学院の魔女の日常的非日常

只野誠

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試験が終わった後の夏休みと海でのいつもとちょっと違う日常

試験が終わった後の夏休みと海でのいつもとちょっと違う日常 その7

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 海洋館。言ってしまえば美しく豪華だが普通の屋敷だ。
 研修施設、しかも、世界的にも珍しい、海洋生物の研究施設にはとてもじゃないがその外見からでは思えない。
 位置的には宿から入り江を挟んで反対の岸側。大いなる海の渦教団の神殿の近くに建てられている。
 この辺りまでくると、流石に街の景色も宮殿というよりは普通の街といった雰囲気になっている。この街で働く者達の住居はこちらにまとめて建てられているようだ。
 ただそれでも普通の街などよりは数段豪華で整った綺麗な街並みとなっていて、間違ってこちら側に迷い込んできてもティンチルという幻想的な街に幻滅することはない。
 そして、それらとはまた別にミア達は後悔していた。
 道化の神官エレノアが特別に手配してくれた海洋館迄送ってくれる送迎用の使い魔に乗ってはいたが、その車窓から見るだけでも周囲は普通の恰好をした人間ばかりだ。
 確かに宿がある付近では、街にまで水着で出歩いている人間は多くいる。それこそ、そこら中にいる。
 なので、それが普通と思い込めていたが、この辺りまでくると流石に水着で出歩く人などいない。そして、それこそが普通であり常識だ。
 こんな露出の多い水着で出歩くなど普通ではない。ティンチルという街の雰囲気にのまれていたことに気づき、目が覚めたような心地だ。
 スティフィを除いた三人は水着に軽い上着を羽織っているだけの恰好に気恥ずかしくなっていた。
 海洋館に着きミアが送迎用の使い魔から降りようとしたとき、使い魔を操っていた魔術師がミアに声をかけた。
「その使い魔も師匠の作だそうで。師匠も今、海洋館におられますよ」
 その魔術師はにこやかに笑い、ミアとというか、正確にはその使い魔の荷物持ち君に話しかけてきた。
 特に荷物持ち君には、熱烈な視線を送っている。
「師匠? ああ、グランドン教授ですか?」
 ミアは一瞬、この魔術師の言っている師匠という言葉が、マーカスがいつも言っている師匠、つまりはオーケン大神官のことかと勘違いし、混乱するが、それが間違いであることにはすぐに気づく。
 使い魔関連で師匠などと呼ばれるような立場の人はミアからするとグランドン教授しか心当たりはない。
「はい」
 と、その名が出て嬉しそうに魔術師はにこやかに返事を返した。
「ここにいるんですね、ちょうど挨拶しに行かねばと思っていたところです。お知り合いというならばご一緒いたしますか?」
 使い魔の運転をしていた魔術師にそう声をミアがかけると、滅相もない、と言った感じでそれを丁寧に断ってきた。
「いえ、わたくしにも他の仕事がありますので。昼過ぎに、大体三時頃でしょうか。またお迎えに来ます。その時はちょうど師匠も宿に帰る予定となっておりますので、その時にでも」
 そう言ってその魔術師は恭しくミアに頭を下げた。
 魔術師としてはまだ若い、けれどもミアからすればかなり年上で大人の男性だ。ミアは先輩でもあるはずの魔術師に特に理由もなく頭を下げられ、どうも不思議な感覚に陥る。
「態々ありがとうございます」
 と、とりあえずで感謝を述べ、ミアもその魔術師に向かい頭を下げた。
「では、お楽しみを」
 使い魔を運転していた魔術師はミア達を降ろした後、にこやかな表情を再び向け、使い魔を発進させこの場から去っていった。

 大きな屋敷の前で降ろされたミアは、その豪華絢爛な館を見上げながら、
「グランドン教授、ここにいるそうですね? 使い魔とこことで、なにか関係あるんですかね」
 と、つぶやいた。
 古老樹の朽木様に刻印を最適化してもらって以来、グランドン教授は荷物持ち君、特にその刻印に首ったけだ。
 当たり前だ。
 古老樹という上位種に最適化された刻印は、人ではたどり着けないほどの英知の固まり、その結晶のようなものだ。
 例えそのすべてを理解できなくとも、その一欠けらでも理解できれば、それは人にとって大いなる進歩となるような代物だ。
 たとえそれが困難なことと分かっていても研究せずにはいられない。それが魔術師であり研究者というものだ。
 グランドン教授が入れ込むのも無理はないどころか自然であり当然の話だ。
「会って確かめればいいんじゃない? あの教授もミアのことと、荷物持ち君のことも気に入ってたみたいだし、邪険にはされないでしょう。というか、研究施設というよりは貴族の別荘みたいなところね」
 スティフィも館を見上げそう言った。
 研究施設というよりは夜会などを開く館と言った方が印象にあう。
 美しく煌びやかで、とても研究施設の建物には思えない。
 ジュリーなどはその外見に見とれてうっとりと憧れるようにしている。
 マーカスもマーカスでこれから間近で海洋生物を見れるということで、隠せないほどウキウキとしている。
「ですね…… とりあえず入りましょう」
 ミアはその豪華な扉についている、やはり豪華な金色の叩き金をコンコンと打ち鳴らした。
 ちょっとの間があり、中から白衣を着た研究者、ではなく、かわいいヒラヒラの給仕服を着た若い女性の使用人が扉を開けた。
 その使用人はミア達を一目見て怪訝そうな表情を見せる。
 まあ、全員が上に一枚服を羽織ってはいるが水着なので、怪訝そうな顔をされるのも無理はない。
「すいません、こちらは研究施設となっておりまして、一般の方は……」
 それでも失礼が無いようにと、使用人の女性は丁寧にそう言ってきたが、それを遮るようにミアが話し出す。
 最後までこの使用人の話を聞いていたら、そのまま扉を閉められそうな雰囲気だったからだ。
「あ、あの、宿で道化の恰好をした人、エレノアという方から見学できると勧められて……」
 ミアがそう伝えると、使用人の表情が驚いた表情に一変する。
「エレノア様からですか?」
 驚いて動揺、それもかなりの動揺をしているようだ。
 宿の一階で道化の恰好をして案内などをしてはいるが、もしかしたらかなり偉い人なのでは、とミアは思い始めるくらいには、その使用人は動揺している。
 そもそも部下のいる神官なのだから、偉くないはずはない。本来なら道化の恰好などしているような人物ではないのかもしれない。
「はい、えっと…… 待ってください、手紙手紙……っと、あった。これです!」
 ミアはエレノアから渡された封筒を使用人に渡す。
 使用人は封筒の封を丁寧に開け、その中身を確認する。
「確かに。ええっと、どうしましょう…… 今、実は他にも、その…… 大切なお方の、来客中でして…… 普段ならエレノア様の頼みであれば、見学することは問題はないのですが……」
 使用人は今にも泣きそうな表情を浮かべて、ミア達にではなく恐らくはエレノアという道化にだろうが、申し訳なさそうにしている。
 ミアが考えていた以上に、あの道化は身分が高い人だったのかもしれない。
「もしかしてですが、そのお客様とはグランドン教授ですか?」
 来客中ということで、ミアが思いつくのはグランドン教授くらいだ。それも先ほど聞いたばかりの話だ。
「え? ええ、そうなんですが、お知り合いですか?」
 使用人の女性は、また驚いているようだ。なんなら先ほどよりも動揺している。
「えーと、知り合いというよりは、まあ、生徒です、魔術学院の。あと、こちらの荷物持ち君の製作にもグランドン教授には手伝って頂いていて……」
 そう言って荷物持ち君を呼び、使用人の女性にその姿を見せる。
 そうすることで使用人がとてつもなく焦りだす。先ほどは動揺した程度だったが、今回は完全に切羽詰まってしまい、慌てふためいているのがわかる。
「え? その泥人形をグランドン様が? え、えーと、ちょっと待ってください。と、とりあえず確認してきますので。あっ、いえ、先にこちらの待合室でお待ちください!」
 使用人の女性は慌てて、ミア達を屋敷の来賓用の待合室に招き入れた。

「荷物持ち君のこと話したら、急に血相を変えて来たわね、あの女」
 スティフィがいたずらっぽく、そして何かをそそのかすかのようにミアに話しかけてきた。
 あの使用人の女性が帰ってきたら一緒にからかってやろうという誘いなのだろうが、ミアはそんなことに興味はない。
 ミアもデミアス教というものを少しは理解してきているため、スティフィの行動を咎めはしないが、いい顔はしていない。
 そもそも、ミアがからかうようなことをする相手は気を許しているスティフィくらいのものだ。
 なので、ミアはスティフィに違う話題を振る。
「グランドン教授、この辺りでも有名なのですね」
 この街は使用されている使い魔の数が非常に多い。と、いうか人々の移動に使い魔を使うなど普通はあり得ないことだ。
 通常の使い魔は起動しているだけで魔力を消費する。人が運べないほどの大量の荷物などならわかる話だが、客を運ぶ為だけに使うだなんて発想はそもそも出てこない。
 一体何人の使魔魔術師がそのためにいるのかミアでは想像もつかない話だ。
 それだけ街に使い魔が普及している街なら、使魔魔術師として名を馳せているグランドン教授の権威も相当なものなのだろう。
 あの使用人の急変した態度を見れば、それはミアでも理解できる。
「魔術学院の教授なんて下手な貴族なんかよりも有名で権力もってるからね、当たり前よ。それにこの街は特に使い魔を使いまくってるし、影響力も相当あるんでしょうね」
 ミアはそれを口には出さなかったが、スティフィはわざとそれを口に出して話した。
 ミアがスティフィのそんな話を黙って聞いていると、隠しもせずドカドカと足音を立てて何者かが近づいてくるのがわかる。
 そしてすぐにこの待合室の扉が、少し乱暴に開かれる。
「荷物持ち君が来ているのですか!?」
 第一声はそれだった。開かれた扉から現れたのは予想通りのグランドン教授が姿を現す。
 遅れて先ほどの使用人もグランドン教授の後から顔を見せる。その表情は少し怯えているようにも見える。
「グランドン教授!」
 と、ミアが扉が勢いよく開かれた音に驚きそう声を上げる。
 そこで、グランドン教授がやや冷静さを取り戻し、この部屋の様子を確認する。
 とはいっても、まずは荷物持ち君の存在を確認して、次ぎにミアの存在。そして、その他の顔ぶれを見ていく感じだ。
「ああ、ミア君、それにスティフィ君も。スティフィ君はまた凄い恰好をしていますねぇ。おや、マーカス君もいるのですね、で、そちらのお嬢様は?」
 スティフィの着ている水着に驚きつつも、グランドン教授はあまり見ない顔にも興味を示した。
「巫女科のジュリー・アンバーと申します」
 ジュリーが座っていた椅子から立ち上がり丁寧に挨拶をする。
「ああ、ミアちゃん係になったという」
 巫女科と聞いて、あからさまにグランドン教授はジュリーから興味を失っているのが誰の目にも見て取れた。
「その名称、広まっているんですね……」
 と、ジュリーが少し困った表情でそう言うが、グランドン教授はそれも聞き流す。
「そんなことより、よくぞ荷物持ち君をここに連れてきてくれました!学院では他の教授達の目もあり、中々踏み込んだ調査ができないでいるのですが、ここでならそれも可能です!! ぜひ、荷物持ち君の刻印の調査をもう一度お願いしたいのですが、よろしいですかな?」
 グランドン教授はミアに顔を近づけ、半ば強引にそう言ってくる。
 ついでに踏み込んだ調査ができないのは別に他の教授たちの目があるからではない。
「に、荷物持ち君が嫌がらなければ…… いいですけど……」
 その迫力に押されつつも、ミアは荷物持ち君の方を一瞥して、その判断を荷物持ち君に任せた。
 それは、あまりよろしくないとばかりに、グランドン教授は更にミアに力説する。
「いえ、いえいえ、もし仮に荷物持ち君が破損した場合、修復できる人間はまずいません。現状では朽木様に頼らなければならないでしょう。ですが、我がその刻印を少しでも理解できれば、わざわざ朽木様を頼らずともですな、修復できる可能性が出てきますぞ?」
 グランドン教授はじっとミアの瞳を見つめ、強い圧をかけてくるが、ミアはそんなことで屈する人間でもない。
 ただグランドン教授の熱意というか、情熱は伝わってくるので、その点では少し断りにくく思えてしまう。
「ま、まあ、荷物持ち君がそれを拒むようなら、やめておかないと大変なことになりそうですが……」
 荷物持ち君はミアの使い魔であることは確かだが、それと同時にまだ苗木の状態ではあるのだが、古老樹という上位種であり、人間よりはるかに高度な知性と力を持った存在だ。
 古老樹唯一の弱点は地に根を張らないと、その力の大半を得れないことだ。つまり一所にいて動けない存在なのだが、泥人形に根を降ろすといったことで、動き回れる古老樹となっている。
 ただその分、同世代の大地に根を降ろした古老樹と比べて古老樹としての力はどうしても劣る。
 それでも動き回れる古老樹などとんでもない存在であることには違いはない。
「拒まなければ良いと。で、どうなんですか。荷物持ち君?」
 荷物持ち君が少し迷う素振りをして、両手でバツの字を作った。
 傍から見ている、特に使用人の女性には奇妙な光景に思えるだろう。
 通常は使い魔に意思などない。魔術師の傀儡なのだから。だが、荷物持ち君は違う。彼の核は古老樹でありその意識そのものが、荷物持ち君のそれである。
 それを知らない人間が見れば気でも狂っているのかと思われかねない話だが、使魔魔術の権威であるグランドン教授がそれをしているので、この泥人形にはなにかあるのだろうとは思うかもしれない。
 ただそのグランドン教授は荷物持ち君に断られたことで膝から崩れ落ちてはいる。
 流石のグランドン教授も古老樹である荷物持ち君に拒否されたら引き下がるしかない。
 彼の親である朽木様の怒りを買いでもしたら、魔術学院の教授と言えなどひとたまりもない。
「なんと! しかし、まあ、無理強いはできませんな。確かにこれは我の命にも関わりますし…… しかし、残念です、ここならば設備もそろっていて少しは解析もはかどると思っていたのですが」
 グランドン教授はそう言って見るからに落胆していく。
 とはいえ、これはミアと荷物持ち君がグランドン教授に会いに行くときの儀式みたいなもので既に何度も行われている恒例行事でもある。
 ミアも毎回グランドン教授の熱意に押されるものの、その判断をその度に荷物持ち君に丸投げしているだけだ。
 結果も毎回一緒だ。
 唯一調査が許されたのは、ミア達が朽木様と精霊王に会い、帰ってきた直後の一回だけだ。
 ただその時は時間もなく大した調査はできていない。後は整備などで度々グランドン教授に見てもらってはいるが、刻印の調査や検査と言ったような踏み込んだものはできていないし、相手が相手なのでグランドン教授も無理やり強行できるものでもない。
 同意の上でしなければ、それこそ上位種である古老樹の怒りを買いかねない。
「グランドン教授はなぜここにいるんですか?」
 崩れ落ち項垂れているグランドン教授に見飽きたのか、ミアは疑問に思っていることを口にした。
 今は学院は夏の長期休暇中で、その間学院の教授達は自分の研究に費やす時期でもある。
 観光地で余暇を過ごしているわけではないにしても、海洋生物の研究所などにいるのはおかしな話だ。
「ふむ…… 実は現領主の弟君から海中探索用の使い魔作成の依頼を受けてましてな。それで海洋生物の生態が役に立つかと、ここにも我の、仮ではあるのですが、研究室を作っていただきましてな。とはいえ、設計段階で既に難航していて研究室を使うところまでも来れていない現状なのですがね。あの男も欲深い男でして。まあ、その欲が金や権力ではなく最高の観光都市を作るという訳の分からん方に向いてはいますがね」
 グランドン教授は一息にそう話して、深いため息を漏らした。
 基本的に使い魔は魔力を動力源として動くのだが、魔力と水は親和性が高く、水が掛かったりするだけならまだしも、水中などではその動力源である魔力が水に流れ出てしまう。
 塩水である海水などは真水よりもさらに親和性が高く魔力の流出量も多い。とてもじゃないが海の中で稼働する使い魔など夢の話だ。
 そもそも、海に関わらず、水中用の使い魔など実用に至った例は聞いたこともない。
 それだけに実用化できれば、グランドン教授の名声は一気に跳ね上がるのだが、そう簡単に行く話ではない。
「つまり、領主の弟さんがグランドン教授の支援者ってことですか」
 スティフィはそう聞きつつも既に納得している。
 学院の会議などでグランドン教授がやたらと強気であれやこれやと発言できるのは、後ろに領主の弟が付いているからだと。
「まあ、そうなりますな。我が育てた生徒を運転手にするのだけはいただけませんが、それ以外は良い関係を築けてますな」
 このティンチルという街には、グランドン教授の生徒が毎年数人ずつ使魔魔術師として就職していっている。
 収入面では申し分ない話なのだが、魔術の研究者としての魔術師からすると評価の対象にすらならない。
 グランドン教授はそれを嘆いている。
「ああ、ここまで運んでくれた方がグランドン教授のことを師匠と言っていました」
 ミアが思い出したように、運搬用の使い魔を運転していた魔術師のことを話す。
 自分の仕事にも責任と誇りを持っているように、感じれたし、なにがいただけないのか、ミアにはわからない話だ。
「彼は…… まあ、腕は良かったのですが性格的に難があって、まあ、その、彼からすればここの運転手はある意味では天職なのでしょう。運転手なら問題を起こさないでしょうし。彼の才能はもったいないですが、彼が平穏な生活を送るのならば運転手があっているとも言えますな。そう言う例もあるので、我もあまり強くは言えないのですがね。お給金の支払いもかなり良いので」
 グランドン教授はそう言って、親指と人差し指で円を作り、それを上に向けて上下させた。
 そして、それに誰も反応しないので話を続ける。
「しかし、使魔魔術の研究者としてはですな、閑職もいいところで…… と、ミア君たちはどうしてここへ?」
 グランドン教授が愚痴を言い始めそうになったところで、我に返りこのティンチルという超がつくほどの高級観光地にミア達がいることを疑問に思う。
「えーと、ですね……」
 ミアはこれまでの経緯を説明しだした。

「なるほど福引が当たり、海で遊べないからこちらに見学にと……」
 ミアが隠さずに、福引で不正があったのかもしれない事まで話してしまったため、グランドン教授も少し渋い表情を見せている。
 聞いてしまったからには色々と教授という立場上、確認しないといけないのかもしれない。
 そして、グランドン教授はマーカスの額の目のことも教授という立場から知っている。
 だからこそ、スティフィはここで決断した。
「あ、グランドン教授、ちょっと人払いいいですか?」
 スティフィは少し迷いはしたが、今持っている情報をグランドン教授に渡すことにした。
 現状、外道種がミアを狙っていたということを知っているのは恐らくここにいるミア達とオーケン大神官だけだ。
 スティフィとしてはダーウィック大神官にも伝えたいが、デミアス教の『耳』と呼ばれる諜報組織もうまく機能していない。
 耳を使い情報をダーウィック大神官に送っても恐らくオーケン大神官により途中で握りつぶされてしまう。
 ならば、オーケン大神官がこの情報の独占することを防ぐためにグランドン教授に情報を渡す。
 相手が魔術学院の教授であるならば、オーケン大神官も簡単には手を出してはこないはずだ、スティフィはそう考えた。
 とりあえずマーカスの額の目を通じて、オーケン大神官にはグランドン教授に情報を渡したことは伝わるはずだ。
 情報が独占できていない、という事だけでも相手に伝えられれば、それだけで選択肢は増えるとスティフィは判断しての行動だ。
「ふむ。いいでしょう。少し席を外していてください」
 グランドン教授がそう言って、先ほどの女性の使用人に合図を送ると、使用人はその場でお辞儀をして部屋を出ていった。
「で、何か内密なお話が?」
 グランドン教授は顔色が悪く隈のかかった目、その眼でスティフィをしっかりと見据えた。
 荷物持ち君制作の時、かなりの間スティフィも作業を手伝っているので、それなりに知った仲ではある。
 が、実際こうやって改めて面と向かうと、それ相応の胆力という物を感じずにはいられない。
「教授は今日、海に入れない理由をご存じですか?」
 スティフィも真剣な面持ちになり、まっすぐグランドン教授を見つめ返し話し始めた。
「入り江の網が破られていたとか。あの網はそう簡単に破れるものでもないのですけども」
 グランドン教授は少しとぼけたようにそう言った。
 それを聞いたスティフィはこの選択は間違っていないと確信する。
「実は……」
 本当はミアが領主の娘に絡まれたことまで話したかったが、流石にそれはあからさますぎる。
 教授の職に就く様な人間であれば、デミアス教の内部抗争が絶えないという事情もある程度知っている事だろう。
 なので、スティフィが昨夜見たことだけだが、それを全て隠さずにグランドン教授に伝えた。
「外道種ですか。それを荷物持ち君が魔術を込めた一撃で撃退と。まあ、どちらも凡そ予測はしてましたがね。思ったよりも早かったですが」
 そう言ってグランドン教授は視線を下げ、少し何かを考え始めた。
「その外道種の死骸が発見されたという話は?」
 スティフィは今度は情報を渡すのではなく、仕入れるために質問する。
 とはいえ、ここで新しく得た情報はマーカスを通してオーケン神官にも即座に伝わってしまうのだが。
「まだそう言った情報は入ってないですな。そう言ったことならば我のところにはいち早く情報が伝わるはずです。ですが、恐らくは見つからないでしょう。これは、知り合いの精霊魔術師から今朝聞いた話ですが、海の精霊達がこの入り江周辺に集まって来ている、という話です。まあ、話というか愚痴というか相談されたというべきですがね。それもあって今日は海に入ることを禁止にしているんですよ。網が切られたというのも本当ですが、実際は集まっている精霊のほうが危険視されています」
 スティフィはグランドン教授の言葉を聞いて眉を顰めた。
 精霊が集まってきている理由も恐らくはミアが襲われそうになったからだ。
 スティフィの表情を見てグランドン教授は密かに笑みを浮かべる、そして、話の続きを口にする。
「そのことを表立っては伝えられてないですがね。あれほどの数の精霊が集まってくることは今までになかったとのことです。我には精霊の所在はわかりませんが、その理由もスティフィ君の話で判明しましたな。恐らく、荷物持ち君の古老樹としてか、護衛者としてか、そのどちらかはわかりませんが海の精霊達に何らかの、ミア君を守護するような類の命令でも下したのでしょう」
 スティフィが考えていることをグランドン教授は差も当たり前のように口にする。
 そして、浮かべた笑みを強めてから、再びグランドン教授は口を開く。
「海に属する精霊に古老樹の支配力がどこまで有効かはわかりませんが、その恐らくは外道種の死骸も精霊達に処理され見つかることもないでしょうし、ここでこれ以上ミア君が襲われることもないかと思います。そのために精霊達が集まっているのでしょう。まあ、我のただの推測なので、あまり信じられても困りますが。それと、スティフィ君。我をあまり、そちらのいざこざに巻き込まないでくれると助かるのだがね?」
「なんのことでしょうか?」
 スティフィは笑顔でそう答えるが、完全にスティフィの目論見は見抜かれているようだ。
 スティフィは素直に話過ぎたか、と内心後悔するが、これでオーケン大神官の情報の独占だけは避けられたはずだ。
 デミアス教の『耳』とはまた違う情報網で、多少遅れはするだろうがスティフィが学院に戻るよりは早く学院にまでは情報が届くはずだ。
「まあ、いいです。我はどちらにも着くつもりもありませんし。ふむ、とはいえ、今早急にできることなどなにもありませんな。無力な人の身には身に余る事柄が多すぎます。荷物持ち君に任せ、我々は静観するのがいいでしょう。なにもできないようなことよりもです、今はここ、海洋館の見学に来たのでしょう。さすがはエレノア殿ですな、ミア君にここを進めるとは、やはり見る目がありますなぁ。実際、ここは中々面白い研究施設ですよ」
 そう言って、グランドン教授は何か吹っ切れたような、そして、何か思いついたような表情を見せた。
「グランドン教授! 私、烏賊が見て見たいんです!」
 ミアがそう言うと、グランドン教授の表情がパっと明るくなる。
 グランドン教授は荷物持ち君作成の時から、ミアに目をかけていたが、朽木様が刻印を最適化して以来は、ミアにかなり甘くなっている。
 もちろんその目当ては、荷物持ち君の制御刻印なのだが、相手が上位種なので無理に手を出せるわけもない。
 なので、荷物持ち君の主であるミアに取り入ろうとしているのだろうが、それがあからさますぎてミアに言い様に使われている、とまでもは言わないが、フーベルト教授と同じ道を進んでいる事に本人は気づいてない。
「烏賊ですか? 流石ミア君。面白い生物に目を付けましたねぇ。あれも謎の多き生物です。では、我が直々に案内しましょう」
 ただ目の付け所は流石だ、とグランドン教授も感心している。
 実際に生物的に烏賊はかなり面白い生き物であることは間違いない。
 自在に動く触手、種によっては周囲に擬態する能力、またその素晴らしい適応力など、使い魔にも応用できそうなものは多い。
 それが実用化できなくとも、新しい思い付きの切っ掛けにはなったりもする。
「グランドン教授が? ですか?」
 グランドン教授が案内を買って出たことにマーカスが驚く。
 魔術学院の教授はかなりの地位と権力を持つ。それこそ、増えすぎて直系以外はあまり意味がなくなってきている貴族などよりは、その地位も権力も高い。
 そんな人物が、案内を買って出たのだ。驚きもする。
「おや、マーカス君。キミも生き物のことは確か興味がありましたよね、少し行き過ぎの気はしてましたが」
 グランドン教授はこのマーカスが、死んだ犬のために、冥界の神と取引し犬の復活を望んで狂気ともいえる行動をしたことを知ってる。
 その対価の精霊王の体の一部を手に入れようとして、失敗し数年もの間、精霊王により氷の中に生きたまま捕らえられていたのだということもだ。
 犬一匹にしては、重すぎる対価だ。だが、マーカスにはそれを悔いている所はない。彼が悔いているのは結局、その犬を助けられなかったことだけだ。
 そのあたりは、普通の人間とは違い、少し頭の螺子が緩んだ人間なのだろう。
 そういう人間は時として魔術師として大成する。いや、少しくらい頭がおかしくないと、魔術という人以上の存在からもたらされた学問は理解できないのかもしれない。
 そう言った意味で、グランドン教授はマーカスを一定の評価をしている。
 またグランドン教授の同僚である、マリユ教授の話では、マーカス本人の意に反して呪術の適性がとても高いとのことだ。中々面白い逸材ではある。
「昔からどうも好きなんですよね、動物の類が」
 マーカスがそう答えると、グランドン教授はにんまりと笑みを浮かべた。
 確かに笑顔なのだが、少し寒気のする笑顔だ。
「まあ、動物からは学ぶことが多いのは事実です。特に使魔魔術の分野ではね。彼らは生物としてとても合理的な部分が多い。いや、まあ、なんていうかですね。そんなことはどうでもいいんですが」
 そこでグランドン教授は一呼吸おいて、一度目を閉じて、鋭く目を開く。
 その表情はなにか良い事でも思いついたかのようだ。
「……はぁ、正直なところ、少々我の方も海中で動き回れるような使い魔の作成は行き詰っていましてな。優秀な生徒達になら、ここを案内して回るというのもいい気分転換にはなるかと、思っているんですよ。水中を自在に動き回れる使い魔などという酷い難題を突き付けられましてな」
 そこまでやけに芝居がかったような口調でグランドン教授はそう言って、ミア達の顔を一望する。
 そして笑顔で頷き次の言葉に続く。
「そもそも、水、特に海水の中では魔力を安定して使い魔に留めること自体が、まず不可能に近くてですな…… すいませんな、愚痴が出てしまいましたな。生徒に愚痴っても仕方ないですな。参りましたな。ハハッ!」
 そこまで言った後、グランドン教授の顔が一変する。
 真剣な、少し睨むような表情でミア達を見つめつつ、さらに言葉を続ける。
「で、です。あなたたちは我の気分転換になるような優秀な生徒なのですかね?」
 そう言ってグランドン教授は、今度は見るからに嫌な笑みを浮かべた。
 その時、少なくともマーカスはグランドン教授の案内は気晴らしなどではなく、憂さ晴らしなのだと理解できた。

「こ、これが烏賊ですか!? 想像していたのとまるで違います! なんか花みたいですね! 少し綺麗です!! 嘴! 嘴があると聞いていたのですが!!」
 烏賊の水槽を前にミアは大はしゃぎしている。
 水槽の中にいる烏賊は不透明は不透明なのだが、それでも白く透き通っているように見え、何とも言えない綺麗な姿をしている。
 ミアが花みたい、と言ったのは、今は烏賊の触手の方からミアが見ているせいだ。
 確かに角度によっては花に見えなくはない。
 見れば見るほど不思議な生物だ。
 その泳ぎ方も独特だし、投げ込まれた餌の魚をその触手でからめとり捕食している様子も面白い。
「烏賊の嘴は触手の付け根にあるのですが、まあ、解剖でもしない限り目にはつきませんな」
 グランドン教授はミアの質問には丁寧に答える。そもそもその他の生徒がグランドン教授に何かを質問することは、少なくとも今はない。
 グランドン教授がマーカスやジュリーに対して散々憂さ晴らしした結果だ。
 ついでにスティフィは特に質問することもなく、ただミアについて回っているだけなのでその被害をあまり受けてはいない。
 マーカスはそれでもここに展示されている生物の観察を今も熱心にしている。
 ジュリーにいたっては日焼けのこともあり既に心身ともにへとへとになっていて、今は近くの椅子にへたり込んでいる。一番の被害者なのかもしれない。
「あの周りのヒラヒラで泳いでいるんですか?」
 そんなことはお構いなしという感じで、ミアは水槽の中で泳ぎまわっている烏賊をはしゃぎながら見て、疑問に思うことを全てグランドン教授にぶつけている。
 グランドン教授は、ミアにだけは優しく丁寧に、その疑問に答えている。
 その様子は、ミアが歳の割に幼いこともあり、親子に見えなくもないほどだ。
「あれは舵の役目をしているだけで、あれ自体に大した推進力はないですな。烏賊は周りの水を吸い込みそれを放出して泳いでいる、らしいです。我は烏賊の専門家ではないですからな、そこまで詳しいわけではないですぞ」
 グランドン教授もミアには優しい。もちろん荷物持ち君の刻印が目当てなのだからだ。現状では、その調査をするにはミアに気に入られ、ミアから荷物持ち君に命令してもらうか、荷物持ち君から直接の了承を得るかの二つしかない。
 どちらの方が可能性が高いかと言えば、上位種よりはミアを相手にする方が可能性は高いと、グランドン教授は踏んでいるからだ。
 英知の結晶に少しでも触れれる可能性があるならば、グランドン教授もとことん甘くもなるというものだ。
「グランドン教授、水中の使い魔を作るなら烏賊型にしましょう!!」
 ミアはたいそう烏賊という生物が気に入ったようで興奮してそんなことまで口走り始めた。
 ミアも烏賊という不思議な生物を見て、変な感じに気分が上がりすぎているようだ。
「ハハッ、それは難しいですな。ただでさえ水は魔力の流出が大きいのに、それを吸い込んで放出するような移動方法の烏賊となると魔力をいくら貯えても難しいですな」
 それに加え使い魔の内部に水、しかも海水を入れるとなると、それだけで内部構造が故障する危険が伴う。とてもじゃないが、烏賊のような推進方法の使い魔など作れはしない。
「逆に海水から魔力の補充とかできないんですか?」
 魔力が水に溶けだすというのならば、その水には魔力は存在するはずだ。
 それに水が行きつく先の海であるならば、溜まっている魔力も多少多いのでは、とミアは考えた。
