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日常と年越しと再び訪れた者
日常と年越しと再び訪れた者 その4
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古老樹である荷物持ち君の主導の元に作られたカマクラは、かなりどっしりとしていて大きく立派な物となっていた。
人の手では簡単に作ることすら難しいほどの大きさのカマクラを、荷物持ち君は簡単に完成させている。
マーカスも手伝いはしたものの、ほぼ必要ないほどだったくらいだ。
その内部も、背の高いエリックやブノアが腰をかがめずに立っていられるほど高く、七人全員が鍋を囲んで座ってもまだ余裕があるほどだ。
カマクラ内部の中央には荷物持ち君お手製の竈が作られ、その上に大きな鍋が置かれている。
さらに火を使う事を考えてか通気口まで造られている。
至れり尽くせりとはこのことだ。
ミアは雪の塊の中にいるのに、以外にも暖かく感じれるカマクラに感動しつつも、余り物で作った鍋をかき混ぜて料理が出そろうのを待っていた。
ただやはり雪を固めて作られた椅子は座っていると冷たい。
こればっかりは仕方がないとミアも諦めて、無駄に鍋をかき回していた。
そうして、大方の料理ができたとき、ミアは待っていたとばかりに満足げにうなずいた。
「では、実食と行きます! まずはスティフィのただ焼いた肉です!」
そう言ってミアは出された料理を見る。
お洒落な感じに並べられ、向こう側が透けるのかと思うほど薄く切られた肉をミアは見つめる。
それらは食べるのがもったいなくなるほど綺麗に盛り付けられている。
外側はしっかりと焼かれているが、内側は桜色の肉に濃くほぼ黒色にまで煮詰められた葡萄酒で作られたタレがかけられている。
そのタレの香りがまた非常に素晴らしいが、カマクラ内でミアが鍋を作っているため、その香りを正確に楽しむことはできない。
薄く切り出された肉は、これまた薄く、それこそ透けるほど薄く切られた玉ねぎの上に綺麗に並べられている。
ただ焼いただけでの肉にしては、そこはかとない上品さが溢れているほどだ。
皿全体から配置とその余白にまで気を使われたような、木製の皿の下地、玉ネギの透き通った白色、茶と桜色の肉の色合い、そして葡萄酒で作られた濃い色のタレ、付け合わせの緑の葉物、それぞれの色彩が調和しある種、芸術的な美しさを兼ね備えている。
スティフィが盛りつける際の感覚の良さが存分に反映された配置となっている。
ミアがただ焼いた肉と言っているが、ミア以外が見れば、それが、その言葉が適切ではないことは盛り付けを見ただけでも理解できるほど、美しく盛り付けられている。
「ただ焼いた肉って…… まあ、そうなんだけど」
スティフィは苦笑いしながらも、そのことを素直に認めたふりをする。
それは余裕からくる、この料理に絶対の自信があることからの行動でもある。
見栄えはもちろんのこと味にも自信があると、スティフィの表情が物語っている。
「少し内側の肉が赤いのが気になります! けど、葡萄酒で作ったというタレがいいですね。あと全体的になんかお洒落です」
ミアも一応はわかっているのか、突き匙を手に持ってはいるが、なんとなくだがその芸術的なまでの盛り付けを崩せないでいた。
「いいから早く食べなさいよ」
スティフィにそう言われ、ミアは心を決め、突き匙で薄く切られた肉を突き刺す。
「わかりました。食べます。では……」
ミアが肉を口に入れる。
それを皆が見守る。
ミアの口の中の肉はとろける様に消えていく。
細かく、丁寧に筋切りされている肉は噛み応えがないほど、口の中でとろける様に消えていく。
スティフィが丹念に肉に刃を入れて下拵えした賜物だ。
赤身肉のしっかりとした味わいに、外側に塗り込まれたピリッと香る香辛料、そして、葡萄酒で作られた酸味のあるタレが良く合う。
口の中でそれらが調和し溶け合った素晴らしい味わいでミアの舌を楽しませてくれる。
「どうよ、ミア」
スティフィがしたり顔でミアを見つめる。
答えるまでもなくミアの表情が全てを物語っている。
「え? なんですか、この肉! ものすごくおいしいですよ!! こんな柔らかくて美味しいお肉、今まで食べたことないですよ!」
そう言って、ミアはもう一枚肉を突き刺し口に入れる。
さっきの一切れがまぐれではなかった事を証明するように、先ほどと同様に肉が口の中でとろけていく。
そして、それだけでなく、赤身の肉の旨さを主軸に香辛料とタレの調和された旨さが舌の上で舞い踊っている。
「でしょう?」
「タレもお肉によく合います!」
ミアが食べているのを見て他の者達も食べ始める。
