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第一章『運命の出会い』
第十話『発症』
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年明けの開店日早々に騒がしい通い慣れたイタリアンバルは、すっかり出来上がった会社帰りのお得意さんらしき客達でごった返していた。この店も前園先輩に教えて貰った場所で、以前教えて貰ったクラフトビール専門店と同様に、仕事帰りにちょくちょく利用している。対面に座っているこの店の情報源は、俺が年末の忙しい時期に仕事の鬼と化し、見事にクリスマス期間に有給を掴み取った俺の噂話や女達の阿鼻叫喚がどれほど凄まじかったのかを、案内された席にお互いが腰を下ろした瞬間から堰を切ったように話始め、面白おかしく身振りも駆使しながら説明してくれた。俺が聞いてもいないのに。
「お前知ってる?あの企画営業部の蠱毒を勝ち抜いてきたお局のお姉さんなんて、寝込んで二、三日出て来なくなったらしいぞ。他にも何人か巻き添えになってるし、何故か社内恋愛してたカップルまで数組破局してるし」
「ああ、耳に入ってはきましたけど。知りませんよ、そんなの。俺には関係ありません」
「罪な男だなぁ。お前もお前で大変なのは分かるけどな。まぁ、取り敢えず飲めよ」
前園先輩は、苦笑いを浮かべながらも、やっぱりどこか楽しそうにしている。浮気や不倫話とは無縁の生き方をしているらしいが、元々出来上がっているカップルが拗れたりする話は、然程分野外ではないようだ。とは言え、人の不幸は蜜の味、と考える人間には見えないので、きっと日頃から張り巡らしている人脈を介した情報を総合的に見て判断し、『こりゃ駄目だ』となって、逆に笑けてしまった、というのに近い印象も受けた。
前園先輩は、クリスマスイブもクリスマス当日も出勤していたから、至る所から現れた人間達に、俺に対する情報の聞き取り調査を受けたらしい。その度に時間が食われるので、全く仕事にならなかった、と頼んだ料理が来るまでの間に出されたアミューズ(御通し)のフォカッチャをもそもそと口にしながら嘆いていた。ただ、知らないうちに俺にとっての防波堤代わりになってくれていた前園先輩の苦労は俺にも分かるから、ここの会計は俺が持つ事になっている。因みに誘ったのも俺で、タダ酒が大好きな前園先輩は、二つ返事で応じてくれた。にも関わらず、俺に酒を勧めてくる感じは、本当に食えない人だと思う。
「で、どうなったんだよ、その愛しの透ちゃんの方は。何か進展あったか?」
前園先輩には、今回本当にお世話になった。人として色々と至らない点が多い俺だけど、先輩の言葉や、俺に対する気遣いが、透さんと付き合う前も、無事に付き合うようになってからも、何かと暴走しがちな俺のブレーキとして働いてくれていたからだ。一歩間違えれば、今の俺達の関係性は無かったかも知れない。だから、定期的に連絡を取って、無事に付き合える様になった事も予め伝えてある。自分の事の様に喜んでくれた先輩は、やっぱり人一倍面倒見が良い人だな、と思ったけれど。次に頭に浮かんだのは、この話をつまみにする為に、絶対に行きつけの店で俺を捕まえて飲むんだろうな、というものだから、いろんな感情が相殺されて無になった。
クリスマスイブとクリスマスの連休を取って、東京に行ってきます、とは伝えてあるけれど、あまり情報を与えすぎて引き出しを増やしても、前園先輩の為にはならないと思ったから、詳細は説明していなかった。だから、俺はこの機会にと、先輩に向けて、その二日間であった出来事を順を追って説明していった。
「成る程ねー、透が男の熱視線に慣れてたのは、そんな経緯があったのか。謎が解けてスッキリしたよ。それにしても、今時そんな子がいるんだなぁ……だけど、そうなるとやっぱり、俺の人違いじゃ無さそうだな」
ぽつり、と意味深な発言をする前園先輩に、どう言う意味なのかを尋ねる。すると、先輩は自分自身の過去と、それに纏わる一人の青年の話を、ゆっくりと説明し始めた。
前園先輩は、今の仕事に就く前は、プロのダンサーとして、様々なコンテストで賞を取って活動する程の人間だったらしい。その為、その畑にいる人間の情報には聡く、コンサートのバックダンサーとして準備していた期間に負った怪我で現役を引退した今でも、当時付き合っていた人達からの連絡は密に取っているのだという。だから、『本郷 透』という、その当時業界で最も有名だった天才ダンサーが、主演舞台の海外ツアーを完走した最終日に、突如として引退を宣言し姿を消したニュースは、同じダンサーとは言え、畑違いに近い先輩の耳にも直ぐに届いたのだという。
「特にファンとかじゃなかったけど、本当に凄いダンサーだなって思ってたから、単純に勿体無いなと思ったよ。何か事情があるんだろうな、とは思ってたけど……人間関係かぁ、そればっかりは仕方ないよな。怪我なら乗り越えられる場合もあるけど、本郷 透の演出家といったら、その本人をそこまで引っ張り上げてくれた立役者としても有名だし。そこと拗れたら、確かにダンス続けるのは難しいだろうな」
タイプが違うダンサーだったとは言え、そこまでの情報を得ているという事は、それだけ透さんが名の知れた有名人だったという事になる。想像はしていたけれど、あまりに想定の上を行き過ぎていて、俺は言葉を失ってしまった。そんな輝かしい表舞台にいるべき人物が、どれだけの思いでその場を退き、他者と関わらない仕事を選んで、ひっそりと生活していたかと想像しただけで、俺の胸は、ずきり、と痛みを訴えた。
「だけど、まさかあの本郷 透がハウスキーパーになってて、作詞作曲家の小泉 幸也の所で働いてたとはね。幸也さん、全然話してくれないんだからなぁ。そんな面白……なかなか無い話になってたのなんて、ちっとも知らなかった」
「え?……前園先輩は、小泉 幸也さんの事も知ってはるんですか?」
しかも、幸也さんと、下の名前まで呼んで親しげに。またもや飛び出した新事実に俺が飛び付くと、前園先輩は静かに頷いてから、届いたばかりの冷えたビールを一口含んだ。
「俺とも一緒に仕事した事があったんだよね。そこから、妙に馬があって、プライベートでも会うようになったんだ。あの人、自分では隠してたつもりだったみたいだけど、本郷 透の大ファンでさ。スマホの待ち受けも本郷 透の写真がいーっぱい。ありゃ、完全にオタクだったな」
その為、透さんが現役を退くだけでなく、舞台そのものから姿を消した際には、酷く荒れた生活をする様になっていったらしい。そして、見るに見かねた前園先輩を含めた周囲の人間達が、こぞって住環境や食事問題などの解決策を打診したが、全く聞き耳を持ってはくれなかったのだそうだ。
