俺のスキルが無だった件

しょうわな人

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町に向かう件

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 翌朝、七つの時刻に起きた俺達三人は部屋をキレイに片付け俺が無汚をかけてから外に出て隣のアガンさんに挨拶に向かった。

 俺達三人の姿を見て頭を下げるアガンさん。

「皆様のお陰で村は今まで以上に安全に暮らしやすくなりました。また、貴重な食肉を惜しげもなく安く分けて頂きまして、本当に有り難うございました。あんなに村が活気づいたのは久しぶりです。また、この村の近くに来られた時は必ず寄って下さい。お願いします」

「いや俺達も世話になったし。それに昨日の料理は素晴らしかった。あんなに旨い料理は初めて食べたよ。それに、あの料理人達の店にも行きたいから、帰りにもう一度必ず寄るようにするよ」

「はい、又のお越しをお待ちしております。この村からカインの王都方面に向かいますと、凡そ六十キロ先に防塞都市ナーズがございます。私の名を出せばすんなりと門も通れますから、遠慮せずに私の名前を出して下さいね」

「ああ、分かった。何から何まで有り難う。ハクシン親子にもよろしく伝えてくれるかな? もう、このまま村を出るつもりたから」

「はい、分かりました。必ず伝えますぞ」

 そして俺達はアガンさんの家を離れ王都方面の街道に出る門に向かった。行き交う村人からは礼を言われ、また必ず来てくれと声をかけられる。俺達は嬉しくなりながら、笑顔でまた帰りに必ず寄ると返事をして村を後にした。

 村を出てから念のために二キロ程進む。すっかり村が見えなくなり、誰も周りに居ないのを確認してから馬車を出した。
 馬車を出してから何かを忘れているような気になっていたが、思い出した!

「しまった! ハクレイ夫婦に馬車の出来を確認してくれって言われてたんだ······」

 俺の言葉に呆れた顔をするサヤとマコト。サヤは、

「どうしてトウジは大事な事を私達に言っておかないの?」

 と言い、マコトは、

「今から村に戻るのは中々の度胸がいるよね······」

 と言う。俺はどうしようかと悩むが、結局は村には戻らずに先を進む事にした。町に着いたら商業ギルド経由で連絡してみようと思う。忘れなければ······

 そんなこんなで馬車を出してからゴーレムを出さずにいたら、何とトウサマが自ら出てきた。

「うおっ! トウサマ、出てこれるのか?」

『我が主、主が我らを閉じ込めようと思ってない限り、我らの意思で自由に出入り出来ます』

「そ、そうなんだ······」

 俺自身が知らなかった事をトウサマに教えてもらった。

『それで我が主よ。今回はトズキとサズキに馬車を引かせようと思いますが、それで良いですか?』

「ああ、トズキとサズキが引いてくれるのか。それで良いよ」

『うむ、それでは我は引っ込んでおくとしましょう。二頭とも出て来るのだ。主の馬車を完璧に引くのだぞ』

 そのトウサマの言葉とともにトズキとサズキが出てきて馬車の前に行き、繋がれるのを大人しく待っている。俺は二頭によろしく頼むと言って馬車に繋いだ。サヤとマコトも二頭を撫でてから馬車の中に入った。俺は馭者席に座って二頭に出発してくれと言った。  

 滑り出しは快調だ。凸凹の道も車輪やバネにより衝撃や揺れがほぼ無いから俺も周りの景色を楽しんだ。時速凡そ三十キロでゆっくりと走っている。この世界ではかなり早い方だが、俺の感覚ではゆっくりだ。すると、前方に凄く長い馬車の列が見えてきた。俺は二頭に言って速度を落として貰う。

 最後尾の馬車に追い付いた。乗合馬車のようだ。幌が開いて乗客が顔を出す。俺を見て喋り掛けてきた。

「冒険者かい? 残念だが防塞都市に着くまではこの速度で進む事になるよ。先頭に王国カインのハーベラス侯爵閣下の馬車がいてな。護衛隊を引き連れて視察の帰りなんだ。あんたらはあの職練の村からだろう?」

「おう、そうだぞ。と言うことはこの列は違うのか?」

「ああ、俺達は農耕の町からなんだ。道が途中からこの街道に繋がるからな。視察団と一緒になったのは運が良かったのか、悪かったのか······」

「何かあるのか?」

「この規模だと盗賊達に襲われることはないんだが、よりによってハーベラス侯爵だからなぁ······ 好き者で見目良い女性は人妻だろうが差し出せとか言ってくるし、人のモノは俺のモノな人物だからあんたも注意しときなよ」