「あら、ほんと。おいしいですわね」
ミアとは違い、様々な美食を味わって舌の肥えているルイーズでさえその肉の旨さに、日ごろの恨みを忘れ素直に賛辞するほどだ。
実は食にはうるさいブノアも無言で頷く。
その他の者も、感想を忘れて無言で頷くほどだ。
「どうよ! これは北国の古い言葉でウェルティンエッタっていう料理で、意味は、まあ、焼いて蒸したって意味ね……」
それは古く単純な料理ではある。
それだけに様々な研鑽と改良がなされ芸術的なまでに昇華された料理でもある。
簡単に見えて熟練の腕が必要とされる非常に高度な料理となっていて、熟練者と初心者の作ったものを食べ比べれば、その差が歴然とわかる料理だ。
スティフィの腕は言うまでもなく熟練者の物だ。
「そのまんまなんですね、でも、お肉が桜色なのにいい火加減です。タレも酸味があるのによく肉に合ってます! むむむっ、九十一点です!」
ミアの想像をはるかに上回った料理にミアも高得点を付けざる得ない。
「どうよ!」
「でも、これはおいしいですね」
マーカスも驚いたように肉を口に入れる。
「うひょ! スティフィちゃんの料理も上手なのかよ」
誰もが自分の皿に取り分けられた肉をぺろりと食べ、よく水にさらされ苦味抜きされた付け合わせの玉ネギまで残さず食べていた。
最初の品ながら納得の高得点の一皿だった。
「次はジュリーの油の煮物ですが…… これはこのまま?」
ジュリーが作った料理はスティフィの物と違って皿には取り分けられてはいない。
調理で使った鍋から直接取ってください、というものの様だった。
油に浸ったぶつ切りにされた肉や野菜が入っている。
一見してそう見えるが、油にしては果物のような爽やかな香りが漂っている。
油臭い、と言うことが一切ない。
しかも、その香りはミアが料理していた鍋の匂いに負けていない。
それだけにどういった味わいなのか、ミアには見当がつかない。
「ええ、どうぞ」
と、ジュリーにそう言われるがミアも早々手が出ない。
「油…… というより香油といった感じですか、珍しい料理ですね」
その様子を見てマーカスがそう言って突き匙でじゃが芋を一欠けら突き刺し口に入れ、無言で驚いた表情を見せた。
「こんな油漬けの料理がおいしいわけ…… おいしい」
と、スティフィも肉を一つ口に入れ、自然とその言葉が出る。
それらを見たミアもすぐに肉を突き匙で突き刺し口に入れる。
熱い、と感じつつも油本来の、そして、具材から染み出て調和された様々な旨味が舌の上で混ざり合って広がっていく。
「なんですか、これ、油の煮物という割には全然しつこくない、というかさっぱりなのに、すんごく味わい深さで美味しいです」
ミアはそう言って今度は人参を突き匙で突き刺して口に運ぶ。
優しく甘い味が口いっぱいに広がる。
人参特有の臭みと苦味がまるでない。冷えた水で灰汁抜きされた人参は旨味と甘みだけが残り、さらにこの油で煮詰めることでその甘さがより際立っている。
ただそれも普通の油では到底こんな味にはならない。
良くも悪くも食材の味を上書きしてしまうものだが、この油は食材の旨味と寄り添うように調和し旨味を際立たせている。
「使っている油がそう言う油なんですよ。特殊な実からとれる油で……」
とジュリーが解説している横で、ルイーズとブノアも口に入れ、そして、その旨さに驚きを隠せないでいる。
その上で、この油の品質の良さにルイーズは目を付ける。
「ジュリー様、この油、その実や木のことを詳しく教えてもらえますか?」
真剣な表情でルイーズはジュリーと向き合う。
まさかこんなところでこんな拾い物をするだなんて、ルイーズは思っても見なかった。
この油は、この食用油は美食界に一石を投じるものになる、そうルイーズは確信した。
「は、はい! シェルムの実と言って、荒れ地に生える少し高い木になる実からとれる油で、油なのにこのようにすごい口当たりがよくまろやかなんですよ」
「シェルムの木ですか、聞いたことない木ですね。これは…… ふむ、お父様に、いえ、叔父様に相談しておいたほうがよさそうですね」
恐らくティンチルを作った叔父なら間違いなく食いつくはずだ。
それほどの価値がこの油にはあるとルイーズは思っている。
この油は間違いなく様々な料理にあう。その価値は計り知れない。
「え? どういうことですか?」
と、ジュリーが少し戸惑っているとルイーズはジュリーに微笑んで返す。
「アンバー領の良い特産になるかもしれませんよ、ジュリー様」
これは嘘ではなく、シェルムという木次第ではあるが、貧困な領地であるアンバー領の財政を一気に改善できるものかもしれない。