「周囲の人間が殆どお手上げ状態になって途方にくれてたんだけど、ハウスキーパーを雇う様になってからは、段々と生活が改善していって。漸く安心出来たなって頃に、あの代表曲を発表したんだ。ほら、お前も好きだっていってた、決して出会う筈がなかった二人が出会い、すれ違いを重ね合いながら、いつしか深い絆を築き上げ、そして……みたいな歌詞の」
「もう、ええです。充分に分かりましたから」
自分の中にあった脳内妄想が、現実とこれ以上無いまでにシンクロして、テーブルに突っ伏し、重い溜息を吐く。そんな俺を見て、心中お察し致します、とまでに、前園先輩はゆっくりと手を合わせて俺に向けて拝んできた。角度的に分からないけれど、恐らくはとても安らかな笑顔をしているのだろう。クソどうでもいいから、放っておく事にした。
「……俺、透さんに、もう小……幸也さんの所に仕事しに行かへんでって、言うてもうたんです」
「おー、随分な話だな。でも、気持ちは分かるよ。俺だったら嫌だし、同じ事言うかもしんない」
「ですよね?……俺、間違ってませんよね?」
「いや、間違ってるか間違ってないかで言ったら、そりゃ間違ってるよ」
なんだよそれ。なんか、かなりの勢いで脱力した。ただ、言いたい事は、非常に分かる。いくら恋人だとは言え、相手の仕事に口を出すなんて、大人のする事じゃないもんな。
「ただ、自分の感情って、それこそ自分にしか大切に出来ないだろ?それに、自分を大事に出来ない人間は、他の誰かを大切にも出来ないと思うよ」
「先輩……」
アルコールも入っている所に様々な情報まで盛り込まれ、脳内妄想が現実に具現化して、泣きそうになっていた俺に、前園先輩は、優しくそっと語り掛けてくれた。自分自身に失望しかけていた今の俺の胸に、先輩の言葉は深く沁み渡る。本当に泣きそうになるから辞めて欲しいと思いつつも、俺は先輩のその金言を有り難く受け取った……までは、良かった。
「ところで、お前らセックスしたの?」
この人、上げてから落として来やがった。心を許した次の瞬間に此れだもの。絶対に楽しんでる。俺の、俺達の一部始終を、いい酒のつまみにしやがって。屈辱的ではあるけれど、それ以上にこの人には恩があるし、逆らえない。それを分かった上でこれだからな……やってられませんわ。でも、行き着く先の興味がそこになってしまうのは、男であれば自然だよな、とも思うし。だから、渋々と口を開いた。
「東京から新大阪に帰ってきて、うちに泊まる話になって。ていうか、そう持っていって、俺が。で、お互いに風呂入って、俺のベッドに一緒に並んで座って話して……良い感じには、なったんです」
「ふんふん、それで?」
「そしたら、俺に向けて、俺を好きになって良かったとか、言ってくれて。その後、透さんの方から、なんていうか……僕に、触ってって……」
恥ずかしいけど、それ以上に、しんどい。この後の展開が、何となく分かっている俺にとって、これは公開処刑でしかないから。
「おぉっ、やったな透!性格的にもギャップがあって、お前そう言うの好きそうだし。で、その後は?」
「………一緒に、手ぇ繋いで、寝ました」
「……は?」
分かるよ、前園先輩。その反応は、正しい。俺が逆の立場なら、そうなる。
「寝たって、隠語の方の意味だよな?」
勿論、そう返したくなるのも分かる。ただ、これホンマの話なんで、あまり疑われても困るんですよ。
「いえ、そのままの意味です。キスは一応しましたけど……その後は一緒に手ぇ繋いで、普通に寝ました」
まぁ、俺は朝まで一睡もせえへんかったけども。それを言っても、俺の男としての情け無さに拍車が掛かるだけなので、黙っておく事にした。
そう、俺はあの日、透さん自らが、清水の舞台から懸命に飛び降りてくれたにも関わらず、それを不意にしてしまったのだ。キスは、何度もした。触れるだけのものから、お互いの唾液を交換し合う、今まで透さんとはした事がないものまで。だけど、それ以上は、俺には手が出せなかった……何故なら。
「なんでそんな据え膳逃したの、お前」
「……………た、」
言うのか?言ってどうなる。笑われて、それでお仕舞いか、それとも、深く同情されたり憐れんだりされたりして。だとしたら、まだ笑われる方が、救いがある気がする。話にオチが付いて、次こそ頑張れよって、乾杯して、それでお仕舞い。だけど俺は、今のこの、不甲斐なくて情けなくて、男として惨めな気持ちに蓋をしたまま、生きていきたくなかった。それに、さっきはそんな風に考えたけど。やっぱり、俺は。
誰かにこの事実を、絶対に笑われたくない。
「勃たなかったんです」
ドッ、と近接する団体客の席から、イタリアンバルの落ち着いた空間を割り開く様な爆笑が生まれた。どうやら、新人社員風の男が、上司や諸先輩を喜ばせる為に、何やら一芸を披露したらしい。囃し立てられ、調子に乗った新人社員風の男は、その場の勢いを借りて生ビールの一気飲みを始めた。しかし、あまり酒に強い人間ではないのか、酒が喉を通って行かず、口の端から飲み下せなかった酒が溢れ、襟首の汚れたワイシャツにじわじわとシミを作っていった。しかし、男を見せようと必死になる気概が上司達には気に入られたのか、その場の空気は盛り上がる一方で。誰もその男の暴挙を止めたりはしなかった。
「自分なりに頑張ってみても、どうしても反応しなくて。キスをするだけで精一杯で、先にも進めなくて……進む気にも、何故だかならなくて。一緒に並んで座って話していた時は、ドキドキしてたし、その後の想像も働かせてたんですけど」
自分でも、何故、自分の人生の中でも特別大事な場面で、一番肝心な身体の一部が反応しなかったのか分からない。透さんと一緒に寝る段階になって、トイレに立った後、慌ててスマホで調べてみても、『ED』という単語が検索項目にヒットした瞬間に怖くなって、それ以上調べるのをやめてしまった。だから、その現象は、それ以降ずっと人生最大の謎として自分の中に取り置かれ、俺の男としての自尊心に深く根付いて、様々なトラウマの記憶と一緒に、俺の頭の中にある本棚に陳列されてしまっている。
「それまでだって、毎晩夢に見るくらいに、その時が来る日を、ずっと待ち望んでたのに。何度もその想像で、自分を慰めたりして……だから、身体が反応しなかった意味が分からなくて。あの日からずっと、混乱しっぱなしなんです」
キスをして、おやすみなさい、とお互いに伝えあって、手の平から伝わる体温を感じながら、一緒のベッドに横になって。次第に深くなっていく透さんの寝息を聞きながら、俺は、声を殺して泣いた。
