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なにもない部屋
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侯爵家からの使者は以前と変わらぬ対応でシャロンを
馬車に乗せて侯爵家に向かう。
向かいには侯爵家の侍女が目を閉じて座っている。
今までは天気の話や侯爵家や伯爵家のこんな花が咲いたなど
たわいもない会話しかしたことがない。
だがシャロンは伯爵家に籠っていた期間、
外の情報を全く知らない。侯爵からも手紙の1通もなかったのだ。
ーー籠っていろとは言われたけど・・ーー
「あの…」
「はい」
シャロンは言葉が出ない。何を話せばよいのかわからないのだ。
侯爵家でもシリウスの周りでみたのはごく一部である。
この侍女も馬車を降りると一礼して持ち場に戻るのだ。
聞いても良い事なのかが判らず、言葉に詰まる。
「お嬢様、どうされました?」
「あ、いえ…しばらくお伺いしてなかったものですから
侯爵様はお元気‥‥かと思いまして」
慌てて取り繕うが失敗したと感じる。
もし何かしら病気であれば使者を寄越すことはないからだ。
呆れているのではないかしら?とシャロンは顔を真っ赤にした。
「侯爵様はいつも通りでございます。
ここのところ、少々忙しくされておりましたが
昨日隣国から戻られて、お嬢様をお呼びするように仰せつかりました」
ーー隣国?あぁ…そう言えばお姉様が西の国に嫁がれたのだわーー
「まぁ、ご帰国早々ですのね。お手間を取らせますわ」
「いえ、侯爵様のご要望ですので」
これ以上は私に何も聞くなとばかりに侍女は会話を止めた。
仕方ないとシャロンは小窓の景色を眺める。
侯爵家に到着すると、ここでも以前と同じようにドレーユ侯爵が
シャロンを玄関先で出迎える。
「ご無沙汰しておりました。お変わりありませんでしたか?」
「いえ、こちらこそご無沙汰を致しておりましたわ。
侯爵様、すこしお痩せになられました?」
社交辞令のような会話をして屋敷の中に招き入れられる。
そのままシリウスの眠る部屋に通されるのかと歩みを進めると
少し手前の部屋の扉の前でドレーユ侯爵は歩みを止める。
「今日は、こちらで少しお話を致しましょう」
「は、はい」
嫌ですなどとは言えないので素直に従うシャロンは
初めて見る部屋に驚く。
確かに、この部屋に入るのは初めてではあるがそのような驚きではない。
学園生時代には何人かの女生徒の屋敷に遊びに行った事がある。
公爵家は流石に行った事がないが、同格の伯爵家の他に子爵家、男爵家、
騎士伯の屋敷だが、このような部屋は見たことがない。
大きさとしては、屋敷で行う夜会が十分にできるほどの広さであるが
その部屋のある物は、窓、カーテン、そして4人掛けのテーブルセットのみ。
何もない空間にポツンと置かれているテーブルセットが
奇妙な雰囲気をだしていた。
「どうぞ、お座りください」
「え、えぇ…」
テーブルに座り、壁や天井を眺めるも何もない空間だとしか思えない。
季節も冬なので何もない事でより冷気を感じる。
「ゆっくりしてください」
ーーゆっくり…というか、むしろ不安を煽る部屋だわーー
膝に置いた両手をグッと握りしめる。
そんなシャロンを横目にドレーユ侯爵は小さな箱を
テーブルにそっと置くと、着席をした。
馬車に乗せて侯爵家に向かう。
向かいには侯爵家の侍女が目を閉じて座っている。
今までは天気の話や侯爵家や伯爵家のこんな花が咲いたなど
たわいもない会話しかしたことがない。
だがシャロンは伯爵家に籠っていた期間、
外の情報を全く知らない。侯爵からも手紙の1通もなかったのだ。
ーー籠っていろとは言われたけど・・ーー
「あの…」
「はい」
シャロンは言葉が出ない。何を話せばよいのかわからないのだ。
侯爵家でもシリウスの周りでみたのはごく一部である。
この侍女も馬車を降りると一礼して持ち場に戻るのだ。
聞いても良い事なのかが判らず、言葉に詰まる。
「お嬢様、どうされました?」
「あ、いえ…しばらくお伺いしてなかったものですから
侯爵様はお元気‥‥かと思いまして」
慌てて取り繕うが失敗したと感じる。
もし何かしら病気であれば使者を寄越すことはないからだ。
呆れているのではないかしら?とシャロンは顔を真っ赤にした。
「侯爵様はいつも通りでございます。
ここのところ、少々忙しくされておりましたが
昨日隣国から戻られて、お嬢様をお呼びするように仰せつかりました」
ーー隣国?あぁ…そう言えばお姉様が西の国に嫁がれたのだわーー
「まぁ、ご帰国早々ですのね。お手間を取らせますわ」
「いえ、侯爵様のご要望ですので」
これ以上は私に何も聞くなとばかりに侍女は会話を止めた。
仕方ないとシャロンは小窓の景色を眺める。
侯爵家に到着すると、ここでも以前と同じようにドレーユ侯爵が
シャロンを玄関先で出迎える。
「ご無沙汰しておりました。お変わりありませんでしたか?」
「いえ、こちらこそご無沙汰を致しておりましたわ。
侯爵様、すこしお痩せになられました?」
社交辞令のような会話をして屋敷の中に招き入れられる。
そのままシリウスの眠る部屋に通されるのかと歩みを進めると
少し手前の部屋の扉の前でドレーユ侯爵は歩みを止める。
「今日は、こちらで少しお話を致しましょう」
「は、はい」
嫌ですなどとは言えないので素直に従うシャロンは
初めて見る部屋に驚く。
確かに、この部屋に入るのは初めてではあるがそのような驚きではない。
学園生時代には何人かの女生徒の屋敷に遊びに行った事がある。
公爵家は流石に行った事がないが、同格の伯爵家の他に子爵家、男爵家、
騎士伯の屋敷だが、このような部屋は見たことがない。
大きさとしては、屋敷で行う夜会が十分にできるほどの広さであるが
その部屋のある物は、窓、カーテン、そして4人掛けのテーブルセットのみ。
何もない空間にポツンと置かれているテーブルセットが
奇妙な雰囲気をだしていた。
「どうぞ、お座りください」
「え、えぇ…」
テーブルに座り、壁や天井を眺めるも何もない空間だとしか思えない。
季節も冬なので何もない事でより冷気を感じる。
「ゆっくりしてください」
ーーゆっくり…というか、むしろ不安を煽る部屋だわーー
膝に置いた両手をグッと握りしめる。
そんなシャロンを横目にドレーユ侯爵は小さな箱を
テーブルにそっと置くと、着席をした。
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