「海水と言えど、水に溶け込んでる魔力などたかが知れていますからなぁ。それは難しいでしょうな。基本的に魔力という物は高密度から低密度になるように広がっていくものですからな。上位種のような存在はまた別ですがね」
 あくまで基本的にはそうだが、上位種以外にもそう言ったものは存在する。
 地脈や天道と言った魔力が自然と集まり流れる、所謂「道」という物がが自然界には存在している。
 主にそう言った力を利用するのが自然魔術と呼ばれる魔術だ。その考えがあるからこそ、ミアも海水から魔力を取り入れる、と言った発想に至ったのだろう。
「じゃあ、海水に溶け込んでいる微力な魔力だけで動く様な低燃費の使い魔とか?」
 ミアがまた別の思い付きを、あまり良く考えずに述べる。
 ただ今ミアが口にした意見は、グランドン教授が思いつきもしなかったものなので、少しばかり驚かされる。
「それも考えました。まあ、海水からの魔力吸収は考えてはいませんでしたがね。我が考えたのは、魔力が流れ出しても平気なほど低燃費の使い魔のほうですな。それで蟹を基とした低燃費の使い魔を作っては見たものの、出力不足でろくに動けずですし、また、そう言った使い魔は力が足りないので軽く作らないといけないのでまず水に沈まないのですよ」
 蟹型は失敗だった。とグランドン教授は思い出しながらもミアに言われた言葉を思い返す。
 海水から魔力を得るのは難しいにしても、海水を取り込む前提で、ということは思いもつかなかった。
 どうしても海水は魔力を奪うものとして考えていたため、どう海水と魔力を隔てるか、そういう考えに固執していた。
「ふむ、しかし、我は魔力を逃さないようにと、使い魔の内部に水が入らない構造ばかりを考えていましたが、逆に内部に海水が入ることを前提とした構造にすれば重さのことは気にしなくてよいのですし…… ふむふむ…… いやしかし、流石に魔力の流出の方が…… 海水ともなると故障の原因も増えますし……」
 グランドン教授はブツブツ早口で言いだし、そのまま少し考えこみ始めた。
 その思考の邪魔をしてはいけないと、ミアはスティフィに話しかける。
「スティフィも見てください!! 烏賊が餌を食べてますよ!!」
 ミアの言葉通り今も餌として放り込まれた小魚を烏賊が触手でからみ取り食べている。その様子をミアがはしゃぎながら見ている。
「ああ、はいはい、ミアもマーカスを見習って少しは静かに観察したらどうなの?」
 確かにマーカスは静かだ。じっと烏賊の水槽に張り付き、真剣な表情で烏賊を、その動きを一つも見逃さないかのように観察している。
 先ほどまで散々グランドン教授の憂さ晴らしに付きわされていたが、ジュリーと違いまるで堪えてはいない。
 そんなジュリーも椅子から身を起こして、視線だけを烏賊の水槽に向ける。
「でも不思議ですね。陸にはこんな生物いないですよ。それになんだか、やっぱり綺麗ですね」
 ジュリーはそう言って、へたり込んでいた椅子から立ち上がり、小さな水槽に寄り、中の烏賊を見た。
 光に照らされた烏賊は白くも妙な光沢があり不思議と神秘的だ。
 スティフィも確かに変わった生物だとは思うが、それ以上の感想はない。
 観賞用ということなら、海月とか言うよくわからないただ浮くだけの生物の方が優れているようにも思える。
「まあ、綺麗は綺麗だけど、ここは魔力灯の光が当たっているからでしょう?」
 確かに水槽にはよく観察できるように、魔力で長時間の間発光する魔力灯が取り付けられ、青白い光を発している。
 そのせいで水槽内がより幻想的に見えていることも確かだ。
 その言葉に、考え込んでいたグランドン教授が反応する。
「今見ている種は違いますが、烏賊の仲間には自ら青白く光る種もいるとのことですぞ」
「自ら光る? そんな生物もいるのね」
 スティフィはその言葉で物珍しそうに烏賊をもう一度観察する。
 だが、輪状に揚げられたあの食べ物は烏賊の胴体の輪切りだったのか、という感想しか出てこなかった。
「スティフィ君も少しは生物に興味を持ちましたかな?」
「それは…… ないですね。私、デミアス教徒ですから」
 スティフィはそう言ってグランドン教授に笑顔を返した。
 その笑顔を冷ややかな顔でグランドン教授は受け止めた後、
「まあ、そうでしょうな。我もそちらの事情に首を突っ込むようなことはしませんよ」
 そう言って、再び水中用使い魔の思考を再開する。
 実際、この案内は、案内だったかはまた別として、グランドン教授の良い気晴らしになったことは確かなようだ。


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