ヒカリノツバサ~女子高生アイドルグラフィティ~

フジノシキ

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第2章 アイドル同好会!

玲、はじめてのアイドル同好会

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 ホームルーム終了のチャイムが鳴る。
 カバンに荷物をしまった佑香、美空、亜紀の三人が、教室の窓側の席へ行く。

「れいちゃん、一緒に部室に行こう! もう行ける?」
「うん、大丈夫」

 玲は準備万全でホームルーム前にすべての荷物をしまっていた。おかげでホームルームでメモしなければいけない話について、咄嗟にノートではなくスマートフォンのメモ帳に打ち込む羽目になった。先生の話を聞きながらスマートフォンは行儀が悪かったかなと思ったが、それよりもクラスメイトと一緒に部活に行けるということの嬉しさの方が上回っていた。

「失礼します」

 美空が部屋のドアをノックしてから、「アイドル同好会」のネームプレートが掛かったドアを開ける。玲がどれくらい多くの人がいるのかと、どきどきしながら部屋に入っていくが、部屋は小さく、中には眼鏡をかけた生徒が一人いるだけだった。

「こんにちわ、みんな。今日も早いのね」
「さやか先輩、見学希望の子を連れてきましたっ」
「あら、本当? 昨日の今日でさっそくね」

 そう言って紗夜香が席を立つ。玲が佑香の横に並ぶ。

「さやか先輩、うちのクラスの成瀬玲ちゃんです。玲ちゃん、こちらがアイドル同好会の会長の及川紗夜香先輩だよ」
「成瀬、玲です。よろしく……お願いします」

 やはり初対面の挨拶は緊張してぶっきらぼうになってしまう玲。返事が来ないので話し方が失礼だったかと思い、玲が謝ろうとしたところ、紗夜香が口を開いた。

「あ、ごめんなさい。及川紗夜香です。綺麗すぎて見惚れちゃったわ。成瀬さん事務所に入ってたりする? それとも読モやってたりするのかしら」
「え、そんな、こと、ない……です」

 玲があわてて否定をする。事務所というのが芸能事務所を指していることを玲はわからなかった。だが、読モが読者モデルのことだというのは、最近ファッション雑誌を読むようになっていたので玲にもわかった。色んな服を着てかわいいポーズを決める読者モデルと自分が間違われたことが、玲には何故かわからなかった。衣装だけでも真似てきているからだろうか。

「紗夜香先輩。玲ちゃんはとりあえず見学希望ということなので、よろしくお願いします」

 美空の声を受け、紗夜香が玲に話し掛ける。

「わかったわ。じゃ今日は私とお話しましょう、成瀬さん」
「はい……」

 元々人見知りが激しい方なので、優しそうな先輩で良かったと一安心する玲。アイドル同好会ということで、もっとアイドル然としたテンションの高い人達ばかりだったらどうしようと不安に思っていたところだった。


 今日も、昨日に引き続き、佑香と美空が『CANDY☆CANDY☆STORY』のCD音源に合わせて歌練習を始める。その様子を見ながら、紗夜香が玲に話し掛ける。

「成瀬さんは、アイドルに興味があって来てくれたの?」

 そう聞かれて、玲が言葉を選びながら答える。

「その、アイドルは、よくわからなくて。自分とは違う世界の話と思っていて。でも、三人が誘ってくれたから……」
「そっか。……うん、そうよね。アイドルになりたい、って思っていたら今頃どこかの事務所からスカウトされているはずだしね」
 
 そうやって笑いかけてくる紗夜香の言葉で、初めて事務所というのが芸能事務所のことだとわかる玲。皆、玲の見たままを褒めているのだが、玲本人はなぜそんなに自分のことを持ち上げてくるのかがわからなかった。

「成瀬さんくらい美人だとわからないかもしれないけど、アイドルの魅力はね、普通の女の子がステージの上では別の自分に生まれ変われることなの」

 その紗夜香の言葉にはっとする玲。まさに、高校生になって別の自分になりたかった玲にとって、その言葉は胸に響いた。

「今そこで練習している佑香ちゃんも美空ちゃんも、ステージに上がればもっと光り輝く存在になれるの。だから、成瀬さんもアイドルに少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいわ」


「歌はだいたい覚えたね」
「うん、あとはダンスも覚えなきゃだね」

 佑香と美空が会話する。

「わたし、よく家でライマスの真似して踊りながら歌うんだけど」
「佑香ちゃんそんなことしてるんだ」
「えへへ。それでね、踊りながら歌うとすごいハードなの。全力疾走しながら歌うようなものだから、後半は息が上がっちゃうしダンスもつらくなってくるんだ」
「へえ、じゃ体力作りとかもしなくちゃだね」

 二人の会話に紗夜香が入ってくる。

「そうね。先輩たちは運動系の部活に交ざって一緒に川沿いをランニングしていたわ」
「川沿いのランニングですか。アイドルって結構体育会系なんですね」
「ライマスのアニメでもみんな階段ダッシュとかやってたなぁ」

 その言葉であることを思い出した佑香が紗夜香に質問する。

「そういえば、ランニングや河川敷での練習って学ジャーですか? それとも私服のトレーニングウェアとかですか?」

 学ジャーとは学校指定ジャージのことである。私服の南女だが、体育の授業用にジャージは学校指定のものがあった。

「先輩たちは学ジャーだったわ。もちろん自分でトレーニングウェアを持ってきても問題ないわよ」
「学ジャーかぁ。ライマスだとみんなが可愛いトレーニングウェア着てたので……」

 ちょっとがっかりする佑香。その様子を見た美空が笑いながら話し掛ける。

「佑香ちゃん、私中学のとき着ていたウェアがあるよ。しばらく学ジャーで、練習が本格的になってきたら一緒にトレーニングウェアにしない?」
「うん、みそらちゃんそうしよう!」

 美空の言葉に喜ぶ佑香。


 その後、今日の練習が終わりということで佑香と美空が帰りの支度を始めたところで、玲が紗夜香に声を掛ける。

「あの、先輩」
「ん、なにかしら?」
「実は、お願いしたいことが……」

          ★

 学校の正門を出る五人。見事に五人が別方向の帰り道のため、正門前で解散となる。

「じゃあねー」
「ほなまた明日なー」

 みんなと別れた後、玲はしばらく一人で色々と考えていた。

「(そうか、別に部活に入ったからといっても帰りにみんなでスイーツ食べに行ったりはしないんだ……)」

 少し思い描いていたものと違ってがっかりする玲。しかし、それ以上の喜びが今日はあった。

「やっとクラスの人とお話できた。友達になれるといいな……」

 玲の足取りは、高校に入ってから一番軽かった。
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