透さんが、いま、誰よりも一番近くにいて、俺と同じ気持ちでいる事を伝えて、自分に触れて欲しいと、恥じらいながら告げてきたのに。俺は、その気持ちに応えられなかった。これまで必要以上に培ってきた男の矜持が、ズタズタに引き裂かれ、胸の中の心象風景の一面が血の海になる。次の日の朝、透さんが俺の目の前で夢から醒めて、瞼をゆっくりと開く、その姿を、穴が開くほど間近で見つめながら。俺は、一晩中泣いて泣いて、すっかりと枯れてしまった筈の涙を、再び流してしまった。
あまりにも、神々しくて。
「自分ではなった事ないけど、話には聞いた事あるよ。相手を神聖化し過ぎたり、好きになり過ぎたりすると、緊張してそうなる人もいるって」
同情や憐憫でもなく、勿論、笑うでもなく。『他にもそうした人はいる』と、事実のみを述べてくれる前園先輩に、俺は、話している間中ずっとテーブルの上に這わせていた視線を、ゆっくりと上げていった。
「そう、なんですか?……なら、これって治るんですか?」
「治る治る。心の問題だから時間が解決する場合もあるみたいだけど、あまり続く様なら、ED治療薬とか使ったりして慣らして行ってとかね。どちらにせよ、不治の病とかじゃないから安心しな」
軽い調子で、まるで効き始めの風邪の治し方みたいに説明してくれる前園先輩に、俺はどれだけ救われただろうか。あの日からずっと、人知れず抱えてきた重たい荷物を、足元に漸く置けた様な。話しているだけでも、答えを聞くまでも、何だかずっと身体に緊張が走っていたからドッと疲れたけれど、今では安堵の方がよっぽど強くて。この人に相談して、本当に良かったと思えた。
「ありがとうございます、前園先輩。俺、ずっと悩んでて。誰にも相談出来なくて……透さんと一緒に居っても、今まで通りに接するのが、凄く辛くて、申し訳なくて」
「そっか……そうだろうな」
酒の力もあったから話せたという面もあるんだろうけど、それでも、この話をする相手は、俺にとって、この人しかいないと思っていた。目には見えない、それこそネットに存在する自称耳年寄りの人間達に相談する事も考えたけれど、それで自分の中にある不安が消えるとは思えなかったから。その判断は間違っていなかったんだと、ホッと胸を撫で下ろした。でも。
「やっぱり、これって、EDのうちに入るんですね」
「うーん、そんな深刻に考えなくてもいいけど。分類としては、それのうちだろうな」
「………はぁ、マジか」
この歳でEDになるなんて、かなりショックだ。これまで、はっきり言って其方の方面で困った事態になった試しはなかったし、自慢では無いけれど、身体だけで相手を骨抜きにしてきた経験は何回もある。だから、そんな自分には無縁の病気だと思っていた。それなのに、よりによって自分の一番好きで、誰よりも特別な人を相手に、自分の身体が全く機能しなくなるだなんて。そこまで考えて、はたり、と一つの問題が目の前に転がった。
「これって、透さんにだけ身体が反応しないだけで、他の人を相手にしたら問題ない……とか?」
「俺も専門家とかじゃないからなぁ、何とも言えないけど。何、もしかして、お前……」
「違いますよ、勘違い禁止。だって、もしも透さんがその話を何処かから聞き齧ったら、変な誤解をするんやないかって」
「ああ、確かに」
いつか、透さんが俺の異変に気が付いて、それで俺の様にネットの知識に頼ろうとした時、誤った情報を知識として吸収してしまったら、『自分には興味が持てないんだ』なんて酷い誤解をしてしまうんじゃ……透さんの思考パターンは、知り合ってからの半年間で、これでいてかなり熟知したから、この発想は強ち間違っていない可能性が大だった。
……それで、その相談を誰にも打ち明けられないまま、仕事を辞めたいと願い出る為に訪れた幸也さんの家で、透さんは、理由を問い詰められた末に、いつの間にか俺との関係性も口にする様になるんだ。仕事を辞める原因が俺という存在があるからだと知った幸也さんは、歯噛みする想いを抱えながら、最後に残った理性を総動員して、落ち着いて話をしようとする。けれど、どうあっても自分自身を押さえつける事など出来ず、とうとう、堰が切れた様に、自分の想いを曝け出してしまう。
『そんなに、そいつが大切なのか。俺を捨てて、そいつを選ぶくらいに。お前の中に、一欠片の後悔も無いのか?……もしも、そいつが無理矢理お前を自分の好きにしようとしている様な奴なら、俺はお前を黙って行かせる訳にはいかない』
その熱意に後押しされて、俺は決してそんな身勝手な人間じゃないと説得する透さん。しかし、俺との間に出来た、ほんの僅かに生じた不安を、遂に透さんは口にしてしまう。
『潤が、僕を大切にしてくれているのは、凄く伝わってくるんです。ただ……僕自身には、もしかしたら、もう興味が無いのかも知れません』
『どういう事だ?』
親身になって話を聞いてくれる幸也さんに、透さんは微かに涙ぐみながら、胸にあるその悩みを打ち明けていく。幸也さんは、そんな透さんの気持ちを癒す為に行動を起こすと誓い、そして、自分自身の押さえつけてきた我欲を解放して……
『お前の気持ちに応えようとせずに逃げ回って……そんな情け無い男、辞めておけ。そもそもお前の魅力は、この俺だけが知っていればいいんだ』
『幸也さん……それって』
『……ずっと、好きだった。だから、俺から離れようとするのはやめて、俺を選んでくれ』
『あ、だめ……幸也さん、待って』
『もう、充分、待った』
FIN
……無理。想像だけで無理。何が『もう、充分、待った』や。そこまでいったら、一生涯に掛けて待ち続けて欲しい。そこで手ぇ出したら二人で築き上げてきた綺麗な思い出や絆とやらが、いっぺんに台無しになるの分からへんの?いや、全部マジでガチの想像やけども。だけど、もしもそんな話になってもうたら。
「……アカン、このままやと、透さんがNTRされる」
「どうしてそうなった?」
前園先輩が、暫く思考の海にダイブしていた俺に向けて、もしもーし、と話し掛けてきていたのは分かっていたけれど、敢えて無視しながら考え付いた先にある最悪のパターンを導き出す為の模索を繰り返した。こうした場合は、最悪の状況を想定した上で、そうならない為にはどうしたらいいかを考えて、自分の行動に反映させて行くのが手っ取り早い。だから俺は、頭の上に何個ものクエスチョンマークを浮かべている、置いてけ堀状態にあった先輩に、自分の考えた最悪のパターンを説明していった。すると、俺の話を聞いていくうちに、先輩は、次第に真剣な表情になっていき、何故俺が透さんNTRルートの想定をするに至ったのかの理解が及ぶと、俺に向けて納得を深める様にしてゆっくりと頷いてから。
「………ヤバいな」
「ですよね。やっぱり、何か対策を打っておかないと、透さんの貞操が危ないですよね」
「うん、それはそれでね。ヤバいのは、お前の頭の方な」
「……どういう意味ですか?」
