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令嬢の企みと王子の心
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時をさかのぼる事3か月前の事です。あの新卒の講師が川のほとりで見つかった頃です。
「殿下お待ち申し上げておりましたわ」
「どうしたのだ」
「そろそろ学園も卒業ですわ。引継ぎの書類を後輩に渡す時期で御座います」
「うむ。そうだな。仕上げるとするか」
「はい。お手伝い致します」
至って真面目に生徒会の引継ぎの書類に抜けがないか確かめていくご令嬢と第一王子。
ふーん。意外と真面目というか‥‥仕事はするんですねぇ。
ペンの音と書類を捲る音だけが響く室内ですが、以前の令嬢と性交をやめてもう10日。
女性講師の事件がまだ自死と確定されていないので控えていた時期です。
目の前にいるのは公爵令嬢のレジーナ。
前世では学園に入った頃から度々体を重ねておりましたが、今回はまだ手を出していません。
レジーナはそれとなく第一王子へのアプローチを繰り返しておりましたが、何故が2学年になった頃から少し距離を置いて数歩控えるような位置にいつもおりました。
目の前で書類に目を通し、時折ペンを走らせていくレジーナ。
禁欲生活10日目の王子に、レジーナがつけている甘美な香りが鼻腔を擽ります。
カタリ…
「レジーナ公爵令嬢」
席を立つとレジーナの隣に行き、レジーナのうなじを指で触れる。
ハっと振り返り、恥じらいを見せるレジーナに第一王子はその唇を重ねた。
レジーナの片手が自身の制服のポケットから小瓶を取り出し、王子のポケットの小瓶と入れ替えた事も知らず、第一王子はレジーナの制服を上から徐々に弛めていく。
「で、殿下‥‥このような…事は…」
「構わぬ。お前を欲しておるのだ」
「で。ですが‥‥ああぁっ‥‥お、お許しくだ…さいまし…」
レジーナを脱がせ、奥の休憩室になだれ込むように歩かせベッドに横たえると王子はポケットから小瓶を取り出し飲み干す。
レジーナの口元が小さく歪み、笑いを称えた事に気が付かない。
王子は久しぶりの性交に衝動を抑えきれず、レジーナの純潔を散らし3度も中に子種を吐き出した。
黙って身支度を整える第一王子の背に向かってレジーナは言った。
「お情けを頂戴し、この上ない喜びでございます」
第一王子はそれからも何度かレジーナとつながった。
毎回小瓶の中身が入れ替えられているとも知らず、何度も放出すれば妊娠の確率はグンと上がる。
そしてレジーナは卒業まであと2週間と言う頃、学園に【体調不良】で登校しなくなった。
レジーナが登校しなくなっても第一王子は気にしなかった。
レイザード第一王子にとってレジーナであろうと誰であろうとクリスティナ以外は処理でしかない。
第一王子にとって卒業すれば堂々とチェルシー家に乗り込み、クリスティナを攫い、部屋に囲って悦ばせてやろうという想いしかなかった。
卒業式まであと10日と少しと言う頃、レイザード第一王子は父である国王に呼ばれた。
コンコン
「レイザード、参りました」
「どうぞお入りくださいませ」
国王の筆頭従者がドアを開けて入室するとそこには父である国王、母である王妃。
そしてレジーナとその両親である公爵夫妻が一斉にレイザードに視線を向けた。
「まぁ座れ」
国王に促されて着席をする。すると耳を疑うような言葉がレイザードを打ちのめした。
「レイザード。お前の放蕩ぶりにはほとほと手を焼いたが、最期の最期に公爵令嬢とはな。まぁよい。世継ぎも出来た事だ。卒業と同時にレジーナ嬢の体調を見て婚姻の儀を行うとしよう」
レイザードの頭の中は混乱をする。
何だって?あり得ないだろう!!避妊薬を飲んだはずだ。妊娠している筈がない!
