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第1章~無能な勇者~
第2話~冒険者ギルドへ~
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いつの間にか眠りに落ちていた俺は慌てて目を覚ました。橋の外を見てみるとかなり日が高い。おそらく昼間になっている。
俺は慌てたまま橋の下から道に上がり宿場町を行く。道沿いの両側に宿屋や酒場、食堂などがぎっしりと建てられている。今は用は無いしあっても行く金もない。町の奥まで進んでいくと冒険者ギルドを発見した。
何をするにしても金が必要で、金が無いのなら金を稼ぐしかない。俺が今できる事といえばギルドで何か仕事を請け負うこと。そのためギルドに来た。
ギルドに入ると中は酒場のようになっており、酒の匂いがプンプン漂う。正直色々飲みたい気分ではあるがまあそれは今度にするとして、俺はギルドの受付嬢の前まで行く。
「いらっしゃいませ。仕事をお探しですか?」
「はい。」
「会員証をお持ちですか?」
「はい、えぇっと。これだこれだ。」
「ピラー級の冒険者ですね。」
受付嬢は笑顔を見せながら受付をする。くりくりとした目が特徴的なかわいらしい女性で非常にまさに看板娘といった感じの女性だ。
俺は勇者と名乗ってはいるが別にこれは誰かに任命されたものでもなくそういう職業があるわけではない。ただ昔に読んだ勇者の冒険譚に憧れて勇者を名乗っているだけだ。魔王討伐の旅に出る冒険者は割と勇者を名乗っている者が多い。
そしてピラー級のピラーとは金属の名前だ。銀白色で眩い輝きを見せる貴金属に属するものでピラー級はギルドの5つの階級でちょうど上からも下からも3番目に属する階級だ。
「おっ。勇者サマじゃねえかぁ。」
何か仕事を紹介してもらおうと思っていた矢先に後ろから聞きたくもない声が聞こえてきた。俺が後ろを振り向くとやはりシューイン。この街に来ているとは思っていたが今ここで鉢合わせるとは運がない。
「なんだよ連れねえじゃねえの。」
「あんな真似をされて話す気になる奴が居るものか。」
「そういう態度取るわけね。そうか…………みなさ~ん!ここに居るブレイドという男はロクに戦えもしないのにピラー級の会員証を持っている男でぇ~す。」
「おい!どういうつもりだ!」
「みんなにはお前の欺瞞を知ってもらわねえとなあ!コイツは俺たちに戦わせるだけ戦わせておこぼれだけもらってるんだ。ロクな男じゃねえぞ!」
この男は俺の事を散々に貶める言葉をギルド中に響き渡る声で吹聴した。当然皆がこちらを見ている。少なくとも今ここに居る冒険者たちには俺の顔と名前を覚えられてしまっただろう。
そして俺は押しのけられて尻もちをついてしまう。後ろに付いて来ているマリーとエリサが蔑むような目で見下ろす。更にギルド中の冒険者の俺を見る目も明らかに弱者を嘲るような目だった。
「俺たちピラー級の冒険者なんだけど、何か良い仕事ない?」
押しのけた俺を尻目に受付嬢に仕事無いかと聞くシューイン。受付嬢は困惑した顔を見せながら、今は俺の受付をしていたと言う。今俺に少しでも気遣ってくれているのはこの受付嬢だけだろう。
「あぁ~コイツはいいのいいの。俺たちはもうペラー級の力があると言っても過言じゃない冒険者だぜ。あのファーマー地区のミオーニーって知ってる?アレ倒したの俺!だから。」
デカい声で話し続けるシューイン。そして奴の口からミオーニーを倒したという言葉が出るとギルド中が一瞬ざわついた後にヒソヒソと話す声が聞こえてきた。何と言っているのかまでは分からないが、ミオーニーはかなり有名な魔族の怪物で、ピラー級の下のタンソ―級だった頃に倒し、その功績で1階級上がるくらいだった。
しかしそれでも受付嬢はまずは俺を受け付けてくれようとしてくれているようだ。俺は無言で手を上げて「いいから先に受け付けてやってくれ。」というジェスチャーをすると彼女は俺に頭を下げた後にシューインたちの受付をした。