「仕事辞めにいく人間が、辞める理由になった自分の彼氏の存在を話すわけないじゃん。普通なら、他に無理矢理にでも理由作るだろ」
「それは、……」
あれ、確かに。言われてみればそうかも。
「それに、幸也さんの性格は、お前よりよっぽど俺の方が分かってる。あの人は、自分の気持ちよりも、自分の大切にしてる人間の気持ちを優先する人だ。だから、自分から離れていく人間を、間違っても引き止めたりはしないと思うよ」
えっと……そうなんだ。成る程ね。でも確かに、俺も、これでいて昔から小泉 幸也大先生のファンだから、インタビュー記事やネット情報なんかも割と入手していて、そのさっぱりとした性格や、人として尊敬できる人間性は、自分なりに知った気になっていたけど。その記憶を引っ張ってくる限り、さっきの想像というか俺の妄想は、確かに過大な脚色が過ぎたなと、今では冷静にそう思えた。つまり、今の俺は、酷く恥ずかしい真似をしてしまったという、そういう事ですかね。
「……さっきの話、全部忘れて下さい」
「了解。ただ、男性院長と男性看護師しかいない良いクリニック知ってるから、そこだけは紹介するな」
何から何まで、ホンマにすんません。という気持ちで、テーブルに額を擦り付ける勢いで頭を下げる。今振り返れば、透さんに対する心配や、幸也さんに対する嫉妬心で、頭が煮えて暴走していたとしか思えなかった。自分自身、EDという病気を患ってしまった衝撃が強過ぎて、心の余裕というものが無くなってしまっていたのは事実だけど。これはまた、何処に出しても恥ずかしい、完全なるやらかしでしかなかった。
「そう言えば、同棲の話はしたのか?……って、その顔見たら分かった。そりゃ、そんな話をする余裕も無いよな」
自分がどんな顔をしていたのかは分からないけれど、俺の表情は、前園先輩の反応を見た瞬間に、あっさりと結果を悟れるくらいに酷い有り様だった様だ。ある程度の説明が省けたから、悪い事ばかりじゃないんだけど。
「生活が一緒になったら、自分の病気を隠すのは難しいですし、必然的に、そうしたタイミングも増えますやんか。せやから、やっぱり……無理でした」
「そっか……」
説明する手間を省いたにも関わらず、促された訳でもないのに、結局、自分から説明してしまった。二度手間というか、自ら恥を晒していくスタイル辞めたい。でも、吐き出したかった、という気持ちも自分の中に間違いなくあったから、結局は同じ結果になっていたのかもしれなかった。
「でもさ、さっきからずっと思ってたけど、そんなにその問題って、透に隠さないと駄目なの?」
「え……?」
言われた事の意味が、分かる様でいて分からず聞き返すと、前園先輩は俺を安心させる様な穏やかな笑みを浮かべてから、自分が何故そう思ったのかの説明を始めた。
「自分に置き換えて考えてみたら分かりやすいんだけどさ、相手の事が好き過ぎて手が出せないとか、言われた側は最初のうちは困惑するかも知れないけど、大なり小なり、喜びも生まれると思うんだよね。そりゃ、その状態がずっと続く様なら話は別だけど、今は治療薬もあるし、それにまだお前は若いしさ……だから、あんまり悲観的に考える必要ないんじゃない?」
言われて気が付き、そして想像する。透さんと、俺の立場が、もしも逆だったらと。
俺の事が好き過ぎて、身体が上手く反応しないからと、自分を責める透さんを、俺が慰めたり、寄り添ったりする。精神的にも、そして、肉体的にも。
そんな事態になったなら、俺は絶対に、何が何でも病院にも付き添うだろうし、治療やリハビリに関しても徹底的にサポートして、『大丈夫だよ、心配しないで、いつでも俺が側に居るよ』と、真摯に、そして直向きに声掛けをするだろう。
けれど、そんな、俺が好き過ぎるからという、その理由一つで、なかなか自分自身の身体を開花させられない透さんを見て、俺は、自分の我欲を抑え切れるだろうか。
どれだけ刺激しても全く反応しない、その花芯。こんな身体でごめんなさいと、俺の腕の中で泣き噦る、貴方。
そんな死ぬほど可愛いその人を、俺はきっと、貪り喰らってしまう。
………クソ可愛い。しんど。想像しただけで、一瞬でズボンの下がどえらい事になってる。こんな瞬発力のある身体ぶら下げといて、実際にはセックス出来ないとか、全く意味が分からない。
もしかして、クリニックに行く必要とか無いんじゃないか?単純に時間の問題とかの可能性もあるかもしれないし。でも、それまでの間、透さんに何も相談せずに、一方的に待たせたくはないし。それに何より、身体がきちんと反応する様になるまで、俺自身があの人に触れられないのを我慢出来ない。だから、一応は専門家に話を聞いて貰って、薬だけでも貰いに行くべきなんだろうなと、やっぱり結論付いて。はぁ、と熱く重い溜息を吐いた。
嗚呼、俺の頭の中の透さんが可愛過ぎる。現実に実在する本人の方が、その何倍も何十倍も可愛い事実も、辛い。
「お前、その顔やめとけよ、本人の前では」
さっきまで通常運転だった前園先輩が、げんなりとした口調で、俺に忠言してくる。自分が今、一体どんな顔をしているのかは分からないけれど、この人は俺にとって身になる話をしてくれる事の方が多い人だから、はい、すみません、と平謝りで返事をした。
「病状が落ち着いたら、同棲の話も進められるかも知れないですよね」
「初めから病状を相談しとくなら、別に今からでもいいんじゃないの」
「ああ、確かに」
盲点というか、何というか。でも、それなら色々な意味で、話が早く進む。透さんに無駄な心労を掛けたりしなくて済むし……セックスに臨める回数が必然的に多くなる環境があれば、俺のリハビリにも効果的で、一石三鳥だ。
「ただ、透の気持ちが一番大切だからな?あんまり急に話進められても向こうも困るだろうし」
「そうですよね……」
初めから全部上手くやろうと考えるのは良くない。確かに、俺が自分の症状を透さんに説明して、俺のリハビリも兼ねて同棲するという案は、様々な問題を一度に解決出来る妙案ではあるけれど、それは俺にとっての場合であって、透さんからしてみたら寝耳に水の話でしか無いからだ。今の生活をごっそり変えて、一緒に生活するだけでも大変なのに、毎晩リハビリ目的に夜を強要されては、透さんは精神的にも肉体的にも大変だろう。
「同棲の始め方とか、レクチャーしてくれる人、誰かおらんかな……」
「知り合いにならいるけど?」
「……え?」
先程とは毛色の違う重い溜息を吐いて項垂れていた俺は、その発言を受けてパッと顔を上げた。俺達の席に届いたばかりのトリッパのトマト煮込みを、はふはふと熱そうに咀嚼している前園先輩の顔をマジマジと見て、無言で話の続きを促す。すると、漸く咀嚼した口内をさっぱりさせるかの様に、酔い覚ましの烏龍茶を口に含んでから、先輩は、俺に向けてにっかりと快活に笑った。
