61 / 106
5章 激闘、二回戦!
029話 技術と、集中力と ②
しおりを挟む
***
SIDE:YUKI
「最後のナックル?」
「はい、たぶん」
戻ってくるアリスを迎える。スポドリを渡すがそこまで疲れてもいないだろう。
アリスには最初の二ゲームを静香の分析のために使ってもらった。おかげで私の知っている中学三年の妙高静香と今の妙高静香の差はほぼ埋めることができた。
「最後のやつ、ナックルじゃなく本当に回転かけてくるのもあるから気を付けな」
「はい」
「あとはもう私からの制限はナシ。百二十パーセントの有栖川稔里を見せてこい!」
「はい!」
ここからがアリスの高校デビュー。会場中で一番楽しみにしているのは、絶対私だ。
***
SIDE:SHIZUKA
第三ゲーム。
もちろんこのゲームを取って3-0で終わらせる。
だからといって油断は絶対にない。あのアリスちゃんがこのままなはずがない。
初球、相手のサーブ。これまで多用しているバックハンドへのミドルレンジの下回転サーブ。チキータで返せると判断し捲り上げる。
そのままこれまでと同様のバックハンドドライブの打ち合いになるが、向こうはこれまでのようにコースを突いたりすることなく、アリスちゃん自身にとっての最も威力の出るコースに連続で打ち続け、最後は七球目の威力に負けてコートオーバーしてしまう。
「ヨォーッシ!」
打ち勝ったアリスちゃんが左手のガッツポーズと共に吠える。
やっぱり最初の二ゲームは捨てゲームでこちらの分析をしていたらしい。
感情を前面に出してくる本来の有栖川稔里。ここからが本番だ。
いいだろう、こっちも第二シード校のエースの実力を思い知らせてあげる。
二球目、意表を突くフォアハンドへのロングサーブだったが、こちらはアリスちゃんの性格的にこれが来ると読んでいた。ストップでフォア側のネットぎりぎりへ短いボールを返すと、いくら腕の長いアリスちゃんでも前のめりにならざるをえない。そこをしっかりとスピードドライブで今度はこちらが得点する。
その後も、若干私がリード気味に試合を進めるが、肝心なもう一点ここで差を広げて、というポイントはことごとく向こうに取られて点差を広げることができない。
私は中学時代の会話を思い出していた。
** ***
「あー、またデュース取れなかった!」
一年同士で試合をしていた刈屋ちゃんと有栖川ちゃんが試合を終え、刈屋ちゃんがこちら側へ戻ってくる。
「刈屋、なんでアリスちゃんに勝てないか自分でわかっている?」
少し意地悪な質問だったが刈屋ちゃんはこれくらいハッキリと言った方が良いタイプだ。
「総合力、ですか?」
「そんなので試合に勝てたら私だって絵東に負けないよ。スポーツで勝つには強みが必要。絵東は相手の分析力が化け物だし村川は攻撃力なら市内、いや道内でもトップじゃないかな」
「じゃ私に強みがないからですか」
「そういう僻みはダメ。刈屋の攻撃力は見てきた一年生の中じゃトップクラス、うちの団体戦レギュラーにも引けを取らないよ」
「だったら何で……」
たかだか数か月見てきただけだが、有栖川ちゃんの強さは間違いなくこれだった。
「アリスちゃんはね、集中力が常人離れしてるの。例えば6-9で負けていて次の一点、みたいなこの一点は絶対に取らないといけないってシチュエーションあるでしょ」
「はい」
「あれ、実際に得点できるのって何パーセントくらいだと思う?」
「え、七十パーセントくらいですか?」
刈屋ちゃんはまだ中学一年生、普通はそう思う。
「三十パーセントくらいらしいよ。絶対に取るっていう気合は筋肉の硬直とか視野の狭さとかマイナスに働く方が多いんだって」
「そうなんですか」
「もちろんウチの子はみんなここ一番を勝ってきた子たちばかりだから五十パーセントくらいにパーセントは上がるけど、それでも半々」
ここまで話しているが、刈屋ちゃんは私が何を話したいのかいまいち見えていないようだ。
「で、アリスちゃん。あの子、ここ一番の得点率たぶん八割超えてる。九十パーセントいくかもしれない」
「なんですかそれ!?」
「あくまで私が見てきた結果だけどね。ここ一点が欲しいなあ、って観てると大体アリスちゃんきちんと一点取ってくるから。デュースでアリスちゃん取られたの見たことないでしょ」
「そんなの反則じゃないですか」
そう、刈屋ちゃんのような攻撃力もなく、それこそ「総合力」だけで戦っている私にとっては有栖川ちゃんの存在が反則だった。
だがそれで降参するのはスポーツ選手じゃない。
「そう、反則。だから反則を許さないように自分の強みを磨くの。刈屋、あなたは絶対に打ち勝つ攻撃力を身に付けなさい」
