自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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セガルラ国編

第51話 肉料理

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 狭い村だからなのか、匂いがそこら中に広がっていたらしい。その初めて嗅いだお腹がすく匂いの元をたどっていたら、この宿屋に着いたという住人たち。
 あちゃー。
 なら、協力してもらおうかな。

「明日でいいなら料理を教えるわ。けど、今日は味見で協力してくれない?」
「まだご飯を作ってないからいいけれど……」
「その時に材料を教えるから、自分で用意してくれると助かるわ。肉に関しては、私が提供するから」
「それなら頼もうかしら」
「そうね。新たに料理が覚えられるなんて、嬉しいもの」
「なら決まり! 今作っていたものも明日教えるわね。もちろん、これから作る料理も」

 女性たち全員に「ありがとう!」と言われ、苦笑してしまう。
 なんというか、どこの村でもそうだけれど、獣人たちはとても素直だ。そして、興味があることに対して、もの凄く追及してくる。
 だからこそ、上達が早いんだろうなあ。
 とりあえず主婦のみなさんは横に置いといて、次は何を作ろうかと悩む。ボアを使った山賊焼きと生姜焼きがいいかな?
 調味料や使う野菜を用意してもらっている間に、ボアの肉を薄めに切る。人数が増えたから時短にするつもりだ。
 材料を言って用意してもらい、すり下ろし器を使ってショウガと玉ねぎをすり下ろす。それぞれ別のボウルに入れ、山賊焼き用のタレと生姜焼き用のたれを作り、その中に肉を浸す。
 四人に聞いたら熟成が使えるというので、それを使って味を染み込ませてもらい、先に山賊焼きを焼いてもらう。もう一人には玉ねぎをスライスしてもらってからフライパンをもうひとつ出してもらい、玉ねぎを軽く炒めたあとで生姜焼きを炒めてもらった。

「こっちはミショの実の搾りかすを使った山賊焼きで、こっちは絞った液体を使った生姜焼きよ」
『おおお!』

 米が食べたいところだけれど、ないからね。パンで我慢だ。たぶんパンにも合うと思うし。
 山賊焼きと生姜焼きの付け合わせにキャベツの千切りをつけてもいいと話すと、女性たちはメモをしていた。村人たちに味見をしてもらっている間に、今度はトマト煮込みを作る。
 トマトの皮を湯むきしたあと、小さくカット。種は舌ざわりが悪いので取り除く。取り除かなくてもいいと話し、まずはカットしたトマトと少量の水を鍋の中に入れ、潰しながら煮詰めてもらう。
 その作業をしている間に、ボアの肉を使った角煮を作る。こっちは時間がかかるから、今回は熟成を使って作るつもりだ。
 まずはボア肉のバラの部分をネギと輪切りにしたショウガを一緒に煮てあくを取り、魔法で冷ましてもらう。それが終わったらネギとショウガを取り除き、その中に醤油とはちみつ、酒を入れて味付け。
 そのまま一回沸かしてもらい、弱火にしてもらう。

「本来はここから一時間ほど煮ていくんだけど、今はそんな時間がないから、熟成を使うわ」

 料理スキルの中にある熟成魔法を使って、肉に味を染み込ませる。この時、小さなジャガイモやペコロスがあるなら、一緒に入れるといいとも教えた。今回はそっちもなかったので、肉だけだ。
 それを切って一人二切れずつ食べてもらう。その時にオークのバラ肉で作っても美味しいと話すと、全員の目が光った気がした。
 哀れ、オーク。確実に食材として見られたぞ……?
 生温~い視線で彼らを見ている間にトマトが潰れたというので、ハチミツと塩、ソースと醤油、ワインとブイヨンを使ってトマトソースを作り上げる。ワインの酒精を飛ばしつつ煮詰め、ある程度の緩さになったら一回火を止めてもらった。

「このあたりで採れる肉はなに?」
「一角兎とボア、ディアとロック鳥、たまーにオークだな」
「なるほど。なら、今回はロック鳥を使うわ」
『おおっ!』

 ロック鳥と聞いて、住人たちから歓声が上がる。最近は食べていないから嬉しいと話す男性の獣人たち。
 美味しいものね、ロック鳥は。
 ロック鳥を小さく切ってから塩コショウし、フライパンで焼く。皮の部分はカリっと、肉はふんわりと。
 焼き色をつけたらトマトソースの中に入れ、ジャガイモと櫛形に切った玉ねぎを入れ、一緒に煮こむ。

「今回はロック鳥を使ったけど、一角兎でも美味しいわ。もしコッコがいるなら、コッコのもも肉でやってもいいわよ」
「なるほど……。他の肉でもできるか?」
「できるけど、それはあとでね」

 小さな声で聞いてきた料理人に、私も小さな声で話す。この宿限定で、ハンバーグと煮込みハンバーグを教えるつもりなのだ。
 もちろん、ミンサーも提供するつもりでいる。ボアとオークが採れるなら美味しいと思うんだよね~。ヘルシーに仕上げたいなら、ロック鳥か一角兎を使ったものを作ってもいいわけだし。
 それは住人たちが帰ってから教えるつもりだ。
 カレー粉を作りたいところだけれど材料が足りないし、この村で集められるかどうかもわからない。トマトと豆を中心に作っているという話だから、それらを使った料理がいいと思うんだよね。
 煮込みを中心にしてもらうとして、あとは何がいいかなあ? ステーキにトマトソースをかけるのもいいかな?
 よし、ボアのステーキを何枚も焼いて、トマトソースをかけたものを食べてもらおう。てなわけで、もう一度トマトソースを作ってもらい、ボア肉を二センチくらいの厚さに切ると、筋切りをして塩コショウし、フライパンで焼く。
 中まで火が通ったら食べやすい大きさに切り、トマトソースをかける。最初から細く切って焼いてもいいと話し、それも作ってみた。
 どっちの見た目がいいかはわからないから、それは好みかな。
 あとはキャベツ、ニンジン、玉ねぎ、薄くスライスしたボア肉を使った野菜炒め、ペンネがあるというのでトマトソースとペンネを混ぜたパスタを作り、みんなで試食した。
 ここで改めて自己紹介をして、試食しながら材料を教えると、女性たちはきちんとメモを取って味わっている。

「ミショの実は気付け薬になるだけじゃなくて、調味料にもなるのね……」
「すり下ろす道具は、アリサが作ってくれるのかしら?」
「ええ、作るわ。一応壊れないように魔法をかけておくけど、もし壊れたりもうひとつ欲しいと思ったら、鍛冶師か道具屋に頼んでね」
「そうするわ」

 道具に関しては明日渡すと話し、みんな満足して解散した。
 さて、メインはこれからですぜ。

「アリサ、内緒話していた料理はなんだ?」
「ハンバーグというの。肉を細かく切って叩き、柔らかくした肉を使うのよ」
「それは面倒だな……」
「そうね、普通ならね。これを使えば楽に作れるわ」

 マジックバッグからステンレスのインゴットを出し、ミンサーをふたつ錬成する。それを四人に見せる。

「見たことがない道具だが……」
「私の故郷にあった道具で、ミンサーというの。この大きな穴に小さく切った肉を入れ、ここを回すと肉が細かくなって出てくるの」
「なるほど……」
「さっそくやってみましょうか」

 ミンサーを持って調理場に行くと、ボア肉とオーク肉を出して一口大に切る。それをミンサーの口に入れ、肉を押しながらハンドルを回すと、少しずつ肉が細かくなって出てくる。

「「「「おお……」」」」
「こうなるのか!」
「こんなに細かくなるのね」
「これを包丁でやるのは骨が折れるな」
「時間もかかるよね」
「でしょう? だからこそ、このミンサーが時間と労力を短縮してくれるの」
「「「「なるほど!」」」」

 見本を見せたあとは彼らにやってもらい、使い方を教える。ひき肉ができたあとは玉ねぎをみじん切りにしてもらい、卵とパン粉、牛乳と塩コショウ、ナツメグを入れて混ぜ合わせる。
 量が多いから十等分にしてみた。
 それを手に取って空気を抜くと、楕円にして真ん中を凹ます。

「ここに窪みを作ったのはなんでだ?」
「焼いているうちに真ん中が膨らんでくるの。そうすると肉が割れてしまうから、そうならないようにする措置ね」
「なるほど……」
「焼いている時に見るとわかるわよ?」

 全員で丸めたあと、フライパンで焼く。火加減は中火でと話してからどれくらいの炎か見せる。
 蓋をしたいところだけれど、蓋がないからね。仕方ないからこのままだ。
 焼いているうちに真ん中が膨らんできて、凹んでいた部分がたいらになる。周囲もグレーになってきたところで引っくり返すと、綺麗な焼き色がついていた。

「「「「おおお!」」」」
「引っくり返したら、ここにチーズを載せてもいいの」

 薄く切ったチーズを一枚載せ、そのまま焼く。そしてチーズがとろっとしたころ火を止め、お皿に移す。ナイフでハンバーグを切ると、肉汁がじゅわ~っと出て、チーズもとろ~っとしたたり落ちる。
 その段階で、誰かの「ゴクリ」という、喉を鳴らす音がした。

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