しかし、目の前のレジーナを見て悟った。薬を何らかの形で入れ替えたのだと。
そしてレジーナは言った。
「お情けを頂戴し、この上ない喜びでございます」それは紛れもなく、妊娠の可能性がある子種の事である。
【謀られた】
しかし、ここで肩を落とすような腐れ、いえいえ、ヨゴレ、違いますね、狂気の王子ではございませんよ。
謀られたと思うと同時にレイザード第一王子の心にはもう一つの言葉がありました。
【どうでもいい】
レイザード第一王子にとっては正妃が誰であろうと、それがたとえ意図しない子を産む事になろうとも蚊に刺されるより大した問題ではない。
王子の心の中にはクリスティナしかいないし、必要ではない。
王座すらクリスティナの、あの前世の苦痛と屈辱に歪む瞳に比べればゴミも同然であったから。
「そうですか。ではレジーナ嬢は正妃という事で。わたくしは執務がありますのでこれにて。あぁレジーナ嬢、体を厭い丈夫な子を産むがよい」
目だけが笑っていない笑みでレジーナを見る第一王子にレジーナのこめかみがピクリと動く。
子供さえ出来てしまえば王子は自分だけを見てくれるだろう。甘い考えだった。
国王の椅子ですら、王子にはどうでも良いモノである事を悟った。
それは自分も、そして腹に宿った王子との子も、王子には何の価値も意味もないのだと悟った。
そう言って陛下の執務室を後にする王子。
執務室に戻ると、従者を全て下げ、引き出しからハンカチを取り出す。
刺されたマーガレットの模様を指で愛おしそうに撫でる。
「クリスティナ‥‥君との子供だけが私の子供だ。本物の愛を君に注ごう」
「殿下お待ち申し上げておりましたわ」
「どうしたのだ」
「そろそろ学園も卒業ですわ。引継ぎの書類を後輩に渡す時期で御座います」
「うむ。そうだな。仕上げるとするか」
「はい。お手伝い致します」
至って真面目に生徒会の引継ぎの書類に抜けがないか確かめていくご令嬢と第一王子。
ふーん。意外と真面目というか‥‥仕事はするんですねぇ。
ペンの音と書類を捲る音だけが響く室内ですが、以前の令嬢と性交をやめてもう10日。
女性講師の事件がまだ自死と確定されていないので控えていた時期です。
目の前にいるのは公爵令嬢のレジーナ。
前世では学園に入った頃から度々体を重ねておりましたが、今回はまだ手を出していません。
レジーナはそれとなく第一王子へのアプローチを繰り返しておりましたが、何故が2学年になった頃から少し距離を置いて数歩控えるような位置にいつもおりました。
目の前で書類に目を通し、時折ペンを走らせていくレジーナ。
禁欲生活10日目の王子に、レジーナがつけている甘美な香りが鼻腔を擽ります。
カタリ…
「レジーナ公爵令嬢」
席を立つとレジーナの隣に行き、レジーナのうなじを指で触れる。
ハっと振り返り、恥じらいを見せるレジーナに第一王子はその唇を重ねた。
レジーナの片手が自身の制服のポケットから小瓶を取り出し、王子のポケットの小瓶と入れ替えた事も知らず、第一王子はレジーナの制服を上から徐々に弛めていく。
「で、殿下‥‥このような…事は…」
「構わぬ。お前を欲しておるのだ」
「で。ですが‥‥ああぁっ‥‥お、お許しくだ…さいまし…」
レジーナを脱がせ、奥の休憩室になだれ込むように歩かせベッドに横たえると王子はポケットから小瓶を取り出し飲み干す。
レジーナの口元が小さく歪み、笑いを称えた事に気が付かない。
王子は久しぶりの性交に衝動を抑えきれず、レジーナの純潔を散らし3度も中に子種を吐き出した。
黙って身支度を整える第一王子の背に向かってレジーナは言った。
「お情けを頂戴し、この上ない喜びでございます」
第一王子はそれからも何度かレジーナとつながった。
毎回小瓶の中身が入れ替えられているとも知らず、何度も放出すれば妊娠の確率はグンと上がる。
そしてレジーナは卒業まであと2週間と言う頃、学園に【体調不良】で登校しなくなった。
レジーナが登校しなくなっても第一王子は気にしなかった。
レイザード第一王子にとってレジーナであろうと誰であろうとクリスティナ以外は処理でしかない。
第一王子にとって卒業すれば堂々とチェルシー家に乗り込み、クリスティナを攫い、部屋に囲って悦ばせてやろうという想いしかなかった。
卒業式まであと10日と少しと言う頃、レイザード第一王子は父である国王に呼ばれた。
コンコン
「レイザード、参りました」
「どうぞお入りくださいませ」
国王の筆頭従者がドアを開けて入室するとそこには父である国王、母である王妃。
そしてレジーナとその両親である公爵夫妻が一斉にレイザードに視線を向けた。
「まぁ座れ」
国王に促されて着席をする。すると耳を疑うような言葉がレイザードを打ちのめした。
「レイザード。お前の放蕩ぶりにはほとほと手を焼いたが、最期の最期に公爵令嬢とはな。まぁよい。世継ぎも出来た事だ。卒業と同時にレジーナ嬢の体調を見て婚姻の儀を行うとしよう」
レイザードの頭の中は混乱をする。
何だって?あり得ないだろう!!避妊薬を飲んだはずだ。妊娠している筈がない!
しかし、目の前のレジーナを見て悟った。薬を何らかの形で入れ替えたのだと。
そしてレジーナは言った。
「お情けを頂戴し、この上ない喜びでございます」それは紛れもなく、妊娠の可能性がある子種の事である。
【謀られた】
しかし、ここで肩を落とすような腐れ、いえいえ、ヨゴレ、違いますね、狂気の王子ではございませんよ。
謀られたと思うと同時にレイザード第一王子の心にはもう一つの言葉がありました。
【どうでもいい】
レイザード第一王子にとっては正妃が誰であろうと、それがたとえ意図しない子を産む事になろうとも蚊に刺されるより大した問題ではない。
王子の心の中にはクリスティナしかいないし、必要ではない。
王座すらクリスティナの、あの前世の苦痛と屈辱に歪む瞳に比べればゴミも同然であったから。
「そうですか。ではレジーナ嬢は正妃という事で。わたくしは執務がありますのでこれにて。あぁレジーナ嬢、体を厭い丈夫な子を産むがよい」
目だけが笑っていない笑みでレジーナを見る第一王子にレジーナのこめかみがピクリと動く。
子供さえ出来てしまえば王子は自分だけを見てくれるだろう。甘い考えだった。
国王の椅子ですら、王子にはどうでも良いモノである事を悟った。
それは自分も、そして腹に宿った王子との子も、王子には何の価値も意味もないのだと悟った。
そう言って陛下の執務室を後にする王子。
執務室に戻ると、従者を全て下げ、引き出しからハンカチを取り出す。
刺されたマーガレットの模様を指で愛おしそうに撫でる。
「クリスティナ‥‥君との子供だけが私の子供だ。本物の愛を君に注ごう」
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