学院の魔女の日常的非日常

只野誠

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日常と非日常の狭間の日々

日常と非日常の狭間の日々 その8

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「で、なんで教授のあなたが荷物持ちとしてついてきて来たんですか? 魔術学院の教授としての自覚はないのですか? もう助教授という立場ではないのですよ?」
 と怪訝そうな表情を浮かべ、グランドン教授はフーベルト教授に小言のように言ってきた。
 ただその視線は硝子製の大きな鉢に活けてある朽木様の苗木の方に向けられたままだ。
 その苗木にはわかりづらいが数本の髪の毛が付けられている。
 グランドン教授は今、朽木様の苗木と、不可解な力を示すミアの髪の毛との相性を確かめている実験の最中だった。
「あははは…… はぁ…… それはごもっともなんですが、僕の下にはまだ助教授はいませんし、これからミアさんは刻印の術式をつくるんですよね? なら、僕も役立てると……」
 フーベルト教授は興味深そうに実験を見つつも乾いた笑いを発し、その後で自分も力になれると発言した。
 それに対しグランドン教授は呆れた表情を示した。
 無理もない話だ。
 案の定マリユ教授に、ある意味吸いつくされたエリックは寝込んでいる。
 しばらく使いものにならないだろう。
 グランドン教授は前日ミアに対して、素材をかなりの量用意しておくから三人で来いと言っておいた。
 つまり、今フーベルト教授がここにいる理由は、エリックの代わりにとミアに頼まれて、荷物持ちでグランドン教授の研究室を訪ねて来たのだ。
 栄えある魔術学院の教授のすることではない。
「フーベルト教授…… 確かに今、ミア君は核に刻み込む刻印の術式を作ってはいますが…… それは我が制作した術式を写すだけです。 そこにフーベルト教授のご助力が、どこに必要となるのですか」
 グランドン教授、自らが作成した傑作ともいえる泥人形の汎用制御術式。
 もちろん使う素材が規格外の物ばかりなので、それ用に徹夜で修正したものだが、グランドン教授の自信作の術式には変わらない。
 使い魔の制御術式は、図面として透写紙に残して後日、しかるべき機関に提出しなければならない。
 ミアの場合の提出先は、ここシュトゥルムルン魔術学院になる。
 その術式の図面は使い魔の主、本人が直接書いた物でなければならない。
 なので、ミアは今、グランドン教授が作成した制御術式を製図室で清書しているはずだ。
 清書と言っても、透写紙でグランドン教授が書いた物を写すだけだ。そこにブーベルト教授の助けなどいらない、はずだ。
「グランドン教授の書いた術式はどの神の物ですか?」
 フーベルト教授がそう尋ねて来る。
 グランドン教授は何を言っているんだ、と思いつつも返答する。
 相手もなりたてとはいえ教授という立場にいるのだ。そう邪険にできるものでもない。
「とある蜘蛛神の物です。我が家では蛇神を崇拝するしきたりとなってますが、使い魔の術式は蜘蛛神の物がいいですからな」
「蜘蛛神ですが、これまた珍しい」
 フーベルト教授はそう言って少し考え込む。
 おおよその見当をつけているのだろう。こと神族の分野に関しては、非常に幅広い知識を有しているのだから。
 それに後からこの世界にやってきた虫種の姿をしている神となると、数多いる神でもその数もそう多くはない。
 フーベルト教授からすれば、すぐにでも検討が付くことだろう。
「まあ、我がこんなド田舎で教授をしている理由の一つでもあるのですが、それがなにか問題でも?」
 グランドン教授はもう神の検討はついているのだろうと、自虐し嫌味たらしくそう言った。
 が、フーベルト教授はその嫌味にも特に反応するわけでもなく、
「ああ、いえ、ならばやはり僕の力、いえ、知識が役に立つと思うんですよ」
 そうにこやかに言った。
 フーベルト教授のその言葉と表情を見て、グランドン教授は考えを改める。
「ふむ。つまり、あくまで荷物持ちとしてついてきたわけではないと?」
「まあ、僕も荷物持ちをお願いされたときは、どうしようかと思いましたがね。今日から術式を作るという話でしたので、理由はどうあれ同行させていただきました」
「いや、ですから、術式は我が作った物を清書するだけの……」
 と言いかけて、グランドン教授も気が付く。
 あの狂信者ともいえるようなミアが、他の神の術式を大人しく書き写すだろうかと。
「グランドン教授。あのミアさんがロロカカ神以外の神与文字を書くことを望むと思うのですか? すでに描かれている簡易陣を書き足して使うのとは訳が違います。一から陣の術式を、ミアさん自身が描くんですよ? しかも身近に置く使い魔の制御術式ですよ?」