「今から紹介するクリニックの、和泉 丞先生」
年明けの開店日早々に騒がしい通い慣れたイタリアンバルは、すっかり出来上がった会社帰りのお得意さんらしき客達でごった返していた。この店も前園先輩に教えて貰った場所で、以前教えて貰ったクラフトビール専門店と同様に、仕事帰りにちょくちょく利用している。対面に座っているこの店の情報源は、俺が年末の忙しい時期に仕事の鬼と化し、見事にクリスマス期間に有給を掴み取った俺の噂話や女達の阿鼻叫喚がどれほど凄まじかったのかを、案内された席にお互いが腰を下ろした瞬間から堰を切ったように話始め、面白おかしく身振りも駆使しながら説明してくれた。俺が聞いてもいないのに。
「お前知ってる?あの企画営業部の蠱毒を勝ち抜いてきたお局のお姉さんなんて、寝込んで二、三日出て来なくなったらしいぞ。他にも何人か巻き添えになってるし、何故か社内恋愛してたカップルまで数組破局してるし」
「ああ、耳に入ってはきましたけど。知りませんよ、そんなの。俺には関係ありません」
「罪な男だなぁ。お前もお前で大変なのは分かるけどな。まぁ、取り敢えず飲めよ」
前園先輩は、苦笑いを浮かべながらも、やっぱりどこか楽しそうにしている。浮気や不倫話とは無縁の生き方をしているらしいが、元々出来上がっているカップルが拗れたりする話は、然程分野外ではないようだ。とは言え、人の不幸は蜜の味、と考える人間には見えないので、きっと日頃から張り巡らしている人脈を介した情報を総合的に見て判断し、『こりゃ駄目だ』となって、逆に笑けてしまった、というのに近い印象も受けた。
前園先輩は、クリスマスイブもクリスマス当日も出勤していたから、至る所から現れた人間達に、俺に対する情報の聞き取り調査を受けたらしい。その度に時間が食われるので、全く仕事にならなかった、と頼んだ料理が来るまでの間に出されたアミューズ(御通し)のフォカッチャをもそもそと口にしながら嘆いていた。ただ、知らないうちに俺にとっての防波堤代わりになってくれていた前園先輩の苦労は俺にも分かるから、ここの会計は俺が持つ事になっている。因みに誘ったのも俺で、タダ酒が大好きな前園先輩は、二つ返事で応じてくれた。にも関わらず、俺に酒を勧めてくる感じは、本当に食えない人だと思う。
「で、どうなったんだよ、その愛しの透ちゃんの方は。何か進展あったか?」
前園先輩には、今回本当にお世話になった。人として色々と至らない点が多い俺だけど、先輩の言葉や、俺に対する気遣いが、透さんと付き合う前も、無事に付き合うようになってからも、何かと暴走しがちな俺のブレーキとして働いてくれていたからだ。一歩間違えれば、今の俺達の関係性は無かったかも知れない。だから、定期的に連絡を取って、無事に付き合える様になった事も予め伝えてある。自分の事の様に喜んでくれた先輩は、やっぱり人一倍面倒見が良い人だな、と思ったけれど。次に頭に浮かんだのは、この話をつまみにする為に、絶対に行きつけの店で俺を捕まえて飲むんだろうな、というものだから、いろんな感情が相殺されて無になった。
クリスマスイブとクリスマスの連休を取って、東京に行ってきます、とは伝えてあるけれど、あまり情報を与えすぎて引き出しを増やしても、前園先輩の為にはならないと思ったから、詳細は説明していなかった。だから、俺はこの機会にと、先輩に向けて、その二日間であった出来事を順を追って説明していった。
「成る程ねー、透が男の熱視線に慣れてたのは、そんな経緯があったのか。謎が解けてスッキリしたよ。それにしても、今時そんな子がいるんだなぁ……だけど、そうなるとやっぱり、俺の人違いじゃ無さそうだな」
ぽつり、と意味深な発言をする前園先輩に、どう言う意味なのかを尋ねる。すると、先輩は自分自身の過去と、それに纏わる一人の青年の話を、ゆっくりと説明し始めた。
前園先輩は、今の仕事に就く前は、プロのダンサーとして、様々なコンテストで賞を取って活動する程の人間だったらしい。その為、その畑にいる人間の情報には聡く、コンサートのバックダンサーとして準備していた期間に負った怪我で現役を引退した今でも、当時付き合っていた人達からの連絡は密に取っているのだという。だから、『本郷 透』という、その当時業界で最も有名だった天才ダンサーが、主演舞台の海外ツアーを完走した最終日に、突如として引退を宣言し姿を消したニュースは、同じダンサーとは言え、畑違いに近い先輩の耳にも直ぐに届いたのだという。
「特にファンとかじゃなかったけど、本当に凄いダンサーだなって思ってたから、単純に勿体無いなと思ったよ。何か事情があるんだろうな、とは思ってたけど……人間関係かぁ、そればっかりは仕方ないよな。怪我なら乗り越えられる場合もあるけど、本郷 透の演出家といったら、その本人をそこまで引っ張り上げてくれた立役者としても有名だし。そこと拗れたら、確かにダンス続けるのは難しいだろうな」
タイプが違うダンサーだったとは言え、そこまでの情報を得ているという事は、それだけ透さんが名の知れた有名人だったという事になる。想像はしていたけれど、あまりに想定の上を行き過ぎていて、俺は言葉を失ってしまった。そんな輝かしい表舞台にいるべき人物が、どれだけの思いでその場を退き、他者と関わらない仕事を選んで、ひっそりと生活していたかと想像しただけで、俺の胸は、ずきり、と痛みを訴えた。
「だけど、まさかあの本郷 透がハウスキーパーになってて、作詞作曲家の小泉 幸也の所で働いてたとはね。幸也さん、全然話してくれないんだからなぁ。そんな面白……なかなか無い話になってたのなんて、ちっとも知らなかった」
「え?……前園先輩は、小泉 幸也さんの事も知ってはるんですか?」
しかも、幸也さんと、下の名前まで呼んで親しげに。またもや飛び出した新事実に俺が飛び付くと、前園先輩は静かに頷いてから、届いたばかりの冷えたビールを一口含んだ。
「俺とも一緒に仕事した事があったんだよね。そこから、妙に馬があって、プライベートでも会うようになったんだ。あの人、自分では隠してたつもりだったみたいだけど、本郷 透の大ファンでさ。スマホの待ち受けも本郷 透の写真がいーっぱい。ありゃ、完全にオタクだったな」
その為、透さんが現役を退くだけでなく、舞台そのものから姿を消した際には、酷く荒れた生活をする様になっていったらしい。そして、見るに見かねた前園先輩を含めた周囲の人間達が、こぞって住環境や食事問題などの解決策を打診したが、全く聞き耳を持ってはくれなかったのだそうだ。