「ああ、そうなんだな。情報を有り難う。俺達は脇道があったらそこに入って暫く待ってから後をゆっくり行くようにするよ。このまま最後尾を目立たないように行くさ」

「ああ、そうしなよ」

 乗客はそう言うと開いた幌を閉じて中に引っ込んだ。俺はトズキとサズキに言って更に速度を落とす。乗合馬車からも距離を取って少しずつ馬車の列から離れていった。
 脇道を探しながらのんびりと進んでみたが、脇道なんて無さそうなので、仕方なくそのまま街道を進む。夕方近くになり、日が沈みだした頃に夜営の準備をしている集団に追い付いてしまった。
 そこに声をかけてきた乗合馬車のオッサンもいて、俺を見て言った。

「あんた、タイミングが悪いな。今から侯爵の部下が目ぼしい女やモノを探しにこっちまでくるぞ。あんたの馬車は珍しいから取り上げられるかもしれないぞ」

「うーん、それは困るな。俺は一応S級の冒険者なんだが、それでもダメか?」

「なっ! あんたS級なのか! それなら冒険者カードを見せたら大丈夫だ。S級冒険者は国に関係なくその活動を妨げてはならない決まりがあるからな。それじゃあ、悪いんだが少しばかり頼みがあるんだが······ 依頼料は大銅貨三枚(三千円相当)しか払えないんだが、この乗合馬車に乗ってる三人姉妹をあんたの馬車に匿ってやってくれないか?」

 オッサンはそう頼んできた。俺は一応妻二人に確認を取る為に少し待ってくれと言って、馬車の中に入る。外の声が聞こえていた二人は匿ってあげましょうと言ってくれたので、俺は外に出てオッサンに言った。

「匿うだけなら依頼料は要らないから連れて来てくれ」

 俺がそう言うとオッサンは乗合馬車の中に入って三人の女の子を連れてきた。オッサンは俺に言う。

「この達は俺の兄貴の子供でな。防塞都市にある俺の店で事務仕事を手伝って貰うんだ。それなのに侯爵に見つかったら連れて行かれちまうからどうしようかと考えていたんだ。どうかよろしく頼む」

 俺は三人を見てみた。皆十代だろう。一番上に見えるでも恐らくサヤよりも若い。それにハッとするような美人ではないが、可愛らしい顔立ちだ。俺は声をかけた。

「さあ、侯爵の部下が来る前に俺の馬車に乗るんだ。中には俺の妻がいるから、安心して良いぞ」

 俺がそういったタイミングで馬車からサヤが出てきて三人を促した。

「さあ、早く乗って。ちゃんと匿ってあげるから」

 サヤの言葉にホッとしたような顔をして馬車に乗り込む三人。しかし、少し遅かったようで、侯爵の部下らしい男達が俺の馬車を取り囲んだ。

「待て! そこの女! こっちに全員来るんだ!」

 一人がそうサヤに声をかけてきた。俺はサヤ達とその男の間に入り男をにらむ。

「ん? 何だ、貴様は?」

「この馬車の持ち主だよ。ついでにあんたが待てと言った女性の旦那でもある」

「ふんっ! 冒険者か。悪いが貴様の妻とそこの三人の女、それからこの馬車は侯爵様のモノになる。貴様は大人しくこの金を受け取れば良い」

 男はそう言って俺に向かって袋を投げてきた。俺はそれを受け取りそのまま男に思いっきり投げ返した。顔面で受け取る男。

「グハァッ! きっ、きしゃま! にゃにをしゅるっ!」

「何をするもクソもないだろ。人のモノを勝手に自分のモノだと言うのがこの国の貴族なのか?」

「にゃっ、にゃにをーっ! きしゃま! 侯爵しゃまにしゃからう気かっ!」

「俺はこの国の人間じゃないしな。隣国ゴルバードの者で、S級冒険者のトウジという。この国の貴族といえど、理不尽な事に従うつもりはないな」

「にゃっ、S級だゃとっ! クソ、覚えておくじょっ、トウジとやら!」

 男はそう言って周りを一緒に囲んでいた男達を連れて前方に去って行った。周りからは何故か拍手が起こる。

「良く言ってくれた!」

「流石の侯爵の部下でもS級冒険者相手に無茶はしないなっ!」

 そんな声をかけられたが、俺はそれを聞いてから言った。

「あんた達も理不尽な事に従う謂れはないんだから、言うべき事はちゃんと言った方が良いと思うぞ」

 俺がそう言うと下を向く男達。そして、

「俺達はあんたみたいに地位や力がある訳じゃないんだ。あんたは俺達に謂われなく殺されろと言うのか」

 と言ってきたので、俺は返事を返した。

「この国はそんな理不尽がまかり通る国なのか? 今まで誰も王に進言したりはしてないんだろう? やりもせずにクサっていてもしょうがないと思うぞ。俺は自分に関わるモノが理不尽な事に巻き込まれたら全力で事に当たるぞ。勿論、地位や力が無くてもな······」

 俺はそれだけ言うと、オッサンを連れて一緒に馬車に入ったのだった。
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