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子猫の雨月と男の子の雨月

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 根気よく聞きながら男の子、雨月と向き合うことにした。

「何か話せることある?」

 そういうと、嬉しそうに私の顔を見ながら

「おにーさん!」

 という。
 だから違うんだって。

「あのね、私は『おにーさん』じゃないの。強いて言うなら『おねーさん』なの!わかる?」

 あ、また首を傾げてわからないというのがどうやら雨月のポーズみたいだった。

 そしてまた

「おにーさん!」 そう言って私に抱きつこうとする。

 それを慌てて止める。
 だって、右手に食べかけの焼き鮭。左手に握りしめたご飯。そのまま抱きつかれたら……大惨事必死だもん!

 そういえばまだ一言も「おにーさん」以外の言葉を聞いていない。
 もしかして、この男の子雨月は話せる言葉がほとんどないのかもしれない……。
 言葉だって知らないものが多そうで意思疏通がこの先うまくいくとは限らない。

 これはかなりの難題かも……!

 何よりも先に朝食が先決!先決!切り替えていこう!

 不安な想いを振り切るかのように私は握りこぶしを胸にあて、よし!と一声気合いを注入して立ち上がった。

「おとなしく座っててね!」

 雨月に言葉をかけてから私は台所へ向かいタオルを水で濡らして軽く絞り、レンジでチンして持っていった。
 雨月の手から焼き鮭を取り上げ、左手のご飯はご飯粒がとれるだけ取ってほかほかのタオルで両方の手をきれいに拭いてあげた。
 それをニコニコ顔で見ている雨月。
 綺麗になった両手をくるくる回しながら楽しそう。

 困った……。

 お箸で食べられそうにない雨月。
 私は意を決して雨月を私の膝の上に乗せて私がお箸でご飯とおかずを雨月の口の中へ入れていくことにした。
 膝の上に乗った雨月は楽しそうでそわそわしながらゆさゆさ体を揺らしている。

「ね、ご飯食べようね!雨月」

 雨月は喜んで私の顔を見ながら食べたいものを指で指して教えてくれる。
 私はそれに従って雨月の口の中へと入れていき、合間に自分のご飯を食べることにした。

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