 その言葉でグランドン教授もハッとは思うが、神与文字を他の神与文字に翻訳するなど普通はしない。少なくとも魔術学院の生徒にできる作業ではない。
 一種類の神与文字を覚えるのだけでも人間にとっては大変なことだ。
 神が与える文字、神与文字はそもそも神の言語なのだ。人間が理解しやすいようにはできていない。
 それを翻訳し他の神与文字に置き換えるなど、よほど狂信者でもなければしない事なのだが……
「まさかロロカカ神の神与文字に翻訳して書くとでも? いくらなんでもそんなバカなことをするとは……」
「相手はあのミアさんですよ?」
 と、フーベルト教授はにっこりと笑いながらそう言った。
 その笑顔は、若干疲れを伴っている苦笑のようにも思えた。
 教授の中で一番ミアと仲がいいのは、このフーベルト教授なのは間違いがない。
 ロロカカ神のことを語りたいミアと未知の神のことを知りたいフーベルト教授で、需要と供給が一致した結果だ。
 確かにそのフーベルト教授であるならば、ミアからロロカカ神の神与文字を習っていても不思議ではなく、またフーベルト教授であれば短時間で未知の神与文字を習得するのも可能だろう。
 それならば、役に立てるという話も嘘ではないどころか必須な人材である。
 また神が関与していることだ、ミアにそのまんまの術式で行くことを説得はできるが強制はできない。
 ロロカカ神の神与文字で術式を作るというミアの、神の巫女の強い意志があるならば、それを尊重してやらねばならないのが魔術学院本来の方針だし、無理に強制しては神の怒りを買いかねない行為でもある。
 ただ神与文字の翻訳もあるとなると、泥人形の作成という簡単な仕事が、大仕事どころか、一大事業にまで跳ね上がるようなものだ。
 さすがに使い魔の専門家であるグランドン教授も焦る話だ。
「ま、待ってください。今、朽木様の苗木とミア君の髪の毛の相性を調べているところなので、我はこの場から離れられません……」
 グランドン教授は焦っていた。
 まさか神与文字同士の翻訳など想像もしていなかった話だ。グランドン教授自体、神与文字には明るい方だが、それ故にその翻訳がいかに難しいか熟知している。
 両方の神与文字を単純に理解しているだけでは行えるものでもない。
 グランドン教授が額から冷や汗を流していると、
「相性、どうなんですか?」
 と、フーベルト教授が聞いてきた。
 そこで一応の冷静さを取り戻す。まだミアが翻訳するとは決まったわけではないし、もし仮に翻訳するようなことになっても、神与文字に知識のある魔術学院の教授二名がついているのだ、やってできないこともなくはない。
 それをしたいかどうかは、また別問題だが。
 改めて水を張った硝子の鉢に活けられている苗木を見る。朽木様の苗木にもかかわらず、普通の苗木のように大人しいものだ。
「正直、驚きを隠せませんね。ミア君の髪の毛は、一言で言うと異質です。神の巫女だからとか、そう言う次元の話ではありません。マリユ教授は呪物と同等って評価でしたが、まさにその通りです。フーベルト教授は何か聞いていないんですか? ロロカカ神は髪に関係する神なのでは?」
 そう問われたフーベルト教授は険しい表情を見せた。
「いいえ、僕も初耳ですね。髪に関する話はミアさんの口からは出てきたことはないですよ。あの教授がそう言うのであれば、相当の物なんでしょうね…… しかし、髪に関わるとなると、祟り神の可能性がまた少しあがる話ですね」
 フーベルト教授が難しい顔をしてそう言うった。そしてグランドン教授も心の中で同意した。
 今、分かっているロロカカ神の情報で当てはまる神の区分は、と言われたら祟り神と答えるのが当たり前の話だ。
「で、まあ、その話は置いておいてですね。肝心の相性ですが、朽木様の苗木の方が合わせてくれている感じ、としか言えません」
 朽木様もある意味では、人から見れば祟り神とそう変わらない上位存在だ。
 なのに、苗木とはいえ恐ろしく大人しい。まるで苗木自身がミアの使い魔になることを望んでいるようにすら思えるほどだ。
「朽木様の苗木が、ですか?」
 とフーベルト教授が少し驚いたように聞き返してきた。当然の反応だ。
「ミア君の話で『よく言い聞かせておく』という話があったじゃないですか、破壊神により朽木様の苗木に何らかの命が下ったのではないかと、そうしか思えませんな」
 そして恐らくそれは事実なのだろうと、フーベルト教授も思う。
 そうでなければ苗木とはいえ、朽木様の一部がここまで大人しいどころか協力的なわけがない。
