131 / 580
第四章 師匠との邂逅と新たな出会い
15話 もう一つの心器
しおりを挟む――3か月後
桜が綺麗に咲く季節がやってくる。
私は無事2年生に進級した。
新学期初日、今日から私の新しいクラスとなる2年3組の教室。
その扉の前で私は深呼吸を繰り返しながら緊張した面持ちで立っていると、ふいに後ろから声を掛けられる。
「ねぇあんた、そこ邪魔なんだけど」
「あ、ごめんなさい!」
入り口の扉を塞いでしまっていた私は慌てて声の主に謝罪をしながら振り返る。
「げ、あんた……」
振り返った私の頭上からは、何だかとても嫌そうな声が聞こえてきて、私は「え?」と顔を上げた。
するとそこにはどこか見覚えのある、懐かしい人物が立っていて。
「……え……えぇ? 先輩? えっと確か……月岡佑樹先輩!」
胸元につけられた名札をチラリと見ながら私はその人の名前を呼んだ。
その人は去年の秋、まだ私がクラスに馴染めなかった頃に何度かお世話になった1学年上の先輩で、階段から落ちかけた私を偶然にも助けてくれた人だった。
「え?どうして先輩が2年の教室に?」
「どうしてって……見りゃ分かるだろ。ここが今日から俺のクラスだからだよ」
「えぇ?!どうしてですか? だって先輩は先輩のはずじゃ……」
「るっせーな。留年したからに決まってんだろ」
「えぇ~留年?!」
「バカ、大声だすな」
恥ずかしそうに周りをキョロキョロ見ながら月岡先輩は慌てた様子で私の口を塞ぐ。
「ご、ごめんなさい。でも、どうして留年なんて?」
「単位が足りなかったんだよ。去年9月に事故にあって、今までずっと入院してたからな」
「えぇ……そうだったんですか。それは大変でしたね……」
「哀れんだ目で見るな。むかつく。それよりあんたは? その後どうだったんだよ。まだいじめられてるのか?」
「あ、そのせつは色々とお世話になりまして――」
私が先輩に近況を報告しようとした丁度その時、後ろから声を掛けられ振り返る。
そこには安藤さんと石川さんの姿があった。
「ちょ、ちょっと葵葉?! そのイケメン誰?!」
「あ、安藤さん。おはようございます」
「あれ、こいつ、お前のこと階段から突き落と――」
先輩が言いかけた言葉を何となく察して、今度は私が先輩の口を両手で塞いだ。
「どうしたの、葵葉?」
「いえ、何でも」
突然の私の行動に驚いた顔の二人に軽く咳払いしてみせながら、私は先輩と安藤さん達お互いの自己紹介をした。
「えっと、お二人にご紹介しますね。こちらは月岡佑樹先輩って言って、前に何度かお世話になった方なんです。で先輩、こちらは安藤さんと石川さん。今日から先輩のクラスメイトになる方達ですよ」
「ど、どうも。私達この子の友達で安藤可奈子って言います」
「私は石川咲良です。宜しく~」
二人が月岡先輩に向けて自己紹介している内容を聞きながら、私は不意に自分の顔がかぁと赤くなるのを感じた。
安藤さんが口にした“友達”の言葉が嬉しくて。
そんな私の姿を見ながら、先輩は何かを察したようのに「ふ~ん」と溢しながら私達を交互に見比べていた。
「なるほどね。案外楽しそうじゃん、今のあんた。良かったな」
そしてそれだけ言い残すと先輩は、私の頭をポンと一度叩きながら、教室へと入って行った。
桜が綺麗に咲く季節がやってくる。
私は無事2年生に進級した。
新学期初日、今日から私の新しいクラスとなる2年3組の教室。
その扉の前で私は深呼吸を繰り返しながら緊張した面持ちで立っていると、ふいに後ろから声を掛けられる。
「ねぇあんた、そこ邪魔なんだけど」
「あ、ごめんなさい!」
入り口の扉を塞いでしまっていた私は慌てて声の主に謝罪をしながら振り返る。
「げ、あんた……」
振り返った私の頭上からは、何だかとても嫌そうな声が聞こえてきて、私は「え?」と顔を上げた。
するとそこにはどこか見覚えのある、懐かしい人物が立っていて。
「……え……えぇ? 先輩? えっと確か……月岡佑樹先輩!」
胸元につけられた名札をチラリと見ながら私はその人の名前を呼んだ。
その人は去年の秋、まだ私がクラスに馴染めなかった頃に何度かお世話になった1学年上の先輩で、階段から落ちかけた私を偶然にも助けてくれた人だった。
「え?どうして先輩が2年の教室に?」
「どうしてって……見りゃ分かるだろ。ここが今日から俺のクラスだからだよ」
「えぇ?!どうしてですか? だって先輩は先輩のはずじゃ……」
「るっせーな。留年したからに決まってんだろ」
「えぇ~留年?!」
「バカ、大声だすな」
恥ずかしそうに周りをキョロキョロ見ながら月岡先輩は慌てた様子で私の口を塞ぐ。
「ご、ごめんなさい。でも、どうして留年なんて?」
「単位が足りなかったんだよ。去年9月に事故にあって、今までずっと入院してたからな」
「えぇ……そうだったんですか。それは大変でしたね……」
「哀れんだ目で見るな。むかつく。それよりあんたは? その後どうだったんだよ。まだいじめられてるのか?」
「あ、そのせつは色々とお世話になりまして――」
私が先輩に近況を報告しようとした丁度その時、後ろから声を掛けられ振り返る。
そこには安藤さんと石川さんの姿があった。
「ちょ、ちょっと葵葉?! そのイケメン誰?!」
「あ、安藤さん。おはようございます」
「あれ、こいつ、お前のこと階段から突き落と――」
先輩が言いかけた言葉を何となく察して、今度は私が先輩の口を両手で塞いだ。
「どうしたの、葵葉?」
「いえ、何でも」
突然の私の行動に驚いた顔の二人に軽く咳払いしてみせながら、私は先輩と安藤さん達お互いの自己紹介をした。
「えっと、お二人にご紹介しますね。こちらは月岡佑樹先輩って言って、前に何度かお世話になった方なんです。で先輩、こちらは安藤さんと石川さん。今日から先輩のクラスメイトになる方達ですよ」
「ど、どうも。私達この子の友達で安藤可奈子って言います」
「私は石川咲良です。宜しく~」
二人が月岡先輩に向けて自己紹介している内容を聞きながら、私は不意に自分の顔がかぁと赤くなるのを感じた。
安藤さんが口にした“友達”の言葉が嬉しくて。
そんな私の姿を見ながら、先輩は何かを察したようのに「ふ~ん」と溢しながら私達を交互に見比べていた。
「なるほどね。案外楽しそうじゃん、今のあんた。良かったな」
そしてそれだけ言い残すと先輩は、私の頭をポンと一度叩きながら、教室へと入って行った。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚
ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。
原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。
気が付けば異世界。10歳の少年に!
女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。
お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。
寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる!
勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう!
六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる!
カクヨムでも公開しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる