けなげなホムンクルスは優しい極道に愛されたい

イワキヒロチカ

文字の大きさ
42 / 104

39

しおりを挟む

 ちびの顎を掴み、引き寄せると唇を重ねた。
 柔らかいそこを軽く啄んで、ぺろりと唇を舐めてから解放する。
 何の問題もない。
 父親が老若男女どころか無機有機生死をも問わないので偏見はないが、男相手に欲望を感じたことは一度もなかった。
 それが今、もっとこの少年に触れたいと感じている。
 
「よし」
「ふぇ?え?わ、」
 ちびの服を手際よく剥ぎ取り、一糸纏わぬ姿にしてベッドに転がすと、困惑しきった瞳が見上げてきた。
「せ、征一郎…何?どうして…」
 混乱の極地に達しているようだが、嫌がってはいない……はずだ。
 自分の中で違和感がなさ過ぎて、説明が足りないかと言葉を足すことにする。
「とりあえず、俺がやりてえっつったらお前の目下の悩みはなくなるわけだろ?」
「え……そ、そう…なのか…な?」
 人のことを役に立つとか立たないとかで計るのは好きではないが、征一郎が望む行為にちびが応えるのであれば、それは『役に立っている』ということになるはずだ。
 征一郎がちびに好意を寄せられることを嬉しいと感じているのだから、その部分で引け目を感じる必要もない。

「んじゃそういうことでいいな」

 決めつけてのしかかると、ちびは慌てて押し返すように手をつきだした。
「あっ……でででもおれ見た目が男で、それに小さいし……ひとじゃないし…っ、き、気持ち悪くない…?」
 それはもう征一郎の中では先程のキスでクリアできている関門だ。
 だが、初対面の時の自分の不用意な発言のせいで、この少年をこんなに追い詰めてしまった。
 かたちは関係ない。その健気さを愛しいと思った。

「お前はかわいいぜ」

 ちびの目が驚きに見開かれる。
 想いが伝わるようにもう一度唇を重ねた。 


 ちびは緊張しているようではあるが、触れるとその身体は敏感に反応を返した。
 甘い声に溺れていくように、愛撫を深くする。
 以前から薄々感じていたのだが、この体はとても触り心地がいいのだ。

「せ、征一郎…っ…待っ…て…」

 鎖骨辺りに唇を落とした時、弱々しい声が征一郎を止めた。
 必死さを感じて、顔を上げる。
「ん?」
「あの……おれはじめてで…っ征一郎気持ちよくなかったらごめん…」
「あ?特にそういうのはいらね…」
 誰かを抱きたいと思うときに、そんなところに重きを置いたことはない。
 いつかの風呂でのやり取りのような『プレイ』は必要ないと言いかけ、見下ろしたちびが真っ赤になってプルプル震えているのが目に入る。
 どうにも演技のようには見えず、聞き返した。
「…マジなのか?親父が仕込んだようなこと言ってたのは?」
「芳秀さんからは話を聞いたり本や映像を見せてもらったりしただけで…」
 設定盛ってましたごめんなさい、とちびは消え入りそう様子で懺悔する。

 驚いたせいか、じゃああのフェラの超絶技巧は自前のテクなのか……?凄すぎね?というどうでもいい感想が脳裏を過った。

 その沈黙を、悪い方向に捉えたちびはギクッとして唐突に起き上がる。
「あっ!あの!ごごご面倒なようでしたら実地の方も極めてまいりますので…っ!」
 半べそになりながら弾丸のように飛び出していきそうなちびを、征一郎は慌てて腕を掴んで止めた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった

BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。 にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

処理中です...