 本来なら、すぐにでも朽木様へお返しに行くか、どこか良い土地に植えて祀らなければならないような代物なのだ。
「では、相性の方は?」
「問題なしですな。元々それほど悪いというわけでもなさそうですし、朽木様の苗木の方が合わせてくているのであれば、なおのことです。まあ、さすがに答えを出すのは性急すぎますので、もう少し様子を見なければなりませんが」
 使い魔を構成する素材同士の相性はとても大事だ。
 特に核と体の大部分を構成する粘土との相性は重要だ。
 朽木様は楠であるため、本来なら粘土とあまり相性は良くない。
 ただ朽木様の苗木の生命力はその程度のことなど物ともしないだろう。
 言ってしまえば、朽木様の苗木であれば、砂漠であろうと、毒沼であろうと、海中であろうと、どこでも力強く育ってくれるはずだ。
 それだけの生命力と魔力を秘めている。
 更にグランドン教授はそれに胡坐をかくことはせずに、泥人形の体内に苗木が根を下ろしやすい別の土壌を作ることで、素材同士の相性を補強するようにと考えている。
 核の状態は使い魔の状態や能力に直結する。
 なので、核である苗木の状態が良い方がいいのは当たり前であり、特に核とその他の素材との相性を見極めることは慎重にやらねばならない。
 泥人形の作成には成功したが、核である苗木がすぐに枯れました、では本末転倒だ。
「では先に僕がミアさんを見ておきます。製図室のほうですか?」
「はい。お願いいたします。素材の方は我の方で助教授達にでも…… そう言えば女子寮でしたな。運搬用の使い魔達は皆、サンドラ教授に貸し出してしまいましたし、なによりこの実験中に使い魔の起動は危険を伴いますねぇ。しかし、女性となると……」
 どういう訳か使魔魔術を学ぶものは男性が多い。
 女性は使魔魔術より精霊魔術を選びがちなのだ。
 どちらか一つに絞るようなこともないのだが、使魔魔術を学ぶ女性は少ない。
 グランドン教授の配下の助教授たちも、やはり皆男性ばかりだ。
 また女子寮には男性の立ち入りは禁止されている。風紀の乱れがどうのという話よりは、魔術的なことや神関連の話からの理由でだ。
 女子寮の前まで素材を運ぶことはできるが、高価な素材や貴重な素材ばかりだ。
 魔女科専用寮などと言われている寮の前にそんな貴重な素材を置きっぱなしにすればどうなるか、わかったものではない。
「事務のミネリアさん辺りに頼むしかないですね……」
 と、その事情を知っているフーベルト教授も少し困り顔でそう答えた。
「ミア君係のミネリアさんですか」
 グランドン教授が風のうわさで聞いた話を言うと、
「そんなこと言うと怒りますよ? 彼女」
 と、フーベルト教授が真顔で忠告してくれた。
 事務員達を怒らすと何かと面倒ではある。なにせ講義以外の仕事のほとんどは事務員たちを通してするのだから。
 立場は断然、教授の方が上なのは確かだが、だからと言って事務員達に嫌われるようなことは誰であれしたくはない。
「ふむ、ご忠告痛み入ります。ではミア君のほう、よろしくお願いいたします。我も行けるようになったら製図室へ向かいますゆえ」
「ええ、お願いします」

 フーベルト教授が製図室へ向かうと、製図台の前で神与文字辞典と睨めっこをしているミアと、それをつまらなそうに眺めているスティフィの姿があった。
 その様子を見てフーベルトは来てよかったと、予想通りだと確信した。
「調子はどうですか?」
 と、フーベルト教授が聞くと、
「あ、フーベルト教授。この神与文字の解読が難しくて…… そもそもどの神の文字なのかもわからなくて困っていたところです」
 と、辞典から目を離して困り顔のミアがフーベルト教授の方を見て答えた。
 恐らくどの神の神与文字かを突き止めようとしているのだろう。
 本人は解読と言っている。意味を理解しようとしているということは、やはりロロカカ神の神与文字に翻訳するつもりなのだろう。
「基本、神与文字の翻訳などしないというか、場合によっては不可能なこともありますからね。元の図面、グランドン教授が書いたもの、ちょっと見せて頂いても?」
 神与文字の完全な翻訳は、基本的には人間には不可能とされる。
 なぜなら神与文字は一文字に複数の意味がある。
 場合にもよるが一文字に数千もの意味が込められている文字すらある。
 それを違う神与文字に当てはめていかねばならないのだ。場合によっては内包されている意味が、翻訳される側の神与文字にない場合もある。そうなってしまうと正確な翻訳自体が不可能になって来る。
 例えそう言うことがなかったとしても、常人では一文字翻訳するだけでも大変な作業となって来る作業だ。
 神与文字は神が与えてくれた文字ではあるが、人が自由に扱える文字ではない。
「隣の製図台に張ってあります」
 ミアにそう言われてフーベルト教授は張られている術式が書かれた紙を見る。
 陣としては三つに分けられて描かれていて、それはミミズが這ったような文字が書かれている。
 文字が汚いのではない、それは正確に文字の形が描かれているものだ、グランドン教授の知識の深さと精密さがうかがえしれるものだ。
 この神の神与文字は元々こういう形をしていて難解読の文字ではある。ミアが文字の特定できないのも仕方がないものではある。
 けれど、フーベルト教授は一安心できた。
 この神与文字は自分の知るところ文字の一つである。
「これですか。蜘蛛神…… アザナント神の物ですね」
 あまりいい神ではない。
 完全な悪神というわけではないが、それに近い神ではある。
 ただこの神の神与文字を使ったからと言って中央から追い出されるようなことはない。
 となると、グランドン教授ほどの使い魔の専門家が、こんな地方にいるのはまた別の理由であることもフーベルト教授には推測がついた。
 それにフーベルト自身も色々とあってこの地にいる。似たようなものではある。
 魔術師学院に勤める人間など、皆一つや二つ何かしらの理由や秘密はあるものだ。
「アザナント神?」
 ミアが聞いたこともない、という表情を見せるが、ミアはロロカカ神以外そもそも知らなかったような人間だ。
 知らなかったと言うと語弊がある。興味がなく他の神など気にも留めなかった、というのが正しい。
 今もそうではある事には変わりないのだが、まったく興味がない、というわけではなくなっている。
「完全に悪神というわけではないですが、あまり良き神とは言えません。ただ使い魔の術式を作るというのであれば、非常に適合した術式を作れる神与文字を教えてくれる神ではあります」
「そうなんですね…… フーベルト教授ならこの文字も読めるんですか?」
 ミアは感心したように目を輝かせてフーベルト教授を見上げた。
 いや、感心した、と言うよりは希望を込めた、かもしれない。
「概、ですけどもね。ミアさんはこの神与文字をロロカカ神の神与文字に翻訳したいのですよね?」
 そして、フーベルト教授はその希望をある程度叶える知識を有しているし、そのためにここに来たのだ。
「はい、そうなんですけど、私にはどうにも難しくて困ってました。正直、どこからどこまでが一文字なのかも区別がつきません……」
「この神与文字は、筆記体のように続けて書く文字ですからね。少々難しいのはあります。まあ、それ以前に神与文字同士の翻訳なんて普通はしませんからね。一応、念のため、聞いておきますが、このままのこの神与文字で清書するつもりは……?」
「ないです」
 と、きっぱり即答で答えた。
 その後ろでスティフィが困ったように首を横に振った。
 一応は、スティフィも一度はミアを説得してくれていたようだ。
「はぁ、まあ、予想してた通りですが、かなりの難題ですよ?」
「そうなんですか? でも、頂いた陣ならまだしも、私が一から作るんですからロロカカ様に頂いた文字を使わないわけには……」
 と、申し訳なさそうではあるが、強い意志と決意を持ってミアは言っている。
 誰も手伝わなくても一人でどうにかやるつもりでいるのだろう。
 だが、それは学び始めたばかりの生徒がやり遂げられるようなことではない。
「ですから、僕がここに態々ついてきたんですよ」
 とフーベルト教授がそう答えると、
「え? 荷物持ちで着いてきてくれたんじゃないの?」
 スティフィが驚いたように答えた。
 どうも本気で荷物持ちでついてきたと思われているようだ。
「スティフィさん、こう見えて僕も教授という立場にいるんですよ。流石に荷物持ちでついてきたわけじゃないんですよ?」
 フーベルト教授がそう言うと、ミアがハッと気づいたような表情を見せた。
「す、すいません。エリックさんが寝込んでしまったらしくて…… ほかに頼れる人が……」
 ミアにとってこの学院で理由なく頼れる人間は、そこにいるスティフィ、そして何かと相談に乗っているフーベルト教授くらいのものだ。
 後は何か理由でもない限り、ミアの方から助けを求めれるような人間は、まだこの魔術学院にはいない。
「まあ、頼ってくれたのは正直嬉しかったですけどね。一応僕にも立場というものがありまして、ね?」
 フーベルト教授が得意顔でそう言うと、
「じゃあ教授様は何しについてきてくれたわけ?」
 スティフィが不思議そうなっ顔でそう聞いてくる。
「僕ならアザナント神の神与文字も、ロロカカ神の神与文字も、すべてではないですがある程度理解できます。つまり翻訳可能ということです。ただ、まあ、できるとも言えませんけどね」
 正直にそう答える。
 神与文字同士の翻訳などするものではない。
 術式であるのであれば、その神与文字で最初から作り直した方が早いまである。
 ただ今回はフーベルト教授もミアも使魔魔術にそれほど明るくなく、グランドン教授はロロカカ神の神与文字の知識がまったくない。
 そうなってくると、この術式を翻訳しなくてはならない。
「うえ、神与文字って丸暗記して使うものじゃないの……」
 スティフィが驚いたように反応した。
 普通の学生、魔術師ならそうだ。
 神与文字の理解なんて普通は理解できるものではない。
 なにせ神が与えてくれた文字なのだ。
 人が理解できるような作りではない。
 しかも、神の数だけ種類が存在する文字なのだ。
 まさしく人知を超えた代物であるし、魔術を扱うだけであるならば、その術式の形を丸暗記や模写するだけでいい。
 新しい術を開発したり、魔術学院の教授や学術会員でも目指さない限り神与文字の意味を理解しようとする人間は少ない。
 しかも複数の神与文字ともなれば、なおさらのことだ。
「これでも一応は教授ですからね」
「さすが、オタ……」
 スティフィはそう言いかけて口を噤んだ。
 さすがに一介の生徒が教授に言っていい言葉ではない。
「その呼び名は知っていますが、僕はただ知恵の神の信奉者なんです。知識を得ることに喜びを得ているだけなんですよ」
 フーベルト教授がそう反論すると、
「それって、どっちかというと博識の神の話なんじゃないの?」
 と、スティフィから返ってきた。
 失言だとはわかっていても、反省する気はないらしい。
 ただスティフィもやることがなくて暇なのだろう。彼女はダーウィック教授の命でミアの近くに居なければならないのだが、今はやれることがない。
 邪魔はもちろんしないだろうが、彼女が手伝える事もない。できる事と言えば、荷物運びくらいだろう。
 ミネリアが来たら、そちらを手伝って貰うか、とフーベルト教授は口には出さないがそう決めた。
 グランドン教授が用意していた素材はかなりの量なのだから。
 第二女子寮の部屋の大きさがどれくらいかまでは知らないが、ミアの部屋に収まりきるのかも怪しい。
「まあ、知恵の神と博識の神は兄妹神ですからね。似たところはあります。両方の神で知識欲は善行と位置付けられてますしね。そんなことよりも、グランドン教授も後から合流してくれるそうです」
 そう言って頷いた後、フーベルト教授はグランドン教授の書いた図面をを見る。
 一目見て、これは数日徹夜になる作業だ、ということを確信する。
 それと先ほど、グランドン教授が言っていたことをミアに伝えてやる。
「ああ、それと、まだ確定ではないですが、苗木と髪の毛の相性は問題なさそうですよ。さて、こちらは簡単な部分から翻訳していきましょうか、まずは透写紙ではなく、普通の紙で仮置きしながらいきましょうか」
「はい!」
 と、ミアが決意に満ちた表情とつい良い意志で返事をした。

「はぁ、さすがに辛いですねぇ、もう三日、いえ、我はもう四日目ですねぇ、まともに寝ていません……」
 虚空を見つめながらグランドン教授が呟いた。
「グランドン教授、この文字の意味は……?」
 と、そのつぶやきが聞こえなかったかのように、下書きをしつつミアが聞いてきた。
 実際に聞こえてない可能性も否定はできない。ミアも体力的にも精神的にも今はボロボロなのだから。
 ミアも目に下にクマができているし、その目も虚ろだ。ただやる気だけは満ち溢れているというか、その気力だけで動いているという感じだ。
 確かに神与文字に対するミアの理解力は高い。
 高いのだが、それだけで神与文字を理解できるのであれば苦労などしないし、魔術学院の教授二人がかりで丸三日費やしても半分も終わっていないのが現状である。
 グランドン教授はミアが指さした場所を覗き込んで確認する。
「それは…… 心臓、流れる、夜空と星、満ちる、または満ちた力…… いえ、口で伝えるには意味が多すぎます、辞書を引いて確かめてください」
「辞書ですね…… 辞書、辞書…… 何巻くらいかわかりますか?」
 そう言われたミアは図書館から持ち出してきた辞書を見渡す。ゆうに百冊は越える分厚い本が辺りには散らかっておかれている。
「第七十八、いえ、七十九だったか…… 恐らく七十九のほうだったかと。まあ、そのどちらかです」
 その言葉を聞いたスティフィが無言で目当ての辞書を探し出してきてくれてミアに手渡した。
 スティフィは二日目あたりから言葉を発していない。ただただ死んだような目で手伝いだけしてくれている。
 さすがにミアも気の毒に思って休んでとは言っているのだが聞き入れられていない。
 彼女もまた己の欲望と使命で動く人間だ。