SIDE:YUKI
「最後のナックル?」
「はい、たぶん」
戻ってくるアリスを迎える。スポドリを渡すがそこまで疲れてもいないだろう。
アリスには最初の二ゲームを静香の分析のために使ってもらった。おかげで私の知っている中学三年の妙高静香と今の妙高静香の差はほぼ埋めることができた。
「最後のやつ、ナックルじゃなく本当に回転かけてくるのもあるから気を付けな」
「はい」
「あとはもう私からの制限はナシ。百二十パーセントの有栖川稔里を見せてこい!」
「はい!」
ここからがアリスの高校デビュー。会場中で一番楽しみにしているのは、絶対私だ。
***
SIDE:SHIZUKA
第三ゲーム。
もちろんこのゲームを取って3-0で終わらせる。
だからといって油断は絶対にない。あのアリスちゃんがこのままなはずがない。
初球、相手のサーブ。これまで多用しているバックハンドへのミドルレンジの下回転サーブ。チキータで返せると判断し捲り上げる。
そのままこれまでと同様のバックハンドドライブの打ち合いになるが、向こうはこれまでのようにコースを突いたりすることなく、アリスちゃん自身にとっての最も威力の出るコースに連続で打ち続け、最後は七球目の威力に負けてコートオーバーしてしまう。
「ヨォーッシ!」
打ち勝ったアリスちゃんが左手のガッツポーズと共に吠える。
やっぱり最初の二ゲームは捨てゲームでこちらの分析をしていたらしい。
感情を前面に出してくる本来の有栖川稔里。ここからが本番だ。
いいだろう、こっちも第二シード校のエースの実力を思い知らせてあげる。
二球目、意表を突くフォアハンドへのロングサーブだったが、こちらはアリスちゃんの性格的にこれが来ると読んでいた。ストップでフォア側のネットぎりぎりへ短いボールを返すと、いくら腕の長いアリスちゃんでも前のめりにならざるをえない。そこをしっかりとスピードドライブで今度はこちらが得点する。
その後も、若干私がリード気味に試合を進めるが、肝心なもう一点ここで差を広げて、というポイントはことごとく向こうに取られて点差を広げることができない。
私は中学時代の会話を思い出していた。
** ***
「あー、またデュース取れなかった!」
一年同士で試合をしていた刈屋ちゃんと有栖川ちゃんが試合を終え、刈屋ちゃんがこちら側へ戻ってくる。
「刈屋、なんでアリスちゃんに勝てないか自分でわかっている?」
少し意地悪な質問だったが刈屋ちゃんはこれくらいハッキリと言った方が良いタイプだ。
「総合力、ですか?」
「そんなので試合に勝てたら私だって絵東に負けないよ。スポーツで勝つには強みが必要。絵東は相手の分析力が化け物だし村川は攻撃力なら市内、いや道内でもトップじゃないかな」
「じゃ私に強みがないからですか」
「そういう僻みはダメ。刈屋の攻撃力は見てきた一年生の中じゃトップクラス、うちの団体戦レギュラーにも引けを取らないよ」
「だったら何で……」
たかだか数か月見てきただけだが、有栖川ちゃんの強さは間違いなくこれだった。
「アリスちゃんはね、集中力が常人離れしてるの。例えば6-9で負けていて次の一点、みたいなこの一点は絶対に取らないといけないってシチュエーションあるでしょ」
「はい」
「あれ、実際に得点できるのって何パーセントくらいだと思う?」
「え、七十パーセントくらいですか?」
刈屋ちゃんはまだ中学一年生、普通はそう思う。
「三十パーセントくらいらしいよ。絶対に取るっていう気合は筋肉の硬直とか視野の狭さとかマイナスに働く方が多いんだって」
「そうなんですか」
「もちろんウチの子はみんなここ一番を勝ってきた子たちばかりだから五十パーセントくらいにパーセントは上がるけど、それでも半々」
ここまで話しているが、刈屋ちゃんは私が何を話したいのかいまいち見えていないようだ。
「で、アリスちゃん。あの子、ここ一番の得点率たぶん八割超えてる。九十パーセントいくかもしれない」
「なんですかそれ!?」
「あくまで私が見てきた結果だけどね。ここ一点が欲しいなあ、って観てると大体アリスちゃんきちんと一点取ってくるから。デュースでアリスちゃん取られたの見たことないでしょ」
「そんなの反則じゃないですか」
そう、刈屋ちゃんのような攻撃力もなく、それこそ「総合力」だけで戦っている私にとっては有栖川ちゃんの存在が反則だった。
だがそれで降参するのはスポーツ選手じゃない。
「そう、反則。だから反則を許さないように自分の強みを磨くの。刈屋、あなたは絶対に打ち勝つ攻撃力を身に付けなさい」
1
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる