超変態なジャン=ジャック・ルソーの思想がフランス革命を引き起こすまで

MJ

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ジャン=ジャック・ルソー

不倫関係

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サン=ジャック館に泊まった時、ラルナージュ夫人がルソーを誘った。

「散歩に行きましょう」

「トリニャン公爵も行くかな」

「トリニャン公爵は出歩くのがお嫌いだから行かないそうよ」

ルソーはラルナージュ夫人と2人っきりになる事に警戒した。

もし、ここで誘惑に負けて心を許したら、後でトリニャン公爵と一緒に散々からかわれるに違いない。ルソーはそう思って疑わなかった。

ラルナージュ夫人はルソーの腕に手を絡めてきた。妙に胸を押し付けてくる。柔らかい感触がルソーの欲情を掻き立てる。

(ここで勘違いしてはダメだ。この人は若い僕をからかっているに違いない。笑いものになんてならないぞ)

臆病でプライド高く、うぶでまっすぐなルソーはラルナージュ夫人の誘いに一歩も乗らない。いや、勇気がない。

しかし、そんなルソーを焦れったく思ったのか、ラルナージュ夫人は直接的な行動に出た。

ルソーの頭を掴んで首に手を回し、くちびるを重ねてきたのだ。

「うっ」
ラルナージュ夫人の強引な行動にルソーは戸惑った。

「ねえ、ダディングさん、私、もう我慢できないの」

「そ、そんな。本気なんですか」

「前からずっと言ってるじゃない。私はあなたの事が好きなの」

「からかってたんじゃないんですか」

「からかいなんかするもんですか」

「えーーー」ルソーは心の底から喜んだし、自信を持った。

「私じゃ駄目かしら」

「駄目なわけないです。お慕いしております」

ルソーはこの時から、ラルナージュ夫人と情事を重ねるようになった。トリニャン公爵にバレないようにこっそり部屋を抜け出し逢い引きを繰り返した。

秘密の中にとげる行為はことさら官能を増すことになった。

ルソーにとっては初めての快楽に集中できる情事であった。

ママンの時にはこうはいかない。ママンのことを本気で愛しすぎていて罪悪感がルソーを快楽に溺れさせないでいた。ママンとの時には悲哀感がルソーをいっぱいにしてしまうのだ。


トリニャン公爵はそれまでと変わらない態度でルソーの事を冷やかすような言葉を投げかける。

「トリニャン公爵はまだ僕たちの関係に気づいてないようだね」

「彼は気づいているわ。ただ、あの人はとても紳士的に振舞っているだけ」

「見て見ないふりをしてくれてるってこと」

「そうよ」

ルソーはトリニャン公爵の懐の大きさに感心した。そして、それまでずっとからかわれていると思って警戒していた自分がとても幼く感じた。

しかし、旅中の恋は長くは続かない。

お別れの時が来た。

ルソーは念入りにもう一度会う手筈を整えて別れた。別れる時にラルナージュ夫人はまとまったお金をルソーに渡そうとした。

ルソーはもちろん断った。その申し出を断るのには大変骨の折れるものだった。それだけ、ラルナージュ夫人はルソーの事を思ってくれていた。その事がルソーを最も喜ばせた。

この恋はルソーからうつ病を取り除いて自信を持たせることに役立った。

それから、モンペリエの医師に診てもらったが、どの医者も病気の事がさっぱりわからず適当な処方をするだけだった。

ルソーはこんな所にいても何もならず、お金を浪費するだけだと思い、ママンのところに帰ることにした。

しかし、ママンの所に戻ったルソーは衝撃を受けた。
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