「確かに。これはいい油ね。普通の油なら、こんなに付け込んだら食べれたものじゃないわよ」
スティフィもこの油の品質には認めざる得ないものを感じ取っている。
このまま飲めてしまうんではないかと思えるほど食用油としての品質がいい。
何より油なのに胸焼けが全く起きない。
「じゃが芋も人参もおいしいです! お肉も信じられないくらいおいしいですね! 九十三点です!」
「ぬっ、でも、これはまあ、仕方ないわね……」
スティフィはミアの採点に嫌な表情を浮かべながらも、納得するしかない。
油の煮物という物珍しさもあるが、それを抜いても十分に美味しい料理であることは間違いがない。
技術的な面ではスティフィの方が勝っているのだろうが、物珍しさも相成ってジュリーの料理が今回は勝っただけだ。
「あ、ありがとうございます」
「いい、ジュリーに負けたんじゃないわよ、このシェルム油に負けただけだからね!」
「は、はい、それでいいですよ」
と、ジュリーは少し困り顔でそうは言ってはいるが、嬉しそうな顔を隠し切れていない。
それは料理でスティフィに勝てたことよりも、ルイーズがシェルム油に興味を持ってくれたことに対してだが。
場合によっては本当にアンバー領の財政を一変してくれるかもしれないのだから、ジュリーにとってはまさに救いの手だ。
「じゃあ、次はマーカスさんの燻製肉です」
ミアは突き匙を手に握りそう言うが、マーカスは動かない。
動かない代わりに、マーカスはカマクラの外、外の空へと目線を向ける。
その視線はかなり遠くの空を見ている。
「んー、まだですね。もう少し燻しておきたいですね」
マーカスは燻し始めた時間、外気の気温などを考慮して、そう結論付けた。
「なら零点です」
私欲、いや、食欲にまみれた非情なる食の審査員のミアは、残酷な審査を下す。
「夕食には間に合いますので」
「はい、楽しみにしてます!」
そう言った後、次に出てくる料理を見てミアは渋い表情を浮かべる。
ついでにルイーズ番ではあるが、皿に料理を盛っているのはブノアすらでもなくジュリーだ。
「次は…… 素のサァーナですね。これを再び見ることになるとは思いもよりませんでした」
ミアはそう言ってこの学院に来たばかりの食事のことを思い出す。
当時はそれでもサァーナなど珍しく美味しく感じていたが、今では流石にそう食べたいものではない。
「グレン鍋をかけて食べてください」
と、ジュリーが全員分のサァーナを皿に盛って配り終えた後、ルイーズがすました顔でそう告げて来る。
「ルイーズ様も零点です」
それにミアが残酷な審査を下す。
だが、ミアにルイーズ本人以外、誰も抗議の声を上げない。ブノアでさえもミアとルイーズ二人の視線を避けている。
「な、なんでですか!」
ルイーズだけは必死に抗議の声をあげ続ける。
「グレン鍋はエリックさんの料理なので」
「それはそうですが…… 合作ということで? どうですか?」
ルイーズはエリックを見てそう申し出る。
「ん? まあ、それでもいいぜ? 確かにサァーナにかけても旨いもんな」
と、エリックは深く考えずに反射的にそう答える。
「え? すでにそれを実行なされている方がいるんですか?」
そのエリックの言葉を聞いて、ルイーズが驚愕する。
グレン鍋にサァーナが合うと予想したのは自分が最初ではなかったのかと。
「何言ってるのよ、お姫様。あんたが来た収穫祭の日に皆そうやって食べてたじゃないの」
スティフィが更にルイーズに追い打ちをかけると、
「え? そうなんですか?」
と、ルイーズは崩れ落ちる。
ルイーズ自身たしかに素のサァーナだけではどうにもならないことは理解できていた。
しかし、グレン鍋を掛けることでこのサァーナは完成し、素晴らしいものへと昇華させられると考えていたのだ。
「はい、そうですよ」
と、ミアがルイーズに声を掛けると、ルイーズは自分の目論見が甘かったことを認識する。
「そ、そんな!!」
「サァーナが主食のこの辺りでは、グレン鍋をかけるのは騎士隊じゃ割と有名な喰い方らしいな」
と、エリックが更に告げると、ルイーズも認めざる得ない。
「そうだったんですね…… それなら零点も仕方がないですね」
「かわいそうなので五点加点して、計五点とします!」
と、崩れ落ちたルイーズを不憫に思ったミアが追加点を与える。
「減点分どこ行ったのよ、ミアの採点適当過ぎない? それに点数つけて何かあるわけ?」
それにスティフィが突っ込むと、
「はい、最下位の人には後片付けをしてもらいます」
と、ミアが笑顔でそう告げる。
「は?」
と、想像もしてなかったブノアが声をあげる。
「あー、そういうことですか、まあ、間に合いませんでしたし、仕方がないですね」
同じく零点のマーカスは笑顔でそう答えて、流石にブノアに後片付けはさせられないので、自分がやるしかない、と独り悟る。
「ついでにブノアさんも零点です」
と、ミアが継げると、
「あ、ああ……」
と、ブノアが少し動揺しつつそれを認める。
自分の頭領であり、外道狩り衆としての師匠でもあるベッキオの孫娘であるミアには逆らえないし、ミアはそもそもルイーズの姉の可能性まであるのだ。
ブノアからしたら、本人に命令しているという気がなくとも、その言葉を反故にすることなどできるものではない。
「え? 良いんですか、ブノアさん?」
と、この領地の貴族であるブノアを気遣ってジュリーが声をかけるが、ブノアは平静を装い頷いて見せた。
「まあ、ミア様の命じゃ仕方あるまい……」
「あら、ブノアが後片付けするんですか? ちょっと見てみたいですね」
と、ルイーズまで乗る気になっている。
これではジュリーが代わりを申し出ることもできない。
「そ、そうですか……」
「後はグレン鍋と…… なに、このごった煮は」
ミアが用意していた鍋を見て、スティフィはミアに視線を向ける。
これを作った人間に自分の料理を評価されていたと思うとなんだか腹立たしく思えて来る。
この鍋は本当に余り物を煮ただけのものだ。
それ以外の手が加えられたようには見えない。
「あまりもの鍋です。ついでに夕食と明日の朝の朝食を兼ねてます」
「ミア、本当に食材全部使っちゃったの?」
それを聞いて、スティフィが確認するが、鍋の量はかなりの物だ。
恐らく本当に持ってきていた食材と鹿の肉を全部この鍋にぶち込んだのだろう。
「はい、残しても仕方がないじゃないですか」
そう言って、ミアは自分の作っていた鍋に蓋をして隠した。
そして、素のサァーナの上にエリックの作ったグレン鍋を掛けて食べ始めた。
「エリックさんのグレン鍋は…… うん、百点です! いつ食べてもおいしいですね」
と、誤魔化すようにそう言った。
それを見たスティフィはもう少しからかってやるかどうか迷うが、とりあえずミアの機嫌が上機嫌ではあるのでからかうのはやめておいた。
そして、
「あんた料理は上手よね」
と、スティフィも珍しくエリックを誉め、サァーナにグレン鍋を掛け食べ始める。
「へへ、料理は昔っから好きだったからな」
エリックがスティフィにまでそう言われ、隠しもせずに得意そうにしている。
「男の人で料理を好きって方珍しいですね」
ジュリーがそう言っている横で、スティフィがこっそりミアの作っていた鍋を開け、その中の具を一つまみする。
やっぱり少しだけからかいたい気持ちが勝ったようだ。
「で、ミアの方の鍋は…… いろいろ点数付けてた割には…… なんていうか、塩気がまるでないわね」
下味も下拵えも何もなく、ただ煮ただけの鍋。
具材的に不味くはないが、味がまるでない。
「素材の味を楽しんでください!」
と、ミアは鍋の蓋を再度閉めてそう言った。
様々な料理を味わい、流石にミアにとってもこの鍋は恥ずかしいのかもしれない。
「香辛料も塩もちゃんと持ってきてたよな?」
と、エリックが不思議そうにそう聞くと、
「香辛料なんて知りませんし、お塩は貴重品なので、そんな使えないですよ」
と、ミアが答えた。
「なんで使わないのよ…… いいわ、後で私が香辛料の使い方を教えてあげるから」
「えぇ…… 香辛料って辛いだけじゃないですか」
ミアはここに来た時にかけた妙に辛い香辛料のことを思い出す。
ミアにとっての香辛料はその思い出が強い。
「このミアが好きなグレン鍋も香辛料塊みたいなもんよ!」
「え!? そうなんですか!?」
それを聞いて、ミアは驚く。
「具材だけ使って香辛料を何一つ使わないってどういうことよ……」
「ん? 鍋なら豆味噌があるからそれを入れるとうまいと思うぞ、グレン鍋とはまた違った旨さだぞ」
エリックがミアとスティフィのやり取りを聞いてそう進言する。
「味噌? なにそれ」
その言葉にスティフィが反応する。
スティフィも味噌という存在を知らないようだ。
「あれ? 知らない? 穀醤の一つだな。発酵食品だよ。鍋に超合うぞ」
「それだけでいいの?」
と、スティフィが確認する。
「おぅよ、特に魚介系にあうけど肉にも合うぞ。ん、でもあれか、魚介系の出汁も入れて合わせてやればいいか。後入れになっちゃうけど、まあ大丈夫だろ」
エリックは笑顔でそう答え立ち上がった。
「待ってて、持って来てるから取ってくるよ!」
そう言ってエリックがカマクラを出ようとしたところで気が付く。
「ん? 誰か登ってきてるぞ」
頂上に登ってきている人影にエリックが気づきそう告げるが、
「太陽の戦士団の奴らでしょう…… 嫌になるわね、こんなところでも出会うの」
スティフィは既に知ってるかのようにそう言った。
「まあ、向こうは大晦日から、とりあえず山に登るのが恒例行事ですからね」
そして、マーカスが少しうれしそうに、それに一言、付け加える。
人の手では簡単に作ることすら難しいほどの大きさのカマクラを、荷物持ち君は簡単に完成させている。
マーカスも手伝いはしたものの、ほぼ必要ないほどだったくらいだ。
その内部も、背の高いエリックやブノアが腰をかがめずに立っていられるほど高く、七人全員が鍋を囲んで座ってもまだ余裕があるほどだ。
カマクラ内部の中央には荷物持ち君お手製の竈が作られ、その上に大きな鍋が置かれている。
さらに火を使う事を考えてか通気口まで造られている。
至れり尽くせりとはこのことだ。
ミアは雪の塊の中にいるのに、以外にも暖かく感じれるカマクラに感動しつつも、余り物で作った鍋をかき混ぜて料理が出そろうのを待っていた。
ただやはり雪を固めて作られた椅子は座っていると冷たい。
こればっかりは仕方がないとミアも諦めて、無駄に鍋をかき回していた。
そうして、大方の料理ができたとき、ミアは待っていたとばかりに満足げにうなずいた。
「では、実食と行きます! まずはスティフィのただ焼いた肉です!」
そう言ってミアは出された料理を見る。
お洒落な感じに並べられ、向こう側が透けるのかと思うほど薄く切られた肉をミアは見つめる。
それらは食べるのがもったいなくなるほど綺麗に盛り付けられている。
外側はしっかりと焼かれているが、内側は桜色の肉に濃くほぼ黒色にまで煮詰められた葡萄酒で作られたタレがかけられている。
そのタレの香りがまた非常に素晴らしいが、カマクラ内でミアが鍋を作っているため、その香りを正確に楽しむことはできない。
薄く切り出された肉は、これまた薄く、それこそ透けるほど薄く切られた玉ねぎの上に綺麗に並べられている。
ただ焼いただけでの肉にしては、そこはかとない上品さが溢れているほどだ。
皿全体から配置とその余白にまで気を使われたような、木製の皿の下地、玉ネギの透き通った白色、茶と桜色の肉の色合い、そして葡萄酒で作られた濃い色のタレ、付け合わせの緑の葉物、それぞれの色彩が調和しある種、芸術的な美しさを兼ね備えている。
スティフィが盛りつける際の感覚の良さが存分に反映された配置となっている。
ミアがただ焼いた肉と言っているが、ミア以外が見れば、それが、その言葉が適切ではないことは盛り付けを見ただけでも理解できるほど、美しく盛り付けられている。
「ただ焼いた肉って…… まあ、そうなんだけど」
スティフィは苦笑いしながらも、そのことを素直に認めたふりをする。
それは余裕からくる、この料理に絶対の自信があることからの行動でもある。
見栄えはもちろんのこと味にも自信があると、スティフィの表情が物語っている。
「少し内側の肉が赤いのが気になります! けど、葡萄酒で作ったというタレがいいですね。あと全体的になんかお洒落です」
ミアも一応はわかっているのか、突き匙を手に持ってはいるが、なんとなくだがその芸術的なまでの盛り付けを崩せないでいた。
「いいから早く食べなさいよ」
スティフィにそう言われ、ミアは心を決め、突き匙で薄く切られた肉を突き刺す。
「わかりました。食べます。では……」
ミアが肉を口に入れる。
それを皆が見守る。
ミアの口の中の肉はとろける様に消えていく。
細かく、丁寧に筋切りされている肉は噛み応えがないほど、口の中でとろける様に消えていく。
スティフィが丹念に肉に刃を入れて下拵えした賜物だ。
赤身肉のしっかりとした味わいに、外側に塗り込まれたピリッと香る香辛料、そして、葡萄酒で作られた酸味のあるタレが良く合う。
口の中でそれらが調和し溶け合った素晴らしい味わいでミアの舌を楽しませてくれる。
「どうよ、ミア」
スティフィがしたり顔でミアを見つめる。
答えるまでもなくミアの表情が全てを物語っている。
「え? なんですか、この肉! ものすごくおいしいですよ!! こんな柔らかくて美味しいお肉、今まで食べたことないですよ!」
そう言って、ミアはもう一枚肉を突き刺し口に入れる。
さっきの一切れがまぐれではなかった事を証明するように、先ほどと同様に肉が口の中でとろけていく。
そして、それだけでなく、赤身の肉の旨さを主軸に香辛料とタレの調和された旨さが舌の上で舞い踊っている。
「でしょう?」
「タレもお肉によく合います!」
ミアが食べているのを見て他の者達も食べ始める。
「あら、ほんと。おいしいですわね」
ミアとは違い、様々な美食を味わって舌の肥えているルイーズでさえその肉の旨さに、日ごろの恨みを忘れ素直に賛辞するほどだ。
実は食にはうるさいブノアも無言で頷く。
その他の者も、感想を忘れて無言で頷くほどだ。
