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第二二章 恋をシて、愛をシて

恋をシて、愛をシて(01)

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 最悪とも言うべき事態が起きた。

「やはり、屋敷内にはどこにも……」

「そうか……」

 屋敷から小由里さゆりが居なくなった。
 残った依子よりこ春歌はるかにも捜索してもらっていた。屋敷の周りに生えている植物の『声』も聞いたが、小由里の姿はどこにも見当たらなかった。

「どうしましょう、私は街に探しに――」

「いや、いいんだヨリコ」

 依子まで居なくなって大事があっては、本当に打つ手が無くなってしまう。葉柴はしば明人あきとを足止めできる存在は、彼女しか残されていない。

「うー、わたし、変なこと言っちゃったかなあ」

「ハルカは関係ないよ」

「でもでも、サユリちゃん、1人で寂しくないかな……」

「寂しいさ、1人は寂しいに決まっている」

 だが、小由里に構って全員が共倒れしては、今まで尽くしてくれたゆあんや怜央琉れをるの努力が泡に帰してしまう。
 小由里には悪いが、小由里を利用する形で作戦を進めるしか無い。環日わび真由乃まゆのを足止めできるのもまた、小由里しかいないのだから――

「こうなれば、環日の絆を試そうじゃないか」

「私たちはどうすれば……」

「そうだね――」

 準備は、万全とは言えない。お目当だった新しい『原種』も見つけられなかった。
 だが、チャンスは小由里が居なくなった今しかない。

「この屋敷ともお別れだ」

「では、私たちも……?」

「や、やっちゃうんですね」

「ああ、最終決戦だ」

 どっちみち、イツキ自身も先が長くない。
 残されたイノチの期間を有効に使わなくてはならない。

「いよいよ全てが決まる――」

 ここまで来るのに永かった……
 少し、永すぎたかもしれない。

 それも、もうすぐ終わりを迎える。


 種人の存在意義――

 植人の存在意義――

 人間のイノチの価値――


 自分の中でようやく答えを出せるかもしれない。

 もうすぐで全てが決まる。
 このイノチの価値も……
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