奴等は何かしらの仕事を受けてギルドを出て行ったので俺もやっと受け付けてもらえることになった。いくつか仕事はあったのだが魔物討伐系の仕事は何人かでパーティーを組む必要があり、メンバーを求めていた冒険者パーティーもあったが、全員に断られてしまった。さっきのやり取りのせいであることは明白だ。
結局受注できたのは素材採集の仕事。この街周辺にある平原で集められる薬草の採集だった。こんなペースでやっていてはパリッシュ王国に到着するのは一体いつになることやら。だが仕方がない。俺は早速素材集めに出ることにした。
俺は慌てたまま橋の下から道に上がり宿場町を行く。道沿いの両側に宿屋や酒場、食堂などがぎっしりと建てられている。今は用は無いしあっても行く金もない。町の奥まで進んでいくと冒険者ギルドを発見した。
何をするにしても金が必要で、金が無いのなら金を稼ぐしかない。俺が今できる事といえばギルドで何か仕事を請け負うこと。そのためギルドに来た。
ギルドに入ると中は酒場のようになっており、酒の匂いがプンプン漂う。正直色々飲みたい気分ではあるがまあそれは今度にするとして、俺はギルドの受付嬢の前まで行く。
「いらっしゃいませ。仕事をお探しですか?」
「はい。」
「会員証をお持ちですか?」
「はい、えぇっと。これだこれだ。」
「ピラー級の冒険者ですね。」
受付嬢は笑顔を見せながら受付をする。くりくりとした目が特徴的なかわいらしい女性で非常にまさに看板娘といった感じの女性だ。
俺は勇者と名乗ってはいるが別にこれは誰かに任命されたものでもなくそういう職業があるわけではない。ただ昔に読んだ勇者の冒険譚に憧れて勇者を名乗っているだけだ。魔王討伐の旅に出る冒険者は割と勇者を名乗っている者が多い。
そしてピラー級のピラーとは金属の名前だ。銀白色で眩い輝きを見せる貴金属に属するものでピラー級はギルドの5つの階級でちょうど上からも下からも3番目に属する階級だ。
「おっ。勇者サマじゃねえかぁ。」
何か仕事を紹介してもらおうと思っていた矢先に後ろから聞きたくもない声が聞こえてきた。俺が後ろを振り向くとやはりシューイン。この街に来ているとは思っていたが今ここで鉢合わせるとは運がない。
「なんだよ連れねえじゃねえの。」
「あんな真似をされて話す気になる奴が居るものか。」
「そういう態度取るわけね。そうか…………みなさ~ん!ここに居るブレイドという男はロクに戦えもしないのにピラー級の会員証を持っている男でぇ~す。」
「おい!どういうつもりだ!」
「みんなにはお前の欺瞞を知ってもらわねえとなあ!コイツは俺たちに戦わせるだけ戦わせておこぼれだけもらってるんだ。ロクな男じゃねえぞ!」
この男は俺の事を散々に貶める言葉をギルド中に響き渡る声で吹聴した。当然皆がこちらを見ている。少なくとも今ここに居る冒険者たちには俺の顔と名前を覚えられてしまっただろう。
そして俺は押しのけられて尻もちをついてしまう。後ろに付いて来ているマリーとエリサが蔑むような目で見下ろす。更にギルド中の冒険者の俺を見る目も明らかに弱者を嘲るような目だった。
「俺たちピラー級の冒険者なんだけど、何か良い仕事ない?」
押しのけた俺を尻目に受付嬢に仕事無いかと聞くシューイン。受付嬢は困惑した顔を見せながら、今は俺の受付をしていたと言う。今俺に少しでも気遣ってくれているのはこの受付嬢だけだろう。
「あぁ~コイツはいいのいいの。俺たちはもうペラー級の力があると言っても過言じゃない冒険者だぜ。あのファーマー地区のミオーニーって知ってる?アレ倒したの俺!だから。」
デカい声で話し続けるシューイン。そして奴の口からミオーニーを倒したという言葉が出るとギルド中が一瞬ざわついた後にヒソヒソと話す声が聞こえてきた。何と言っているのかまでは分からないが、ミオーニーはかなり有名な魔族の怪物で、ピラー級の下のタンソ―級だった頃に倒し、その功績で1階級上がるくらいだった。
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【原題】
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