「どうよ! これは北国の古い言葉でウェルティンエッタっていう料理で、意味は、まあ、焼いて蒸したって意味ね……」
それは古く単純な料理ではある。
それだけに様々な研鑽と改良がなされ芸術的なまでに昇華された料理でもある。
簡単に見えて熟練の腕が必要とされる非常に高度な料理となっていて、熟練者と初心者の作ったものを食べ比べれば、その差が歴然とわかる料理だ。
スティフィの腕は言うまでもなく熟練者の物だ。
「そのまんまなんですね、でも、お肉が桜色なのにいい火加減です。タレも酸味があるのによく肉に合ってます! むむむっ、九十一点です!」
ミアの想像をはるかに上回った料理にミアも高得点を付けざる得ない。
「どうよ!」
「でも、これはおいしいですね」
マーカスも驚いたように肉を口に入れる。
「うひょ! スティフィちゃんの料理も上手なのかよ」
誰もが自分の皿に取り分けられた肉をぺろりと食べ、よく水にさらされ苦味抜きされた付け合わせの玉ネギまで残さず食べていた。
最初の品ながら納得の高得点の一皿だった。
「次はジュリーの油の煮物ですが…… これはこのまま?」
ジュリーが作った料理はスティフィの物と違って皿には取り分けられてはいない。
調理で使った鍋から直接取ってください、というものの様だった。
油に浸ったぶつ切りにされた肉や野菜が入っている。
一見してそう見えるが、油にしては果物のような爽やかな香りが漂っている。
油臭い、と言うことが一切ない。
しかも、その香りはミアが料理していた鍋の匂いに負けていない。
それだけにどういった味わいなのか、ミアには見当がつかない。
「ええ、どうぞ」
と、ジュリーにそう言われるがミアも早々手が出ない。
「油…… というより香油といった感じですか、珍しい料理ですね」
その様子を見てマーカスがそう言って突き匙でじゃが芋を一欠けら突き刺し口に入れ、無言で驚いた表情を見せた。
「こんな油漬けの料理がおいしいわけ…… おいしい」
と、スティフィも肉を一つ口に入れ、自然とその言葉が出る。
それらを見たミアもすぐに肉を突き匙で突き刺し口に入れる。
熱い、と感じつつも油本来の、そして、具材から染み出て調和された様々な旨味が舌の上で混ざり合って広がっていく。
「なんですか、これ、油の煮物という割には全然しつこくない、というかさっぱりなのに、すんごく味わい深さで美味しいです」
ミアはそう言って今度は人参を突き匙で突き刺して口に運ぶ。
優しく甘い味が口いっぱいに広がる。
人参特有の臭みと苦味がまるでない。冷えた水で灰汁抜きされた人参は旨味と甘みだけが残り、さらにこの油で煮詰めることでその甘さがより際立っている。
ただそれも普通の油では到底こんな味にはならない。
良くも悪くも食材の味を上書きしてしまうものだが、この油は食材の旨味と寄り添うように調和し旨味を際立たせている。
「使っている油がそう言う油なんですよ。特殊な実からとれる油で……」
とジュリーが解説している横で、ルイーズとブノアも口に入れ、そして、その旨さに驚きを隠せないでいる。
その上で、この油の品質の良さにルイーズは目を付ける。
「ジュリー様、この油、その実や木のことを詳しく教えてもらえますか?」
真剣な表情でルイーズはジュリーと向き合う。
まさかこんなところでこんな拾い物をするだなんて、ルイーズは思っても見なかった。
この油は、この食用油は美食界に一石を投じるものになる、そうルイーズは確信した。
「は、はい! シェルムの実と言って、荒れ地に生える少し高い木になる実からとれる油で、油なのにこのようにすごい口当たりがよくまろやかなんですよ」
「シェルムの木ですか、聞いたことない木ですね。これは…… ふむ、お父様に、いえ、叔父様に相談しておいたほうがよさそうですね」
恐らくティンチルを作った叔父なら間違いなく食いつくはずだ。
それほどの価値がこの油にはあるとルイーズは思っている。
この油は間違いなく様々な料理にあう。その価値は計り知れない。
「え? どういうことですか?」
と、ジュリーが少し戸惑っているとルイーズはジュリーに微笑んで返す。
「アンバー領の良い特産になるかもしれませんよ、ジュリー様」
これは嘘ではなく、シェルムという木次第ではあるが、貧困な領地であるアンバー領の財政を一気に改善できるものかもしれない。
「確かに。これはいい油ね。普通の油なら、こんなに付け込んだら食べれたものじゃないわよ」
スティフィもこの油の品質には認めざる得ないものを感じ取っている。
このまま飲めてしまうんではないかと思えるほど食用油としての品質がいい。
何より油なのに胸焼けが全く起きない。
「じゃが芋も人参もおいしいです! お肉も信じられないくらいおいしいですね! 九十三点です!」
「ぬっ、でも、これはまあ、仕方ないわね……」
スティフィはミアの採点に嫌な表情を浮かべながらも、納得するしかない。
油の煮物という物珍しさもあるが、それを抜いても十分に美味しい料理であることは間違いがない。
技術的な面ではスティフィの方が勝っているのだろうが、物珍しさも相成ってジュリーの料理が今回は勝っただけだ。
「あ、ありがとうございます」
「いい、ジュリーに負けたんじゃないわよ、このシェルム油に負けただけだからね!」
「は、はい、それでいいですよ」
と、ジュリーは少し困り顔でそうは言ってはいるが、嬉しそうな顔を隠し切れていない。
それは料理でスティフィに勝てたことよりも、ルイーズがシェルム油に興味を持ってくれたことに対してだが。
場合によっては本当にアンバー領の財政を一変してくれるかもしれないのだから、ジュリーにとってはまさに救いの手だ。
「じゃあ、次はマーカスさんの燻製肉です」
ミアは突き匙を手に握りそう言うが、マーカスは動かない。
動かない代わりに、マーカスはカマクラの外、外の空へと目線を向ける。
その視線はかなり遠くの空を見ている。
「んー、まだですね。もう少し燻しておきたいですね」
マーカスは燻し始めた時間、外気の気温などを考慮して、そう結論付けた。
「なら零点です」
私欲、いや、食欲にまみれた非情なる食の審査員のミアは、残酷な審査を下す。
「夕食には間に合いますので」
「はい、楽しみにしてます!」
そう言った後、次に出てくる料理を見てミアは渋い表情を浮かべる。
ついでにルイーズ番ではあるが、皿に料理を盛っているのはブノアすらでもなくジュリーだ。
「次は…… 素のサァーナですね。これを再び見ることになるとは思いもよりませんでした」
ミアはそう言ってこの学院に来たばかりの食事のことを思い出す。
当時はそれでもサァーナなど珍しく美味しく感じていたが、今では流石にそう食べたいものではない。
「グレン鍋をかけて食べてください」
と、ジュリーが全員分のサァーナを皿に盛って配り終えた後、ルイーズがすました顔でそう告げて来る。
「ルイーズ様も零点です」
それにミアが残酷な審査を下す。
だが、ミアにルイーズ本人以外、誰も抗議の声を上げない。ブノアでさえもミアとルイーズ二人の視線を避けている。
「な、なんでですか!」
ルイーズだけは必死に抗議の声をあげ続ける。
「グレン鍋はエリックさんの料理なので」
「それはそうですが…… 合作ということで? どうですか?」
ルイーズはエリックを見てそう申し出る。
「ん? まあ、それでもいいぜ? 確かにサァーナにかけても旨いもんな」
と、エリックは深く考えずに反射的にそう答える。
「え? すでにそれを実行なされている方がいるんですか?」
そのエリックの言葉を聞いて、ルイーズが驚愕する。
グレン鍋にサァーナが合うと予想したのは自分が最初ではなかったのかと。
「何言ってるのよ、お姫様。あんたが来た収穫祭の日に皆そうやって食べてたじゃないの」
スティフィが更にルイーズに追い打ちをかけると、
「え? そうなんですか?」
と、ルイーズは崩れ落ちる。
ルイーズ自身たしかに素のサァーナだけではどうにもならないことは理解できていた。
しかし、グレン鍋を掛けることでこのサァーナは完成し、素晴らしいものへと昇華させられると考えていたのだ。
「はい、そうですよ」
と、ミアがルイーズに声を掛けると、ルイーズは自分の目論見が甘かったことを認識する。
「そ、そんな!!」
「サァーナが主食のこの辺りでは、グレン鍋をかけるのは騎士隊じゃ割と有名な喰い方らしいな」
と、エリックが更に告げると、ルイーズも認めざる得ない。
「そうだったんですね…… それなら零点も仕方がないですね」
「かわいそうなので五点加点して、計五点とします!」
と、崩れ落ちたルイーズを不憫に思ったミアが追加点を与える。
「減点分どこ行ったのよ、ミアの採点適当過ぎない? それに点数つけて何かあるわけ?」
それにスティフィが突っ込むと、
「はい、最下位の人には後片付けをしてもらいます」
と、ミアが笑顔でそう告げる。
「は?」
と、想像もしてなかったブノアが声をあげる。
「あー、そういうことですか、まあ、間に合いませんでしたし、仕方がないですね」
同じく零点のマーカスは笑顔でそう答えて、流石にブノアに後片付けはさせられないので、自分がやるしかない、と独り悟る。
「ついでにブノアさんも零点です」
と、ミアが継げると、
「あ、ああ……」
と、ブノアが少し動揺しつつそれを認める。
