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お持ち帰りされる俺
しおりを挟むクロークの手際良すぎ。
タクシー走りすぎ。
道空きすぎ。
我に返る隙は一瞬も与えられず、俺は加賀美の自宅に連れて行かれた。
到着したのは、想像通りのタワマン高層階。ロビーの自動ドアも、エレベーターも、キーレス、タッチレスの自動開閉タイプだから、ずっと加賀美に腰を抱かれたままで、隙あらば濃厚なキスをされる。玄関ドアを開けるときに初めて片手が離れ、ちょっと寂しいと思うほどトロトロにされていた。
バスルームの前で服を脱がされ、シミだらけになったグレーのボクサーパンツを見られた。恥ずかしいのに嬉しいってどうかしてる。
「これ、出すなよ」
立ち上がる欲望を根本から先端に向かって撫でられる。
「んぁ……」
たったそれだけで、さらにシミが濃くなる。
差し出された手に、自分で脱いだ下着を乗せた。
「ベッドで待ってる」
加賀美は下着を鼻に押し当てると、大きく息を吸った。氷の貴公子とは思えない卑猥さに体が熱くなる。
バスルーム内は加賀美らしく、職場のデスクのように必要最低限のものしかないが、そこにローションの大ボトルがあることに気がついた。アラサーらしからぬ性欲の強さを予感する。
酔った加賀美が次々に見せる意外な一面に俺は夢中になっていた。もっともっと、あの冷たい美貌が欲に歪むのが見たい。
その一心で慣れない内部の洗浄をした。
トイレでのキスは快感に酔わされ、加賀美がどんな顔をしていたのか思い出せない。代わりに、荒い呼吸が頬をなでる感触や、舌を吸う水音、フレグランスの中に感じた加賀美自身の匂いが蘇る。そして自分の中で欲望が沸き立った。
「あぁ……!」
身震いと共に腹の中に入れた湯がこぼれていく。
「なんだ、イったのか?」
とがめるような声にハッとする。ガラスドアの向こうに透けるシルエットは肌色で、腰にタオルを巻くだけだった。
「ち、ちがう」
「遅いから迎えにきた」
ドアの隙間から、白いバスタオルが差し出された。
「ありがとう、ございます」
すっぽりと全身を包める大きさにホッとする。体を拭き、肩からタオルをかけると前でかき合わせた。
急に恥ずかしくなり、とてもじゃないが顔を合わせられない。うつむいたままバスルームを出る。
「お待たせしました」
加賀美から距離を取ろうとしたが、うまくいくわけもなく、簡単に後ろから抱き寄せられる。
「髪切ったんだな。似合ってる」
洗面台の鏡の前で前髪をかき上げられた。
濡れ髪は後ろに流れたまま返ってこない。俺の潤んだ目があらわになった。
加賀美も別室でシャワーを浴びたらしく、いつもは後ろに流してある髪が垂らされている。鋭い目元が前髪に隠れて、物足りない。ちらちらと隙間から顔を出すのをつい目で追ってしまう。
鏡越しに目が合う。髪に口付けられると、ゆっくりと快感が広がり、勝手に背中が反っていく。加賀美は俺が逃げようとしてると勘違いしたのか、洗面台に押し付けるように体重をかけてくる。尻の割れ目に硬く勃ち上がった欲望が当たり、期待するように窄まりが動くのを感じた。
耳に唇を押し当てられる。
「抱いて良いか?」
軟骨を食むように話され腰がしびれた。もう目も開けていられない。無言で何度も頷くが、加賀美は許してくれない。
「抱いて良いか?」
「……抱いて、ください」
その一言に加賀美のタガが外れたのがわかった。
冷たい男が情欲に燃える。
追い立てるように俺をベッドルームに連れて行くと、乱暴にベッドへ押し倒した。抵抗する間もなくタオルを剥ぎ取られ、こうこうと明かりに照らされるシーツの上で裸体を検分される。加賀美もタオルを取り、全てをあらわにするが、俺は見ていられない。
「あ、いやだ……もう見ないで」
「パーティでは注目を集めて、得意になっていたくせに」
伏せようとした顔を正面に向かされる。飛び込んでくる美貌は意地悪く笑っていた。
細身だと思っていた体には見事な筋肉がつき、骨が太いだけで無精の俺など簡単に組み伏せる。
「さて、まずはお前を知りたい」
舌なめずりすると加賀美は俺に触れた。指先で突き、てのひらで撫でる。体を硬くしていると、唇を押し当てられた。両手と唇と舌を駆使して探られる。いや、足先まで肌をくすぐってくる。ゆっくりと溶かされて、やがて体は震え、耳を覆いたくなるほど甘い声が漏れる。
「あ……、うぁっ、やっ……!」
「嫌か? やめるか?」
違うとわかっているはずなのに、加賀美はやめるか?と繰り返し問う。もちろん首を横に振るくらいでは許してもらえない。
「きもち、いいっ……、良すぎて、こわい……」
一度言葉にしたら、自分が底知れぬ快感の中にいると自覚した。そうやって何を感じているか口にするのが当たり前だと教えこまれ、恥ずかしいなんて感情はどんどん薄れていく。
官能の海にのまれ、加賀美のなすがままだ。
それでもうつぶせにされ、後孔に指が差し込まれた瞬間は、拒否するように体が強張った。純粋な恐怖のせいだ。
もう、元には戻れないと予感した。
すぐにそれは確信に変わる。
柔らかな肉を犯す加賀美の指先は、残酷なほど優しい。たっぷりとローションをまとい、俺の呼吸に合わせて出入りする。一度だって痛みを感じることなく、体を作り変えられていく。その甘美さに抗うことなんかできない。
「お前、ネコちゃんが好きって言ってたけど、本当に抱いてたのかよ?」
「んあ、あっ……」
加賀美が煽っても、にらむことすらできない。いくつも枕を抱え込み、尻をくねらせ、俺は鳴く。
「あっ、あっ、もう、だしたい……、イキたいぃ、おねがい」
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