アンジェ。後衛のガードは任せて!」
「魔法で援護するわ!」
「支援と回復は任せて頂戴!」
敵の気配を感じることが出来る、アンジェ。
だからこそ、そのアンジェが適切な陣形を指示することがパーティにとっては大切である。
ラエサルは頷いた。
「アンジェ。ここからは危険を感じた時は、お前が作戦や陣形を提案する役割を担うことになるだろう。重要な役回りだぞ」
その言葉にコクリと頷くアンジェ。
エイジは先頭に出ると、アンジェに言った。
「アンジェ、頼りにしてるぜ!」
「エイジ……」
自分を信頼して正面に立つエイジの姿。
(頼りにしてるのは私の方だわ。エリクが言ってたけど、エイジがいるだけでグッとパーティの安全性は上がるもの)
鍛冶職人のスキルを活かした凄まじい剣技。
そして、精霊の力を宿した剣。
彼が先頭に立つことで、前衛を乱される確率は格段に低くなる。
そうなればエリスの強力な魔法も、より効果的な場面で放たれることになるだろう。
それにアンジェの言葉に一欠けらの疑問を持たずに立っている少年の姿は、アンジェにとっては眩しかった。
(信頼できる仲間……)
それはアンジェが、ずっと欲しかったものだ。
彼の周りにはそんなみんなが集まって来る。
自分がダークエルフであることなど、忘れてしまいそうだ。
アンジェは、エイジの隣に立って剣を構える。
「ねえ、エイジ」
「ん? どうした、アンジェ」
ダークエルフの少女は首を横に振ると、少年にそっと囁いた。
「ううん、何でもない。ありがとう、エイジ」
「はは、何だよ急に。さあ行こうぜ」
「ええ、そうね!」
二人は顔を見合わせて頷くと、広い通路を進み敵のテリトリーへと足を踏み入れた。
その瞬間──
魔物の気配を感じたのだろう、リイムとミイムも臨戦態勢に入る。
『沢山いるわ、気を付けてエイジ!』
『ミイムも一緒に戦うです!』
リイムの力が青い剣にそしてミイムの力が赤い剣に、精霊剣が両手に輝いている。
二人とエレメンタルフュージョンを終えたエイジを、ファルティーシアが見つめる。
その目は、どこかうずうずしたように見えた。
『二人を見ていたら、何だか私も昔を思い出してきましたわ!』
『ファルティーシアさん?』
実体かしていたファルティーシアが、光の存在へと変わっていく。
それがエイジの体を柔らかく包み込んでいった。
淡い光を放つエイジの装備。
(これは……)
その瞬間──
精霊銀で出来たエイジの額当てが輝く。
エイジは自らの内側から響くファルティーシアの声を聞いた。
『行きますわよ! エイジ』
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