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しおりを挟むちびの顎を掴み、引き寄せると唇を重ねた。
柔らかいそこを軽く啄んで、ぺろりと唇を舐めてから解放する。
何の問題もない。
父親が老若男女どころか無機有機生死をも問わないので偏見はないが、男相手に欲望を感じたことは一度もなかった。
それが今、もっとこの少年に触れたいと感じている。
「よし」
「ふぇ?え?わ、」
ちびの服を手際よく剥ぎ取り、一糸纏わぬ姿にしてベッドに転がすと、困惑しきった瞳が見上げてきた。
「せ、征一郎…何?どうして…」
混乱の極地に達しているようだが、嫌がってはいない……はずだ。
自分の中で違和感がなさ過ぎて、説明が足りないかと言葉を足すことにする。
「とりあえず、俺がやりてえっつったらお前の目下の悩みはなくなるわけだろ?」
「え……そ、そう…なのか…な?」
人のことを役に立つとか立たないとかで計るのは好きではないが、征一郎が望む行為にちびが応えるのであれば、それは『役に立っている』ということになるはずだ。
征一郎がちびに好意を寄せられることを嬉しいと感じているのだから、その部分で引け目を感じる必要もない。
「んじゃそういうことでいいな」
決めつけてのしかかると、ちびは慌てて押し返すように手をつきだした。
「あっ……でででもおれ見た目が男で、それに小さいし……ひとじゃないし…っ、き、気持ち悪くない…?」
それはもう征一郎の中では先程のキスでクリアできている関門だ。
だが、初対面の時の自分の不用意な発言のせいで、この少年をこんなに追い詰めてしまった。
かたちは関係ない。その健気さを愛しいと思った。
「お前はかわいいぜ」
ちびの目が驚きに見開かれる。
想いが伝わるようにもう一度唇を重ねた。
ちびは緊張しているようではあるが、触れるとその身体は敏感に反応を返した。
甘い声に溺れていくように、愛撫を深くする。
以前から薄々感じていたのだが、この体はとても触り心地がいいのだ。
「せ、征一郎…っ…待っ…て…」
鎖骨辺りに唇を落とした時、弱々しい声が征一郎を止めた。
必死さを感じて、顔を上げる。
「ん?」
「あの……おれはじめてで…っ征一郎気持ちよくなかったらごめん…」
「あ?特にそういうのはいらね…」
誰かを抱きたいと思うときに、そんなところに重きを置いたことはない。
いつかの風呂でのやり取りのような『プレイ』は必要ないと言いかけ、見下ろしたちびが真っ赤になってプルプル震えているのが目に入る。
どうにも演技のようには見えず、聞き返した。
「…マジなのか?親父が仕込んだようなこと言ってたのは?」
「芳秀さんからは話を聞いたり本や映像を見せてもらったりしただけで…」
設定盛ってましたごめんなさい、とちびは消え入りそう様子で懺悔する。
驚いたせいか、じゃああのフェラの超絶技巧は自前のテクなのか……?凄すぎね?というどうでもいい感想が脳裏を過った。
その沈黙を、悪い方向に捉えたちびはギクッとして唐突に起き上がる。
「あっ!あの!ごごご面倒なようでしたら実地の方も極めてまいりますので…っ!」
半べそになりながら弾丸のように飛び出していきそうなちびを、征一郎は慌てて腕を掴んで止めた。
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