「周囲の人間が殆どお手上げ状態になって途方にくれてたんだけど、ハウスキーパーを雇う様になってからは、段々と生活が改善していって。漸く安心出来たなって頃に、あの代表曲を発表したんだ。ほら、お前も好きだっていってた、決して出会う筈がなかった二人が出会い、すれ違いを重ね合いながら、いつしか深い絆を築き上げ、そして……みたいな歌詞の」
「もう、ええです。充分に分かりましたから」
自分の中にあった脳内妄想が、現実とこれ以上無いまでにシンクロして、テーブルに突っ伏し、重い溜息を吐く。そんな俺を見て、心中お察し致します、とまでに、前園先輩はゆっくりと手を合わせて俺に向けて拝んできた。角度的に分からないけれど、恐らくはとても安らかな笑顔をしているのだろう。クソどうでもいいから、放っておく事にした。
「……俺、透さんに、もう小……幸也さんの所に仕事しに行かへんでって、言うてもうたんです」
「おー、随分な話だな。でも、気持ちは分かるよ。俺だったら嫌だし、同じ事言うかもしんない」
「ですよね?……俺、間違ってませんよね?」
「いや、間違ってるか間違ってないかで言ったら、そりゃ間違ってるよ」
なんだよそれ。なんか、かなりの勢いで脱力した。ただ、言いたい事は、非常に分かる。いくら恋人だとは言え、相手の仕事に口を出すなんて、大人のする事じゃないもんな。
「ただ、自分の感情って、それこそ自分にしか大切に出来ないだろ?それに、自分を大事に出来ない人間は、他の誰かを大切にも出来ないと思うよ」
「先輩……」
アルコールも入っている所に様々な情報まで盛り込まれ、脳内妄想が現実に具現化して、泣きそうになっていた俺に、前園先輩は、優しくそっと語り掛けてくれた。自分自身に失望しかけていた今の俺の胸に、先輩の言葉は深く沁み渡る。本当に泣きそうになるから辞めて欲しいと思いつつも、俺は先輩のその金言を有り難く受け取った……までは、良かった。
「ところで、お前らセックスしたの?」
この人、上げてから落として来やがった。心を許した次の瞬間に此れだもの。絶対に楽しんでる。俺の、俺達の一部始終を、いい酒のつまみにしやがって。屈辱的ではあるけれど、それ以上にこの人には恩があるし、逆らえない。それを分かった上でこれだからな……やってられませんわ。でも、行き着く先の興味がそこになってしまうのは、男であれば自然だよな、とも思うし。だから、渋々と口を開いた。
「東京から新大阪に帰ってきて、うちに泊まる話になって。ていうか、そう持っていって、俺が。で、お互いに風呂入って、俺のベッドに一緒に並んで座って話して……良い感じには、なったんです」
「ふんふん、それで?」
「そしたら、俺に向けて、俺を好きになって良かったとか、言ってくれて。その後、透さんの方から、なんていうか……僕に、触ってって……」
恥ずかしいけど、それ以上に、しんどい。この後の展開が、何となく分かっている俺にとって、これは公開処刑でしかないから。
「おぉっ、やったな透!性格的にもギャップがあって、お前そう言うの好きそうだし。で、その後は?」
「………一緒に、手ぇ繋いで、寝ました」
「……は?」
分かるよ、前園先輩。その反応は、正しい。俺が逆の立場なら、そうなる。
「寝たって、隠語の方の意味だよな?」
勿論、そう返したくなるのも分かる。ただ、これホンマの話なんで、あまり疑われても困るんですよ。
「いえ、そのままの意味です。キスは一応しましたけど……その後は一緒に手ぇ繋いで、普通に寝ました」
まぁ、俺は朝まで一睡もせえへんかったけども。それを言っても、俺の男としての情け無さに拍車が掛かるだけなので、黙っておく事にした。
そう、俺はあの日、透さん自らが、清水の舞台から懸命に飛び降りてくれたにも関わらず、それを不意にしてしまったのだ。キスは、何度もした。触れるだけのものから、お互いの唾液を交換し合う、今まで透さんとはした事がないものまで。だけど、それ以上は、俺には手が出せなかった……何故なら。
「なんでそんな据え膳逃したの、お前」
「……………た、」
言うのか?言ってどうなる。笑われて、それでお仕舞いか、それとも、深く同情されたり憐れんだりされたりして。だとしたら、まだ笑われる方が、救いがある気がする。話にオチが付いて、次こそ頑張れよって、乾杯して、それでお仕舞い。だけど俺は、今のこの、不甲斐なくて情けなくて、男として惨めな気持ちに蓋をしたまま、生きていきたくなかった。それに、さっきはそんな風に考えたけど。やっぱり、俺は。
誰かにこの事実を、絶対に笑われたくない。
「勃たなかったんです」
ドッ、と近接する団体客の席から、イタリアンバルの落ち着いた空間を割り開く様な爆笑が生まれた。どうやら、新人社員風の男が、上司や諸先輩を喜ばせる為に、何やら一芸を披露したらしい。囃し立てられ、調子に乗った新人社員風の男は、その場の勢いを借りて生ビールの一気飲みを始めた。しかし、あまり酒に強い人間ではないのか、酒が喉を通って行かず、口の端から飲み下せなかった酒が溢れ、襟首の汚れたワイシャツにじわじわとシミを作っていった。しかし、男を見せようと必死になる気概が上司達には気に入られたのか、その場の空気は盛り上がる一方で。誰もその男の暴挙を止めたりはしなかった。
「自分なりに頑張ってみても、どうしても反応しなくて。キスをするだけで精一杯で、先にも進めなくて……進む気にも、何故だかならなくて。一緒に並んで座って話していた時は、ドキドキしてたし、その後の想像も働かせてたんですけど」
自分でも、何故、自分の人生の中でも特別大事な場面で、一番肝心な身体の一部が反応しなかったのか分からない。透さんと一緒に寝る段階になって、トイレに立った後、慌ててスマホで調べてみても、『ED』という単語が検索項目にヒットした瞬間に怖くなって、それ以上調べるのをやめてしまった。だから、その現象は、それ以降ずっと人生最大の謎として自分の中に取り置かれ、俺の男としての自尊心に深く根付いて、様々なトラウマの記憶と一緒に、俺の頭の中にある本棚に陳列されてしまっている。
「それまでだって、毎晩夢に見るくらいに、その時が来る日を、ずっと待ち望んでたのに。何度もその想像で、自分を慰めたりして……だから、身体が反応しなかった意味が分からなくて。あの日からずっと、混乱しっぱなしなんです」
キスをして、おやすみなさい、とお互いに伝えあって、手の平から伝わる体温を感じながら、一緒のベッドに横になって。次第に深くなっていく透さんの寝息を聞きながら、俺は、声を殺して泣いた。
透さんが、いま、誰よりも一番近くにいて、俺と同じ気持ちでいる事を伝えて、自分に触れて欲しいと、恥じらいながら告げてきたのに。俺は、その気持ちに応えられなかった。これまで必要以上に培ってきた男の矜持が、ズタズタに引き裂かれ、胸の中の心象風景の一面が血の海になる。次の日の朝、透さんが俺の目の前で夢から醒めて、瞼をゆっくりと開く、その姿を、穴が開くほど間近で見つめながら。俺は、一晩中泣いて泣いて、すっかりと枯れてしまった筈の涙を、再び流してしまった。
あまりにも、神々しくて。
「自分ではなった事ないけど、話には聞いた事あるよ。相手を神聖化し過ぎたり、好きになり過ぎたりすると、緊張してそうなる人もいるって」
同情や憐憫でもなく、勿論、笑うでもなく。『他にもそうした人はいる』と、事実のみを述べてくれる前園先輩に、俺は、話している間中ずっとテーブルの上に這わせていた視線を、ゆっくりと上げていった。
「そう、なんですか?……なら、これって治るんですか?」
「治る治る。心の問題だから時間が解決する場合もあるみたいだけど、あまり続く様なら、ED治療薬とか使ったりして慣らして行ってとかね。どちらにせよ、不治の病とかじゃないから安心しな」
軽い調子で、まるで効き始めの風邪の治し方みたいに説明してくれる前園先輩に、俺はどれだけ救われただろうか。あの日からずっと、人知れず抱えてきた重たい荷物を、足元に漸く置けた様な。話しているだけでも、答えを聞くまでも、何だかずっと身体に緊張が走っていたからドッと疲れたけれど、今では安堵の方がよっぽど強くて。この人に相談して、本当に良かったと思えた。
「ありがとうございます、前園先輩。俺、ずっと悩んでて。誰にも相談出来なくて……透さんと一緒に居っても、今まで通りに接するのが、凄く辛くて、申し訳なくて」
「そっか……そうだろうな」
酒の力もあったから話せたという面もあるんだろうけど、それでも、この話をする相手は、俺にとって、この人しかいないと思っていた。目には見えない、それこそネットに存在する自称耳年寄りの人間達に相談する事も考えたけれど、それで自分の中にある不安が消えるとは思えなかったから。その判断は間違っていなかったんだと、ホッと胸を撫で下ろした。でも。
「やっぱり、これって、EDのうちに入るんですね」
「うーん、そんな深刻に考えなくてもいいけど。分類としては、それのうちだろうな」
「………はぁ、マジか」
この歳でEDになるなんて、かなりショックだ。これまで、はっきり言って其方の方面で困った事態になった試しはなかったし、自慢では無いけれど、身体だけで相手を骨抜きにしてきた経験は何回もある。だから、そんな自分には無縁の病気だと思っていた。それなのに、よりによって自分の一番好きで、誰よりも特別な人を相手に、自分の身体が全く機能しなくなるだなんて。そこまで考えて、はたり、と一つの問題が目の前に転がった。
「これって、透さんにだけ身体が反応しないだけで、他の人を相手にしたら問題ない……とか?」
「俺も専門家とかじゃないからなぁ、何とも言えないけど。何、もしかして、お前……」
「違いますよ、勘違い禁止。だって、もしも透さんがその話を何処かから聞き齧ったら、変な誤解をするんやないかって」
「ああ、確かに」
いつか、透さんが俺の異変に気が付いて、それで俺の様にネットの知識に頼ろうとした時、誤った情報を知識として吸収してしまったら、『自分には興味が持てないんだ』なんて酷い誤解をしてしまうんじゃ……透さんの思考パターンは、知り合ってからの半年間で、これでいてかなり熟知したから、この発想は強ち間違っていない可能性が大だった。
……それで、その相談を誰にも打ち明けられないまま、仕事を辞めたいと願い出る為に訪れた幸也さんの家で、透さんは、理由を問い詰められた末に、いつの間にか俺との関係性も口にする様になるんだ。仕事を辞める原因が俺という存在があるからだと知った幸也さんは、歯噛みする想いを抱えながら、最後に残った理性を総動員して、落ち着いて話をしようとする。けれど、どうあっても自分自身を押さえつける事など出来ず、とうとう、堰が切れた様に、自分の想いを曝け出してしまう。
『そんなに、そいつが大切なのか。俺を捨てて、そいつを選ぶくらいに。お前の中に、一欠片の後悔も無いのか?……もしも、そいつが無理矢理お前を自分の好きにしようとしている様な奴なら、俺はお前を黙って行かせる訳にはいかない』
その熱意に後押しされて、俺は決してそんな身勝手な人間じゃないと説得する透さん。しかし、俺との間に出来た、ほんの僅かに生じた不安を、遂に透さんは口にしてしまう。
『潤が、僕を大切にしてくれているのは、凄く伝わってくるんです。ただ……僕自身には、もしかしたら、もう興味が無いのかも知れません』
『どういう事だ?』
親身になって話を聞いてくれる幸也さんに、透さんは微かに涙ぐみながら、胸にあるその悩みを打ち明けていく。幸也さんは、そんな透さんの気持ちを癒す為に行動を起こすと誓い、そして、自分自身の押さえつけてきた我欲を解放して……
『お前の気持ちに応えようとせずに逃げ回って……そんな情け無い男、辞めておけ。そもそもお前の魅力は、この俺だけが知っていればいいんだ』
『幸也さん……それって』
『……ずっと、好きだった。だから、俺から離れようとするのはやめて、俺を選んでくれ』
『あ、だめ……幸也さん、待って』
『もう、充分、待った』
FIN
……無理。想像だけで無理。何が『もう、充分、待った』や。そこまでいったら、一生涯に掛けて待ち続けて欲しい。そこで手ぇ出したら二人で築き上げてきた綺麗な思い出や絆とやらが、いっぺんに台無しになるの分からへんの?いや、全部マジでガチの想像やけども。だけど、もしもそんな話になってもうたら。
「……アカン、このままやと、透さんがNTRされる」
「どうしてそうなった?」
前園先輩が、暫く思考の海にダイブしていた俺に向けて、もしもーし、と話し掛けてきていたのは分かっていたけれど、敢えて無視しながら考え付いた先にある最悪のパターンを導き出す為の模索を繰り返した。こうした場合は、最悪の状況を想定した上で、そうならない為にはどうしたらいいかを考えて、自分の行動に反映させて行くのが手っ取り早い。だから俺は、頭の上に何個ものクエスチョンマークを浮かべている、置いてけ堀状態にあった先輩に、自分の考えた最悪のパターンを説明していった。すると、俺の話を聞いていくうちに、先輩は、次第に真剣な表情になっていき、何故俺が透さんNTRルートの想定をするに至ったのかの理解が及ぶと、俺に向けて納得を深める様にしてゆっくりと頷いてから。
「………ヤバいな」
「ですよね。やっぱり、何か対策を打っておかないと、透さんの貞操が危ないですよね」
「うん、それはそれでね。ヤバいのは、お前の頭の方な」
「……どういう意味ですか?」
「仕事辞めにいく人間が、辞める理由になった自分の彼氏の存在を話すわけないじゃん。普通なら、他に無理矢理にでも理由作るだろ」
「それは、……」
あれ、確かに。言われてみればそうかも。
