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領地発展

060話 職人さんたち

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 翌朝、ナニワサカイ国のルソン陛下を除いたロイヤルファミリーと一緒に朝食を食べ、さあ今日も観光にと思ってたらブンゴさんからのお知らせが届いたんだ。
 だから先ずはキノクーニャ屋に行く事になったよ。キノクーニャ屋ではブンさんとブンゴさんの2人と職人さんたちが揃って待っていた。

「ラウール様、トーヤ様。お待たせしました。ようやく話がまとまり、それぞれのご領地に行く者が決まりました」

 ブンゴさんがそう言って職人さんを2つに分けてくれた。僕の領地に来てくれる22人の職人さん。ラウールさんの領地に行く13人の職人さん。僕とフェルは22人の職人さんと話をする為に場所を借りれないかブンさんに聞いてみたんだ。

「ホッホッホッ、コチラにございますぞ。ご案内いたしましょう」

 そう言ってブンさんが案内してくれるのに着いていく僕たち。トモジ爺ちゃんも一緒に来てもらってるよ。ラウールさんたちの方はブンゴさんの案内で別の場所を借りるみたいだ。

「ココを好きなようにお使い下さい」

 ブンさんが案内してくれたのは前世で言う会議室の様な場所だったよ。どうやらトモジ爺ちゃんから話を聞いて、小会議室、中会議室、大会議室と3つ作ったそうだよ。キノクーニャ屋で働く人たちをねぎらったり、それこそ本当に会議をする為に使用してるそうだよ。僕たちはブンさんにも立ち合って貰って職人さんと話をする事にしたんだ。僕は紙を取り出してサラサラと書いていく。

【先ずは僕の領地に来てくれる事を感謝します。お尋ねしたいのは、一番に家族構成。二番にお抱え職人になってくれる人。三番に工房や住居の希望。四番に道具や工具について、です。教えて貰えますか? 家族構成については今からお渡しする用紙に記入してください】

 フェルが事前に用意していた紙を職人さんに配る。用紙には、

名前:     年齢:
配偶者名:     年齢:
子供名:     年齢:
 〃 :     年齢:
 〃 :     年齢:

得意な仕事:(例)大工仕事、家具仕事など 


 こんな感じで書いて貰うようになってるんだ。書き終えた用紙を集めて僕は確認していく。
 女性の職人さんが1人居るよ。年齢は28歳。大工仕事がメインだけど、細工仕事も出来る人のようだ。どうやら旦那さんとは死別してるようだね。5歳のお子さんが1人か…… 僕はこのお名前がハチキンという女性の職人さんに打診してみたんだ。

【ハチキンさん、うちの領地にある屋敷内に工房兼住居を構えますから僕のお抱え職人として働いてみませんか?】

 僕の打診を読んだハチキンさんが言う。

「え! うちでええんやろか? 諸先輩方を差し置いて……」

 ハチキンさんの言葉を聞いて1人の職人さんがこう言ったんだ。

「おい、ハチキン! お前の腕前は俺たちも認めてるんだ。ご領主様がせっかく誘って下さってるんだ、お受けしろよ」

 一番年配の職人、ガーミットさんがそう言うと他の職人さんも頷いている。どうやら腕も良いようだし受けて貰えると有り難いなぁ。と思ってたら、

「あの、まだまだ未熟なうちでよろしければよろしくお願い致します」

 って、僕の打診を了承してくれたよ。良かったよ。あと、2人ほどお抱え職人さんが欲しい僕は、男やもめの2人の職人さんに打診してみたんだ。どちらもお子さんが居るからね。

【あと2人、僕のお抱えになって欲しいんだけど、ダルーマさんとワンさん、どうですか?】

 ダルーマさんは浴槽関係の仕事が中心で、ワンさんは家具仕事が中心の職人さんだよ。2人ともまだ小さい子が居て男1人では大変だろうと思うんだ。ワンさんは双子ちゃんみたいだしね。


「あの、お、いや私は浴槽関係しかした事がないですが、よろしいんですか?」

 勿論、うちの屋敷に新設して貰うのと、王族専用にも新設してもらわないとダメだからね。僕がそのむねを伝えると、

「ご、ご領主様のお屋敷の分はともかく、王族の方が入る浴槽をっ!!」

 って尻込みしてたけど、またもやガーミットさんが、

「ダルよ! テメエも男だろうが! ヤスちゃんの為にここは気張ってみせろい!」

 ってダルーマさんのお尻を叩いてくれたよ。ガーミットさんは江戸っ子だねぇ。あ、ヤスちゃんっていうのはダルーマさんのお子さんで6歳の女の子だよ。

「あの、僕はお抱えとして何をすれば良いのでしょうか?」

 ワンさんに聞かれて答えようとしたら、フェルが説明してくれたよ。

「はい、実はハチキンさんに新たな木の屋敷を建てて貰う予定なのですが、中に置く家具などをワンさんに作って欲しいんです。建てられた屋敷の内装関係も考えて頂けたらと思ってます」

「あの、僕でよろしいんでしょうか?」

 僕とフェルはウンウンと頷いて賛意を示したんだ。

「精一杯、やらせて貰います!」

 コレでお抱え職人さんは決まったよ。そこにガーミットさんから提案があったんだ。

「ご領主様、俺たちが住む場所は領地内でバラけさせて貰えますかい? 近い場所でしのぎ合うのもいいが、なるべく客がかぶらない方が長く続けられると思うんだ。そうして貰えるかい?」

【勿論、そのつもりです。領地内に8ヶ所の候補があります。その8ヶ所でそれぞれが工房兼住居を選んでいただければと思います。また、おそらくはご自分たちで建てて使い勝手のいい工房や住居にされたいでしょう? なので、建て終わるまでは皆さん僕の屋敷内で生活してください。その為の場所は用意してますので】

 そう、既にロッテンに連絡して長屋じゃないけど似た感じの建物を建設して貰ってるんだ。茶(土)魔法を駆使したレンガ作りだから気に入らないかもしれないけど、そこは暫くの我慢をお願いしないとね。

「何から何までいたれりつくせりだねぇ! こうなりゃ、俺たちはご領主様の領地に木の家や浴槽を流行らせてみせますぜいっ!! いや、領地だけじゃねえっ! サーベル王国中に流行らせてみせまさあっ! なあ、みんな!」

「おおっ!! ガーミットの親方の言うとおりだっ!!」

 職人さんたちが気合の入った声を張り上げてくれた。僕もフェルも嬉しくなってニコニコ笑顔で職人さんたちによろしくと頭を下げたんだ。  

「その意気やよし! ではキノクーニャ屋からもみんなに支援を約束しましょう! 木の仕入れ値をトーヤ様とラウール様の領地に限り通常よりも2割安く致しますぞ! それから、工房に必要だと思われる最新道工具をそれぞれにプレゼントしますぞ! トモジよ、頼みましたよ!」

 ブンさんまで興奮したようにそう言ってくれたんだ。それに職人さんたちも歓喜の声を上げた。

「ウオーッ! キノクーニャ屋の秘密の工具を俺たちに!! 有り難ぇ!!」

 その話はラウールさん側にも伝えられて、職人さんたちにとても喜ばれたんだよ。そして、僕たちがサーベル王国に戻る際に、職人さんたちとそのご家族も一緒に来る事を決めて今日の話合いはおわったんだ。

 ちょうどお昼どきだったから、ブンさんが気を効かせて出前を取ってくれたよ。

 そう、ケツネウドンとお稲荷さんだよ。

 とっても美味しく頂きました。 
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