「そこはウースの字ですよね? なら、ロロカカ神の文字で、リャとムンの文字で代用…… それだと満ちるの意味が足りなく、あと地の要素がいくつか多いですね……」
 ミアが辞書を開くよりも早くフーベルト教授がそう答える。
 スティフィが死んだ目で一瞬だけ睨むが、そのまま無言で床に座り込んだ。もう何度も見た光景だ。
 グランドン教授が立ち上がり自分の書いた陣を確かめる。
「ええっとまってください、ウースを使っているのは、ここですから…… この神与文字は他の文字と連なることでまた別の意味を、単語のように持ったりするのですよ。えーと、でもここは違いますね。単独の文字の意味で大丈夫です。それと、ここでは満ちるの意味はなくても平気です、地の要素とはどのようなものですかな?」
 立ち上がったはいいがふらふらしながらグランドン教授は聞き返す。
 神与文字は普段使っている共通言語の文字とは、文字一つに込められている意味が比べ物にならないほど多い。
 頭を使う作業どころか、酷使してやっとできる作業を延々とやっているのだ。
 この三人の精神力が尋常ではない。
 ミアは言われた意味が合っているかを確定するため、念のため該当の文字の場所の辞書の頁を開いて確認する。
 ロロカカ神の神与文字の辞書はないが、それはミアの頭の中にしっかりと刻み込まれているので、それと照らし合わせるしかない。
「えっと、リャのほうが土や砂、腐食した植物、死、還元、育てる、くらいですかね、後はムンの方で、月の石、硝子、乾燥した砂、石、鉄、力、反射です。地以外にも少し余計な要素が多いですね」
 フーベルト教授がすらすらと答える。
 それをミアが頭の中の記憶とすり合わせて、正しかったので無言でうなずいた。
「月の石ですか、また珍しい意味を持っていますね。ですが、それでも問題ないでしょう。そこには直接的な火の系統の要素が入り込まなければ、とりあえず問題ないはずです。記入して大丈夫です」
 そう言われて初めてミアは下書きの陣に、ロロカカ様の神与文字を二文字程丁寧に書き込む。
「ではここは、リャとムンで…… っと。書き終わりました」
 文字を書き込む様子をボーとみていたグランドン教授は不意に気になったのか、
「ところで粘土の方は異常はないですか? 色々調合したのと、規格外であるあなたが練っているのであれば、何か異常があっても我はもう驚きませんぞ」
 と聞いてきた。
 ミアもろくに寝ていないどころか、一日のほとんどをここで一緒に過ごしている。
 だが、その他の素材のことも決して忘れてはいけない。
「はい、少し硬くなって量も増えたので捏ねるのが大変にはなりましたが、良い気晴らしにはなっています。昨日もちゃんと捏ね回してます」
 ミアは死んだような目を向けながら答える。
 死んだような目をしてはいるが、嘘をついている人間の目ではない。
 そもそもこの狂信者ともいえる少女が、自らの神の神与文字を使って作る使い魔のことだ、手を抜くわけがない。
「神与文字の翻訳をしつつ大量の粘土を捏ね続ける重労働もこなすとは、驚くほどやる気と体力に満ち溢れていますねぇ。ロクに寝ている時間もないでしょうに」
 グランドン教授が思っていることをそのまま口に出す。
 魔術学院の教授とはいえ、思考力と判断力が鈍ってきているようだ。
「はい、昨日は気が付いたら粘土を枕にしていました。少し涎が混じってしまいました」
 それはミアも同じのようで、そう言いつつケタケタと笑い出した。
 何が面白いのかわからないが、グランドン教授もなんだか楽しくなってきて半笑いの表情を浮かべる。
「そう言う事もいい経験となります。で、翻訳の方は全体でどれくらいですか?」
「大体三分の一くらいです」
 ミアがフラフラと自分が書いている図面をみながら答えた。
 それを聞いてフーベルト教授が辞書に目を通しながら、
「それだとやっぱり今週中には無理ですね、来週からは講義も再開されますし、他の教授にも応援を要請しますか?」
 と、提案する。
 けれど、グランドン教授は難しい表情を浮かべる。
「神与文字の翻訳で力になれるって言ったら、学院長かウォールド老、それとダーウィック教授くらいのものですよ? それらの人と作業をしたいのですか?」
「いや、それは…… ああ、そうだ、神与文字ならサンドラ教授とかは?」
 フーベルト教授も嫌な表情を隠さずに浮かべた。
 ウォールド老はともかく他の二人は圧が強すぎる。
 緊張で長時間の作業など精神が持たないだろう。
 そこで思い浮かんだのが、サンドラ教授だ。小うるさい方だがその知識は本物だ。
「あの教授は今は別件で都の方の商会に出向いているそうですよ」
「そういえば、そうでした」
 そう言われて、そう言う通達が来ていたことを思い出す。