自分の頭領であり、外道狩り衆としての師匠でもあるベッキオの孫娘であるミアには逆らえないし、ミアはそもそもルイーズの姉の可能性まであるのだ。
ブノアからしたら、本人に命令しているという気がなくとも、その言葉を反故にすることなどできるものではない。
「え? 良いんですか、ブノアさん?」
と、この領地の貴族であるブノアを気遣ってジュリーが声をかけるが、ブノアは平静を装い頷いて見せた。
「まあ、ミア様の命じゃ仕方あるまい……」
「あら、ブノアが後片付けするんですか? ちょっと見てみたいですね」
と、ルイーズまで乗る気になっている。
これではジュリーが代わりを申し出ることもできない。
「そ、そうですか……」
「後はグレン鍋と…… なに、このごった煮は」
ミアが用意していた鍋を見て、スティフィはミアに視線を向ける。
これを作った人間に自分の料理を評価されていたと思うとなんだか腹立たしく思えて来る。
この鍋は本当に余り物を煮ただけのものだ。
それ以外の手が加えられたようには見えない。
「あまりもの鍋です。ついでに夕食と明日の朝の朝食を兼ねてます」
「ミア、本当に食材全部使っちゃったの?」
それを聞いて、スティフィが確認するが、鍋の量はかなりの物だ。
恐らく本当に持ってきていた食材と鹿の肉を全部この鍋にぶち込んだのだろう。
「はい、残しても仕方がないじゃないですか」
そう言って、ミアは自分の作っていた鍋に蓋をして隠した。
そして、素のサァーナの上にエリックの作ったグレン鍋を掛けて食べ始めた。
「エリックさんのグレン鍋は…… うん、百点です! いつ食べてもおいしいですね」
と、誤魔化すようにそう言った。
それを見たスティフィはもう少しからかってやるかどうか迷うが、とりあえずミアの機嫌が上機嫌ではあるのでからかうのはやめておいた。
そして、
「あんた料理は上手よね」
と、スティフィも珍しくエリックを誉め、サァーナにグレン鍋を掛け食べ始める。
「へへ、料理は昔っから好きだったからな」
エリックがスティフィにまでそう言われ、隠しもせずに得意そうにしている。
「男の人で料理を好きって方珍しいですね」
ジュリーがそう言っている横で、スティフィがこっそりミアの作っていた鍋を開け、その中の具を一つまみする。
やっぱり少しだけからかいたい気持ちが勝ったようだ。
「で、ミアの方の鍋は…… いろいろ点数付けてた割には…… なんていうか、塩気がまるでないわね」
下味も下拵えも何もなく、ただ煮ただけの鍋。
具材的に不味くはないが、味がまるでない。
「素材の味を楽しんでください!」
と、ミアは鍋の蓋を再度閉めてそう言った。
様々な料理を味わい、流石にミアにとってもこの鍋は恥ずかしいのかもしれない。
「香辛料も塩もちゃんと持ってきてたよな?」
と、エリックが不思議そうにそう聞くと、
「香辛料なんて知りませんし、お塩は貴重品なので、そんな使えないですよ」
と、ミアが答えた。
「なんで使わないのよ…… いいわ、後で私が香辛料の使い方を教えてあげるから」
「えぇ…… 香辛料って辛いだけじゃないですか」
ミアはここに来た時にかけた妙に辛い香辛料のことを思い出す。
ミアにとっての香辛料はその思い出が強い。
「このミアが好きなグレン鍋も香辛料塊みたいなもんよ!」
「え!? そうなんですか!?」
それを聞いて、ミアは驚く。
「具材だけ使って香辛料を何一つ使わないってどういうことよ……」
「ん? 鍋なら豆味噌があるからそれを入れるとうまいと思うぞ、グレン鍋とはまた違った旨さだぞ」
エリックがミアとスティフィのやり取りを聞いてそう進言する。
「味噌? なにそれ」
その言葉にスティフィが反応する。
スティフィも味噌という存在を知らないようだ。
「あれ? 知らない? 穀醤の一つだな。発酵食品だよ。鍋に超合うぞ」
「それだけでいいの?」
と、スティフィが確認する。
「おぅよ、特に魚介系にあうけど肉にも合うぞ。ん、でもあれか、魚介系の出汁も入れて合わせてやればいいか。後入れになっちゃうけど、まあ大丈夫だろ」
エリックは笑顔でそう答え立ち上がった。
「待ってて、持って来てるから取ってくるよ!」
そう言ってエリックがカマクラを出ようとしたところで気が付く。
「ん? 誰か登ってきてるぞ」
頂上に登ってきている人影にエリックが気づきそう告げるが、
「太陽の戦士団の奴らでしょう…… 嫌になるわね、こんなところでも出会うの」
スティフィは既に知ってるかのようにそう言った。
「まあ、向こうは大晦日から、とりあえず山に登るのが恒例行事ですからね」
そして、マーカスが少しうれしそうに、それに一言、付け加える。
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