事故から始まる物語

maruta

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閑話 先輩の話2 <飛鳥目線>

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 ----閑話 先輩の話1の飛鳥目線の状況説明 飛ばしOK----

 私は照を呼び出して告白をした。照とは高校に入って同じクラスだったのでクラスでの自己紹介の時に知った。九州出身で高校からこっちに来たらしい照は寡黙で最初は近寄り難い感じだったけど日が経つに連れてクラスに馴染み方言や訛りが独特でクラスの中心人物になっていた。
 そんな照は、周りに気を配って優しいのに部活でバスケをしている姿はかっこいいなと思い目で追うようになって、高校では部活に入る気はなかったけど照ともっと近付きたいと思い女子バスケ部のマネージャーを始めた。
 その結果もあって登下校やクラスでよく喋るようになり、照を好きだという気持ちが大きくなっていた。1ヶ月と少し経って私は照への気持ちが抑えれなくなったので照に告白しようと部活がない日の放課後、特別教室に呼び出した。
 照は恋愛に興味なさそうだったので振られる覚悟で告白したら、案の定振られてしまった。諦める事は出来ないので、チャンスはあるのか聞いてみたら照は恋愛感情を持っていない人?らしく恋愛は出来ないと言われた。
 好きになってもらえれば何とかなるかとも思ったがそもそも好きになるという感情を持っていない場合はどうすればいいのか分からず本人に聞いてしまった。照も分からないと言っていてとりあえず、嫌われるのだけは避けたいと思い逆に嫌な事を聞いたら照が急に笑いだした。笑いながら過去に言われた事を言っていてまるでそれが当たり前で受け入れているみたいでその言葉を言った人、それを受け入れている照に怒りと悲しみが込み上がって来て泣きながら怒るように照に言ってしまった。
 照は悪くないのに八つ当たりみたいに言ってしまったので嫌われたかもと思ったらさらに涙が出てきて片手で涙を拭いていた。すると、急にもう片方の手を照に握られて何事かと顔をあげると照がじっと見ていた。泣いた顔を見られたくないなと思っていたら照が少し困った顔をしながらお礼と『好きになれないけどそんな私で良ければ付き合ってほしい』と言われたが、好きという気持ちよりも一緒にいれるのが嬉しくてまた涙が出てきた。返事をしないと、と思い握られていた手に力を入れて照の手を握り返して震える声を抑えて『はい』とだけ言った。
 照はそれを聞いて『ありがとう』とだけ言い、泣いている私の目元を自分の袖で拭ってくれながら私が泣き止むまで手を繋いでいてくれた。こういう所が好きだなと改めて思った。

 ----飛鳥目線の状況説明 終----

 私が泣き止んでからいつも通り一緒に帰り、私は寝る準備をしてベッドに潜り改めて照と恋人になれたんだと嬉しさでベッドの上をゴロゴロとしていた。寝落ち電話とかデートとか色々したいなと考えていたが、途中で冷静になり照は恋愛感情がないのでどこまでしていいのか分からずこういうのは本人に聞こうとメッセージアプリを開いたがどうせなら声が聞きたいと思い通話を掛けた。

「もしもし?」

「もしもし、照?」

「ん?どしたん?」

「あ、あのね、その、私たち恋人になったじゃん。」

「うん」

「その、照は恋愛感情がないのはわかったんだけどその、どこまでしても大丈夫なのかなって思って。」

「あー、なるほどねぇ」

 改めて恋人として通話をする事に緊張していたが、私はとりあえずしたいことを照に言って出来るかどうかを聞くことにした。

「うん、でね、私は手とか繋ぎたいし、デートとかもしたいし、結構電話とか朝と夜とか連絡したいんだけどその辺ってどうなのかなって思って・・・」

「私はなるべく、飛鳥のしたい事して行きたいとは思っとるよ、手とかデートは大丈夫なんやけどね、恋愛感情の問題じゃないけど私あんまりメッセージアプリとか開かないからその辺は続かないかも。」

 照は私のしたい事をなるべくして行きたいらしく無理をさせてないか不安だった。連絡に関しては前々から照の返信は朝か夜しか返ってこない事が多かったため分かってはいた。

「本当?無理とかしてない?連絡は前からそうだったし大丈夫だよ!」

「うん、無理はしとらんよ。連絡もしてくれても大丈夫やけど、朝は見ると思うけど夜はあんま見らんから返さんかも」

 無理をしていないか聞くと照は無理はしていないらしいのでそれ以上の事はできるのか聞いてみた。

「分かった。・・・じゃあさ、その、キ、キスとかは?」

「んー、キスかぁ」

「む、無理なら大丈夫だから!」

「出来るとは断言出来んけど、飛鳥となら大丈夫かもとは思っちょんよ?」

「っ!?ほ、ほんと!?」

「断言出来んから申し訳ないけど・・・」

「い、いや、大丈夫だよ!」

 照に出来るかもと言われて少し舞い上がっていたが『かも』は『かも』なので期待し過ぎて照に無理させるのは悪いと我に返った。

「そうや、飛鳥に言おうと思っちょった事あるんやけどさぁ」

「うん?な、なに?」

 急に照に言われて何か嫌な事でも言っただろうかと少し不安になりながら聞いた。

「飛鳥は好きって言ってくれても、私は返せないしそういうのって不安?になるんやない?」

「うん、そうだね。」

「でも、思ってもないこと言われても飛鳥は嬉しくないでしょ?私も思ってもないこと言いたくないし」

「うん」

「だからさぁ、代わりの言葉考えたんやけど・・・」

「え?」

 照が私の気持ちに応えられないのを気にしているんだなと思っていたら照から代わりの言葉を考えたと言われてどういう事か理解出来なかった。

「無理せずに気持ちを言える言葉で飛鳥が喜んでくれそうなやつ考えたんやけど、聞きたい?」

「き、聞きたい!」

「あははは、食い気味やなぁ」

「だって、嬉しいもん!」

「そっかぁ、・・・飛鳥、これからもずっと一緒に居ような!」

「っ!?」

 照が考えてくれただけでも嬉しいのにまさかの言葉で声が出なかった。

「どう?」

「・・・・・・」

「あれ?飛鳥?」

「嬉しすぎるぅ~」

「えぇ、また泣いてんの」

「だっ、だって、それもうプロポーズじゃん~」

「あははは、いいやろ!でも、嘘じゃないから!それに飛鳥以外には言わんから安心して!」

 照に言われた言葉が嬉しすぎてまた泣いてしまった。嘘じゃなくてちゃんと気持ちの籠った言葉で私が喜ぶように言ってくれて、私以外には言わないと言ってくれてもう嬉しすぎて言葉が出なかった。照を好きになって本当に良かったと思いその日は照と話しながら寝てしまっていた。朝になると通話は切れていて照からおやすみとメッセージが来ていた。
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