 フーベルト教授自身そろそろ限界が近いと思い始めた。辞書から目を離し、鼻根を強めに掴んで目をグッと閉じた。
「フーベルト教授、少し休んだ方がいいのでは?」
 それを見てか、グランドン教授が声をかけてくる。
「グランドン教授も目のクマが凄いですよ」
「これは元からです…… が、まあ、少々休みたくはありますなぁ。まさか本当に神与文字の翻訳をやる羽目になるとは…… とんだ目論見外れですよ。はぁ、泥人形の作成だけならと思って我は受けたわけで、翻訳までやるとは考えていなかったんですぞ。今頃ならもう刻印はとっくに終わり、本体の作成段階までいっていたはずです」
 そう言って深いため息をついた。
 そのため息にはまるで疲労が凝縮されてあふれ出てきているように思える。
「僕は…… なんとなくこうなる気はしてました…… 泥人形作成の話が出たときから」
 そう言ってフーベルト教授は笑うが右頬が痙攣したように引くついている。
「す、すいません。私が無理言ってしまったばっかりに……」
 と、ミアが頭を下げた。下げたというよりは、頭を落とした、と見間違えるような感じではあったが。
 それにたいして、普段のグランドン教授であれば、絶対に言わないような返事を返す。
「いえ、ミア君、あなたが神の巫女ならば考慮すべき事態の一つでした。我はあまり家の神を信仰していない故、失念していただけです。気にしないでください」
 グランドン教授はそう言った後、満面の笑みを浮かべた。
 なぜ笑みを浮かべたのか、それはこの場にいる全員が、グランドン教授自身もわからなかったし、そのことを気にしている人間もいない。
 恐らくはただ単に寝てないだけではあるが。
「確か…… 竜頭の蛇神でしたよね?」
 フーベルト教授もふらつきながら思い出したように尋ねた。
 竜の姿を取る神。これもまた珍しい神だ。その昔、襲ってきた竜を返り討ちにし取り込んでその姿になったのか、神すらも殺せる竜の力にあやかってその姿になったのか。
 それはわからないが、虫の姿をした神同様、この世界に後から来た竜の姿をしている神は少ない。
「ええ、我がランド家で代々信仰している蛇神です。ですが、我が家の蛇神様は使魔魔術に向かないこともないのですが、痒いところには手が届かないのです。なので、我は蜘蛛神の力を求めました。その結果、家から勘当されこのような僻地に流れ着いたのです。まあ、ここは我のような半端ものには居心地がいいですからな。後悔はしていませんぞ」
 グランドン教授はそう言った後、盛大に笑い始めた。
 やはり笑い始めた理由は誰にもわからなかった。
「なるほど、そう言うことだったのですね。僕の場合は神と出会う度に質問攻めをしていたら、いつのまにかに居場所がなくなってしまいました。かつての恩師であるカール教授を頼ってここに来た次第です」
 フーベルト教授はそう言った後、後悔しているように俯いた。
 もう少し昔の自分が節度を持っていればと、後悔の念しかない。
 とはいえ、フーベルト教授が中央や主要都市に残っていても一生教授の役職にはなれなかったことだろう。
 僻地であるこの魔術学院だからこそ、教授という立場になれたようなものだ。
「ん? カール教授は精霊魔術の専攻ですよねぇ?」
 グランドン教授はそう言って首を捻る。
 フーベルト教授とカール教授では学んでいる分野がまるで違う。
「ええ、ただ単に僕が学生の時の恩師ってだけですね。学ぶ道は全く違います。でも、まあ、今でも色々お世話になった恩師でありますし、学ぶべきことの多い人なのは変わらないですよ」
 フーベルト教授は顔を上げて、後ろ頭を照れ隠しのようにかいた。
「なるほど。しかしカール教授も中央の権力争いで負けてこの地に来たと聞きますぞ」
「みたいですね。昔よりだいぶ丸くなっていましたね。でもカール教授ならここよりももっといい魔術学院もあったと思いますよ」
「いやいや、この魔術学院は中々の曲者ぞろいです。いえ、まあ、確かにどこの魔術学院も訳ありの曲者ぞろいなところは変わりないですがね」
 そう言って、グランドン教授は口角をあげ、きめ顔で笑顔を見せた。
 やはりなせ笑顔なのかは、本人もよくわかっていない。
「ねえ、教授様達。なに呑気に世間話しているんですか? それに、知恵の神は光勢力で、グランドン教授の家の蛇神は闇勢力の神ですよね? 何楽しそうに雑談しているんですか?」
 と、床に座り込んでいたスティフィが突然立ち上がり喋り始めた。
 その顔は怒っているようには見えない。ただただ寝ぼけているように見える。
「スティフィ君。その通りですが、我はそれほど蛇神を信仰してはいないのですよ。してなくもありませんが。我は使魔魔術を極めることができればそれでいいのですよ。それが我の道、いえ、あなたには欲望と言った方が良いですかね?」