「それに、幸也さんの性格は、お前よりよっぽど俺の方が分かってる。あの人は、自分の気持ちよりも、自分の大切にしてる人間の気持ちを優先する人だ。だから、自分から離れていく人間を、間違っても引き止めたりはしないと思うよ」
えっと……そうなんだ。成る程ね。でも確かに、俺も、これでいて昔から小泉 幸也大先生のファンだから、インタビュー記事やネット情報なんかも割と入手していて、そのさっぱりとした性格や、人として尊敬できる人間性は、自分なりに知った気になっていたけど。その記憶を引っ張ってくる限り、さっきの想像というか俺の妄想は、確かに過大な脚色が過ぎたなと、今では冷静にそう思えた。つまり、今の俺は、酷く恥ずかしい真似をしてしまったという、そういう事ですかね。
「……さっきの話、全部忘れて下さい」
「了解。ただ、男性院長と男性看護師しかいない良いクリニック知ってるから、そこだけは紹介するな」
何から何まで、ホンマにすんません。という気持ちで、テーブルに額を擦り付ける勢いで頭を下げる。今振り返れば、透さんに対する心配や、幸也さんに対する嫉妬心で、頭が煮えて暴走していたとしか思えなかった。自分自身、EDという病気を患ってしまった衝撃が強過ぎて、心の余裕というものが無くなってしまっていたのは事実だけど。これはまた、何処に出しても恥ずかしい、完全なるやらかしでしかなかった。
「そう言えば、同棲の話はしたのか?……って、その顔見たら分かった。そりゃ、そんな話をする余裕も無いよな」
自分がどんな顔をしていたのかは分からないけれど、俺の表情は、前園先輩の反応を見た瞬間に、あっさりと結果を悟れるくらいに酷い有り様だった様だ。ある程度の説明が省けたから、悪い事ばかりじゃないんだけど。
「生活が一緒になったら、自分の病気を隠すのは難しいですし、必然的に、そうしたタイミングも増えますやんか。せやから、やっぱり……無理でした」
「そっか……」
説明する手間を省いたにも関わらず、促された訳でもないのに、結局、自分から説明してしまった。二度手間というか、自ら恥を晒していくスタイル辞めたい。でも、吐き出したかった、という気持ちも自分の中に間違いなくあったから、結局は同じ結果になっていたのかもしれなかった。
「でもさ、さっきからずっと思ってたけど、そんなにその問題って、透に隠さないと駄目なの?」
「え……?」
言われた事の意味が、分かる様でいて分からず聞き返すと、前園先輩は俺を安心させる様な穏やかな笑みを浮かべてから、自分が何故そう思ったのかの説明を始めた。
「自分に置き換えて考えてみたら分かりやすいんだけどさ、相手の事が好き過ぎて手が出せないとか、言われた側は最初のうちは困惑するかも知れないけど、大なり小なり、喜びも生まれると思うんだよね。そりゃ、その状態がずっと続く様なら話は別だけど、今は治療薬もあるし、それにまだお前は若いしさ……だから、あんまり悲観的に考える必要ないんじゃない?」
言われて気が付き、そして想像する。透さんと、俺の立場が、もしも逆だったらと。
俺の事が好き過ぎて、身体が上手く反応しないからと、自分を責める透さんを、俺が慰めたり、寄り添ったりする。精神的にも、そして、肉体的にも。
そんな事態になったなら、俺は絶対に、何が何でも病院にも付き添うだろうし、治療やリハビリに関しても徹底的にサポートして、『大丈夫だよ、心配しないで、いつでも俺が側に居るよ』と、真摯に、そして直向きに声掛けをするだろう。
けれど、そんな、俺が好き過ぎるからという、その理由一つで、なかなか自分自身の身体を開花させられない透さんを見て、俺は、自分の我欲を抑え切れるだろうか。
どれだけ刺激しても全く反応しない、その花芯。こんな身体でごめんなさいと、俺の腕の中で泣き噦る、貴方。
そんな死ぬほど可愛いその人を、俺はきっと、貪り喰らってしまう。
………クソ可愛い。しんど。想像しただけで、一瞬でズボンの下がどえらい事になってる。こんな瞬発力のある身体ぶら下げといて、実際にはセックス出来ないとか、全く意味が分からない。
もしかして、クリニックに行く必要とか無いんじゃないか?単純に時間の問題とかの可能性もあるかもしれないし。でも、それまでの間、透さんに何も相談せずに、一方的に待たせたくはないし。それに何より、身体がきちんと反応する様になるまで、俺自身があの人に触れられないのを我慢出来ない。だから、一応は専門家に話を聞いて貰って、薬だけでも貰いに行くべきなんだろうなと、やっぱり結論付いて。はぁ、と熱く重い溜息を吐いた。
嗚呼、俺の頭の中の透さんが可愛過ぎる。現実に実在する本人の方が、その何倍も何十倍も可愛い事実も、辛い。
「お前、その顔やめとけよ、本人の前では」
さっきまで通常運転だった前園先輩が、げんなりとした口調で、俺に忠言してくる。自分が今、一体どんな顔をしているのかは分からないけれど、この人は俺にとって身になる話をしてくれる事の方が多い人だから、はい、すみません、と平謝りで返事をした。
「病状が落ち着いたら、同棲の話も進められるかも知れないですよね」
「初めから病状を相談しとくなら、別に今からでもいいんじゃないの」
「ああ、確かに」
盲点というか、何というか。でも、それなら色々な意味で、話が早く進む。透さんに無駄な心労を掛けたりしなくて済むし……セックスに臨める回数が必然的に多くなる環境があれば、俺のリハビリにも効果的で、一石三鳥だ。
「ただ、透の気持ちが一番大切だからな?あんまり急に話進められても向こうも困るだろうし」
「そうですよね……」
初めから全部上手くやろうと考えるのは良くない。確かに、俺が自分の症状を透さんに説明して、俺のリハビリも兼ねて同棲するという案は、様々な問題を一度に解決出来る妙案ではあるけれど、それは俺にとっての場合であって、透さんからしてみたら寝耳に水の話でしか無いからだ。今の生活をごっそり変えて、一緒に生活するだけでも大変なのに、毎晩リハビリ目的に夜を強要されては、透さんは精神的にも肉体的にも大変だろう。
「同棲の始め方とか、レクチャーしてくれる人、誰かおらんかな……」
「知り合いにならいるけど?」
「……え?」
先程とは毛色の違う重い溜息を吐いて項垂れていた俺は、その発言を受けてパッと顔を上げた。俺達の席に届いたばかりのトリッパのトマト煮込みを、はふはふと熱そうに咀嚼している前園先輩の顔をマジマジと見て、無言で話の続きを促す。すると、漸く咀嚼した口内をさっぱりさせるかの様に、酔い覚ましの烏龍茶を口に含んでから、先輩は、俺に向けてにっかりと快活に笑った。
「今から紹介するクリニックの、和泉 丞先生」
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