 そう言われたスティフィは、欲望に忠実なるデミアス教の信徒である。納得せせざる得ない。
 さらにフーベルト教授付け加える。
「それにですね、知恵の神は、一応光勢力と言われていますが、元々は中立側で今もほぼ中立の神ですよ。光の英雄に知恵を授けたことで、光勢力に入れられがちなのは事実ですが、正直微妙なところなのですよね……」
 そう言ってフーベルト教授は迷惑そうな顔を露わにした。
 確かにフーベルト教授のように全ての神が研究対象であるのならば、光の勢力や闇の勢力に属さず中立でいたほうが何かと研究しやすいのだろう。
 なので、フーベルト教授は知恵の神が光の勢力陣営に組み込まれていることに少々不満がある。
 それに、知恵の神も博識の神も、神々が争った大戦そのものには直接かかわっていない。
 光の英雄と呼ばれる人間に、その知恵と知識を少し貸し与えたと言われている。
 それ以降、知恵の神と博識の神の兄妹は光の勢力という事になってしまっている。
 そんな話を聞いていたミアが、急に製図台の椅子から立ち上がった。
「あの、すいません。ロロカカ様はどちらの陣営かわかりませんか?」
 そして、ふらふらしながら明後日の方向にそう質問をしていた。
 それに対して、スティフィがここぞとばかりに即答した。その表情はもう寝ぼけていない。
「闇よ。ミア、きっと闇の勢力よ!!」
「んー、その可能性もなくはなさそうですが、正直ロロカカ神は得体がしれないので、何とも言えないですね」
 フーベルト教授は難しい表情をしながらそう答えた。
 だが、その顔はまるで否定しているようにも取れるような表情だ。
「我は中立神というか、神々の大戦そのものに関わっていない神だと思いますぞ。大戦に関わっていれば、少なくとも名は知れているはずですからな」
「そうですね。中立というか、関りがなかった、と考えるのが妥当…… ですが、決めつけることは危険なんですよね。特にロロカカ神はあまり既存の情報に当てはまらないことが多いようですし…… あ、あった、同じ意味の文字をやっと見つけれました!!」
 そう言って辞書を抱え込んでいるフーベルト教授が、嬉しさのあまりか立ち上がった。
「おお、やっと見つかりましたか!! どこの文字ですか?」
 と、グランドン教授も寄ってくる。
「はい、右上の方の、一番空いている部分、そこです、ファルムの文字です。そこはロー、テイ、ムスで代用できるはずです」
 フーベルト教授は大きな声を発し、図面に指をさしながら大げさに叫んだ。
 が、ミアはフーベルト教授が言った言葉を反芻して、首をかげる。
「ムスですか? ムスは死とか病の意味もありますけども平気ですか?」
 ミアがそう言うと、フーベルト教授の動きがぴたりと止まった。
 数瞬の間があった後、
「あれ…… す、すいません、少しボケてました。今のはなしでお願いします」
 フーベルト教授が力なく項垂れた。
 それを見たグランドン教授も自分に限界が近いことが分かっているし、何よりこれ以上無理に作業を続ければ致命的な間違いをしかねないと判断した。
「やはり少し休憩を入れましょう、我々も限界です」
「そうですか、なら私は粘土を捏ねに一旦寮に戻りますね」
 ミアはふらつきながらそう言った。
 無意識だろうか、手で粘土を捏ねるしぐさをしている。
「ミア、あんた凄いわね。あんたもろくに寝てないでしょうに」
 とそんなミアを見て、スティフィが心底関心する。
 スティフィにとっては話を聞いているだけでも、頭痛がし始めるような作業をこの三日間し続けているのだ。
「寝ながら粘土を練る方法を編み出しました。うつらうつらしながらそれを使って捏ねるんです!」
 と、ミアはスティフィに返事をするが、ミアが向いている方向にスティフィはいない。
「いえ、今日は皆、寝台で寝るとしましょう。これ以上無理しても失敗するだけです。我も思考力ががた落ちで使い魔達を起動できていませんし。それにどう頑張っても今週中に完成させることは不可能でしょう。他の教授にご助力いただいても、それは無理ですね。来週から講義が再開されることですし、これはもう長期戦を覚悟しなければなりませんなぁ」
「ですね、僕もそろそろ講義の準備をしなければなりませんし」
 そう言って項垂れていたフーベルト教授も再度立ち上がった。
 そして意味もなくその場にいた全員が笑い始め、その日は解散した。
 自室に戻ったミアは久しぶりに寝台で、それこそ泥のように眠った。


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